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長岡アーティファクツ見学

real spacecraft

噂を聞いたのは去年だったか、おととしだったか。

「長岡市郊外に、何故かロシア宇宙機とかエンジンとか色々ある」

「夏には見学できる」

場所をみてみると、JR長岡駅から10キロ以上、歩いては行けません。車で行くことを考え、長期計画を立ててはいたのですが、「今年で終わりかも」と聞いて焦ります。

しかし、うまいこと「一緒にどうですか」という方々がいらしたお陰で、行けました。新幹線とレンタカー。朝から夕方まで、夢にまで見たロシア宇宙機!


これは2002年9月15日の、長岡市アーティファクツ一般公開の見学記録です。

最初に、ここの管理会社の専務による説明が一通りあります。

まず、ここの由来から。10年前に佐藤工業(株)がここにテーマパークを作ろうとするものの、バブル崩壊により断念。しかし、それまでに収蔵予定品を一部集めていたとのこと。

以来10年間、ここの倉庫に眠っていたものを、3年前から、長岡市の声掛かりによって、夏季日曜だけ、希望者に公開することとなったのです。

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で、これが旧ソ連によって開発,運用された、再突入能力を持った生命実験用衛星、"ビオン"の機械船と再突入カプセルです。

これは開発に用いられた機能試験モデルのようです。

さらに、再突入カプセルの上に、この軌道機器モジュールが載ります。

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実際に運用されて、再突入帰還した同型カプセルもありました。

ビオンは、世界初の有人宇宙船ヴォストークの派生型で、カプセルはほとんど同じです。実際には表面の徐融材が違うようですが。(初期のものは六角片に覆われていた)

専務の説明を聞いている間、私はビオン機械船の側面に見えた、コレが気になって仕方ありませんでした。

想像があたっていれば、これには地球の地平線を検出して地球方向を割り出すための、地球センサが入っている筈。

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大当たり。一世代前のソユーズやプログレスで使用されたものと同じ地球センサです。

但し、どう機能するのかは、間近で見ても謎。多角形ミラーで赤外線を反射するように見えるけど、前方突出部には何も無し。裏は艶消しの白で塗られているだけ。じゃあスリットかなぁ。回転するのかなぁ

(回転せず、赤外光を傘で反射し、内部へ導入するようです)

ビオン機械船は鋼製。ヴォストーク機械船の中段を延長して、気密のハードウェア収納部を追加したような格好です。

これはその気密部側面のコネクタ群。こういうのが側面に点在しています。フライト品でも同様なのだと思います。

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コネクタのキャップを外したところ。いわゆるキャノンコネクタです。ここにあるソヴィエト宇宙機のコネクタは、見た限りすべてキャノンコネクタでした。

ケーブルは、こんな感じで構体に固定されていました。

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配管はこのように固定されます。見るからに普通の工業規格品です。溶接痕が見えます。

配管は、こういった球形タンクに繋がっています。姿勢制御用の窒素ガスのタンクですね。

ハーネスによる固定であることに注目。膨張/収縮への対処でしょうか。

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で、これが姿勢制御用のスラスターです。機械船の4面にそれぞれあります。

しかし、ちょっと古めの、普通の電磁弁にしか見えません。

これは軌道機器モジュールの側面のパネルの可動部接手と、その駆動用ギヤとアームのアップ。

このパネルは放熱用のものだと思われます。アルミ製でアルミリベット使ってますね。機械モジュール後端にも同様の可動式パネルがあります。

ヴォストーク1号からあるコレ、何だろうと思っていたのですが、謎が解けました。

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さっきの、真空に剥き出しのアルミギヤを駆動するアームの先には、こういうギヤードモータがあります。

自動車の電動ウィンドウ用モータそっくりです。トルクがあるので、さっきのギヤも潤滑無しで駆動できるのでしょう。

再突入カプセルの表面です。

目の粗いカンバスのような布地(石綿織布、だそうです)に薬剤を塗って作っているようです。

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段差部だとよくわかります。何層にも重ねられています。10〜15層くらいでしょうか。

再突入カプセルの上側面には、パラシュートを格納する円形のハッチがあります。ヴォスホートと同じなら、上空5キロでここが開いて、パラシュートが展開されます。

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ハッチは縁に並んだこういうボルト複数で留められていました。

爆管、ではないようです。ボルトを、被さっていた蓋の一部が噛んで固定していたのでしょうか。パッキンのようなものがあるので、ガス圧駆動なのかも知れません。

(ガス圧駆動でした)

ソヴィエトでもマイクロスイッチは似たようなものです。これが蓋の有無を検出していました。

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パラシュートを収納していた穴は、下に大きくえぐれて広がっています。底にはガスボンベのようなものがありました。

このボンベ状の物体は、着陸時の逆噴射モータである可能性もあります。

(固体逆噴射モーターでした)

これが格納されていたパラシュートです。化学繊維のように見えました。

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更に奥には、展示用にソヴィエトで製作されたソユーズカプセルと、マーキュリーカプセルの機能試験モデルがあります。

展示用、機能試験モデルとは言っても、構体、インテリアは本物と同じです。

このカプセルはソ連国民成果博覧会宇宙館に実際に展示してあったものらしいのですが、三人席であることとコンソールの形態から、初期型だと思われます。

宇宙開発の歴史上非常に貴重な資料でしょう。

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カプセル斜め正面から。

パラシュート格納ハッチは二つあり、その片方が開いています。パラシュート格納孔は、ビオンのそれのように底まで広がっています。

中央が軌道モジュールと接続するハッチです。その右のくぼみは、ちょっと謎でした。

下の突起物は、カプセル再突入時の迎え角制御用のスラスター基部です。

パラシュートハッチの縁です。

ダミーボルトで埋められていますが、ビオンのようなボルトを装備していたものと思われます。

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謎のくぼみの中。どうやら展開式のアンテナのようです。

恐らく、中央のボルトの先に蓋を固定していた部分があって、それを電気信号で起動、蓋を飛ばして、写真では見えない位置にあるフックを外します。

フックは銅板を巻いたリールの芯を引っ張る金具と繋がっていますが、これが外れると銅板は自分のばね力で伸びてゆきます。

フックは、この部分全体を寝かしていたので、リールに巻き取られていた銅板は立ちあがって伸び、丸まって一本の長いポールになります。

ゾンド5号の写真に、このポールが伸びたものが写っていました。

ハッチの周りには、50ピンのキャノンコネクタ5口、パッドの当たった謎の部分2箇所、角型の掘り込み2箇所、ロシアで塞がれたらしい穴数カ所など、謎でいっぱいです。

一体どうやって軌道モジュールを分離したのでしょうか。気密はどうやって保ったのでしょうか。

ちなみにハッチの径はもっとも狭いところで61センチでした。

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このコネクタの分離も謎です。

ここが分離機構のカギでしょう。

ハッチの、そしてカプセルシェルの材質は恐らくステンレス、カッターマークから見て、それほどエキゾチックな材料では無いと思われます。

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ハッチのヒンジは貧弱でした。

更に、気密パッキンも貧弱でした。右手のコレ、一重です。

で、これがハッチの留め金。

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宇宙機内部。三人乗りです。

上左右の膨らみはパラシュート収納部。中央上は内蔵蛍光灯。

こちらは足元。中央座席の足元左右にあるのが操縦桿。席中央にあるのが、指示棒。宇宙飛行士はシートにハーネスで固定されていると、パネルに手が届かないので、これで操作します。

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横のヒトにも、一本ずつ指示棒はあります。

パネルはまさに初期型のものです。ソユーズのコンソールパネルのデザインは制御システムと密接な関連を持っており、詳しく調べれば、制御に関する情報の多くを知ることができるでしょう。

ちなみに右の地球儀っぽいのは、今飛んでいる位置と、今減速噴射すると着陸する位置を示す計器です。

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猛烈にアナログなクロノメータです。

可視地球方向検出器Vzor。中央を囲む花弁のような窓に地平線を入れて地心方向を確定する。周囲のつまみのうち、細く尖った中央のものは、何らかのシャッターの開閉用のものらしい。

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ソユーズ内インテリア。詳細不明。

手前のボックスの詳細は不明。奥は窓。三重構造で、左右に一つづつあります。

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メーターには”脈”、目盛りは200まで、本当に脈拍の計測器なのかなぁ。

(マヂで脈拍計でした)

パネルの裏側もキャノンコネクタでした。

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マーキュリーカプセル。

人物と比べると、やっぱり小さいですね。

前方から眺めるの図。先端の白い丸い部分は、レーダー、だったっけ。

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カプセル後端。

実のところこのモデル、熱構体試験モデルにあたるものの様子。この辺りちょっとうそ臭い気が。

しかしインテリアは本物。

与圧服着た人形付きです。

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計器類遠景。

計器類近景。

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計器類裏手。極めて初期のフライバイワイヤ操作系にあたるのだろうか。

右手がTitan-I/IIの1段目に用いられたヒドラジン系エンジン、LR-87の開発型。

右端はアポロ再突入カプセルの機能試験モデル初期型(E-2)

そして奥が、ジェミニカプセル機能試験モデル

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外装はきれいで、なんかうそ臭い。

しかし内容は極めて本物。

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計器類。というかスイッチ群。酸素パージみたいなヤバいのも見えます。

とにかくスイッチばかり。

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こちらアポロ帰還再突入カプセル。

大きいです。

スイッチ萌えという概念発明の瞬間。

初期のモデルなので、アポロ1号前、つまりハッチが中から開き難いバージョンです。

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中はひろびろ。しかし……

スイッチ!

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スイッチスイッチ!

この機体、スイッチ好きの作った地獄だと思いました。見渡す限りスイッチ!

スイッチの音録音してるヒトいますよ!うわぁ!

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可動部品の山!裏に引き廻されるラインの恐怖!

全く、こう多いと、これ実は人力記憶素子じゃないのか、って気がしてきました。

気をとりなおして、LR-87エンジンへ

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銘版の腐食が激しく、素性はわかりませんでした。

しかし、もえー。

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ケロシン系エンジンLR-105。マーキュリーアトラスの1段目にも使用されたタイプです。

スカートから燃焼室を覗きます。同心円状に並んだ噴射器形状がわかります。

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これはアポロ機械船メインスラスター。高真空用ヒドラジンエンジン、深宇宙用エンジンとしては過去最大のもの。

高真空用なので、ノズルが巨大です。

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エアロジェット製かぁ。

もえー。

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どこかのお寺の境内にありそうな塊ですが、

これはV-2のエンジン、初期型です。

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中を覗くと噴射器が。

何故こんなものがあるのか不思議です。

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太陽電池は明らかにダミーですが、金属などの加工は実物のそれです。

電装もされています。時代を感じるコネクタ形状です。

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外には、ロシア宇宙機を格納していたコンテナが。

恐らく、実際の現場でも、これに格納して運搬しているのだと思います。

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ソユーズのコンテナはもっとずっとマシなものですが……

木箱には”ミュージアム”と。今では足場代わりです。

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……あー、あと、倉庫中央にアポロ月着陸船の実物大模型(でかかった……)とかありましたが、実物じゃないので、パス。


とにかく、宇宙開発関係者なら、一度は見ておきたい場所です。

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