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JUN
◆CONTENTS◆
とある体験
これも先週の話なのだが、1生に何度もある話ではないので忘れないうちに書いておく。
6月5日の朝、玄関のチャイムを鳴らす音がしたので目をさまし、玄関で誰何したが返事をしないので、そのままドアをあけなかった。京都時代に宗教の勧誘や押し売りのたぐいを経験したことからそのようにしているのだが、それっきりそのことを忘れて外出した。図書館で調べものをしてから帰宅して昼食の用意をしていると、またチャイムを鳴らされた。不審に思って再び誰何すると、今度は名前を名乗った。どこの○○さんかと聞くと「警察です」というので、慌ててドアを開けた。正直言って、警察に訪問されるようなことをした覚えはない。
そこには、白髪混じりの短髪の男が立っていた。日に焼けた浅黒い顔に疲労感を漂わせているが、職業柄か視線が鋭く、血走った目が一瞬僕の顔を捉えたのを感じた。
「木村さん、短大の先生ですね」
「はいそうですが」
「先月の5月20日の午前2時頃どこにおられましたか」
「自宅で寝てましたが(多分)、何か」
「車で外出されたことはありませんか」
「目が悪いので、夜間の運転はしません」
「親御さんの処に帰られたとか」
「帰ってません!」
「そうですか。実は宇部市の××でひき逃げがありまして、被疑車両としてお宅の車と同タイプのものがあがったんです。」
「……轢かれた方は」
「即死です。」
身に覚えはないが、血の気が失せる。書き込みをしている捜査官の横顔をみながら、脳裏では「冤罪、冤罪」と言う言葉が飛び交っていた。
「じゃ、すいませんが、車を見せて貰いますので。……まあ、先生の車は色が違うようですから」
(キサマーそれを早く言え!)
こんなやりとりがあったのだが、その最中に捜査官の調査用紙をのぞき見ると、そこには実家の住所や電話番号はもちろん親父殿の名前まで書き込んであって、無関係の人間までそこまで調べるのかと、実に気味の悪い思いをしたのであった。
ひき逃げ犯はまだ捕まっていないが、ああやって1台ずつ虱潰しに調べていけば、まず行き当たるのは自然のように思われる。
それにしても5/20に自分は何をしていたのか、昨日のことでさえ忘れている僕は、PCの日記で検索してみると、その日は車5台の玉突き事故現場を見たり、学生がバイクで車と喧嘩をして負けた日であったりして、実に事故の多い日なのであった。何かの連鎖が生じる日というのが、あるように思われた。学生にしみじみそのことを話すと、「単に先生の日頃の行いが悪いからじゃないですか」と云われてしまった。(6/10記)