鑑賞日:2008.01.21/公開日:2008.01.19
「スウィニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師(SWEENEY TODD THE DEMON BARBER OF FLEET STREET)」
(演)ジョニー・デップ、ヘレナ・ボナム・カーター、アラン・リックマン
皆さん、こんにちはー。
今日ご紹介するのは、ジョニー・デップ&ティム・バートンがまたまたタッグを組んで話題の「スウィニー・トッド」です。
本作で、ジョニー・デップはアカデミー前哨戦であるゴールデングローブ賞のコメディ部門で、
主演男優賞を初受賞しました(ちなみに、作品賞も本作)。しかも、後日アカデミー賞でもノミネートされたため、
余計に注目度が高まっている作品といえるでしょう。
このサイトを以前からご覧になっている方は既にご存知でしょうが、
私は昔から大のジョニー・デップファンであり、ティム・バートンファンです。
このコンビの映画とくれば、観にいかないわけがありません!←本当は、試写で観たかったんですが、当たりませんでした。(;_;)
ただ、ちょいと心配なのはミュージカル形式だということ。
こちらも何度も繰り返しになりますが、私はミュージカル嫌い。
基本的にミュージカル映画は観にいきません。
でも、ねぇ。やっぱりデップ&バートンだし……というわけで、観てまいりました。
ちなみに、「スウィニー・トッド」はミュージカル好きの方なら、絶対に知っている超有名な作品です。
ミュージカルを観ない私ですら、あまりにメジャーな作品なので内容を知っているくらい。(^^;
というのも、ハリウッド映画の中でちょこちょこ“スウィニー・トッドのミュージカル”が取り上げられていたりするから。
比較的最近の映画では、ベン・アフレック主演の「世界で一番パパが好き(2005年公開)」の中で、
主人公親子がスウィニー・トッドの劇を披露するというシーンがあります。
ただ、「スウィニー・トッド」は元々小説だったということはあまり知られていません。
スウィニー・トッドは19世紀のロンドンに実在した殺人鬼だと思っている方が案外多いのですが、
元はトーマス・プレストが雑誌に連載した「真珠の首飾り」というタイトルの小説です。
それが、「フリート・ストリートの悪魔の床屋(THE DEMON BARBAR OF FLEET STREET)」のサブタイトルで舞台化され、
評判になるうちに都市伝説化したというのが定説となっています。
実在した床屋を基に小説が書かれたという説もありますが、証拠はないようです。
その後はご存知の通り、スティーブン・ソンドハイム作詞・作曲のミュージカル(トニー賞を8部門も受賞)が大ヒット、
ロングランになっているわけです。本作は、こっちのミュージカルを基にした作品なんですね。
さて、前置きが長くなりましたが、「スウィニー・トッド」をご存知でない方に簡単なあらすじをご紹介しましょう。
舞台は19世紀のロンドン。フリート街で理髪店を営むベンジャミン・バーカー(ジョニー・デップ)は、
美しい妻と娘と幸せな日々を送っていた。
しかし、バーカーの妻の美しさに心を奪われた悪徳判事ターピン(アラン・リックマン)によって、
バーカー一家の幸せは脆くも崩れ去る。
無実の罪でベンジャミンが投獄されてしまったのだ。
15年後に脱獄に成功し、スウィニー・トッドと名を変えてフリート街に戻ってくるも、
大家でパイ店を営むミセス・ラベットに聞かされたのは、悪夢のような事実だった。
妻はターピンを拒んで服毒自殺を図り、娘はターピンの養女となって幽閉されているというのだ。
スウィニー・トッドとなったベンジャミンは、カミソリを手に復讐を誓う……。
ストーリーは知っているので、ミュージカルがバートン映画になるとどうなるのかな?というのが一番興味があったところなんですが、
正直ちょっとがっかりでした。
舞台となるロンドンの雰囲気は、すっごくティム・バートンっぽく(というか、スウィニー・トッドのダークな世界観が元々バートンに合っているのだと思う)、
「バートン作品っぽさが出てる、出てる」とぞくぞくし、頬のこけたメイクのデップを観て「バートン作品の中ではこうじゃなくっちゃね!」などと喜んでいたんですが、
その後の展開はおなじみのミュージカルっぽいというか、無難な仕上がりとういか。
ティム・バートン作品だからこそ、ジョニー・デップ主演だからこそ、敵役がアラン・リックマンだからこそ(アラン・リックマンもすごく好きな俳優なんです)、
すごーくすごーく期待していたんです。彼らの“新しいスウィニー・トッド”を。
でも、ミュージカルに忠実すぎるというか、期待していた“映画だからこそ表現できる”新しさがほとんど感じられなかったんですよね(血がドバーッとかは映画ならではなんだろうけど、それじゃ物足りない)。
だから、なぜわざわざ映画化する必要があったんだろう?と思ってしまいました。
ミュージカルを映画化した作品を鑑賞していてよくあるんですよね、こういう感覚。
ミュージカルの構成をぶち壊してゼロから再構成する必要はないんですが、映画ならではの新しさを付加できないと、
“ミュージカルを超えられなかった映画”になっちゃわけです。今回は、その落とし穴にハマっちゃったかなぁという気がなーんとなくしました。
まぁ、ミュージカル版が好きな人には安心して観られるんだと思うんですが、映画という手法を存分に活かし切れていなかったような気がしてなりません。
個人的には、ミュージカルの楽曲や歌はほんのちょこっとでよかったと思うのです(ミュージカルファンの方から異論が出るでしょうが)。
ほんのちょこっと出して、後はセリフをうまく使う。
ミュージカルの楽曲を多用してしまうと、ミュージカルを観た人はその舞台を思い出しちゃうと思うんですよねぇ。
すると、映画の印象が相対的に薄くなって、舞台の記憶が強化されはしないでしょうか?
映画が好きな私には、必要以上にミュージカルに媚びていたように見えてしまいました。
背景・メイク・衣装はものすごーくバートンっぽいんだけど(ここだけ取れば、もろバートン映画)、
ストーリーはソンドハイム作品って感じなので、全体的にバートン作品という感じがしないんです。
リメイク作品だから(本作はミュージカルの映画化だけど)、ちょーっとイヤな予感はしたんですが、イヤな予感が当たっちゃいました。(-_-;
ただ、「スウィニー・トッド」は、かつてベン・キングスレー主演でミュージカルとは別バージョンの映画が作られていますので、
さらに新しい切り口で、っていうこと自体が難しい注文なんですが。
というわけで、世界観だけバートンっぽいならそれだけで満足というバートンファンなら、
なんの違和感もなく見られるでしょう。あと、基になったミュージカルを知らない人も、(ホラー嫌いでなければ)違和感なく観られると思います。(^^;
あと、公開前から話題になっていたジョニー・デップの歌声ですが、私的には可もなく不可もなく、まぁ想像通りといったところでした。
ジョニー・デップはロックバンドやってたんですが、ギタリストだったので、歌は全くの初挑戦。最初から特別な期待をしてなかったからね。
でも、まぁ、ファンにしてみれば新しいことやってくれて、ありがとうって感じです。
ちなみに、何の予備知識もなく観ると、残虐シーンで引くかもしれません。(^^;
「スウィニー・トッド」は猟奇的な話ですので。
単に「ジョニー・デップ好きだから〜」という理由で観に行くと、猟奇的なシーンを見慣れてない人は、
その後ご飯食べられなくなるかもしれません。
私はこの手の映像は元々平気なタイプだし、ストーリーも知っていたから、
「映画を観終わった後でもミートパイ食べられるよ」という感じでしたが、
近くの席で座っていた若い女の子達が「どーしよう!今晩は何も食べられないよー」、「私なんか、後半手で顔を覆ってたから話がよく分からなかったよー」などと言ってました。(^^;
また、間違っても初デートで本作を選ばないようオススメします。ヘタすると人格を疑われます。
一緒に行くなら、話題作は一通り見る映画好きの友人か、ミュージカル好きの友人と行くことをオススメします。
ちょっと辛めのことばかり書きましたが、ティム・バートン作品だとか基になったミュージカルの出来の良さを勘案せず、
単純に本作だけの出来を評価するなら、(ホラーが苦手な人はダメだろうけれど)まとまったよい作品だと思います。
ミュージカル版がほどほどに好きな方なら、満足度は高いと思います。ハイ。
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