まず圧倒されるのは 街路を埋めるバイク の量。信号は満足に 整備されず、かつ 必ずしも守られぬ 道々に、中央線も 構わず走るバイクの 群れと、警笛を乱打 しながらそれを掻き 分け先を急ぐ、まだ 絶対数の少ない乗用車達。伝統運搬機関であるシクロ(手押し車)は今や衰退の一途を辿っている。
客御用達で、市内の平均物価よりは可成り高いのだが、それでも日本の4〜5分の1、幾つかの 巨大な市場を訪れれば、更にその数分の1で服飾や装飾品が手に入ること請け合い、というのが 魅力なのだろう。カラオケは市民の必需品となり、昨今は足揉 マッサージが急速に増殖する(タイの様な伝統的なマッサ−ジの 慣習はない)など日本の影響も大きく、外貨獲得に寄与しつつ ある様だ。 一転して首都・ハノイには日本人は少ないが、仏進出後の新しい 街ホーチミンに対し、千年の歴史を持つハノイは観光スポット も少なくない。大乗仏教国のため他の東南アジア諸国の様な 派手さには欠けるが、長きに渡る中国の影響と湖の地形を旨く 利用した寺院は不思議な情景を醸し出している。 ホーチミンよりは幾分鄙びた 雰囲気だが、少々自転車量が 増えるとは言え、バイク天国 に変わりない。街中が商店街 の如しで、とくに旧王朝期に 街区毎に商売を集めた名残で スーツならスーツ、便器なら 便器、ペンキならペンキと 通りにより売り物が分かれて いるのは一寸社会主義的か。 都市部には大型ホテルの建設も相次ぎ、"活気に溢れる"という通り相場の形容詞のままだが、 一歩街路を入れば最貧が同居し、郊外は一面の田畑を牛が耕す光景が果てなく広がる。 サイゴン陥落から四半世紀を越え、社会主義国家であることが目認出来るのは首都に並ぶ スローガンの立看板とホーチミン主席の廟見学に並ぶ長蛇の列ぐらいかも知れない。 国民の9割が農業に従事するヴェトナム、工業化をはじめとするドイモイの行方は決して 安穏としてはいないが、日々街並みの変わりゆくこの国に、何れの日にか再び訪れてみたい。
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