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◆CONTENTS◆
「敍説」19号刊行
【きむたく日記】
(暇を見つけて更新しております。)
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kimutaku@cc.okayama-u.ac.jp
文芸批評同人誌「敍説」の最新号19号が刊行された。今号は,「原爆の表象」と銘打った特集を組んでいる。
主な内容として,花田俊典「原爆の再問題化のために」,
梁木靖弘「かくも長きヒロシマの不在……原爆映画の想像力」,
畑中佳恵「メディアの『原子』……『東京朝日新聞』という言説空間の中で(上)」
などである。他特集執筆者は,坂口博・長野秀樹・横手一彦各氏である。
漱石論も,関谷由美子「<復讐劇><切札><乾酪の中の虫>……『それから』の叙述」がある。他,石井和夫・山崎正純氏の論考を収録している。価格は,1800円(税込)。
【入手方法】
「地方小出版流通センター扱い」と指定の上,書店に注文してください。定期講読も可能です。その場合は花書院内「敍説係」へ問い合わせてください(送料無料)。
【花書院】
〒810-0012 福岡市中央区白金2-9-2
TEL 092-526-0287
FAX 092-524-4411
現在は,18号まで刊行されていますが,17号までのバックナンバーの目次は,以下のアドレスで分ります。品切もあります。
http://www.bekkoame.or.jp/i/gf8533/josetuindex.htm#top
8月31日火曜日曇
歌手の槙原敬之の逮捕報道が昨日あった。恋愛する若者の心を繊細かつ豊かに表現する曲作りには定評がある。所属事務所の社長会見では,予定されていたコンサートの中止と彼の活動の無期限の停止=事実上の引退が述べられていた。
覚醒剤を使用したことについては,当然厳しい処罰が下されて然るべきであり,彼が負わなければいけない社会的制裁も仕方がないと思う。しかし,これは日本社会の犯罪者に対する姿勢について,疑義を呈したいところなのだが,「敗者復活」は許されないことなのだろうか。快楽殺人のようなものは例外としたいが,犯罪者が社会活動に復帰するなかで償いの姿勢を見せる機会を与えることも必要なことではないだろうか。これには,犯罪者にとってと我々にとって,という2重の意味がある。
確かに,槙原のような優れたアーチストが覚醒剤を使用していたことで,1部の若者が覚醒剤に関心を示すような逆教育効果の危険性もあることを思えば,決して彼の所持・使用は許されるものではない。しかし,その彼が,覚醒剤を使用するに至った経緯や更正の過程を社会的に表現していくことで得られる教育効果というものもあると思われるのだ。
犯罪を犯したら,直ぐに社会的に抹殺というのでは,犯罪の「意味」そのものから,人々の目を逸らすことになるように思う。健全な社会は,犯罪のない社会のことなのだろうが,犯罪者を人々の目から遠ざけ,見えなくしてしまうような隔離型社会は,果たして健全といえるのだろうか。「悪」と「善」が共存し,「悪」の意味を知悉した上で,主体的に「善」を選択できるような能力を備えた人間が,情報社会では必要なのではないかと思うのだ。
ともあれ,槙原敬之の処遇について,我々は考えてみるべきではないだろうか。その卓越した音楽的才能が将来生み出すであろう作品群とそれを享受できる我々自身の可能性のためにも。
一方,昨日の午後5時頃にゲリラ・コンサートを行った郷ひろみの場合は迷惑行為もいい所で,人気歌手の1人とはいえ販売戦略のために無届で5分間歌って渋谷の交通を麻痺させた愚行は許しがたいものがある。思い上がりもいいところだ。
8月26日木曜日曇
生協ブックセンターで,『中上健次選集7』(小学館文庫)とルドルフ・ヘス『アウシュヴィッツ収容所』(講談社学術文庫)を購入する。ホロコースト(ショアー)関係の本では,例えばフランクルの『夜と霧』(みすず書房)などが有名なのだが,所長を務め,チクロンBを使った大量虐殺方法の開発者・執行者の手記というのは,初めて読む。夢中になって,午後の予定に影響が出た。性善説や性悪説などが,微温的に思えてくる。
8月21日土曜日曇,雷雨あり
午後大学に出勤。14:00に昼食を食べに,「かがみ野」というトンカツの店に行く(スター・にしきのの義弟の店だそうだ)。実は,岡山でトンカツというと,トンカツにソースをかけキャベツを添えたものを意味する。初めてこれが出てきたときは,ショックだった。関西では,卵とじが基本である(山口もそうだった)。
もともとカツドンの発祥については,早稲田の学生がトンカツを直接ご飯の上にのっけて食べたことに始まると聞いている。それを踏襲しているのなら,このスタイルが正統なのだが,実は僕はソースの酸っぱいのが苦手なのである。以来,岡山で卵とじのカツドンを出してくれる店を探している次第である。文学部の先生に紹介されたこの店は,卵とじバージョンを出してくれるということだったので,僕は大変楽しみにしていた。待っている間TVを見ると,岡山理大附属が,7回裏7−1で負けている。
そこへ,「お待たせしました」と出てきたのは,……。それは,ソースで真茶色に染め上げられた悪夢のようなカツドンであった(悶絶)。あの黄白色と三つ葉の緑やたまねぎが絡んだ至福の光景ではまったくない,汚泥のような茶色と雑草のようなキャベツがひろがる荒野である。
僕のショックが伝染したのか,岡山理大の投手はその後も打ち込まれ,ようやく食べ終わる頃に,7回は終わりスコアの差は11−1に広がっていた。トンカツ自体はおいしいのに……ウウ。
万歩書店の津島店に行く。わりと新しい井上義夫(一橋大)『村上春樹と日本の「記憶」』(新潮社,1999.7.30)が,1000円で出ていたので購入する。生協で買わなくて良かった。柳宗悦『民藝四十年』の「琉球の富」(1939)を立読みしていて,霜多正次「虜囚の哭」(「文学界」,昭和36)に紹介されている内容とほぼ同じことに気づき,これも買う。2時間ほどねばって,17:00前に研究室に帰還。
8月20日金曜日晴
中国の懐かしい友人が「芳名帳」にメッセージをくれた。京都時代が思い出される。もう10年以上になるか。
マスカットユニオンの生協ブックセンターに本を見に行く。生協の入り口のTVに人だかりがしていて,高校野球の真っ最中である。対戦は,智弁和歌山と岡山理大附属であった。上の階からも,TV観戦しているらしい学生のどよめきが聞こえて来る。戦況は,9回裏1アウト理大の攻撃中であるが,4−3で理大が負けていた。しかしランナーが1・2塁にいるので,目が離せない状況である。「まあ,逆転は難しいのでは」と思って,本を買いに行き清算をしていたら,TVからサイレンが聞こえてきた。行ってみると智弁の選手が,並んでいたのだが,勝利者のホームベース上にいるのではなかった。なんと理大が逆転勝ちしてしまったのである。最低でも準優勝である。岡山の野球好き連中にはたまらない事態が起こってきたわけだ。
食堂で,桑原先生と会い,一緒に食事をとる。雑談をしていると,「広大の相原先生を知っているか」と聞かれるので,名前は存じ上げているというと,奥さんが広大の教育学部の院生をしているということだった。ドクターコースの院生で,日本語教育を学ばれているらしい。因みに相原先生は,教育学部日本語教育学科日本文化学講座の教官である(メールアドレスはお持ちでない)。世間は狭い。広大の教育学部といえば,山下さんがかつて居たところではないだろうか。いや,学校教育学部だったか。あー,ややこしい。ややこしいといえば,広大の教育学部は,日本語教育学科とは別に,教科教育学科の中に国語教育学専修がある。どう違うのか外部の者には良く分からない。教養部の解体の影響もあるのだろうか。
8月19日木曜日晴
10:00から楽しい会議。学生の姿はだいぶ減って,構内は静かなものである。研究も捗るといいたいところだが,御用事が多くてなかなか思うように行かない。休暇明けにメールボックスをのぞくと,紀伊國屋書店のBook
Web Proで「品切れ」と表示されていた,フーコーの本が,入荷されていた。品切れと知って別のルートで入手していた本である。2000円ほどの本であるが,クレームをつけるかどうか迷うところである。しかし,このようなケースが,実は前も1度あった。これを繰り返されてはたまったものではない。これは,運営システムの問題だろうから,やはりクレームをつけよう。
何度も書くようだが,インターネットでの書店利用には,まだまだ解決すべき問題が多いようである。
8月12日木曜日晴
書道集中講義の先生をお迎えするために,教務係として出勤。今日から帰省ラッシュのためか,交通量も多い気がする。
8:00過ぎ,偶然庶務係で先生とお会いする。講義教室や控え室にご案内する。国語教室主任の先生も見えられて,同じ広島出身ということで,話が盛り上がる。いつの間にか,原爆体験の話になって,講師の先生は祇園小学校(爆心地から4km)で被爆されたということであった。8月6日は小学校の登校日だったらしく,学童の被爆が多いのもそのためのようだ。当時国民学校2年生の先生は,暑いのでパンツ1枚で登校したということだったが(ホンマか?),照射の角度で偶々助かったらしい。校舎は爆風で傾いたそうだ。「黒い雨」も体験されたそうだが,あるおばさんが「アメリカ軍が油をまいているから」といって,雨にあたらないようにしてくれたので,運が良かったと言われた。それでも被爆者手帳はお持ちなのだそうだ。しかし61歳で,大変お元気である。週明けには中国に行って書道展の審査をするんだと言われる。
考えてみれば,広島の原爆体験の話を直接体験者から伺ったのは,初めてであった。
8月11日水曜日晴
正午のニュースで,人事院勧告が出て,国家公務員の冬の年末賞与が,0.3パーセントカットされて,年間5.25ヶ月分が4.95ヶ月分になることを知る。国家公務員の年間収入が前年を割り込むのは,戦後初めてだそうだが,僕は国家公務員2年目での遭遇である。不運である。新聞報道で,予備知識はあったが,いざ実際に勧告されるとガッカリする。この勧告が拒否されることはないだろうから,事実上の実施になるのだろう。年末の楽しみに水を注された感じだが,民間の厳しさを思えば,支給されるだけでもありがたいと思うべきなのだろう。が,しかし……やっぱりねぇ。
終日研究室で,読書や文書作成。県総合文化センターから借りてきた,『倶会一処』や『いのちの火影』を読む。昨日は,教務関係の雑用があったので,今日は研究に集中できて嬉しい。
8月6日金曜日曇り
夏の暑さにもいろいろあって,こういうことが言えるのは,兵庫(但馬)・京都(市)・山口(宇部)・岡山(市)と転々とした「流れ者」の特権である。生まれ育った兵庫の夏を標準とすると,京都はジワーッと暑く,山口はカラッと暑い。岡山がムワーッと暑くて,今までで最低である。そのムワーの最中に,シャツを着てネクタイを締め,上着を着なければならなくなった(普段はジーンズとTシャツ)。ネクタイを締めただけで,首筋に汗が噴出して暗然とする。
そんなこんなで午後,昨日のオープンキャンパスに続いて行われた,大学学部説明会の課程別説明会に出席する。学校教員希望の高校生たちを相手に,質問に答えるのだが,過去の採用実績への質問や,自分のしたい勉強の内容に合致するスタッフがいるのかどうかという踏み込んだ質問がでたり,昨年度教員採用の内訳について具体的に数字を求められて(→つまり入学者数から就職者数を推計して教員になることの困難さをこの場で確認しようとしたわけです),担当者(教官)が慌ててしまうなど,やはりこの不況下の進学ということもあるのか,相当シビアな質問が多かった。しかも殆どの質問者は女子である。「やっぱり,しっかりしているなあ」と思うのだった。
それにしてもあのようなお役所仕事のような(曖昧な)回答で,教育学部の魅力を感じてもらえたのだろうか。服装や雰囲気で灰色がかった50歳代のお偉方よりも3,40歳代の教官を並べて,フレッシュさ力強さをアピールするなど,もう少し高校生を意識したプレゼンも考えるべきだろう。
疲れたのか,説明中に机の上に突っ伏して寝ていたり,定時が来るとさっさと立ち上がって帰っていったり,キャンディーの包み紙を撒き散らして帰った高校生もいたので,このあたりはどっちもどっちかもしれないが。
8月2日月曜日晴れ
学生は昨日から夏休みに入った。実に羨ましい限りである。僕は,8:30に出勤して会議に提出する資料をプリントアウトし,ノートPCを携えて会議に出る。11:00過ぎに会議は終わる。研究室の外では,せみの声が喧(かまびす)しい。去年の今ごろは,吉備の山の中に行く頃である。暑くて大変だったけれど,夜の散歩中に小学生の集団迷子に出くわして取りすがられたことは,おかしかった。
昨日紀伊國屋書店クレド店で,高山文彦『火花 北条民雄の生涯』飛鳥新社を購入。「天才」なんていう文言には抵抗を感じるが,北条民雄の故郷(徳島県阿南市)の訪問記等は興味深い。文中に紹介されていた,ある研究者が墓の写真や実名を研究誌に公表し,遺族が墓標から名前を削りとってしまったエピソードには,と胸をつかれた。研究の名のもとに,プライバシーの侵害をしていたのである。プライバシーといえば,柳美里が「新潮45」上で,朝日新聞の社説と大江健三郎に反論を掲載している。こちらもなかなか先が長くなりそうな問題になってきた。出版差し止めの判決に対しては,現在柳美里・新潮社側が控訴している。