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July,17,1997

「輝く永遠への航海 上下巻」
著者:
グレゴリィ・ベンフォード
出版社:
早川書房
分類:
SF,文庫

思えば遥かな過去、「夜の大海の中で」から遥かな時を超えて、今長かった物語が終焉する……ふぅ。

長すぎました。個人的には「大いなる天上の河」の上巻で終わってくれるのが一番だったのですが、なんだかありがち&ファンタジーな方向へと物語は流転し、今回はもうさっぱり判らない代物へとなって帰ってきました。

ふさわしい終局を探してさ迷うような、脈絡の無い展開。物語的に無意味とも思える細部、拍子抜けするメカ生命の没落。そして意味不明のラスト。巻末の年表と合わせて読むと、さらにわかりません。後から思い返せば、伏線になり損ねた無数のガジェットが、物語のあちらこちらに、醜い死骸を晒しているようです。


「夜の大海の中で」「星々の海をこえて」そして「大いなる天上の河」の前半。これら作品は、素晴らしかったです。苦笑するしかない例の”有機生命と機械生命のなんたら”というのを除外しての話ですが。

次に期待しましょう。私は今でも、ベンフォードのファンです。文学と物語のレヴェルで、読むに耐えるものに仕上げることの出来る、唯一の現代ハードSF作家なのですから。

「コンピュータ・コネクション」
著者:
アルフレッド・ベスター
出版社:
サンリオ
分類:
SF,文庫

筑波の奇特な古本屋でGET。警告します。お金持ちにしか、買うのをお勧めしません。

激烈な精神衝撃により不死を獲得した、モールマンと自称する一団。彼らが、新しい仲間を得ようと骨折った際に、その人物ととある人工知能との連結を開いてしまう。人工知能によるネットワーク支配、謎に包まれた冷凍飛行士、モールマンの中の裏切り者、ベスター流展開の、ジェットコースターノヴェルです。

ただ、内容が、御都合主義とまでは言わないにしても、合理的とはとても言えないものであり、ガジェットにハマれず、設定に魅力を感じないため、評価は格段に落ちます。

「アーヴァタール 上下巻」
著者:
ポール・アンダースン
出版社:
東京創元社
分類:
SF,文庫

暇だったので、買いました。回転する超高密度円筒、ティプラー・マシンを用いた超光速移動手段が話のメインアイディア。謎の知性存在によって張り巡らされた超光速移動ネットワーク、人類外知性への使節の帰還、宇宙開発反対派の陰謀、次々に訪れる異星の景観など、ネタが詰め込んでありますが、いまいち底が浅いというか、食い足りない印象を受けました。

「So What? #1,2」
著者:
わかつきめぐみ
出版社:
白泉社
分類:
漫画,文庫

遂にかの名作が漫画文庫へ。阿梨ちゃんの”ほにゃ”という雰囲気に、幸せを感じたりする作品です。登場人物の境遇は、誰をとってみても、何かしら問題を抱え(梅三匹は別)、厳しさと陰りを帯びていておかしくない筈なのだが、のどかに過ぎて行く”非日常”の中で、宝石の切子面のように、各人の内面をきらきらと写すかのようだ。

単行本と違って、1/4スペースの文章が無いのがつまらないといえばそうなのですが、永久保存の意味を込め、購入。

「いいひと。#17」
著者:
高橋しん
出版社:
小学館
分類:
漫画,単行本

TVドラマ化されたり、主人公が妙に出世してたり、17巻を数えたり、「もう読むの止めようか」と思ったりもしましたが、単行本を手に取り、表紙をめくり……そして奥付け、いや、うそんこの奥付けまで来た時、「いい……」という感興を押さえることが出来ませんでした。

絵柄、物語、人物描写、細部のおちゃめさ加減、そして雰囲気。この作品の雰囲気は、単行本の中表紙に、最も顕著に表れていると思います。この視線のある限り、この作品を読みつづけるでしょう。

「ホットマン #1」
著者:
きたがわ翔
出版社:
集英社
分類:
漫画,単行本

私は、こーいうのに弱いんです。

内容はひとことで言って、ジャン・レノ主演のほのぼの家族もの、といった所でしょうか。話や設定に少々あざとさは感じますが、七海ちゃんはかわいいし、エンゾの親バカ&健康マニアぶりにはツボを突かれてしまったし、降矢家の”今週の目標!!”をチェックしたりと、見所には事欠かない。それに私は、こーいう話には弱いのです。

「マンガ パソコン通信入門」
著者:
荻窪圭
出版社:
講談社
分類:
PC,新書

「ディジー」TVアニメ化記念ということで、載せ忘れていたこの本を取り上げます。というか、出た当時書いた文章です。

永野のりこの単行本です。ブルーバックスと書いてあっても、原作者が別にいても、ナガノはナガノ、アレはアレ。

内容も、ナガノキャラではお馴染みの山川X系自虐青年が、あやしい美少女によってアレな領域へと引きずり込まれてゆくという、これまたお馴染みのパターン。

パソコンなんてまったく触ったことも無い普通の自虐青年(……)が、彼女に命じられるままに、有り金すっからかんにして得体の知れないパソコンなるナニを買い、マニュアルと格闘し、ソフトなるアレをインストールし、タッチタイピングを覚えてゆく姿は、見方を変えれば、”地球征服戦隊の戦闘員にさせられる””ロボに改造される”並みの不幸度かも。

主人公の”初心者のこころいき””初心者の妄想””初心者の知ったかぶり”がリアルでナイスです。初めて電報貰った時の事、思い出してしまいました。

内容の方は、うーん、時代の流れってヤツを感じるネェ何て思っちまいました。自分が始めあれほど苦労したモデムの初期設定なんて一言も触れていません。95時代の話なんですねぇ。それに草の根BBSに全く触れず、商用のみしかないような書き方をしているのも気になります。


しかし、自分、どんな風にパソ通デビューしたっけ。確か、ただ単に、「パソ通の世界にはアヤしいものやアヤしい人がいっぱい居る」という風説(?)に惹かれ、ただ単にブツ目当てに始め、

「早くダウンロードして抜けなくちゃ、アヤしいヒト(?)に見つかる前に……あわわ、何だこりゃ、電報?(ガーン)しまった、五発も食らっちまった……オレはもう駄目だぁぁぁぁ死ぬううぅ……(フェイドアウト)」

という具合だったという記憶が……

ついでに落とした過去ログを読み、そしてある日、おずおずと書き込んだんだっけ。


この本で入門するフツーの人なんて存在するんでしょうか?

この本読んで入門するナガノマニアなら居そうだけど……

入門書という枠を超えて、ナガノファン、ネットワーカーの双方にオススメです。

あと、本来の読者層にも。

「オレ通AtoZ」
著者:
恋緒みなと
出版社:
講談社
分類:
漫画,単行本

上記作を載せたついでに、同じ、パソ通をテーマにした漫画を一つ。

こちらは上と違い、草の根系ネットを取り上げており、主人公も、入門者の段階から脱却し、調子づいています。従って描写もネットオカマ、ハッカー、ネチケットなど、一歩踏み込んだものとなっています。

いやぁ、きっちり踏み込まれています。リアルです。主人公はCG描きのマックユーザーの典型、にしては若いか、をきっちりなぞっています。こういう人、いました。彼の萌えかた、話し方、描き込み方、壊れ方、そして彼を襲う洗脳。リアルです。

しかし、パソ通やってる美人の先輩は絶対いない。断言。

でもよろし。

「日経サイエンス別冊 複雑系がひらく世界」
出版社:
日経サイエンス社
分類:
科学,ムック

複雑性科学の現状を表すような、ごった煮風の本です。カオスをメインに、遺伝的アルゴリズムもニューロも詰め込まれています。

自分にとって、複雑性科学というものは、スターリングの「スキズマトリックス」の中で突然出会ったクールなパラダイムでした。プリゴジンからフラクタルと興味は歩み、気がつくと、自己組織という考え方を当然としている自分がいました。ネットワークと複雑性科学は、サイバーパンクの駆動原理でした。

当時のありさまを概観するのに最適の一冊でしょう。これを機会に、複雑系に関する認識を総括することをお勧めします。私は、砂山のカオスの話を信じきっていたので、反証例もあるという記述はちょっとショックでした。

これからは、この分野では鬼面人を驚かすような派手な成果は出てこないでしょう。研究は細分化され、専門用語が降り積もった論文は、とても読みたくなるようなものでは無いでしょう。しかし、注意深く追い続けたものだけが、隠された豊穣さに出会えるという事は間違いありません。そして、豊穣さは約束されているのです。

「航空情報別冊 ジェット&ガスタービン・エンジン」
著者:
ビル・ガストン
出版社:
酣燈社
分類:
技術,ムック

自分は航空機などには特に興味を持っていません。知識はごく基礎教養的なものに限られます。それでも人よりは十分多いのでしょうが、どの戦闘機がメーカがどこそこで、エンジンがなにそれ、アビオニクスがなになにで、どこそこに何機配備されているなんて話題には、まったくついて行けません。せいぜいがとこ、「Su-27k萌えー」とか、「An-72イカスー」位が関の山。どちらかというと、工作機械の技術史なんぞに興味が向かいがちです。

そんな自分がこんな本を買ってしまったのは、やっぱ技術的冒険を巡る話ってのに魅力を感じるからでしょう。面白かったです。豊富な図版、丁寧な説明がありながら、文章には非常な迫力が有り、読ませます。たださすがに、ラストまで一気読みというのは無理でした。文章でぎっしり詰まった本です。読み応え有り。

それにしても、試作された原子力エンジンX-211、化け物です。昔から、航空機用原子力エンジンというものがどういうものなのか、興味があったのですが、ターボジェットという事で安心しました。もしや炉心に空気を導入し、加熱膨張によって推力を得るとか、複雑なギヤとシャフトの組み合わせで、複数のプロペラを推進するとかいうものでなくて、安心。とはいえ、あんなもの設計した奴の気が知れない。

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