津島通信

SEPTEMBER '99
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◆CONTENTS◆


【きむたく日記】

(暇な時に更新しております。)

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「きむたく日記」

 

9月28日火曜日晴

     台風一過の後,朝晩随分過ごしやすくなった。昨日,宇部の先輩から電話を貰って台風の話題も出たのだが,宇部は1日停電していたようで,山口宇部空港の浸水の話も全くしらなかったということだった。僕は,あの空港を何度も利用していたので,浸水と聞いて大変驚いたものだ。とてもそんなことが起こるような場所ではないと,思い込んでいた自分の暢気さが怖い。
     自然の脅威ということをよく我々は口にするが,本当にその脅威を理解しているだろうか。トルコ・台湾の大地震は,自然・地球が我々の生活を一瞬で覆す可能性を秘め,我々の居住する場所が決して「安全」ではないことを教えてくれる。北海道羊蹄山で起きた登山事故も,登山ブームの中で起きたことであるが,山という場所では判断ミスが自分の生死を左右するような状況を生むことを教えてくれる。それは山が安定した人間の社会の延長ではなく,不安定で圧倒的な力を持つ場所であるからに他ならない。それを忘れて軽装で,登山したことが凍死につながったのである。自然への畏怖を失い,公園にでも出かけるような油断が登山客の死を招いたともいえるだろうか。
     我々に必要なのは,この人間の社会の一歩外には,油断の出来ない危険なモノがあるという自覚であり,それが突如として我々の社会に亀裂を走らせることもあるという認識である。危機意識を持って生きなければ,悪いときには死に捉えられることもあるのである。人間の生活は向上したが,活動範囲も広がった分,リスクを多く抱え込むことにもなった。なかなかに生き抜くことは難しいのである。

9月22日水曜日曇,相当蒸し暑い。

     10:30〜11:30 養護実習打ち合わせ・担当学生事前指導
     12:40〜14:00 同和教育研修(学生と共に)
     14:00〜   大学院研究科委員会
     14:30〜18:00 恐怖の教官会議

     あのー,夏季休暇中ですよね……といいたくなる1日。
     7年ぶりに学生をしたのだが,まあ講義中学生(3年生)の喋ること,喋ること。やかましくて前列に居たにもかかわらず,マイクの声も聞こえない時がある。「静かにしろ!」と怒鳴りつけたくもなるが,外部から見えた講師の先生に恥をかかしてもと思い(授業中の運営主体は彼である),我慢する。
     テキストを見て喋るだけでなく,必要なことを板書していく事はやはり必要だなぁ,と反面教師にもなっていただいた。

9月21日火曜日雨

     台湾の地震はえらい事であった。トルコに引き続き,なんという年回りだろう。例の予言は外れるべくして外れたが,こういうことが引き続くとなんだか予言の余波のような気がしないでもない。神戸の震災以来,地震が苦手になった僕には(得意な人は勿論居まいが),本当に地震関係のニュースはイヤでしようがない。職員懇話室にはトルコ地震被災者への募金箱があるが,2つめが並びそうだ。

     文芸評論家の尾崎秀樹さんが亡くなった。ご冥福を申し上げる。尾崎氏の尾崎秀美・ゾルゲ関係の本は,学生時代に愛読し,木下順二の「オットーと呼ばれた男」まで行ってしまった。爾来古本屋でも,ゾルゲ関係の本を見つけたら蒐集するようにしている。尾崎氏にはまた植民地関係でも勉強させられたし,大衆文学の研究でもそうだ。割と波長の合う評論家だったので,もう新作が読めないのは悲しい。70歳なんて,まだまだ若いのに。

     今日は学部の前期の成績票が交付される日だ。用事のある学生が研究室に来て,ふと帰り際に,「先生の成績は良かったから,嬉しかったです」と発言した。これが,悪かった時は一体僕はどういわれていたのだろうと,一瞬ゾッとして小心者になったことであった。
     成績票の交付日。それは,学生にとって審判の日であるが,教官にとっても受難の日の始まりなのだ。ええい,悪霊(達)退散!成仏してくれ!

9月17日金曜日曇り時々晴

     最近岡山がらみのニュース(不祥事ばかりなのだが)が多くないだろうか。気のせいか。
     一昨日の午前様以来,睡眠のリズムが狂ってしまった。4時頃まで寝付けないのである。今日は午前中から会議があるのに,寝れないので焦れまくった。結局4時間ほどしか眠れず,会議に出席。あくびをかみ殺しながら14:00過ぎまで戦う,眠気と。会議は,予定より早く終了したので,とても幸せだった。
     生協ブックセンターで,「国文学」の最新号を立ち読みし,戸井昌造『戦争案内』平凡社ライブラリーを購入。TUTAYAにビデオを返却しにいく。
     昨日借りた"Sweet Hereafter"は,人間関係が錯綜したまま,ストーリーが中途半端に終わってしまい,全然だめ。久々にビデオを観て,時間の無駄だったと頭に来た。
     DVD-RAM(読み書き可能)の外付けドライブが,生協価格で59,800円で出ていた。こんなに安くなっていたのかと驚く。PDあたりは駆逐されるわけである。来年あたり,もう1万円下がったところで購入しようかと思うのだが,果たしてそこまで下落するかな。

9月16日木曜日曇り時々晴

     論文の再校を郵便局に届けてから,TUTAYAに立ち寄り,ビデオを借りる。望月峯太郎の「ドラゴンヘッド」の最新刊8巻が出ているのを見つけて早速購入した。また登場人物の1人が死んでしまうのだが,誰なのかはヒ・ミ・ツ。

9月15日水曜日大雨のち晴

     寝ていて気がつかなかったが,警報が出ていたらしい。午後からはすっかり晴れて,夕方,僕は近所の池の周りを気持ちよくランニングしていた。
     ゴールデンリトリバーという流行の毛足の長い犬ッコロがいるが,こやつは犬ッコロの癖して結構でかい。チビガキの頃犬にかまれたことのある大の犬嫌いの僕にとっては,畜犬野郎はすべて「化け物」であるが,こいつは「化け物」という概念を通り越して「恐怖の大魔王」である。こやつが,前方で人間を連れて散歩しているなぁと思いながら,恐々追い越そうとした時に,突然僕の方を振り返ったのだった。その時,この悪魔は僕を見て,確かにニヤリとわらったようだった。そしてこの第六天魔は,あろうことか嬉しそうに僕にじゃれついてきやがったのである。「ヒエエエエ」
     2秒ほど気絶していた僕は,飼い主の謝罪の言葉に我に返った。そうして,トレパンにくっきり「鼻汁」が刻印されているのを発見したのだった。僕は,そのまま泣きながらイエに帰った。
     犬は大キライである。

9月14日火曜日曇り後雨

     看護婦さんたちと,合コン。目の保養をさせていただきました(?)。午前様。

9月11日土曜日曇り後雨

     今週は,自分の仕事以外にPCのメンテに走り回った週だった。僕のPCではないのだが,管理を任されているPCで,相次いで不調が生じたのである。起こるときには連続して起こるようだが,実はそれには共通の人物が関与していて,ソイツのせいではないかと思わないでもないのだ。。ただし,そ奴は直接手を下しているわけではないので,このあたりの表現が大変難しいところだ。その人のせいではないんだけれど,トラブルがなぜか生じやすいという人はいないだろうか。分かりやすくいえば「雨男・雨女」のようなものなのだが,心理学ではこれを確証バイアスのせいだという。つまり人間は,自分の判断に適う方に偏向した情報を選択する傾向が強いというのである。
     広大のY君から,日本近代文学会に入ったのに案内が来ないというメールを貰った。僕は昨日受け取ったばかりだったので,岡山は10日に着いたよと返信する。このような事は西宮の信時さんとの間で僕も経験がある。やはり向こうが1日早いのである。電子メールだとこういうことはなくて,Y君が疑心暗鬼にかられることもないと思う。学会事務局もそろそろ経費節減と連絡の手間を考えて,地球にやさしい方法を選択していただきたいものだ。

     先日池袋で起こった通り魔殺人傷害事件で,被疑者について「天声人語」が「異邦人」と評しているのを読んだ。動機の理解できない彼の行動を,カミュの『異邦人』の主人公に擬えたのだ。しかし,ご当地ということもあって岡山では出身地や家庭環境について詳細な報道があり,彼の思春期の家庭環境に大きな問題があるように僕には思えた(プライバシーに関わるのであまり書きたくない)。「天声人語」は「異邦人」という言葉を使うことによって,あたかも被疑者が我々とは異なる外部からやってきた理解できないものといいたいかのようだ。しかし,実は社会の内部から彼はやって来ているのである。理解できないもの,不可解なものを「異邦人」(異人)視したり,周縁に追いやってしまう発想は警戒を要するのである。

9月6日月曜日曇り後雨

     午前中,雑用を済ます。昨夜は蒸し暑くて,なんとなく睡眠不足なのである。生協ブックセンターから注文した本が入荷したと連絡があったので,受け取りに行く。ゼミ生のSさんにあった。明日から車の免許を取りにいくということだ。出たついでに,昼食とビデオを借りに車を走らせる。
     僕は歴史物の映画が好きなのだが,岡山で昨日ようやく公開された「エリザベス」を見に行ってきた。ヴァージン・クイーンだとか,黄金時代を築いたとか言われている女王さんらしい。治世の出来事や愛憎を絡めた作品かと思っていたが,一人の女性が君主としての自覚を得る過程までが描かれていたのである。こう書くと人間の成長譚とでも読まれそうだが,そうではなくて,愛憎を知る生き生きとした女性が,ラストは能面のような無感情(あるいは非情)の君主となるだけなのである。その意味では,女性の成長物語を転倒した物語となっているのだが,前半の美しさに比べて後半は……。とにかく話題作ということだからご自分の目でご確認いただきたい。因みに,僕が一番気に入っているのは,アンジュー公(フランス王の弟)である。あのキャラクターだけは,妙なリアリティがあってお見事,笑えたのであった。これで救われた。
     ところで,エリザベス女王は,世界で初めて腕時計をし,絹の靴を履き,水洗トイレ(1596年,ジョン・ハミルトン)を使った人物なのだそうだ。

     朝食を摂りながらワイドショーを見ていたら,インターネットに関する気になる報道があった。子供をいじめられた父親が,学校側の適切な対応(いじめる子供の登校禁止)を求めたにもかかわらず,そうしなかったということで,経緯や録音したやりとりをHP上で公開し,心労で学校長が辞職したというものである。これで思い出すのは,東芝サポート問題の一件である。東芝サポートの場合は,僕も音声を聞いたが,これはクレームが来ても仕方のない無残なサポートぶりを示していた。今度もサイトを探したが,見つけられなかった。
     事が起こると,●×△県警ではないが,みっともない嘘をついて取り繕おうとするのは,人間の悲しいところである。誰も,学校にしろ国家にしろ,完全に全体を掌握できるような管理体制をもつものでないことは,弁えてはいるだろうが,やはり建て前論では,そのあたりは出来て当然というところから議論が起こってしまう。今回の場合は学校側の認識の甘さと,父親側の子供の関わる怒りや恐怖のレベルが見事にすれ違ってしまったケースと考えられる。
     問題は,ここで父親側が抗議のために採用したHPという個人メディアが,圧倒的な大衆(4万人と聞いたが)に閲覧され,マスコミが取り上げることによって,一挙に大きな力を得てしまったことである。父親側は所期の目的を達する前に,事態は管理者の辞職というような方向へズレてしまっている。それとも,それを目的だったというのだろうか。
     東芝サポート問題と,このケースは,HPの持つ力を,十分我々に認識させてくれた。HPは,個人が企業や学校組織と対等に戦うための「武器」となり得るのである。しかし,それは同時に危険なことでもある。HP上での根拠や証拠のない安易な批判は,企業や団体,個人から痛烈なしっぺ返しを食う可能性もはらんでいるからである。また,それでなくても,部外からのイヤガラセや不要な攻撃に晒されることだってある(東芝のケースで,HP開設者は有名なクレーマーであるという1部週刊誌報道がされた)。HPは個人の,外部への発言の垣根を限りなく低くしてくれた。それは自分の意見を誰もが見る可能性があるということなのだが,別言すれば発信者は不特定多数の閲覧者に自分を晒すということでもあるのだ。しかも自分の意見への反応が,日常会話と違って直ぐには分からないのである。発言や記述の適不適を自覚しにくい状況下で,自分の意見を不特定多数の「他者」に発信するという不安定さ・危険さに,十二分に自覚的でなければいけないと僕は考える。HPを「武器」とするとき,それは相手を切り裂くと同時に,自分をも傷つけないではいないだろう。いじめ問題のHP公開が,今後どのような展開をしめすか,HP運営のあり方の試金石となるケースである。

9月2日木曜日曇り時々雨

     昨夜レンタルビデオで「プライベート・ライアン」(ライアン2等兵の救出,S・スピルバーグ監督,1998)を観た。戦場の描写に話題が集まっていたが,冒頭の30分に圧倒された。空をきる銃弾の音の迫力に,鳥肌が立つとともに,肉片と化して行く兵士たちの姿に吐き気を催してしまった。この反応は,生物的な恐怖感である。映画館で観なくて良かったと思った。
     冒頭とラストを飾る墓標の列とはためく星条旗のコントラストに,観衆はどんな意味を見出すのだろう。最初,ただの墓標と星条旗に過ぎなかったものが,ラストシーンでは,別の意味を持って表れて来る。疑問に思うのは,日本ではどうして,かつての戦争をこのような視点から国家ーー個人の関係として描けないのだろう。やはり,「あの人」の存在があるからなのだろうか。日本人は戦争を,災害の1つであるかのような個人を襲う災厄として捉え,国家の惹き起した暴力としては見ないような心性を育てているように思う。

     経口避妊薬の低用量ピルが,今日から販売される。3000円程度になるようだ。性行為の際,コンドームを使わなくてすむ分,性感染のリスクが高まる。乱交的な社会に向かっているのに,HIV感染などの危険性についてもっとアナウンスすべきだろうに。僕のような独身者には,実に怖い話である。
     神奈川の保育所職員(25)の変死事件は,厚底サンダルを履いていて転倒し頭を強く打ったことが原因ではないかという展開を見せている。巷だけではなく,大学でも学生(女)に履いている子が多いので,危ないなあと思っていたが,残念ながらこういう結果が出ることにもなった。ルーズ・ソックス,キャミソールファッションに続いて,なぜこんなものがと思わされる,厚底履物の流行ではある。
     午後,論文の校正作業。