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June,9,2001

「スノウ・クラッシュ」
著者:
ニール・スティーブンスン
出版社:
早川書房
分類:
SF,文庫

まだ読んでいないのなら、新世紀失格。


ハードカバー持っていますが、文庫も購入。

カバーが実に良いです。鶴巻和哉のイラストの多少控えめなスタイルが、カラーに調和しています。腰巻きには、それが隠す部分のイラストの柄が入っており、よくデザインされていることが伺えます。帯の文句もよし。表紙のほうに余計なタイポが少々あるくらいで、非常にレベルの高いカバーです。

内容のほうは、前に取り上げましたし、読んだ人には説明不用だし、読んでない人には、読め、としか言えません。この作品の価値はそのスタイルなのですから。


オールド・サイエンス・フィクションでなく、サイバーパンクでもなく。

このスタイルの模倣者が居なかったのは、シーンの疲弊もあったでしょうし、独自性のためでもあったでしょうが、本当の理由は、コアSFにハッカー精神が欠けていたからでしょう。

例えば、SF系日記と、技術を持つものたちの新しいコミュニティ、日記システム系のどちらが面白いかと訊かれたら、私は日記システム系だと答えます。

ます、見栄えが違います。システムが違います。ギャルゲーの話題とソースコードが混在し、相互言及のシステムを持ち、造語が恐ろしい勢いで生まれ、消費されています。

ハッカーこそが、今このオタシーンの真の上位階級です。彼等が世界を創り、広げ、支配しているのです。

テクノロジーと言う名の人類知性の先鋭を乗りこなしたければ、遊びたければ、ハッカーになるべきです。ハックすべきです。なに、ハックするのにコンピュータは必ずしも必要ではありません。

ここにSFハックの好例があります。


SFはハックであるべきです。

自然言語でソースコードを書けばいいのです。

「ふわふわの泉」
著者:
野尻抱介
出版社:
エンターブレイン
分類:
SF,文庫

「楽園の泉」は、私の人生を決定的に変えた1冊でした。

人生を賭けるに値する対象。壮大さと美しさ。エピローグにはアイロニーと、シニカルな美学。技術者になるということがどういうことか、この時はっきりと判ったのです。

何か、ものを作る。ものを残す。名は残らなくても。この作品を彩る穏やかな皮肉は、ウォルター・ミラーの「黙示録3174年」と共に、私のテクノロジーに対する態度を、無責任と言うスタンスを決定しました。


…あからさまな真っ向勝負、マイフェイバリットへの挑戦だとみなします。当然、点はキツくなります。

まず、主人公が眼鏡っ娘というのは私的には評価大ですが、キャラクターの魅力がいまいちです。キャラ立てとか萌えとか、そういう話ではなく、不足しているのは多分、人格と法人格の混同が許されるなら、”ふわふわのメーカー”としての主人公の、コーポレートアイデンティテイです。

理化学/自然科学趣味は好ましいものですが、今回はいつもに増して密度が高く、恐らく知識の無い読者が、これを過剰なメカフェチと区別を付けるのは困難でしょう。

メインアイディアは非常に高く評価できます。軌道エレベータの三万六千キロの無欠陥な構造というのは、今日の品質管理の視点から見て、あまりに非常識的ですが、軌道カタパルトは現実的な工学の延長線上に、一見非現実的な姿を構築します。

ちなみに私自身は、テザーの可能性をもちっと追及したいと思っています。例えば、ミールの廃棄時に思いついたのですが、次世代の宇宙ステーション建造時には、テザーが有効に使えます。新しいステーションはISSと連結して建造し、作業の利便を図ります。完成したら新ステーションとISSをテザーでつなぎます。うまくいけば新ステーションの高度を効率的に上げることができますし、ISSを濃密な大気にピンポイントで落として、安全に廃棄することができるでしょう。


物語はわりと平板で、困難を解決するという要素はありません。全体が”ふわふわ”というのは言い得て妙ですが、文体が生真面目なのであまり馴染んでいません。

設定を実感するための比喩や実験、シミュレーションの要素があれば、と感じました。確かに絵ヅラで印象が沸いてこないのです。

”霧子”との会話はあまりにクラークの元ネタに近く、”錯覚”という言葉の定義抜きなので、どのレベルで錯覚なのだろうか、と考えてしまいました。認識とは何ぞや、なんて方向にいくのかと…


お薦めできるかは、貴方のハード度次第です。ふわふわというアイディアは弄り甲斐があります。あなたが充分にハードなら…

「ソフトマシーン」
著者:
ウィリアム・バロウズ
出版社:
ペヨトル工房
分類:
SF,単行本

バラードからコツコツと…と思っていたのですが、つまんなくなったので、バロウズをば。

下卑た、乾いた、湿った単語の連鎖。連想のみを強要していく文体が、読み手の構文解析器に過剰なストレスを与えていく。印象より強力、描写より過剰。

カットアップという技法が、これほどまでに効果的であるという事に、改めて驚かされます。

作品としては、どう評しても”やりすぎ”なのですが、技法とその使い方は完璧です。物語は断片の中に、確率的ではあるが確かに存在していて、卑語猥語の雨アラレの中に、実はタイトな核があることには驚かされます。

最も、どういう物語であるかはよく判らないのですが。

翻訳は見事です。山形浩生マンセー。

「森の生活」
著者:
ヘンリー・D・ソロー
出版社:
宝島社
分類:
エッセイ,文庫

28歳の頃、ローカル新聞のレポーターとして、採用率の低い散文を書いていたソローは、市役所や裁判所の適当な閑職に斡旋してもらえる当てなど無いことを悟ると、煩わしい人付き合いの無い湖畔の森の中で暮らし始めた。

人々は、日々の糧を得る為に、外面を飾るために精神の自由を捨てている。したり顔で経験を説く教師も老人からも、得るものが無いことを悟ったソローは、森の中に建てた家で、虚飾を排した生活を始めた。畑を耕し、読書と思索の日々を送るのだ…


元祖引き篭もりの、気がめいる駄文です。

150年前の同世代も、現代人と同じように愚かだと知ることは、ある意味では慰めです。もしソローが今生きていたなら、都会のアパートで近所付き合いの無い1人暮しをして、コンビニで週3日のバイト、空いた時間でクリエイティブになろうとしたでしょう。無料サーバにウェブページを作り、本人は気の効いたつもりの日記を付けては、カウンターの上がり具合に複雑な気持ちを抱くのでしょう。

ある意味、彼はポストモダン人だったと言えるでしょう。とにかく内容の痛さときたら、今時の厨房などメじゃありません。全然消化していない半端知識を元に、全知ぶって社会、世間をめった斬りにしようとしています。気持ちはわかりますが、痛いの何の。

しかし、後半、自然の描写が多くなり、その自然の描写もひねたものから、くっきりと細部を観察したものへと変わっていくのをみるのは、喜ばしいものです。

人間には、多分、必要なんです。時として社会に背を向け、引き篭もり、静かな生活を送ることが。

「リナックスの革命 -ハッカー倫理とネット社会の精神
著者:
ペッカ・ヒネマン
出版社:
河出書房新社
分類:
趣味,ハードカバー

この邦題付けた奴、火炙りにすべし。


ハッカー倫理と聞いて、何を連想しましたか?

違法コピーの肯定? ひねくれた自由追求? 無邪気なソフトウェア共産主義?

本書ではハッカー倫理というものを、新たなテクノロジー群の生んだ、必然的で包括的な倫理として捉えています。

ネットワークが社会に浸透していくにつれ、労働を美徳とし、金銭的価値の為にスケジュールと人生を最適化し、上位者の命令を絶対とした旧来の倫理、価値観に対し、仕事と趣味の等しい、スケジュールより内容を重視し、創造性を価値観の最上位に置く倫理が台頭してくるだろうと予測しています。

確かにその価値観は、大いに肯定できるものです。私は実際にその価値観を生きています。従来と大きく違う倫理に生きていると言われても、実感は全くありませんが。

でも、もし貴方が、面倒な、繰り返しの多い作業に当たったとき、「ラクをしよう」と考えるなら、あなたは恐らくハッカー倫理の持ち主です。逆に、もし貴方がプログラマーであるにも関わらず、スクリプト書いて一括処理するより手作業でちまちまやろうと考えるなら、貴方はプログラマーには向いていません。辞めて、もっとアタマを使わない職種にでも就くべきです。


情報の自由は、この新たな倫理観を支えるテクノロジーの生命線です。Lz法とハッシュの組み合わせのような、誰にでも考え付くような代物で特許を主張するメーカーや、ソースを公開しない”フリーソフト”をばらまいた後で、次バージョンは高価な新しいOSでしか動かないと告げるメーカー、ただ単にネットワークへの恐怖から盗聴と監視を法制化しようとする国家からテクノロジー基盤を守るための、必然的な動きだと考えると理解しやすいでしょう。

但し、単純なピーコには、様々な意見があります。私の意見は、価値のあるものには対価を支払うべきだが、必ずしも金銭である必要はない、というものです。

私は、市場の価値観付け、価格体系がまったく気に入りません。「ジオブリーダーズ」の単行本と、「ラブひな」の単行本が等価であると言う事が、内心腹立たしいのです。私はジオブリにもっと対価を払いたいから、ファンサイトをやっているのです。

マーケットに従うのは、自分の価値観の否定です。私は、良い物には究極的には必ず、ユーザーが感じただけの評価が与えられる、と信じています。信仰なのかもしれません。しかし、これは私の、もう一つの倫理です。


内容には、非常に面白い部分が多く、刺激的です。健全な批判的視点を持った人にしかお薦めしません。中身は言うほど正しいとは思えないし。しかし、考えるネタはどっさり詰まっています。

ま、ラストの訳者あとがきを読むだけでも良いです。情熱的な本文の面白さはありませんが。

「ギークス -ビル・ゲイツの子供たち
著者:
ジョン・カッツ
出版社:
飛鳥新社
分類:
趣味,ハードカバー

この副題付けた奴、百叩きの刑に処すべし。


この本の内容に共感を寄せてくれたであろう人種に、表紙を見た瞬間に猛烈な嘔吐感を催させるようなことをして、一体何が楽しいのでしょうか。


田舎で疎外されていた、高校を出てすぐの二人のコンピュータオタク”ギーク”が、より良い生き方を求めて行動する、そんなノンフィクションです。ゲイツなんて欠片も出てきません。

アメリカの日本とでは随分と背景は異なりますが、オタクなら誰でも共感できるでしょう。君が代と日の丸、道徳しかアタマにない”教育者”どもに日本の理科教育は滅ぼされたので、日本の技術系オタは希少種です。代わりにイラスト等の萌え方面の技術レベルは凄まじいものがありますが…

ただ、あまりにも素直に共感をあらわにしているのには、正直なところ、ついていけません。フィクションですが、「マイクロサーフス」ダグラス・クープランド を読んだほうが包括的な理解を得られると思います。

私はカミングアウト済みのオタクですし、考え方はハッカーのそれですが、己の技量については時として絶望的に感じることもあります。疎外感はかつてありましたが、どうにか乗り越えたみたいです。そして私は多分、旅の途上にいます。

流離う運命を感じている人は、読みましょう。

「コンパイラ その技法と原理 I II」
著者:
A.V.エイホ&R.セシィ
出版社:
サイエンス社
分類:
コンピュータ,専門書

いわゆるドラゴン本、コンパイラ作りの教科書と呼ばれている本です。筑波の古本屋でゲット。元の持ち主が施した、割と見当違いの赤線引きが目障りでしたが、読破。

…古い。古いっス。しかしまぁ、古典というものはそういうものでしょう。

流し読みなんで、細部はアタマに入っていませんが、まぁ、必要なときにはまた読みなおします。

「数理科学 2001年6月号」
出版社:
サイエンス社
分類:
科学,雑誌

特集は「量子情報と量子コンピュータ」

割と判りやすく、全て通して、現状を概観できる内容でした。文句無しに面白いです。

量子通信、量子暗号、そして量子コンピュータ。量子状態とは必ずしも微小領域の話であるとは限りません。有名な猫を突っ込んだ箱のような代物でも、条件さえ満たせば、波動関数記述の領域なのです。

量子通信、つまり超光速通信は、確実に、受信側に有意な偏りを与えることに成功しているようです。

量子暗号は、簡単に言えば、傍受されると波動関数が収束するんで、傍受を検知できるという理屈です。ミソは、いわゆる秘密鍵の伝送に量子暗号化を適用するというトコロです。つまり、傍受されなかった秘密鍵は、安全に使用可能だということ。

量子コンピュータは、自分の理解した印象では、つまり素子に複数の入力を与えて複数の状態を与え、収束によって一気に答えを出すような仕組み。量子コンピュータは普通の核磁気共鳴装置と、素子となる溶液で作れることが判ったことで、様々な追試と研究が盛んになっています。量子コンピュータの情報単位はqubit、現在、フルオロカーボン系の分子による5qubitマシンが現実的な動作をするようです。

画期的なのは、量子コンピュータ用の因数分解のアルゴリズムが発見されたことで、これによって近代的な暗号の基礎にあった、因数分解の難しさに依存した部分が大きなダメージを受けることになるでしょう。幸いにもまだ、実装を果たした量子コンピュータは無いようですが。

量子コンピュータはこれから、大きなqubitを持ち、量子通信そのものを入力、いや、基本演算単位として取り込んで、量子誤り訂正を備えた、実用的なものになるでしょう。しかし燃えますね。量子アルゴリズム! 量子情報理論!

非常に刺激的な話です。多分、今この時期を逃したら、この分野はあっという間に先鋭化して素人には訳判らなくなると思います。今読むことに価値の有る内容です。


ただ、連載の脳についての記事は、比較して非常に”へっぽこ”に感じました。

そいや、以前理研に”脳型コンピュータ”を見にいこうと、見学に行ったことがありますが、その帰りの時のような気分ですね。中身が無いし、”…もしかしてオレ、勝てるんじゃないか”というようなアウトプットしか無いし。

「メカトロニクス時代の機械工学」
著者:
小野京右
出版社:
培風館
分類:
技術,専門書

衛星の姿勢シミュレータを作ってみよう、という訳になって、「宇宙工学入門」「Cによるグラフィック技法」と併せて、勉強開始です。

非常に良い本だと思います。確かに可動部の自由度の増した、現代的なハードウェアの設計と制御には、座標変換、ベクトルと行列式、テンソルと運動方程式の知識は必須でしょう。モーターとフィードバック、系の固有振動とFFTもまた同様。

3冊平行して読むと、アタマは混乱しますが、視点が広がっていい塩梅です。なんというか、「3冊とも同じ事を言っている」と納得できると、随分と安心できます。

内容が濃い分、記述は幾分駆け足ですので、流し読みはできませんし、他の本との併読をお薦めします。また、3Dコンピュータグラフィックの勉強の足しにもお薦めです。

…クォータニオンの記述は流石にありませんが。

「なっとくする行列・ベクトル」
著者:
川久保勝夫
出版社:
講談社
分類:
技術,専門書

さて、本格的に勉強を始めて、すぐに判ったことは、「オイラ、行列についてほとんど何も知らないっス」という事でした。

高専の教科書を引っ張り出して、思い出しました。そこはほとんど授業で割愛されたのです。ひたすら微積とかばかりだったからなぁ…それに授業、結構サボったし。微妙に覚えていたのがクラーメルとサラス。

学生の皆さん! 数学はひたすら勉強しましょう。社会に出て、一番役に立つ学問は数学です。つーか、数学出来ない奴はバカです。

…私はバカです。痛感します。もっと数学勉強しとくんでした。無意味な国語や歴史の授業をサボるべきだったのです。


この本の内容については、丁寧で良い本だと思います。但し応用例が少ないため、現実的な応用の為には、ちょっとアタマをひねる必要があります。手法としての側面の強い行列に対して、手法の適用の仕方について、ある程度説明があると嬉しかったです。

行列式を必要とした時、頼って良い本だと思います。

「なっとくする解析力学」
著者:
都筑卓司
出版社:
講談社
分類:
技術,専門書

これも、高専の工業力学では力不足を感じたので、近所の本屋で買いました。

いわゆる力学シミュレーションをやるのですが、ネットで見つけた実装の殆どがゲーム用で、衝突シミュレーションばかり、それも精度の低いものばかりで、あまり参考になりませんでした。

頼りの野田さんのコードはというと、コメント皆無、クラス名もメンバ名も手掛かりにならない程短いものばかり。読んでると頭を掻き毟ることが多くなります。

単純な運動方程式をちゃんと解いていけばオッケーなはず、そう思うのですが…


こちらの本はわりと散漫な印象をうけました。脱線が多く、集中力を削ぎます。また、細部にこだわって、流れが判りづらくなっています。ただ、実例を多く挙げているので、そこは評価できました。

ちゃんとした力学シミュレーションの為の力学本というのが、今後必要になると思います。CGムービーの中でキャラクターが物理法則を無視した動きをするたびに、カチンときますが、製作者は、液体や髪の毛の動き、歩き方に違和感を感じないのでしょうか。

これから力学を勉強したいという人には恐らく、ここのサイトの推薦図書などが参考になるでしょう。

「超複素数入門」
著者:
I.L.Kantor & A.S.Solodovnikov
出版社:
森北出版
分類:
技術,専門書

問題のクォータニオンについて書かれている本を探して、ようやく見つけました。

クォータニオンは、A + Bi + Cj + Dk ただし

ii = -1, jj = -1, kk = -1,

ij = k, ji = -k,

jk = i,kj = -i,

ki = j, ik = -i

となるような数です。複素数と比べると、要素が増えていますし、掛け算の順序が違うと答えが違うという、やっかいな性質も持っています。が、ベクトルの回転という、いまどきの3DCGやロボットなどで多用される計算が、このクォータニオンを用いることで、相当にラクになるのです。

クォータニオンについての記述は、内容の10分の1程ですが、肝心のベクトル代数の記述もありました。もっと詳しい本があると良いのですが。


…難しいです。しかし、数学に関する考え方が、幾分変わったかもしれません。

例えばお金に関する考え方。お金は四則演算可能で、実数の持つ性質の大半を持っています。もしかすると実数は、お金=人間社会の共通価値観の一次写像を表すために生まれたのかも知れません。実数の性質を自然だと感じるのは、ヒトの価値観を反映しているからなのかも。

ただ、お金は確率論的に言って、時間に関して非対称な振る舞いをします。時間に関する係数は利子とか利息とか言って、その時々の”社会の価値”に対して敏感に反応します。

時間係数の存在には、これはヒトの価値観をお金に写像したときに失われたものによるのかもしれませんし、もっと高度な原理がかかわっているのかも知れません。

大体、ヒトの価値観を表すのに、実数への一次写像で本当に充分なのでしょうか。複素数で記述してみれば、いや、ベクトルのほうが実感として自然ですよね?

価値観から価値観への変換に一次元実数を使わない、という考え方は極端かもしれませんが、入出力は一次元実数でも構わないから、処理は違う数体系で行なうと、ベクトルに対するクオータニオンのように、便利になるかもしれません。

「宇宙の法則 世界の基本」
著者:
太田虎一郎
出版社:
コアマガジン
分類:
漫画,単行本

まだ続いてるのか。いやファンなのですが。

どの位ファンかというと、「あずまんが大王」より上、って辺りの位付けです。

カーケシグランプリ、うさぎ戦車、科学部の千葉ちゃんとエコロジーロボ、宇宙海兵隊のギブソン中尉、東京に怯える小田山姉妹。あぁ、ドキドキ対決は確かにドキドキです。

ギャグの滑らせ方が、実にツルツルと素晴らしいです。どういう訳か萌えるし。ドキドキ対決に勝ち残った者だけが、萌えを語る資格を得るのです。

掲載誌がアレだったのでメジャーにはなれないのでしょうが、オススメ。

「永遠のなかまはずれの国」
著者:
永野のりこ
出版社:
美術出版社
分類:
漫画,単行本

こりゃ、どう評したらいいものか。

大まかに言って、「コミッカーズ」誌に書いていた、すっげー読みにくかった2Pほどの連載漫画ともコラムともつかない、もよもよとしたもの、それと過去作品の再録と、ページ稼ぎが少々。

ガロに載った読みきり「ドクターはかせとアイランド島」も収録。その悲しさと蛍火のような救いは、「デス博士の島その他の物語」を思わせ(…)ますが、話が実によくありそうな話なもんで、ずっと胸に迫ります。ええ話や。

懐かしの「急性スクランブル・ヘッド」も再録。私は当然キャプテン版持ってましたから、はい、昔はハマりました。Dr,クランクの科学力、天然記念物合戦。ギャクを滑らせておいてから、呆れている相手の肩を叩きながら「元気を出せよ」やったり、「きっとこの本がインチキなんだっ」と脈絡も無く叫んだり。

やっぱ初期のナガノの破綻ぶりは容赦無くていいなぁ。初収録の「やさしいホーム・シミュレーション」もばっちりぶっ壊れてます。無軌道で無茶苦茶な方向へと話がさ迷って、うわぁ破綻したオチ。

…しかしやっぱ、パーコミは”なかったこと”になっているのでしょうか。「パーフェクトコミッククリニック」精神病院形式の漫画教室。実は私のアレのコンセプトは、ばっちりパーコミのパクリです。

多分、最終的には再録されるでしょうね。こいつよりもっと変な本に。

お薦めはしません。魂のナガノ度が高いヒトは、オートマチックに買うでしょうし。

「コミッックマスター #26,28,30,32,34,36,38,40,42,44,46,48,50」
出版社:
ホビージャパン
分類:
漫画,単行本

かつてホビージャパンが出していた、雑誌体裁の漫画アンソロジーです。

なんでこんな中途半端な、飛び飛びの番号なのかというと、そう、あの作品の為です。

連載予告から最終話まで、入手しました。歯抜けにしちまった古本屋さん、ゴメンよぉ。だって、単行本は呆れるくらいレアな、入手不可能な代物だし。

その作品の名は「BIBLIOTHEQUE LIVE」

佐藤明機による、「楽園通信社綺談」と同じ作品世界を舞台に綴られる、不思議な図書館と住人達の、奇妙な物語。

夕方の澄みきった高い空、軒を寄せる木造建築と橋脚の列。バルブとレンズ、真鍮のレヴァ。月光に照らされた無人の回廊。奇妙な、どこかイヤげな生き物たち。放浪天文台。毛糸のぱんつ。氏族船。うなぎ人魚姫。あめ玉。赤子。めそ。こうもり。家政婦人ゴーホーム。ひー。

傑作です。

ああ図書館人生。「ココロ図書館」?「R.O.D.」? 比較になりません。

…これが噂の反物質砲か。とにかく、幸せです。


エピソード一つ一つが、非常に印象的なのですが、#34,#42,#48の読後感などはまさに絶品、しかし全体としてナイスけったいな話なのです。無人の回廊には、ゲロを吐く人物とその背中をさする姿を模した、けったいなガーゴイルがあり、正月から干されたままだった毛糸のぱんつはこうもりのお気に入りだったり、まるごと寝室の惑星があったり。

ちなみに、反物質砲のルビは《たんものしちほう》です。「質流れした絹や木綿をγ線レーザーに変換する因果な代物」だそうで…

「ヤングキングアワーズ 2001年7月号」
出版社:
少年画報社
分類:
漫画,雑誌

懺悔などあろうが無かろうが、恨みは消えない。砂漠の贖いの旅、罪人の前に赦しなど無く、断罪すらも許されず、十字架を背負い流離うことが定めなのか。

今月の「TRIGUN MAXIMUM」多少あざとさは感じましたが、素晴らしいっス。ミリイの視点の優しさが救いです。

「HELLSING」は秋に地上波アニメ化とのことで、喜びよりも心配のほうが先に、という人も多いでしょう。「エクセル」はへっぽこ実験アニメになっちゃったし。とにかく色々心配です。ハルコンネンの精とか。

しかし、たとえ真っ黒い偽Weiβと成り果てたとしても、平野センセ喜んでしまいそう。

…そんなバカな。

最近めきめきと人気上昇中な「朝霧の巫女」、偽おかーさんの斬りかかる掛け声とかナイスですが、赤子がなんとも佐藤明機テイストというか、ねぎでぴしぴし、というのがいい感じ。


さて、今月の「GEOBREEDERS」は三重県旅情編。

他人の金で温泉でしっぽりぐんにょりな梅崎と姫萩。残りの面子は安上がりにラブホ、女性四人に男性一人、未成年一匹と、年齢不詳のほうは拉致されたかのよう。

高見ちゃん、ええのぉ。高見ちゃんの素朴な感想と、田波くんの穿った返事が良い感じで漫才になってます。

温泉コンビの方は、梅崎の過去で盛り上がります。

物憂い表情の少女の視線が、手負いの拳銃使いのそれと交差する。

「お前ェ名前は」

「真紀。梅崎真紀」

…このくだり、どこまで本当なんだろう。

竜の”ルガー”のハンマーの構造、どうなってんだろ。

来月は、三重県の珍妙な拳銃使いたちと温泉アクション!らしいのですが…

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