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May,5,2004

「地球間ハイウェイ」
著者:
ロバート・リード
出版社:
早川書房
分類:
SF,文庫

平行世界のそれぞれの地球をひとすじに貫く通路”輝き”を、人類のさまざまな世界のメンバーで構成された”巡りびと”は進んでいく。次の平行世界へ、そして輝きの果てへ。

読みづらいって程破綻した話でもなく、初読で語り手の立ち位置が、それぞれちょっとわかりづらかったのを除けば、それなりに面白く読めました。

ただ、雄大極まりない設定と様々な世界の豊かな描写は、中盤からすっかり損なわれ縮退し、なんというか、”やっぱりヤンキーの考えそうなことだよな”って辺りに着地しているのがなんとも残念です。

「鋼鉄都市」
著者:
アイザック・アシモフ
出版社:
早川書房
分類:
SF,文庫

こいつも読んでみました。

時は遠未来。地球は膨れ上がる人口を効率的に収容するために、効率化された少数の大規模都市を建設し、そこに全人口をすべて収容していた。都市は果てしなく巨大で、その外には荒野しかなく、人々は都市から出ることなくその生を全うしていた。

勿論、地球から脱出した人類もいた。かれら”宇宙人”は不潔な地球人を見下し、地球人との付き合いも限られた居留地に限られていた。

そしてそこで、殺人がおこなわれた。

ロボットでミステリな、有名な作品です。ロボットが相棒に付くという古典パターンの始祖とされています。

ミステリとしては、アレです。物語の必然というものを考えると、しょっぱなで犯人はモロバレです。登場したとき”コイツが犯人!”ってテロップが見えた気がしました。

展開、描写は悪くないです。時々、靴屋の暴動とかで、この作品の古さを思い知らされる訳ですが。あと原発に簡単に近づけるのに感銘を受けてしまいました。

相棒のロボットを認めていく、というのが物語のコアなのですが、和製の類似品を見慣れた目にはあまり感銘を受けるものでは無いと思います。自分は逆に、この作品の主人公の、抑制というか理知的な、微妙な認識が興味深かったです。つまり、人間とは同一視していません、


よく考えてみればすぐわかることですが、ロボットが職場に導入されても、給料や食料といったリソースを直接奪う訳ではありません。確かに職場は奪うかも知れませんが、人間は残った仕事をシェアすりゃ良いのでは、等とも思うわけです。ロボットが給料貰う訳で無し。人間を養うことを最優先とする都市設計にしては、リソース配分が適当なんじゃないか、と思います。

さて、人間とロボットは奪い合うリソースが違うわけです。せいぜい電力、場所、容量、帯域、生産能力でしょうか。水や食料、給料や配偶相手を奪い合ったりはしません。従って、人間とロボットの間の問題も、問題解決も全く違うものとなります。相手が人間の顔をしていても、政治的意味を持つ社会的行動の多くが不必要となります。

例えば、ロボットは固定階層型の管理社会構造を必要とするでしょうか。ネットワークで接続したロボットの運用状態を管理するのは、例えそれが数百体であっても一人で良いと思います。

とすると、人間の管理システム内での序列の中にロボットは居るようになるか、というと違うわけです。だから、ロボットにとって人間社会での序列確認は意味を持ちません。ロボットに礼儀正しく振舞わせる事はできますが、本来の意味は失われているのです。

例えば、ロボットに肉体をじろじろと眺められるのは問題でしょうか。相手に性的衝動は存在しないのです。勿論、視覚映像を中継されて、他の人間に配信とかされたら問題ですが。つまり、ロボットに要求される礼儀は、人間とは違ってきます。サーバに要求される礼儀と同じ、個人情報の保護は確実に。

ロボット、つまりプログラムが終了することなくループし続ける自律機械と、人間と社会に関する考察は、本当のところぜーんぜん為されていないのではないでしょうか。

「神狩り」
著者:
山田正紀
出版社:
角川春樹事務所
分類:
SF,文庫

これまで読んでいないものをリストアップして計画的に攻略する、その一環です。

機械翻訳の権威である主人公は”ありえない言語”に出会う。古墳の壁画に刻まれていたそれは、文字のように見えたが、文字だとしたらその論理構造は異常なものだった。

人間が扱うには無理のある言語。それは上位の論理基底に基づく存在を、”神”の存在を暗示していた。そして、神の介入も。


物語は読みやすく分量も多くなく、楽しく読めました。ただ、突っ込みどころが有りすぎて、なんだか……もう。

まず、物語の核である、”2つの論理記号と13重の関係代名詞を使用した古代文字”というのが、まずなんというか。

論理演算子なんて、最悪NANDだけで充分じゃん、と思うし、13重の関係代名詞があり得ないという根拠に、人間は7個の物事くらいしか短期記憶のスタックに積めない、というよく聞く俗説を挙げていますが。まぁ構文木追うのに再帰使うとスタックに積める個数が問題になる、そういう筈ですが、別に再帰使わなくてもパースできなかったっけ、等とも思う訳です。チョムスキー読むだけでも、この辺りずっとマシになったのではないかと思います。

きっとアレですね、人間より論理レベルの低い存在は逆ポーランド記法を使ってたりするんです。きっと文脈自由文法なんです。……あ、ちと羨ましいかも。

物語中で、再帰について説明している個所がありましたが、最大限に好意的に解釈すれば間違った記述では無かったと思います。ただ文脈的にちぐはぐです。前述の短期記憶の下りあたりは再帰の説明をねじ込むのに最適な場所だったと思いますが、無かった以上やっぱり作者は再帰、分かっていないと思います。

キャラクターは客観性と背景描写に乏しい中で、朗々と思い込みを披露し、それで物語を駆動しています。

大体、なんで”神”なのかも判りません。うやむやっと”神”だとされてしまいましたが、考えてみれば別に、テレパシーとか使える悪い宇宙人、でも良いんじゃないかと思うんです。

……なんというか、日本の作品って、神とかこの手の大仰な観念に耽溺して理屈の肉付けに乏しく、足元がお留守ですよ、というタイプが余りにも多いように思います。

もう山田正紀はいいや。

「甲賀忍法帖」
著者:
山田風太郎
出版社:
講談社
分類:
FT,文庫

まぁ面白かったのですが、忍者どもが荒唐無稽に過ぎると感じられ、読んでいまいち興が乗りませんでした。畳み掛けるような展開は良いのですが、基本的に物語の土台が弱く、自分のようなひねくれ者になにか感じさせてくれるようなものは、残念ながらありませんでした。

「魔界転生 上下巻」
著者:
山田風太郎
出版社:
講談社
分類:
FT,文庫

こちらは結構いけます。とにかくただ一つの荒唐無稽さえお約束として読者に押し込んでしまえば勝ち、それも武芸者オールキャストの豪華極まりないチャンバラ、という餌をちらつかせての勝負なのですから。

一番の盛り上がりが、魔人たちが全部揃うところで、そこが一番わくわくする、というのは物語構造的には問題ですが、これだけわくわくさせてくれれば問題ありません。

敵が揃ったのを見てわくわくする、ってのは素晴らしいです。その後は割と普通で、まぁ鍵屋の辻とか知ってると更に楽しめるよな、とかそんな所でしょうか。もうちょっと美味しい展開が欲しかったなぁ、等とも思いましたが、これは贅沢というものでしょう。お勧めします。

「マリア様がみてる チャオ・ソレッタ」
著者:
今野緒雪
出版社:
集英社
分類:
FT,文庫

げっ、祥子さま視点があるっ!

……どうしよう。ちょっと腹掻っ捌いて詫びたい気分。それと、マイファンタジーが否定されたことで、再びあの、どろどろとした記憶が蘇ってきます。

大丈夫、ホラ、リリアンにはお御堂はあっても工場は無いんだぜ、キューポラどころか旋盤もボール盤も無いんだぞ、勝ってるよ、勝ったんだオレタチは!!

……等とつぶやきながらでないと読んでいられません。けっ。

「日経エコロジー 2004年4月号」
出版社:
日経BP社
分類:
技術,雑誌

物珍しさで。

面白く読めました。エコロジーの本なのに、企業側の視点からの記事が多いのが新鮮でした。利潤を追求しながら企業活動が環境へ与えるダメージを緩和してゆく。企業側の視点は、いわゆるフツーのエコロジーの人とは違い、視野が狭いように見えますが、これは視野を絞って、実現可能な目標に取り組んでいるからですね。ファンタジーに陥っていないのが好感が持てました。

但し、環境、というものが漠然としており、怪しいので、企業側の取り組みは規制のクリア、というかたちになりがちです。

これは仕方がないと思います。正直なところ、普段耳にする意味でのエコロジーという言葉は、とにかくいかがわしいです。この雑誌の記事ついても、論理の飛躍が多く見られました。もしかすると明記されていない、エコロジーの世界の常識的知識が無いから、なのかも知れませんが。

まともな記事もあります。遺伝子組み替え作物についての反対運動、茨城県の近くの村で烈しいらしいです。結果は自然環境での変化や従来の品種改良と変わらないのに。知識が無いというのは恐ろしいものです。

コラムにいたっては、天然物は安全、という考えを一片の疑いも無く常識として使っています。きっとこのコラムニスト、フグの肝を食ってもピンピンしているに違いありません。

……みんなはスターリング、読んでいるよね!


さてこのまま、特定の科学技術が攻撃される風潮が続くと、知識抜きに攻撃対象の選定が行なわれることを考えると、攻撃は次第にランダムなものとなっていくと思われます。次は一体どんな技術がスケープゴートとなるのか。最終的には知識そのものが攻撃対象となるでしょう。

そして惨事は、知識の欠如ゆえに起こります。東海村の臨界事故は、科学技術の精華には程遠いバケツで、知識の欠如ゆえに引き起こされました。

科学と技術への攻撃と不信が募るほど、大惨事は起こり易くなる、そういう陰鬱な未来を予測します。

「日経サイエンス 2004年06月号」
出版社:
日経サイエンス社
分類:
科学,雑誌

再び日経雑誌。でも貴重な科学誌です。これだけは毎月買わないと。

特集の有機ELの記事は日経NE誌と併読するのをお勧めします。科学と技術が噛みあって初めて、テクノロジーは製品として我々の元にやってきます。

「ドラッグに翻弄される脳」薬物依存と耐性のプロセスについての記事です。

「だれからも文句のでない投票方式」これは、候補者全員に順位を割り振って投票されるのを、その票を使って各候補者をそれぞれ1対1で評価し、全てに勝利したものを当選者とする”真の多数決方式”を他の方式と比較して、コレが一番だというような記事でした。

筆者に多少の偏向(前大統領選ではゴアが勝つのが順当だと考えている。いや、私もまぁそう思うのですが、それじゃ中立じゃないから)がありますが、プロセスと結果は非常に興味深いです。例えば同じ順位記名投票でも、順位に従って得点を決めて加算する”ダルボ方式”だと違う結果が出る、というのが特に。

多数決というものを万能だと考えている向きには是非とも読んで貰いたい記事です。

しかしこの記事、結論としてはこういうものだと思うのです。

”どういう代表が望ましいか、原則に従って投票方式を決めろ”

そもそも問題解決の遥か前の段階、意思決定の更に前の段階で我々はこんなにも無知である、そのことを自覚したいと思います。


で、本題は「収容所で生まれた世界初のポケット計算機」筆者はクリフォード・ストール、「カッコウはコンピュータに卵を産む」の著者ですね。機械式計算機とはまぁ、コンピュータに対する態度の微妙なことときたら。

計算機をどう定義しているのか、じゃあ算盤は、計算尺は、とツッコミどころの多い題ですが、本題のクルタは立派な機械です。自分も元々は機械屋なんで、ちょっと写真には見とれてしまいました。

……あ、やっぱりこういう構造なんだ。でも中央のドラムが想像と逆。コンピュータ的な構成を考えていたけど、駆動軸が中央にあるから、か。

「リレー系自動制御系の理論」
著者:
ヤ・ゼ・チプキン
出版社:
日刊工業新聞社
分類:
技術,ハードカバー

旧ソ連で1955年に刊行されたものの翻訳です。

最近、旧ソ連のコンピュータに関して色々調べているのですが、これがとにかく面白くてハマってしまいました。ただ、アーキテクチャの詳細やプロセスなどはさっぱり判らない訳です。でも、ロシアの155系チップの型番調べとか、エミュレータからアーキテクチャの推測とか、やって出来ないことは無いですね。

本書もその一環です。内容はリレーによる機械制御、スイッチングによる二値論理でもって補償や追従、誘導や制御をやろうという際の理論、過渡応答や振動、特に自励振動と非線形振動についてびっしりと。さすがリヤプノフの地。

収穫は人名と論文名の一覧。最近の興味の焦点は、もう一人のリヤプノフなんです。旧ソ連のソフトウェア研究の最初期に大きな貢献をした人で、この人がもう多芸多才。レベデフとリヤプノフだけでどんぶりめし一杯いけます。

「自作マニアのための真空管もの知り百科」
著者:
片岡基
出版社:
電波新聞社
分類:
技術,ムック

次は真空管。リレーは扱ったことがあるし、論理演算ができることも、フリップフロップが作れることもわかっているから良いのです。

書店に並ぶ本の中で、コンピュータ用真空管について扱っている本はありませんでした。みんなオーディオ用です。いっぱい型番があります。今出回っているロシア製真空管について調べれば、等と思っていたのですが、それどころではありません。まず初歩から。

本書は歴史、原理、構造などについて判りやすく解説した良書だと思います。この本でようやく真空管をデバイスとして具体的に認識できるようになりました。

「誰がコンピュータを発明したか」
著者:
アリス・R・バークス&アーサー・W・バークス
出版社:
工業調査会
分類:
コンピュータ,ハードカバー

で、実際に真空管はどう使うのか。探すとありました。アタナソフの機械、ABCは三極管6C8Gを使っていました。カソード接地で出力まで七段、アナログ的に見て立派なものです。

NORとNAND素子も面白いです。この二つはグリッドへの入力に並列に繋いだ二本の抵抗にそれぞれ電圧として入力するというものなのですが、違いは抵抗値だけです。それで確かに動作するようです。

ENIACの論理素子はずっと複雑ですが、安定動作が見込めるとの事。でもNANDで七極とは。

……これで理屈の上では、真空管でコンピュータを作れといわれても対応可能だな。


この本の本題である、”誰がコンピュータを発明したか”ですが、内容はABCとENIAC、そして特許訴訟についてが大半を占めています。

私は本書の主張”発明者はアタナソフである”に同意しません。

コンピュータとは、アルゴリズムに基づいた演算を自動実行する機械です。チューリングの停止問題を適用可能なハードウェアと言い換えても良いでしょう。

アイディアだけを言うなら発明者はバベッジです。実稼動した最初の機械となると、条件分岐を最初に発行した計算機械ということになり、ツーゼのZ-3ということになると思います。

初期コンピュータのアーキテクチャの詳細について知りたい方にお勧めします。退屈な訴訟の部分はすっ飛ばすことを推奨。

「3D-CGプログラマのためのクォータニオン入門」
著者:
金谷一朗
出版社:
工学社
分類:
コンピュータ,単行本

クォータニオンについて学ぶのに絶好の一冊です。全く良い時代になったものです。内容は丁寧に段階を追ったものでわかり易く、また高度な内容に自然に誘うものとなっています。言うことはありません。

ポリゴンを動かしたい人に限らず、三次元空間で回転軸の制御を行ないたい人には是非お勧めしたい一冊です。

「Beep復刻版」
出版社:
ソフトバンク
分類:
コンピュータ,ムック

自分とBeepとが交差したのは、ほんの一瞬でしかありませんでした。

世はファミコン全盛期、うらやましかったあの頃。憶えているのはその頃のBeep誌で、それ以降はMSX MagazineとLoginにうつつを抜かすようになる訳なのですが……

流石に愛された雑誌、執筆者も今でも各分野で第一人者になった人たちばかりです。まぁアレですな、セガ偏愛というのは、報われないという一点を除けば美しい思想だったと思うのです。

買ってしまったのは懐かしさと、コンピュータで遊ぶゲームというものがまだ未分化だった頃の雰囲気を確かめたかったから。


自分は、このままゲームと絶縁していいのかという、自分の人生についての割と些細な悩みを抱えたままにしています。大人の考えることじゃ無いとは思います。しかし、これまでの常識が将来も通用するとも思えないし、大人の人生の楽しみ方として、ゲームをするというのがあっても良いと思うのです。

勿論、それは自分の人生とはまた別の問題なのですが。だから、未来を計ろうとする前に過去を眺めます。ゲームで人生をちょっぴり豊かに。

……駄目かも。

「蘇るPC-9801伝説 永久保存版」
出版社:
アスキー
分類:
コンピュータ,ムック

かつての”国民機”PC-9801シリーズについてのムックです。内容は関係者インタビューと、エミュレータ上で動くゲーム(要するにEGG)、つまりエミュレータ単体ではない代物、そして若干の記事と、そして何故か本年度版のパロディアスキーとなっています。パロディアスキー好きは、例え98を蛇蠍のように嫌っていても買わざるを得ません。


9801シリーズというのは、決して愛されたハードウェアとは言えませんでした。国内の熱心な愛好家も少なく、海外の評価を見ても決してエクセレントとは評されることの無い機種でした。所詮IBM-PCのクローンと。

とか言いながら、私も使っていたのですが。機種は最低限のひねくれ方として、エプソンの互換機PC-486Pでした。考えてみれば悪くない機械でした。CバスはATバスよりずっと良い仕組みでしたし、あの画面解像度は長いこと本家IBM-PCに勝る点でした。

そしてゲームがいっぱい有りました。友人の9801RAは羨ましいこと限りなかったけど、それは勿論高い解像度と豊富なリソースでゲームができたから。64キロバイトの壁があるMSXなどとは比べ物にならない世界だったのです。


そういう点でゲーム収録というのは正解です。エミュレータに期待する人は素直にnpIIあたりを使いましょう。

インタビュー記事はNECのかつての担当者のもの、特に渡邊氏のものは読ませます。歴史的価値高し。あとジャストシステムの浮川氏のものも。NEC側の証言を突き合わせると、誕生の概略が伺えます。あと、「Wizard98開発秘話」も面白く読めました。

若干の記事のほうには、何故か阿部広樹氏の名前が。パロディ版の方には更に多根清史氏と箭本進一氏の名前が。まぁとにかくパロディ版が今年も出た事実は、限りなく喜ばしいものです。もし、日本のコンピュータ系雑誌から四月馬鹿が消えた時は、その時こそ日本のコンピュータ産業が滅びるときだと確信しています。

という訳で、98を親の敵と恨んでいる人にも、お勧めしておきましょう。

「I/O 2004年4月号」
出版社:
工学社
分類:
コンピュータ,雑誌

お前ら復刻し過ぎ、と言いたくなります。はい、こちらは創刊号の縮小版が付録に付いてきます。

本誌のほうは読む価値無い(少なくとも私にとっては。他の人にも他の本、他の雑誌を薦めたいと思う)と思います。なんというか、初心者向けホビー”マイコン”誌という、冷静に考えると無理っぽい内容なのです。

では過去はというと、それはI/O誌ですから、最初のマイコン誌ですから、重みが違います。なにせ1976年。中にはキャラクタディスプレイ出力の記事があるのですが、理屈は把握していたつもりでしたが、こんなにも乱暴無敵な解決法だったとは。白黒テレビの真空管増幅回路のグリッドに直結していますよ!

「Lightweight Language Magazine」
出版社:
アスキー
分類:
コンピュータ,ムック

モダンなスクリプト言語、Perl,PHP,Python,そしてRubyに関する本です。あとLispもちょっと。

作り手の、特にまつもとゆきひろ氏の力強いメッセージがまず目を惹きます。が、一番面白いと思ったのは、使い手に共通する意識でした。

”お題プログラム”で各言語の使い手が競作、なんて聞くと、華麗なハックテクが目白押し、と期待するじゃないですか。しかし内容は、既存のコードの利用、モジュールの利用、面白みのない実装。特に比べるならPerlが一番ハックぽかったです。つまらんなぁ、と思いましたが、逆に考えると、そういう考え方が一般的なんだ、という認識になった訳です。

使い込んでいない使い手が読んでも面白くない本だと思いました。しかし逆に、ある程度使い込んでいけば、ここの書き手のような洗練された地平が広がるのではないか、という期待も抱かせる一冊でもありました。

「超兄貴 上下巻」
著者:
田丸浩史
出版社:
エンターブレイン
分類:
漫画,単行本

田丸浩史の過去作でも特に面白さでちょい劣るコレが、なんだか凄く分厚い二分冊でまとまりました。とりあえずカバー下をめくって驚愕。ありません。綺麗さっぱり。駄目の駄目駄目。

まぁゲームの方で超兄貴の新作の出るタイミングに合わせたのだと思いますが、色々とイタイ部分が散見。でも、面白い部分は面白いのです。なんというか、イタさを売りにする前の田丸浩史ギャグがあります。

「ラブやん #3」
著者:
田丸浩史
出版社:
講談社
分類:
漫画,単行本

で、こちらがイタさを売りにする最新刊。

順調に第三巻です。……やっぱりカズフサ、こいつだけは許せない気が。だってだって、じょっ、女子中学生とお知り合いですよ!行きつけの駄目喫茶店(眼鏡っ娘装備)ですよ!隣の幼馴染(……いや、自分にも居ない事はないけど、遠い九州の話だし、それ以前に……)ですよ!

……怒りを押さえて読みますが、順調に面白いです。イタいし。


しかし、アッチって、やっぱイタいのかなぁ。なんか会社のお金で”おもちゃのさいとう”見学にでも行けそうな勢いなのですが……聞く話聞く話が、全て想像を絶するイタさ。知り合い、本当に反吐吐きそうな顔してた。どことは言えないけど、どうにかしてぇ……

「こはるびより」
著者:
みづきたけひと
出版社:
メディアワークス
分類:
漫画,単行本

電撃大王誌って、割といい確率で良い感じの絵を描く人を載せるので、今のようにタイアップ成分と駄目っぽい連載ばかりで、買ってすぐダークウィスパーだけ切り離して保存するようになっても、とりあえず絵柄だけはチェックするようにしています。

そんな中の一人、みづきたけひとの駄目っぽいメイドロボ漫画、絵の雰囲気は結構気に入っていたので単行本購入。

表紙、なんかヒラメ顔……。線がずいぶんと変わったような。萌えがどうこうと気にする余り、典型的な何かのシチュエーションに堕ちていきつつあるような。

萌え=駄目=ギャクというラインを出発点としていますが、あんまり簡単に駄目を肯定してしてしまったもんで、途端に物語の広がりがなくなってしまいました。仕方ないかとも思いますが、ちと惜しいです。


そいえば電撃大王誌、なんかおまけが付いてきました。よちばちゃん可動フィギュア。よく出来ています。見た目より遥かに良い出来です。しかし、だからって、これが単体で欲しいかとなると、違うわけです。

これからはもう、良い、ってだけでは欲しがらないようにしようと思います。手に入れるのは欲しいからであって、良い物だからではないようにしよう、と。

これと併せて、これからは、萌えっていうものを、自分の中で評価を相対的に低くしていこう思います。これまでは世間並みの評価をしてきたけど、これからは、これまでのような高い評価はしません。萌えはわかるけど、もう別にどうでもいいのです。

というか、「K-19」のDVD見ながら、冒頭のリレー駆動音がイイ!とか、「鉄人28号」で、27号の起動時の音、あれはリレーだよなぁ、とか、そう、最近リレー萌えなんです。

みんな!リレーはラブリーアイテムだよ!!

「そらのひかり」
著者:
わかつきめぐみ
出版社:
白泉社
分類:
漫画,単行本

隣の席の奴、留年したらしく、見掛けたときには猫連れてた。

犬の散歩の途中で、彼の猫と彼に出くわし、それ以来、学校に出てこない彼と河原で会うようになった。隣の席だし。あと、前の席の陽気なコ、キャラメルくれるおじいさん、そして猫の名前は芥川さん。

いつも久しぶり、という気もしますが、久しぶりの単行本です。ジジババドーブツはいつもの通り。

こないだ読み返して思ったのですが、「So What?」も”学校に行かないコ”を描いた作品でした。阿梨は学校に馴染めないような子ではないだろう、とずっと思っていましたが、違ったのかも知れません。

どこか、描写が優しいのですね。本来ならもっと神経に来るギスギスした状況である訳ですが、その辺りちょっとほんわりと描いているので、そう重く感じられません。これで嫌な奴が一人でも出てくると現実では破綻してしまうのだろうけれども。夏目家のメンツも同様。

リアルに描くべきかと言うと、ここは少し違うわけです。気持ち、わかるだけに。救われて欲しいんです。そういう意味で、良い寓話です。

「最強伝説黒沢 #3」
著者:
福本伸行
出版社:
小学館
分類:
漫画,単行本

決闘!!

いい大人は……決して、そんなものはしない……ッ!!!

中学生にボコボコにされて、醜態をさらして、泣いて、落ち込んで、決闘するなんて言い出します。

泣けます。実物なしの走馬灯なんて、哀切の極みです。会社の連中は当然、決闘なんて馬鹿げていると説得します。

でもどうしたことか、決闘することに。なしくずしで。後悔し、しかし決意し、しかし後悔し。このまま黒沢が先生と祭り上げられる展開は嫌ですが、でも、後悔したり決意したりする様は、心底素晴らしいです。

「ピピンとピント #1」
著者:
大石まさる
出版社:
少年画報社
分類:
漫画,単行本

同い年の叔母さんが降ってきたあの日、ぼくはじいちゃんのAPSカメラを手にしたのだった……

えろくさっ! いや、えろ漫画と比べればたいした事は無いのですが、いや。

未来のイナカで宇宙がどうとか、という、実に大石まさるっぽい設定の漫画です。ついでに言うと、ちっちゃい眼鏡っこが出てきます。良し。

田舎の風景、いい感じです。川遊び大好き。風景大好き。いや、大石まさるの田舎描写、嫌いなんですけど、好きなんです。お話は転がらなくても充分楽しめますが、転がったほうが良いので期待しています。

「ワイルダネス #3」
著者:
伊藤明弘
出版社:
小学館
分類:
漫画,単行本

メキシコの熱風で、間抜けの尻にも火がついた。

追いすがるのは鉛玉と血煙、昔の因縁と、昔の女。

殺伐とした殺し合いの話ながら、飄々としたユーモラスな雰囲気のある、良い作品です。殺し屋のメキシコ人4人組、黒服の殺し屋たち、DEAの捜査官たち、地方のギャングのボス、エロ映画の撮影スタッフ、みんな何処か間抜けです。間抜けの親玉は主役の一人、芹間ですが、やはり愛しいです。

薄情な企みの算段があっけなく破綻し、虚勢を張り、そして死ぬ。寝ぼけ、肝心なときに役に立たず、そして生き延びる。このカリカチュアの中では、悪党すら愛おしく、切ない。

とにかく、状況描写の巧さときたら!!

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