津島通信

SEPTEMBER '98
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◆CONTENTS◆

@「きむたく日記」

出勤した日に,暇を見つけて更新しております。

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「きむたく日記」

9月30日水曜日雨時々曇り

     大学。14:00〜15:30まで会議。
     夜,玉井先生から論文の件で電話あり。雑談の時に先生曰く,「答えたくなければ答えンでええんやが……」
     「答えたくありません」
     「何でや!」
     (「答えたくなければ答えなくっていいっていった癖に」)
     「結婚は,まだか?」
     「……」
     有難き師匠である。

9月29日火曜日曇りのち雨

     大学院入試。4名の定員に5名の受験者があった。外国語・国語教育・選択科目2つに面接という受験者にとっては,ハードな内容だ。10年以上前の大学院受験のことを思い出す。稲田先生が,面接時に「外国語はどれくらいとれましたか」と尋ね,「半分ほどです」という緊張した学生の応答を聞いていて,ふとドクターを受験した時の自分のことがよみがえった。面接官は指導教授の玉井先生だったが,「英語は,どれくらい出来た?」と聞かれて,「割と出来ました」と答えると,「できとらん!」と一喝されてしまったのだ。……いい思い出である。
     判定会議に1時間かかり,このあと改組カリキュラムの確認などをしていて,会議が終わったのは,19:30だった。研究室に戻ってメールチェックをすると,信時さんから落雷でHPのデータが消失したという,大変ショッキングなメールが届いていた。お見舞いのメールを出す。インターネットブームで,我々がHPを立ち上げ始めて,3年目の悲劇である。今までのデータの蓄積が……と思うと,やりきれない。あらためてHPは,共有財産であることを痛感した。データの公開だけでなく安全管理も,HP公開者の大切な仕事なのである。

9月28日月曜日雨のち曇り

     9:30出勤。レポートを学生のロッカーに返却し掲示を出す。フレンドシップのシンポジウムの待ち時間に,論文の手直しをする。
     来年度の講義内容について数学教室曽布川先生と相談。合コンに誘われて,思わず乗ってしまった自分の浅ましさ……。
     14:00からシンポジウム。司会を務める。学生は,概ね指定どおりの時間内で喋ってくれたが,来賓のところで話が長くなり,困惑。結局25分オーバーした。不手際である。このあと運営協議会を開き,事業の報告と来年度計画について検討し,16:40に散会。ワーキンググループで学生の成績について話し合う。

9月25日金曜日雨のち午後から晴れる

     12:30出勤。15:00までフレンドシップ事業の書類作成や雑用に追われる。15:00から改組カリキュラムの再検討の会議。時間オーバーで,29日の大学院入試の後にやることになった。
     16:00から19:30まで臨時教官会議。司会の学部長は18:30には終わりたいと発言されたが,希望的観測に終わった。最近会議に関しては,悟りの境地に近付く。
     会議終了後研究室に戻ると,黒い平らな虫の来客がいた。僕を見ると,PCのキーボードの上を這ってから机の奥に逃げて行った。
     メールチェックをすると,西田谷さんから,「津島通信」が真っ白だというメッセージが届いていた。僕も昨夜気が付いていたのだが,すっかり忘れていた。西田谷さん,ありがとう。
     この日記を更新していると(20:00),4回生の小林君がレポートを持ってきた。今週行われた採用試験の関係で,出したい4回生だけ今日まで締切りを延ばしていたのだが,ちゃんと提出してくれたのである。ちょっとセリヌンティウス(「走れメロス」)の気分が分かった気がする。それにしてもレポートが読めていないので,土日を潰すしかない。本が読めないのが辛い。

9月24日木曜日大雨,岡山全域大雨洪水警報

     10:30より大学院入試問題検討会議。12:00まで。13:30よりフレンドシップ事業のシンポジウムの説明会。16:00より,改組に関してガイダンス科目を導入する件についての検討会。引き続いて総合演習という新設科目の担当者選定に関する会議。20:00終了。疲れきって,目が痛い。
     会議終了後,雨の中を建物の外にでると,サンダルの足が水の中に浸かったのでビックリする。目を凝らしてみると,一面黒々とした水面に街灯の光が映っている。キャンパスが水に浸かっていて,車が徐行しながら水の中を走っているのだった。空の底が抜けたかと思うくらいの降水量だったが,市内にでると冠水しているわけでもないので,どうやら教育学部の地盤が低いらしい。

9月22日火曜日暴風雨

     今日は,台風の影響で研究室の外では雨や風の音がしている。ゴーッという音が通りすぎるときはさすがに身が竦むような思いがする。
     しかし大学は休みではない。ビックリしたことに,岡山大学は警報が出ても休校措置を取らないのだ。自動車通学の学生が,風にあおられて自動車ごと河に落ちようが,列車が止まって帰宅手段を失う学生がいようが,どうやらお構い無しの大学らしい。今日は試験日の最終日ということで,暴風雨を冒して通学してきた学生はいずれもびしょ濡れ&不平顔である。遠慮のない学生に八つ当たりされたりする僕は,いい迷惑だ。
     大学の当局者よ,台風で警報が出ているなら休校にしろ!

     13:00よりフレンドシップ事業の会議。今年度事業のまとめで,28日にシンポジウムをするのだが,その場の話の流れで司会をすることになってしまった。会議で気を抜くとこういう展開が間々ある。
     大学院の入試問題の問題文作成で苦悶。試験問題の作成と採点さえなければ,教員稼業は随分楽なのだが……。2時間も文学全集を手当たり次第ひっくりかえして,ようやく問題文を見つける。設問を作って18:00前に完成。  台風も何時の間にか過ぎ去ったようで,虫の音がしている。一安心である。慶応@田村君から台風見舞いのメールあり。

9月21日月曜日雨時々晴れ

     大学。3日がかりで採点し終わった試験の答案を,教務に預ける。大学院の試験問題の問題文を探すが,適当なものが見つからない。困惑。
     「敍説」の論文に取りかかるため,読書メモを作成しながら,「午後の曳航」(三島由紀夫)を読む。

9月17日木曜日曇り時々晴れ

     今日は,岡大で初めての試験である。ルンルン気分で教室に入り,試験問題を配布する。講義していたときの人数と,受験者数が若干異なるが,気にしないで行こう。
     問題は「坊っちやん」について書かせるものだったが,試験時間が終了しても2年生の女子学生2人が書きあがらないといって訴えるようなまなざしで見つめてくるので,仕方なく延長を認めてしまう。やはり「きむたく」,女子には甘いのかと九州辺りから罵声が飛んできそうだが,そうではない。研究室に帰ると(ムサイ)男子学生が待っていた。体調不良と自転車のパンクで試験時間に間に合わなかったので,救済して欲しいと,悲しそうな髭面で縋って来た(えーい,うっとおしい)。答案の草稿を持って居たので,解答用紙のかわりにそれを受け取ることで,救済する事にする。「蜘蛛の糸」のお釈迦様の気持ちが大変よく分かる一日であった。そしてこれからが,「地獄変」である。
     御後がよろしようで。

9月16日水曜日晴れ

     台風の影響で風が強いが,気持ちの良い晴天である。関東・東北地方の方には,お見舞いを申し上げる。
     宇部短大時代にお世話になった諸井耕二先生から,「乃木伯爵家の蔵書を追う」という抜き刷りを恵送された。少し読んだところで,学生の襲来を受ける。原尻英樹『「在日」としてのコリアン』を読む。
     14:00から19:30近くまで,休憩無しの5時間半の教官会議。掟破りである。疲れきって研究室に戻る。改組関係は,1年生の僕にはチンプンカンプンの話だ。教授の先生方は,この後に教授会があるという。稲田先生は「10時ごろには帰れるかな」と諦め顔で,トイレに行かれた。ヒラで良かった……。
     紀伊國屋書店から,『安部公房全集013』,成田龍一『「故郷」という物語』,飯田祐子『彼らの物語』が届くが,今日は読む気力が湧かない。真っ白に燃え尽きた感じだ。

9月14日月曜日晴れ

     相変わらずの残暑である。フレンドシップのレポートをなんとか読み終えて,もう一人の担当者に渡す。
     昨日丸善で購入した,馳星周『夜光虫』を少し読む。文章が短くなって,断片化している印象を受ける。

  9月11日金曜日晴れ

     暑い。気温が31度あって閉口する。フレンドシップのレポートを読む。なんか事業の批判ばかりが書いてあって,嫌になる。しかし短大時代のレポートとは異なり,解読作業がなくなったのは助かる。誤字も少ない。
     少々気になるのは,原稿用紙の使い方が今一つ理解出来ていなくて,改行や行末の括弧の処理がおかしいのが何人かいることだ。また縦書きなら漢数字をつかい,横書きならアラビア数字を使う事を知らない学生が殆どで,これには閉口する。縦書き原稿用紙なら右肩を綴じなければならないのに,左肩を綴じていたりするのも珍しくない。高校の国語担当の先生方には,このあたりの指導もしっかりお願いしたい。

9月10日木曜日晴れ

     昨夜,自宅からHPにアクセスしたら,カウンタが8としか表示せず,「なんじゃこりゃ」と思う。今まで,CGIの読みこみがうまく行かなくて,表示の数字がおかしくなる事が時々あったが,今回はフロントページを再読み込みしても,累進的に数字が進むだけなので,クラッカーにカウンターの数字を消された事が分かった。FTPで数字をもとの数字に直しておいたが,パスワードを3年も変えてなかった僕も迂闊であった。藤堂さんのHPの掲示板で,酷い目にあったと愚痴って,藤堂さんに慰めてもらう。人の悪意が身にしみる今日この頃である。
     大学。午前中購読の前期最終講義。「坊っちやん」のまとめをする。午後は,特講で近代文学における新平民の表象について,小栗風葉「寝白粉」(明治29)と藤村「破戒」(明39)で説明。「寝白粉」に描かれる新平民像は,当時の類型どおりだが,さすがに「破戒」の時代になると,人口・階層の流動化で徴表が「隠」されてしまい,新平民の徴表は苦悩というかたちで内面化されている。それを「暴く」システムが社会の中に欲求として現れることを「破戒」はあらわしている。野間宏の「破戒」評も紹介する。
     講義後,車でモスバーガーに行って昼食。国語研究会で発表するための具材を探す。「ごんぎつね」を扱うことにしよう。

9月8日火曜日晴れ

     午前中を使って,MSオフィス97やワード98をインストール。ウィンドウズ98も, ついでに再インストールした。それでもHDの容量が,1Gにも達しないのでずいぶんすっきりした感じになる。やれやれ,復旧作業は2日がかりで終了した。
     午後子規の講義。「仰臥漫録」を取り上げて,律をめぐる愛憎や死の恐怖・自殺願望などを読んでいった。明治34年11月の漱石宛書簡で「ボクハモーダメニナッテシマッタ」で有名(?)なものや,漱石が子規の墓の墓標を3度廻るという「無題」(明治36年2月頃)も併せて紹介し,前期講義のまとめをする。
     大学院の近代文学演習を終えてから研究室に戻り,PCの微調整。

9月7日月曜日晴れ

     昨晩,母から電話があり,「ウルトラマンのネクタイを貰ったって」というので,ビックリした。「なんで知ってるの」というと,叔母の家で僕のHPを見たのだということだった。「たくみちゃんも元気でがんばってるね」というのが,叔母のコメントだったとかで,親戚までがHPを見てくれているようになっていてちょっと気恥ずかしい。叔母は,大教大の国語教室にいる娘のワープロでアクセスしていたようだが,最近のワープロはインターネットもできるのかと感心する。
     大学に出勤して講義ノートを作ろうとPCのスイッチを入れたところ,起動しないことに気がつき真っ青になる。セーフモードで立ち上げて,ヘルプファイルを読みながら再起動を試みるが,上手くいかない。98を削除して,95レベルで起動させようとしたが,それでも起動しないので覚悟をきめた。リカバリである。つまり,PCを出荷状態に戻すのである。セーフモードで再度立ち上げて,作成したファイルやデータをFDに移行させてから,リカバリをして,再度必要なソフト類をインストールしていく。おまけにネットーワークのTCP/IPなどの設定も最初からやらなければならず,閉口。4時間かかってなんとか半分まで復旧させた。起動しなくなった原因は,ソフトのアンインストールで必要なファイルを削除してしまったためなのだろうか。しかしいままで何度もそんなことはやっているので,ちょっと考えられない。98のバグなんだろうか?わからない。
     この間学生のレポートの指導なども行うが,とても悲しい気分だった。半日を返してくれ。

  9月5日土曜日晴れ

     10:00から演習。白水君の「納屋を焼く」の報告。アルジェリアにいた男を中心に報告。納屋を焼くという行為を精神分析学を援用して,「女性を殺害」することだと意味づけていた。そして「納屋を焼く」という短編は,「暴力」を取り上げはじめる端緒になった作品であると位置付けようとしていた。刺激を受ける報告だったが,例えば「男」のいう「モラリティー」の問題や「同時存在」の問題をどう解釈して行くのかというあたりが,言及されていない。そのためにアルジェリアから来た男のテクスト内での意味が曖昧になり,僕との関連もいま一つ明確でなくなっていることなどを指摘した。11:45終了。
     自分でも「納屋を焼く」論を書いてみたくなった。

9月4日金曜日晴れ

     14:10から健康管理センターで健康診断を受ける。内科検診の時に,診察医に腹の肉をつかまれて,「大分ついてきたねー」といわれた(ガーン)。  来年の雪辱にむけて,今日から腹筋運動50回×2セットを自分に課す。

9月3日木曜日晴れ

     2・3限講義。久しぶりの2時間連続の講義のため、終わり頃には酸欠で頭痛が酷かった。実は今日、誕生日のプレゼントにもらったネクタイをしめていった(締めて来いというプレゼンター達の要求に抗し切れなかったのである)。ネクタイには、ウルトラマン(初代)の絵柄とウルトラマンという字が大きく書いてある。ポール・スミスのネクタイしかしめない僕には、ウルトラマンは趣味的に拷問である。しかも冷房の無い部屋なので暑い。シャツを着ずにネクタイを締めれば、変なオジサンである。しかたなくシャツを着てネクタイを締め、胸元を教材で隠しながら廊下を歩いて教室に入った。すると早速目ざとい4回生の学生に「字が書いてある」「ホントだ」と笑われる。教務でも、美人コンビに笑われて「どうしたんですか」と本気で心配されて深く傷ついた。サービスとはいえ、いい加減頭に来たので、別のものに付け替えたが、「金をかけた嫌がらせ」という当人たちの意図は十分達成されたのだった(気が済んだかチクショウ)。
     講義終了後、郵便局に行く。横着をして道路を横断して走ったところ、シャツの胸ポケットから愛用の4色ボールペンが落ちて道路を転がった。転がる先には下水溝があってその上に格子状の蓋がかぶせてある。「落ちるなああ」と念じたが、無情にもボールペンは格子の間から下水溝へダイブして、消えた。後には黒くて小さな波紋がひろがっている。
     僕はボールペンをそこらじゅうに置き忘れる病気がある。もう特技と言っても良いが、下水溝で無くしたのは初めてだ。4月から数えて4本目であり、山口で買った4色ボールペンは全て紛失したことになる。なんか踏んだり蹴ったりの1日だ。
     所用をすませて研究室に戻り掲示板をみると、関学の野村さんが、夏休みが9月まであると書いていて、これまたガックリくる。うらやましい話だ。記念論文集よ、夏休みを返してくれ!

9月2日水曜日晴れ

     午前中、女流文学の講義。ジェンダーGENDERについて説明する。説明しているうちに学生たちの表情が険しくなってくるので、蒼ざめる。説明が悪いのかああ。
     掲示板をみると、広大の山下さんの書きこみがあった。久しぶりである。

9月1日火曜日晴れ

     午後から講義。久しぶりの講義で緊張した。あとで学生からも緊張してましたね―といわれるが、「すぐにへらへら笑ういつもの姿になりました」とも言われる。そうなの(ガーン)、である。大学院の演習の時、ネットワークに接続できず、慌てる。オンラインを利用した演習は、これが痛い。

     演習後、3回生白水君来室。土曜日の演習発表の事前指導をする。村上春樹の「納屋を焼く」を取り上げているが、納屋を家屋と読み替えて、フロイト的に解釈すると女性の象徴になるので、「納屋を焼く」行為は、「女性の殺害」を意味するのであり、作品中から女性が消えるのはそのためだろうと述べていた。ビックリ。春樹作品の女性の蒸発は、概ね自殺か病気であるから、「殺害された」という解釈は成り立ちにくい。もっと春樹作品の傾向を意識すべきではではないかと意見を述べる。