津島通信

 APRIL '99
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◆CONTENTS◆

文学館開館情報

「津島通信」1周年

2年目突入「きむたく日記」

出勤した日に,暇を見つけて更新しております。

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    文学館開館情報

     

     ◆ 仙台文学館  3月28日開館 開館特別記念展として「夏目漱石展」開催中(藤堂尚夫さんのMLへの投稿より)

     ◆ふくやま文学館 4月23日開館(予定)午後1時〜@ 「井伏鱒二の世界」

      〒720-0061 広島県福山市丸之内1丁目9番9号,Tel(0849)32‐7010・FAX(0849)32-7020

    開館時間/9:30〜17:00(入館は16:30まで),休館日/月曜日(月曜休日の場合はその翌日)・12月28日〜1月4日・展示替えによる臨時休館あり。入館料/一般・大学生300円・20名以上の団体は2割引・高校生までは無料。特別展は別料金交通アクセス/福山駅北口から西北へ徒歩8分,山陽自動車道福山東ICより西へ20分。

 


    「津島通信」1周年

     岡山に来て1年が経過した。この間,当HPをご覧いただいた皆さんにお礼を申し上げる。またそれ以前からご覧いただいている方々にも。そしてこれからも忌憚のない御意見をお寄せいただきたい。
     当HPは最初「漱石研究」のHPとしてスタートしたが,3年に垂んとする時間の中で,いきおい関心も変化せざるを得なかった。現在は勤務先との関係もあって,漱石ばかりをやるばかりもいかず,正確には漱石以外の文学的な知識が殆ど脆弱であることを自覚させられて,慌てて現代文学や明治の他の作家の研究にも目を向けるようになっている,そういう事情が少なからずHPの内容にも反映しているのではないだろうか。事実漱石研究の情報は,吉田正さんの助けをかりた「研究論文リスト」以外見るべきものがなく,羊頭狗肉の事態に陥っていると反省している。今年度は,この状況の改善に努力したい(と去年も言っていなかったか?)。
     アイドルタレントのフェイクである「きむたく日記」は,アホな1人の大学教官の姿を晒して,その生態の1部を楽しんでもらおうという「露出症」的試みであったが,一応一定の評価(?)を1部では受けているようなので,これはもう少し続けて行こうと思う。今春からは,サーバーを大学に移行させようとも考えていたが,そうするとこの種の「オフザケ」も国家公務員としての品位に欠ける行為としてできなくなる可能性もあり,ペンディングとする。


「きむたく日記」

4月28日水曜日曇り

     今週から朝1に学部教育のガイダンス科目の講義が入った。ガイダンス科目というのは,新入生に大学での勉強の仕方や,施設利用,学部の紹介をするものである。僕は,「レポートの書き方」を担当した。レジュメ3枚の内容を,90分フルに使って,なんとか喋り終えたが,どれくらい理解してくれたことやら。相手もそうだが,僕も眠かった。こういうものは説明しただけではなく,実際に書かせないと理解できないだろうに,非情にも一期一会の講義なのであった。
     ところで,今日はじめて僕は一般教養の講義棟に行ったのだが,そこでは先客のK賀先生が「当番のクラスはどこだ,教室はどこだ」とさまよえる教官になっておられた。ぼくなんか,学生に聞いたモンね(ウーン)。
     教育学部棟に戻って2限目の演習。賢治の「土神と狐」の報告。樺は「自生する山桜の東北方言」あたりはまだいいが,土神とは何か(土公神→陰陽道),狐とは何か,なぜ土神は怒ったばかりか,殺すまでに至ったのか。狐の笑みは,自嘲か救いか嘲弄か。意見百出。もう1時間は必要なテクストだった。次の報告者は斎藤隆介をするのはいいが,研究書がないというので困惑。岡大や付近の大学図書館にない『斎藤隆介全集』全13巻(岩崎書店)を見つけ出してきただけでもエライ。
     午後会議2つ。

4月26日月曜日曇り

     昨日安岡章太郎の文庫本を探しに,久しぶりに万歩書店に行く。目当ての本を入手した以外に,水曜日の小学校教員向けの演習で使えそうな児童文学の文庫本も入手できた。今西祐行・斎藤隆介である。あの「ベロ出しチョンマ」が斎藤の作品であることをいまさらながらにして知る。昨日は彼等の作品集を読みながら,幼児期の読書体験を呼び覚ます時間が持てた。とくに「もちもちの木」は授業で教えられた覚えもあるのだが,授業内容も担当教員もサッパリ忘れている。過去(幼児期)の体験もすでにこのように朧気(皆無?)になってしまったことに,あらためて来し方の遥けさを思い知らされ,人生の折り返し地点の年齢に達しつつある自分に愕然と気づくのであった(といいながら,ウチは平均プラス15年くらいの比較的長命な家系なんですが)。
     午前中ゼミ用読書会のテキストをコピーする。Sくん来室。就職用の書類を預けられる。4年生のゼミ生を持つ教官は,就職時の推薦状を書くときに,この書類を参考にするそうなのだ。どなたか推薦状のフォーマットをお持ちなら,送信してください。

4月22日木曜日晴れ

     大学。特講とゼミ生Hさんの指導。体が空いてから生協に出かけて,村上春樹『スプートニクの恋人』(講談社),『中上健次選集5』(小学館文庫)を購入。
     心理の同僚に,いきなり女性の顔が2つ印刷してある紙を見せられて,「どちらが好い感じますか」と聞かれた。
     「え,同じじゃなんですか」
     「いえ,微妙に違うんです」
     「そうですねー」と,一つを選ぶと,彼は唸った。
     「ふつうは,こちらを選ぶんですよ。ほら,瞳の大きい方を」 なるほど,僕が選ばなかったほうは,瞳孔が大きくて瞳が大きく見える。
     「人間は,瞳の大きい人に惹かれるそうなんですが,先生は逆でしたねー」
     目許が綺麗に見えたほうを選んだのだが,どうも動物的な反応をしたのではなくて,ただ単に美的な反応を示しただけのようだ。器量好みがバレた瞬間であった。

4月21日水曜日晴れ

     大学。午前中「小学国語」の演習。女性受講者に課題作品の連絡をするのを完全に忘れていて,しかも演習終了後に指摘されるまで気がつきもしなかったので,彼女達から「冷たい」と突き上げを食らった。男子学生にはしっかり連絡していたんですが……。
     昼休み中,ゼミのMさんが来て,ポストペットという電子メールソフトのネットワークの設定について質問。「先生は,ポストペットを使わないんですか」と聞くので,「オジサンが,研究室でポストペットを使ってると無気味でしょ」
     14:30から18:10まで,教官会議。今日は新任教官の歓迎会があるので,早目に切り上げられて助かった。

4月20日火曜日晴れ

     研究室に出勤してメールを開くと,京都の先輩が桂枝雀の死去を伝えてきた。彼の落語の天才ぶりやショーマンシップについては,多くの人が御存知だろう。先輩は,落語を直接聞いて,その非凡さを実際に体験したということで,随分逝去をいたんでいた。それにしても「うつ病」は,厄介な心の病だと改めて認識する。
     講義も2週目である。午後講義を2コマ連続でこなす。大学院の特講で「晩年の子供」(山田詠美,1990,新潮社)を取り上げる。「晩年」の意味の変質を追いながら,その死の表象が,『死と歴史』(アリエス)の説く死の表象の歴史に逆行した認識を示していることにも触れたいと思ったが,そこまで行かなかった。いつもの酸欠になって頭痛あり。講義後,大学院のPCにウイルスバスターの実行ファイルの修正用ファイルをインストールする。指示したURLを正しく表示しないエラーがあり,自分も気づき院生から苦情が来ていたが,ようやく原因が特定できたのであった。トレンド・マクロ社も登録ユーザーに対して,メールなどでキチンと広報して欲しいものだ。僕が情報を見つけたのは,偶然である。
     講義ノートを修正してから,生協ブックセンターに行く。イタロ・カルヴィーノ『カルヴィーノの文学講義』(朝日新聞社),藤井淑禎『清張ミステリーと昭和三十年代』(文春新書),石原千秋『漱石の記号学』(講談社選書メチエ),他読書会用に2冊本を購入する。安岡章太郎の短編でも売ってないかと書棚を見たが,見事になかった。
     研究生Fさんから,町田康『くっすん大黒』(文藝春秋,1997)を借りる。

4月17日土曜日曇り

     16:00から18:00過ぎまで,学部のゼミのオリエンテーションを行う。18:30から,3年生と4年生のコンパに参加する。どないなものかと心配して見ていたが,皆仲良く喋っていて安堵した。学生達とたわいもないバカ話をして,講義が始まった今週の緊張がほぐれる楽しい週末となった。若干1名調子に乗って飲みすぎて気分が悪くなったのがいたが,直ぐに回復して皆に驚かれていた。僕のほうは久しぶりにアルコールを摂取して,睡魔に襲われる。
     それにしても,「犬も歩けば……」ではないが,飲み屋に行くといろんな人が出入りして,いろんな人を目撃してしまうものである。中には僕を認めて,ビックリした人もいて,「口止め」されたりしたのであった。

4月15日木曜日晴れ

     昼休みにゼミへの登録学生が来るので,それまでに今日締め切りの論文をチェックする。が,AB型の新ゼミ生コンビが,「早目に来たので暇つぶし」させろと研究室の中に入ってきてしまった。人が論文を読み直しているすぐその傍で,就職用講座のパンフレットを開いてどう思うか聞いてくるので,いい加減に返事をしておく。2人は気にせずに勝手に喋っているが,結構ウルサイ。そのうち,登録学生が全員揃ったので,17日にゼミのオリエンテーションを行い,4回生との顔合わせも行い,夜は交流会を持つことを連絡する。
     12:40からの講義のためのノートを印刷しようとFDを開くと,昨夜書き上げたファイルが無かった。「保存」場所を間違えていたのだ。女房が居れば,メールで送ってくれと頼めるのだが,私は悲しい独身の身である。昨年のオリエンテーションで用いたプリントで御勘弁願う事にして,講義に出かけた。案の定,受講生達に笑われた。
     堀辰雄の研究者の院生の方から,質問メールがあったので分る範囲で回答する。質問は,ちょくちょく貰うようになったが,これもインターネットによって大学間の垣根や,教員(教官)と学生の関係が変質していることを物語っている。それにしても,学部の学生からはトンと質問が来ない。
     生協で,講義用の短編集や「日本の近代11 企業家たちの挑戦」(中央公論新社)を購入。松下幸之助で終わっていて,さすがに中内功の項は無かった。1989年の松下の死とバブルの崩壊は,企業研究家によって結びつけられて有力な暗喩として用いられる事だろう,などと考えている背後で,国語教室のY本さんやKさんはファッション雑誌を立ち読みしていたのであった。……質問も来ないはずである。

4月13日火曜日晴れ,風強すぎ。

     午後学部の購読と大学院の講義。講読は,第1回目なのでオリエンテーションとして話をしたのだが,時間が来ても予定の1/3が残ってしまった。僕は昔から寡黙な男だったので,喋りすぎるということは無かったのだが,話し出すと止まらないというのは,これは老化なんだろうか? 次回からは簡潔にしゃべろうと反省。大学院も研究室でPCを援用した研究方法と教育についてオリエンテーション。
     今日は教務の仕事は大して無く,一息つけた。昨日は教務学生係から電話がバンバンかかってきて,実に怖い目にあったのである。

 

4月9日金曜日晴れのち曇り

     今日は,2・3・4年次生のオリエンテーションの日である。僕は今までの中高校・短大で,「教務」の仕事だけはした事がなかったのだが,よりにもよって新課程と旧課程が混在する学部の今年度の教室教務係を担当する「破目」になったのだ(木村がいいだろうと,割り当ててくれた方は今日はお休み)。
     はっきり言って,何も分からない教務係である。オリエンテーションで偉そうに指示を出していたが,その目が泳いでいた事に何人が気づいていたことだろう(全員だったりして)。その上に,教務委員会から配布されていた「マニュアル」は,堂々と卒論の提出期日を間違えていて思わぬ恥をかかされたのである。
     オリエンテーションが終われば,4年生が単位履修の事で波状攻撃をかけてきて,そのたびに稲田先生に聞かねばならない自分が情け無かったが,こればかりは卒業が絡んでいるので仕方がない。聞き取った事を付箋に書いて,該当する頁に張り付けるワタクシであった。早く偉そうに答えられる自分になりたいモノである。
     そういえば,3月に卒業した学生と同じ学籍番号をもつ,青梨君という学生が復学しましたとやってきた。
     「じゃあ,O君と一緒だね」
     「でも僕は,3年生に復学するんですよ」
     「……今世紀中(の年度)に卒業できるといいね

 

4月8日木曜日晴れ

     入学式。修理に出していたノートPCが帰ってきた。書くのも恥ずかしいことだが,皆さんへの注意を喚起する意味で,書かせてもらうと,実はキーを支えるプラスチックのブリッジを破損して交換したのだった。キーボードの下にゴミが入り込んだので,取ろうとしてキーの蓋を取ったら,細いプラスチックで出来ているブリッジはその力だけで折れてしまうのである。デスクトップのキーのブリッジは丈夫なのだが,ノートはそうではなかったのである。国有財産を破損した僕は,自分への戒めもあって自分のフトコロから修理費用を出すことにした(エライ)。尤も業者(ゲートウェイ)の好意で,修理代・返送料金は無料で,送付料だけ負担しただけだったのだが。
     15:00から大学院のオリエンテーション。新しい院生が4名,研究生が3名と結構大勢の大学院となった。内部進学の某応援団員は,自己紹介のときにこの度入団いたしましたとやらかして,早速存在感を示したのであった。

4月7日水曜日晴れ

     また肌寒くなった。京都では御所の一般公開がはじまったらしい。左近の桜も見事だとか……。
     締切りが近づいている論文の目途がなんとかついた。来週から講義がはじまるので仕上げを急がねばならない。

4月6日火曜日曇り→雨→晴れ,風強し。

     10:00から12:05まで新1年生の担任会議に学生問題WGの1員として出席。14:30から16:20まで情報処理センターの情報教育担当者会議に出席。曽布川さん・寺澤さんと一緒。成瀬先生の姿も見えた。AL−MAILの導入について質した教官があり,回答者はPCに前のユーザーの記録が残り(MOベースでも),第三者が別人と偽ってメールを出す恐れがあると指摘した。半信半疑。
     夜,Fさんから借りたNHK教育の番組の録画を観る。大岡昇平・桑原武夫・安部公房の3人分を観た。安部公房と言うのは,とても明晰だと思ったが,ナビゲーターの如月小春があっちを向いて喋っているわざとらしい演出がイヤミだった(お前が視聴者に違和感与えてどないすんねん!)。

4月5日月曜日曇りのち晴れ

     友人が大阪に帰る前に,万歩書店の平井店に案内する。ヤツはここでも3時間近くねばってくれた。僕はエイズ関係の本を2冊購入する。昨日来の疲労に勝てず,車で30分ほど眠る。車に戻ってきたヤツは,石田梅岩の「心学」関係の版本を買ったといっていた。
     

4月4日日曜日 晴

     昨夜洛星高校時代の友人(男性,社会科教師)が,春休みを利用して岡山に遊びに来た。今日はリクエストで,金光町に行く事になる。なぜか金光教の本部が見たいと言うのである。
     市内から車で2号線を走り,走行中「毛皮」を踏んだりして悲鳴を上げながら,金光町にたどり着く。本部は直ぐに分かったが,なにか祭礼の日らしく,夥しい車と参拝客であふれかえり,駐車できずに本部を行きすぎてしまう。方向転換しようと道路沿いの金光町役場に入ると,今度は日曜だというのに役場前は地方選挙の演説会に参加する人たちで埋まっていた。駐車場を探すのに一苦労したが,金光教の人に金光病院を指示されて駐車する。
     桜は見たいけれども旭川沿いの花見客のドンチャン騒ぎに閉口していた僕には,金光病院から金光駅の線路沿いに開花した桜が美しく満足できた。若い女性達が,木の下で弁当をひろげていた。
     「どうですか,この門前町は」と興奮気味に語る友人について歩きながら,大勢の参拝者で溢れかえる門前町を通過して,本部の祭殿や修行場(?)のような建物,教祖の陵墓も「見物」する。信者集団の中で友人が写真を撮るので,冷や冷やした。信者の中に,写真を撮ろうというような者は1人もいないのである。カメラを持った僕は建物しか撮影しなかったが,自分達が「外部」の人間として見られていることは良く分かった。
     僕は,宗教アレルギーというのか,「信仰する」「信頼する」ということに不安を感じてしまう。絶対的な自己投棄が要求されているような気がするからだ。勿論宗教などがそういうことを強要するもので無い事は理解できる。しかし,その宗教の素晴らしさについて語るあの口調の,主体性の無さとも思える姿勢への違和感は,到底拭い去れない。

     岡山に戻り,庭瀬で犬養毅(木堂)の生家・記念館を見学。血に染まった座布団を観る。9発の弾丸を浴びせ掛けられ,警護の警官が身を挺して防いだが2発が命中したこと,立ち去った軍人になおも「あの青年を呼び戻せ,話せば分かる」といっていたことなどを知る。
    「恕」という書が印象に残った。内容は,自分は幼少にして父に死に別れ大変な経済的な苦労をした。だから貧しい者や弱い者の気持ちが良く分る。そういう立場の人間を労る気持ちを「恕」というのである,というような事だった。「当時の政治家は,西洋知のほかに,しっかりした精神的バックボーンを持っていて,国政に携わっていたんだなあ」などと感想を友人に述べたりした。
     さて,その後友人の頼みで万歩書店久米本店につれていったのは良かったが,ヤツは4時間もそこでねばり,16:00前に店に入ったのが,出るときには20:00を超えていた。