津島通信

APRIL 2005
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◆CONTENTS◆

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【きむたく日記】

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広 告(刊行より1年間)

¶ 一柳廣孝・久米依子・内藤千珠子・吉田司雄『文化のなかのテクスト』双文社出版,2005.2.25,本体1,800円+税

¶ 野中潤『横光利一と敗戦後文学』笠間書院,2005.3.17,本体3,700円+税

¶ 岡山市・岡山市文学賞運営委員会編『おかやま しみんのどうわ2005』吉備人(きびと)出版,2004.2.20,定価1,000円

¶ 『敍説』U―09,「特集◆薩摩」,花書院,2005.1,本体1,800円(税込)

¶ 宮川健郎氏『日ようびのお父さんへ 本をとおして子どもとつきあう』,日本標準,2004.11,定価1,470円

¶ 馬場伸彦編『ロボットの文化誌』,森話社,2004.12,本体2,300円(税別)

 米村みゆきさんの「アトム・イデオロギー」(第3章)が含まれています.

¶ 真樹龍彦『聖餐の夜』,沖積社,2004.11,本体2,500円(税別)

 漱石研究・百闌、究・幻想文学研究で業績をお持ちの,真杉秀樹氏の小説です.真杉氏には,他に『「東電OL殺人事件」行―ある女の生涯―』,『赤い死』,『ふざけた殺し』,『吸血鬼の夜』の作品があります.

¶ 玉井敬之『夏目漱石詩句印譜』,翰林書房,2004,本体4,000円(税別)

 漱石の研究書ではありませんが,師匠の趣味の本です.

¶ 『原爆文学研究』3,花書院,2004.8.31,本体1,200円(税込)

¶ 『敍説』U―08,「特集◆梅崎春生」,花書院,2004.8,本体1,800円(税込)


「きむたく日記」

4月27日水曜日晴

     午後,定例教授会.
     連休を間近に控えて発生した尼崎でのJR列車転覆事故は,今日現在で91名の死者を数え,その数も100人を越えそうな勢いで増えていることに心を痛めている.遭難された方々やご家族は本当に御気の毒で,哀悼の言葉もない.特に若い世代の方の死亡も目につくので,同じような世代の学生に接することの多い僕としては,やりきれない思いである.
     お気づきだろうが,先週末に発生したトレンドマイクロ社の「ウイルスバスター騒動」といい,共通するのはヒューマンエラーによる事故であるということだ.空の交通を担う日航でも,最近トラブルが頻発しているのをご存知の方も多いだろう.
     最近広く知られるようになった「ハインリッヒの法則」は,アメリカの技師が労働災害の事例を統計分析して得られたもので,「1つの重大事故が発生するまでには,それまでに29の軽傷事故と300のヒヤリとする無傷事故・災害がある」というもので,「1:29:300」で表される.日航などは,まさにこの法則を実践してくれているようなので,僕は注目しながらも,日航機だけには乗らないよう心がけている(笑).
     それにしても,科学技術が進歩しているという割には,安全性という点で往古の時代よりも現代の方が遥かに危険度が増して「死」を間近に感じるような気がしてならないのは,僕だけだろうか.とりあえず,僕の場合は車の安全運転を心がけることから始めようと思う次第である.
     皆さんも,長い連休をご無事にお過ごし下さい.

4月22日金曜日晴

     午後,新しくゼミに加わった3年生を対象にオリエンテーションを行う.
     世界思想社が出している「世界思想」32号を,息抜きにパラパラと斜め読みしていると,鴎外の「青年」の主人公の名前が,小泉純一だったことを知った.ケッタクソ悪くなった.
     この冊子の中に,松波めぐみ「社会問題から考える思索と実践―ハンセン病療養所の六畳間から―」というエッセイが掲載されている.
     この中で言及されていた,長島愛生園の入所者Jさん(と紹介されている)は,ハンセン病の賠償訴訟には加わらなかった元患者である.あの差別の時代,入所したことで辛うじて生き延びることが出来たという思い.入所したことで,妻となる女性や信仰にめぐり会えた喜び.それらが,賠償訴訟の原告団に加わらなかった理由なのだとJさんはいう.  一方そんなJさんに対して,原告弁護団の弁護士は,訴訟への参加を強く要請したのだという.
     松波氏は,ハンセン病患者にもいろいろな考え方の持ち主がいるのに,メディアと裁判の過程から浮かび上がってくるのは,「国による強制隔離によって,人生を奪われ,被差別的な悲惨な生涯を送らざるを得なかった患者」像であり,正当な補償を求めるために,勇気を出して立ち上がった元患者像であるという.これら「あるべき入所者像」に対して,Jさんのような態度は違和感を発するものであることはいうまでもない.しかし,松波氏は,このような入所者の存在を含めて,ハンセン病の問題を考える必要性を指摘する.
     ハンセン病の言語表象について多少の研究をした自分としては,松波氏のエッセイで指摘されていた「あるべき入所者像」に,自分の言説を合わせていなかったかどうか反省させられた.
     学術研究は,客観性が強いものなのだが,特に人文系の研究は自分の視点を中心にまとめるものであるから,客観的な記述にはおのずと限界がある.それを口実に開き直るのではないが,公平性の確保は常に課題として意識されなければならない.
     ハンセン病元患者を,どのようにイメージしているか.そこに,「あるべき」姿を知らず知らずの内に求めているとすれば,それはまたこの問題系に新たな表象を生み出すことになる.入所者に対して固定的なイメージを持つことを,我々は意識して忌避しなければならない.
     以上,自戒のために書き留めておく.

4月21日木曜日曇

     神戸の信時さんから,転出の連絡葉書を貰う.米村みゆきさんと一緒の職場になったのである.賢治研究者のツートップか,と思わず笑ってしまう.
     昨日は雨で冷え込んだが,大学院の新入生の歓迎会が,キャンパスの近所の居酒屋(田舎屋)で開かれた.昨年度,食用サソリを食べさせられた店である.サソリの味は,エビみたいな印象だったが,バルドラのサソリ(「銀鉄の夜」ですね)を食っているような気がして,非常にイヤ〜な気分に落ち込んでいったのを覚えている.食事は,楽しく美味しいものでなければならないと思う.
     教員採用状況が好転している現在,学部から大学院を志望する学生は大変少なく,うちの講座は中国人留学生で定員の欠員を毎年埋めざるを得ないという厳しい状況にある.結果,今年度も新入生5人のうち4名が中国人留学生なのである.昨年に比べると,日本人が更に減少したので,内心暗澹たる気分でいるのだが,彼ら留学生に講座の問題をぶつけても仕様がない.異文化交流の観点から,歓迎会を楽しむしかないと頭を切り替える.
     留学生の中には日本食が初めてという人もいて,茶碗蒸しや天麩羅をおいしいと言って食べていたが,刺身はやはりダメだったようだ.それを見ていたゼミ生の留学生が,「私は,ふぐの薄作りなら食べられますよ」と言うので,「ん,食べなくていいんだよ」と答える.
     遠くのテーブルでは,教室唯一の国際派であるS先生が,1000人のデモがあった瀋陽からの留学生(元中学校教員)と教科書検定問題について,「大声で議論」していた…….

4月19日火曜日晴

     先週新年度早々に休講になった時限の講義を行う.講義の概要や授業の前提になる1980年代の読者論についてしゃべっていたら,あっという間に90分が過ぎていった.
     奥さまは職場から3連休を貰ったので,GW前に南紀方面へ小旅行に出かけて行った.解放感,……と書いたら怒られるだろうか.
     でも帰ったら,洗濯物を取り込まなくちゃ……(トホホ)

4月18日月曜日晴のち曇

     本格的に講義が始まり,学生の来室も増えて,読書・講義準備が寸断されることが多くなった.
     先週末にヘンリー・ジェイムズの「ねじの回転」を岩波文庫版読んだ.創元社文庫版も出ているので,比べ読みしてみても面白いかもしれない.
     「ねじの回転」はホラーファン必読の作品とされている.今まで読めてなかったので,気になっていたのだが,ようやく通読できた.牧師の家庭で育った若い主人公が,ある御屋敷の家庭教師として赴任し,そこで美しい兄妹に取り付いた2人の幽霊と戦う話なのだが,一人称の語り物の魅力が存分に味わえる佳作であった.お勧めである.

4月12日火曜日雨

     10日朝に急逝された学部の山口茂嘉先生(62)のご葬儀に参列.小雨が降っていたが,大勢の参会者だった.
     昨年の健康診断の時に,山口先生と一緒になって,若い頃は柔道をしていたんだと肉体美(?)を自慢してらしたのを思い出す.献花しながら,ご冥福をいのる.
     広島大大学院時代からの友人だという田中宏二先生の送別の辞が,大変心がこもっていたように思う.それに比べると,司祭(でいいのか?)の話はダレているし,親族が聖書を読み上げる時には,マイクの前で大きな咳を連発するしで,大変迷惑だった.

     それにしても,訃報のメールがメーリングリストで昨日2通も配信されていたらしいのだが,僕は一通も受信していなかった.朝から,隣のI先生を初め,なんか喪服が多いなぁと思っていたのだが,気になって立ち話で聞いてみると,上記のような次第で,13:00から葬儀だよと聞いたのが12:20だった.仰天というのは,文字通りこのことである.
     それからの僕は大慌てであった.お花代の用意は出来ていないし,ネクタイはオレンジである.庶務で黒いネクタイを出して貰って,スカイラインをカトリック岡山教会に駆った.会場には,50分に到着できた.やむを得ず授業は休講.学生さんたちゴメンね.

4月5日火曜日晴

     新年度に突入.寒さのために開花が遅れていた構内の桜もようやくほころび始めて,春の青空に桜花が映えている様に目を奪われがちである.
     しかし,教員は新年度の準備やら,引継ぎの会議やらで忙しい.整理整頓の苦手な僕の机の上は,すでに新しい書類でカオスを具現している.郵政民営化の議論などかまっていられないのである.
     昨日,一柳・吉田両氏から献本『文化のなかのテクスト』(双文社出版)をいただいた.カルスタのガイドブックとしてハンディな1冊という印象.教育学部の講義での紹介は難しいですが,ゼミ(近代文学)で紹介したいと思います.ありがとうございました.