津島通信

NOVEMBER  2004
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◆CONTENTS◆

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【きむたく日記】

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広 告(刊行より1年間)

¶ 玉井敬之『夏目漱石詩句印譜』,翰林書房,2004,本体4,000円(税別)

 漱石の研究書ではありませんが,師匠の趣味の本です.

¶ 『原爆文学研究』3,花書院,2004.8.31,本体1,200円(税込)

¶ 『敍説』U―08,「特集◆梅崎春生」,花書院,2004.8,本体1,800円(税込)

¶ 米村みゆき『宮澤賢治を創った男たち』青弓社,2003.12.17,本体3,000円+税

¶ 岡山市・岡山市文学賞運営委員会編『おかやま しみんのどうわ2004』吉備人(きびと)出版,2004.2.14,定価1,000円

¶ 『敍説』U―07,「特集◆距離感」,花書院,2004.1.6,本体1,800円(税込)

 木村も書いています.

¶ 綾目広治 『倫理的で政治的な批評へ』皓星社,2004.1.30,本体2,800円+税

 のっけから福田和也批判で始まる痛快で刺激的な著書.批評理論系の方は,看過できない綾目先生の新著です.

¶ 米村みゆき編『ジブリの森へ 高畑勲・宮崎駿を読む』森話社,2003.12.15,本体2,200円+税

 映像テクストであるジブリ作品をどう「読み」「研究」の射程の中に位置づけなおすのか,文学研究者たちの果敢な取り組みです.

¶ 『現代文学史研究』第1集,現代文学史研究所,2003.12.1.
 大久保典夫「純文学の死」,大井田義彰「越境する中年女―松本清張『けものみち』論―」他.

目次


「きむたく日記」

11月26日金曜日晴

     昼休み研究室で雑用に勤しんでいると,金融商品のセールスがやってきた.商品説明や雑談で,30分も粘られて大迷惑.同僚のT先生の来訪で,やっと解放された.盗撮者などを含むこのような部外者を構内に入れないようなチェック体制を組めないものかと心底思う.
     先週以来の懸案である旧書庫への入庫許可証の発行を受けに,図書館へ出向く.途中で入館証を忘れたことに気づくが,引き返すと時間のロスになるので「なんとかなるだろうと」そのまま図書館に行く.諸手続きを済ませた後,いざ書庫に入って本を借りようとすると,係員が無情の言葉を放った.
     「あ,入館証(貸し出し証兼用)がないと,貸し出せないんですが…」
     格言.「小さなロスを見逃すことは,最大のロスを生む」(木村功)

11月25日木曜日晴

     22日に岡山市内の小学校でも,不審者によって小学1年生の女子児童が車に連れ込まれそうになる事件があったことが報じられた.
     奈良の事件に触発されたのだろうが,「自粛」するどころか便乗するとは,まったく腹立たしい限りである.
     僕に娘がいたら,コイツらは即刻死刑である.いや,近寄る男(男児)はすべてというべきか…….

11月24日水曜日晴

     午後教授会.来年度の教務予定などを決める.

11月22日月曜日晴(但馬)

     休暇を取って,但馬にいる.
     一階が床下浸水したために,両親は2階の僕の部屋の隣で寝ている.床に入ると,父親が襖越しに話しかけてくるし,遅くまで本を読んでいると早く寝ろと言ってくる.しかし,一番の問題は父親の鼾である.父親の鼾が3通りあるのを,初めて知った(トホホ).ようやく鼾攻撃から逃れてまどろんだと思うと,6:00には母親が起き出す.とても寝れたものではなく睡眠不足である.家族というのが,こんなに(生活)距離が近いものだということを再認識した次第.
     午後,両親を愛車スカイラインに乗せて香住までドライブ.昼食を「三七十鮨」でとる.この辺りでは評判の店らしく,14:00前になっても行列が出来ていた.刺身が非常においしいと,両親は満足気であった.
     18:00から甥の誕生会に出席.14歳になった.リクエストのあった本と,おまけのロルバーンの手帳を渡す.両親からは,安眠枕を貰っていた.
     甥の父親(義弟)は仕事場が水没し,職員の車すべてが廃車になったという.水が引いた後,床上には25センチの泥が残り,仕事場の清掃に3日掛かったといっていた.デジカメで撮影した画像も見せて貰ったが,その凄まじさには二の句が告げなかった.
     彼の話では,但馬の中古車の在庫は払底しており,販売業者はかなり強気になっているそう.また,豊岡市内のペットや野良犬・猫の類は全滅状態で,日本海の波打ち際に多量に遺骸が打ち上げられているそうだ.無残な話である.

11月20日土曜日晴

     師匠の玉井敬之が『夏目漱石詩句印譜』を出されたので,仲間内の出版記念会が催され,会場である相愛大学に出かけてきた.
     師匠は75歳になられたが,チロリアンハットを被り,背筋をシャンと伸ばして歩く姿は,とても高齢者には見えない.懇親会の場でも,最近の活躍ぶりを披露して会を盛り上げてくれるサービスぶりである.以下,師匠の「元気ぶり」を紹介しよう.名づけて「TAMAI WARS」

     エピソードT Yahooの逆襲
     「無料のインターネット接続についてご案内させていただきます」
     ある日,某Yahoo BBのセールスが,師匠宅にかかってきた.若い女性の声だったという.師匠が電話口に出て,応対した.
     「いや,インターネットなんかわからんから結構です」
     「無料なんですよ,お得ですから是非」
     「利用することがないんで,本当に結構です」
     相手はしつこく加入を勧め,師匠は不要を理由に断り続けるという,不毛な押し問答が続いた.そして,師匠はついにキレた.
     「君もしつこいな,いらんと言ったらいらんのだ」
     師匠は受話器を叩きつけるように置いて,通話を切った.
     30秒もたった頃,電話が再び鳴った.師匠が再び出ると,受話器の向こうから罵声が放たれた.
     「ウザイんじゃ!」
     (私たちも気をつけさせますが,孫さん,社員教育をしっかりしましょう)

     エピソードU 怒りの一撃
     京都は宇治の平等院鳳凰堂の宝物館をご夫婦で訪れた師匠.機嫌よく観賞されていると,修学旅行の中学生が入り込んできて,大声で騒ぎ始めた.
     最初は我慢していたが,エスカレートしていく騒ぎに,師匠はまたキレた.
     「やっかましい!」
     一瞬のうちに館内はフリーズして,生徒たちは恐怖の表情で師匠を見つめている.師匠は,大声で叱責したのを大人げなかったと反省したが,もう遅い.
     非常に気まずい空気が流れたが,生徒はこう言ったという.
     「すいませんでした」

     エピソードV 「あなた」なる挑戦
     京都駅八条口で,近鉄線の切符を買おうとしていた師匠と太田先生(天理大)が並んでいる列に,男が割り込んできた.むっとした師匠は男にいった.
     「おい君,僕らが並んでいるンや,割り込むな」
     「お前が,ボヤボヤしているからやんけ」
     「僕は,君などに『お前』と言われる筋合いはないっ.『あなた』といえ!」
     男は,師匠に言った.
     「あなた!」

     一連の話を聞き終わった僕は,ため息をつきながら思った.
     (先生,「年寄りの向こう見ず」ですよ)

11月19日金曜日曇

     図書館へ,借りていた図書の返却と,論文の資料調査に行く.途中,生協のブックセンターにつかまって辞典関係の図書を数点購入.
     図書館旧館の書庫に,安全上の理由から立ち入れなくなって半年が経過したが,苦情があい継いだためか,教員は申請して許可証がもらえれば,自己責任で入庫できるようになったらしい(掲示物).
     しかし司書さんに聞くと書類への捺印が必要らしく,図書館に行くのにそんなものを持ち歩くわけではないので,「持っていない」というと,「拇印を押してくれ」ときたもんだ.さすがに呆れて断ったが,宅急便の受け取りでもサインで十分通用するこのご時勢に,図書館の官僚印鑑主義とでもいうべき旧弊は,いつまで続くものやら.ま,生命保険証書をもってこいと言われないだけでも,マシなのかもしれない.
     明日から学園祭なので,午後から休講である.それにしても学生の姿が構内にあまり見えないのは,学園祭に参加する学生と,休講期間になるのを利用して旅行・帰省したりする学生に分散しているためだろうか.
     学園祭に参加したことなど一度もない僕がいうのもなんだが,学園祭の風景も寂しくなったものである.
     ともかく,息抜きばかりしている4年生には,この学園祭期間はしっかり卒論の草稿を書いていて欲しいものだ(お互いのため).

11月18日木曜日雨

     午後から雨が降り出して,館内が冷え込み閉口する.12月上旬から中旬の気温だったとのこと.最近は年のせいか,めっきり寒さが体に応えるようになったわい.
     奈良で発生した小学1年生の女児誘拐殺人事件は,またかと思わせられる弱者狙いの犯行で,幼い命を奪ったばかりか,その母親にまでメールと殺害写真を送りつける卑劣極まるものだった.憤ろしい限りだ.

11月15日月曜日晴

     上の甥っ子が,来週誕生日を迎える.週末から郷里の但馬に,災害見舞いの帰省をするついでに,何か誕生日のプレゼントが欲しいかと聞くと,FAXで第4候補(!)までリストにして返信してきた.ちなみに「欲しいものリスト」の1位は,原作本『今会いに行きます』だった.卒論も書かずに遊ぶほうけているゼミ生が,映画を観にいってとても良かったとは言っていたが,「黄泉がえり」の世界とは,また違うのか? 僕のお勧めは,松たか子の魅力が光る「隠し剣鬼の爪」である.
     ゼミを再開する.後期は,戦争(児童)文学を対象している.第1回目の報告者は,「ヒロシマのうた」を取り上げて報告した.討論が90分で終わらず,次回も討論することになった.

11月12日金曜日晴

     雑用の嵐に見舞われた.一番大きいのは,学生の盗難事件の聞き取りから担当部署・教員への連絡だった.おかげで,今日の予定はズタズタである.
     10月から勤務時間が裁量制になったので,出勤印を押してさっさと自宅で研究活動に勤しむ教員もいるのだが,そこまで堂々と振舞える勇気が,小心者の僕にはまだない.雑用は,そうやって研究室に居残っている教員めがけてやってくるのである.
     それはそうと,昨日「日本文学」11月号が届いた.「子午線」の欄に,故花田俊典氏の思い出を綴った拙文を掲載して貰っているので,お暇なときにお目通しいただき,花田氏のことを想起していただければ幸いである.

11月10日水曜日晴

     6日に開催された国語研究会の時に撮影した写真を受け取りに行ってきた.写り具合をチェックしていると,ゼミ生を写した写真にぼんやりと白い輪のようなものが写り込んでいる(問題の画像).ちなみにこの後に撮影した写真には,このような写りこみはないので,デジカメのレンズの異常とは考えられない.
     「と,……撮ってしまった!?」
     

11月8日月曜日晴

     先月とはうって変わって穏やかな秋日和(にしては,やや暑い)が続いている.
     先月末に,熊本の公立小学校の教師が「肝試し」と称して,原爆の被爆者の写真を児童に見せて,保護者から抗議を受ける出来事があったことは,ご存知の方も多いだろう.残念ながら,これを原爆体験の「風化」などと位置づけて慨嘆してみせることにはもう殆ど意味がなくなっていることを,この出来事から感じさせられた.
     1960年代の段階で,原爆体験の風化が作品の中で嘆かれ,1970年代の初頭には,生徒が「ヒロシマの歌」を読んでも描写を理解できないという学校現場からの声が提出されていた.また被爆者と怪獣に模したカードが発売されたことで,被爆者団体から抗議されて回収騒ぎが起こったこともあった.
     「肝試し」をした先生は59歳(1945年頃の生まれ)ということで,上に述べた「風化」の時期に学齢期を迎えていたことが分かる.先生がどういう教育を受けてきたのか関心を持っているのだが,現在でも以下のような事態が起こっている.
     平成14年度から採用された新しい小学生用国語教科書からは,コミュニケーション能力の育成を意識した言語技術教育重視の傾向が強まったことで,国語教科書からは「すいかの種」(沖井千代子)という原爆児童文学の作品が削除された(学校図書,小4).今まででさえ,教師が教えなければ子どもたちが読まない可能性もあったものが,削除されたことで,子どもたちが自主的に読む可能性すらなくなってしまったのである.
     教育の場で,原爆や戦争の情報が扱われなくなり,子どもたちにインプットされなくなる事態は,社会科でも現代史を教わらないために,戦時中のアジア諸国との関係を知らない若い世代を産出し続けているという批判となって表れていたが,その事態も改善される様子が見えない.その一方で,愛国心教育に熱心なバカどもも出てきている昨今である(憲法に掲げる「思想信条の自由」を,よりにもよって教育の場で蹂躙してどうする).いわんや国際化教育をやである(英語をしゃべれば国際人になれるとは,全く片腹痛い).
     話をもとに戻すが,勿論「肝試し」をしたのはこの先生であるから,すごく軽率であった点で個人的な責任は免れないだろう.しかし,果たしてこの先生を正面から責められる教師が果たしてどれくらい現場にいることだろうと思うのである.
     教師にも,児童・生徒同様あらためて原爆に関する研修をして,戦争や加害責任・被害責任の問題を再認識させるプログラムを組むことが必要だ.それは東京都教委が進めるような愛国心教育より,少しは「マトモな事」だと僕には思われる.

11月2日火曜日晴

     「掌の痛み」などど書くと,反抗的なゼミ学生に「愛の鞭」(最近は体罰と呼称変更された)を行使したのかと思われそうだが,さにあらず.
     日曜日8:00から町内一斉清掃に参加したのだが,チョークより重いものを持ったことがないのに,熊手を握って落ち葉をかき集めたり,クワで溝さらいをしたりしたせいか,利き手である右の掌の筋を痛めてしまった.ものを握るのに痛みが走り,握力が出ないので大変不自由である.それこそチョークで板書することも苦痛を伴う.人間,普段しなれぬことはすべきでない.
     清掃作業は欠席すると3,000円が徴収される.奥さんから「小遣いから引く」と脅かされていやいや出たのだが,今度から奥さんに出て貰おうと固く決意したワタシであった.


「演劇鑑賞サークル」のご案内 (岡山限定)  

   以下の要領で,演劇を鑑賞する仲間を募集します.役者が目の前で演じている舞
   台を見ると,TVや映画とは違う迫力と魅力に圧倒されます.募集の期限はあり
  ませんので,是非入会をご検討ください.

                  記

  ・入会の条件
   @教官・事務官・学生・院生・OB,OGなど,一切不問.
   A最低半年以上,サークル会員でいられる人.
 
  ・ 申し込み先:木村 功  〒700-8530 岡山市津島中3丁目1−1 岡山大学教育学部内
     (入会先:岡山市民劇場  岡山市磨屋町4-21 金谷ビル2F,086-224-7121,FAX086-224-7125)

    ・費用
   @入会金:1,500円
   A月会費:
        一般会員;2,300円
        学生会員;1,800円,
    
  ・演劇上演の時,入場料は要りません
  年間平均6〜8本の演劇が鑑賞できます.普通演劇鑑賞は,5,000円以上/1回
 かかりますので,演劇が好きな人にはかなりお得といえるでしょう.また,席が
 余れば期間中複数回の観劇も可能です.
 
  ・個人単位だと,事務局から割り当てられる座席の位置が悪くなるので,「サー
  クル」という単位(3人以上)を作って座席の割り当てを貰った方が,費用対効
  果があがるのです.

  ・詳細は,木村まで.

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 2004年 7月例会「アンネの日記」