「宇宙機には二つの種類がある。生きている宇宙機と、死んだ宇宙機だ」
−とある宇宙技術者のセリフ
皆さんが、宇宙機、そう、人工衛星や探査機、有人宇宙船や宇宙ステーションを思い浮かべるとき、外見以外にどのようなイメージを抱きますか?
よくある間違いその1:東京上空に静止する衛星
よくある間違いその2:半永久的に、それこそ何千年も生き続ける衛星
よくある間違いその3:軌道がずれると即大気圏にツッコミ
よくある間違いその4:デブリ、いわゆる宇宙ゴミにやたらと大当たり
よくある間違いその5:とにかくスラスター吹いて高機動
よくある間違いその…ええいもうキリが無いっ。
最近でも平気で東京に軌道エレベータ建てる人がいますし、まぁ流石に宇宙で音はしないというのは一般常識となった(と信じたい)感はありますが、宇宙でレーザーが見えるのはまだよくある話ですし…
とにかく、これから、正しい宇宙機というものを、わかりやすく、貴方に叩き込みます。わっかりますかぁマクフライ!
宇宙機というのは、手のかかる愛玩動物みたいなもんです。手塩にかけて育てておいて、そして、宇宙空間という千尋の谷に落っことします。
死なないように、できるだけ念入りに育てるのですが、やっぱり落っこちて死ぬ奴、谷底で死ぬ奴、半死半生でさまよう奴が出てきます。かわいそうですが、谷底で働いてもらうために育てるのですから、仕方ないっス。できるのは、強くたくましく育ててやる事だけです。
宇宙機は、他の機械たちとは違います。壊れても、誰も宇宙まで直しにきてくれません。まぁ、ハッブルみたいにチョー高価な奴は、直して貰えましたが、数百億円程度の安物ではムリです。だから、自立します。常に自分の状態を地上に知らせるように作ります。壊れても予備を動かします。そして、生き残ることを最優先課題として動きます。
そう、生き物みたいなものなんです。
では、宇宙機の死とは何なのでしょうか。
一般に、自分の状態を地上に知らせる通信が途絶えると、死んだとみなされます。もちろん、通信機がちょっと動かなくなっただけで、その後復活!という事もありますが、まぁそのあたりは、肝心のその通信の内容から推測できます。というか、推測できるように作る訳です。
これはいわば脈がなくなる、って感じなのですが、さぁて脈を無くすには!
「はいはーい!」はいそこのアナタ!
「脈を壊す!」……死ねぃ!!(悲鳴と爆砕音)
えー、普通は、弱点っぽい所が壊れて、死んじゃう訳です。では、宇宙機の急所、弱点をズバリ指摘!それは、バッテリー!!
バッテリーは、電気部品のようなツラをしていますが、ガソリンエンジンや消石灰肥料のような、化学部品です。酸化のような化学反応から、イオンの移動をおこして、それを電力として取り出すしくみです。
モノが燃えるためには、燃えるものと酸素と熱が必要でした。バッテリーにも、ある程度の熱が必要です。また、暑すぎてもいけません。まぁ、そーいう種類の化学反応だと思ってください。
具体的には、氷点下20度以下で、また、普通は摂氏60度以上で死んじゃいます。まぁ、温度が元に戻れば性能は元に戻るのですが、電源が一回でも死ねば、他の部分も全部電源落ちてバタンキューですから、大抵それきりです。
そう、バッテリーは温度に弱い上に、肝心要の電源でもあるところが、弱点と呼ばれる所以なんスね。ヤバいのは特に温度が下がる方で、そういう場合、大抵、日陰で太陽が照っていない時なんで、太陽電池も発電しません。電力ゼロはデンジャーです。
他にも、宇宙機の弱いところを挙げていけば
電子部品:放射線に弱い
太陽電池:放射線に弱い
ヒンジ、軸受:真空に弱い
バルブ:真空に弱い
まぁ、これ弱点のカタマリみたいに思えるかもしれませんが、そんだけ、宇宙で生き抜くというのがキビシイという事です。はい。
最低限、生きていくために、宇宙機には以下の三つが必要です。
1:構体
2:電源
3:送受信機
まず、3:の送受信機。上に書いたとおり、これは宇宙機の脈です。これを切らしてはいけません。切れちまうようでは宇宙機の設計は失敗です。
切らないためには、地球に向いたアンテナと、電源が要ります。アンテナの方は、例えば宇宙機の全ての面につけておくとか(どっちを向いても地球に向いているアンテナがある)、全方向に放射するアンテナ(オムニアンテナ)を使えばラクにクリアできますが、電源なし、という訳にはいきません。
だから、2:の電源が要ります。電源は、主に、太陽電池とバッテリという組み合わせになります。この組み合わせがベーシック、定番です。
太陽電池だけではなぜ駄目なのか。まず、打ち上げの最中、ロケットの中では発電できません。地球の夜の方に回り込むと、地球の陰に入ってしまい、また発電できなくなります。それに、電力を食う装置を使うと、なんというか、その、貯金が欲しくなります。電力の使いかたってのはムラがありますからね。
太陽電池もまた問題を持っています。太陽電池は剥き出しだとあっという間、宇宙ではひと月と経たずに発電できなくなります。だから、カバーガラスを付けてやるのですが、これも普通のガラスを使うと、数ヶ月で真っ黒に変色してしまいます。真っ黒にするのは放射線で、宇宙機の軌道によって寿命はいろいろ(バン・アレン帯がヤバい)ですが、そのために、鉛ガラスや石英ガラスのような特殊なガラスを使わなくてはなりません。放射線遮蔽性だと鉛ガラスね。
さて、温度に弱いバッテリーをむき出しの宇宙空間から守るために、1:の構体が必要になってきます。他にも温度に弱い部品はいっぱいありますから、そういう部品に、安定な温度環境を与えることが、構体の重要な使命なのです。
宇宙機には、太陽の光で照らされた面積分の熱が入ってきます。反射する分を考えても、結構な量です。そして勿論、出て行く分もあります。暖まった(少なくとも宇宙の絶対零度ちょい上、よりかは遥かに暖かい)宇宙機のあらゆる面から、赤外線として熱が逃げてゆきます。
入ってくる分と出て行く分、これはどこかでバランスします。宇宙機の温度がどこかで安定になるという事ですが、それが摂氏マイナス百度、とか、プラス三百度とかいう辺りだと困ります。バッテリーが生きていてくれないと。この辺りが、構体の設計で決まってきます。宇宙機が夜の側、地球の陰に廻れば入ってくる熱はゼロですし、宇宙機の向きで面の向き加減も変わってきます。ここが実は、衛星設計の一番の正念場、一番それらしい部分だったりします。
他にも構体は、打ち上げのときのロケットの振動から、他の部品たちを守らなくてはいけません。振動は、固体ロケットだと10Gにもなります。また、打ち上げの加速でかかるGで、増えた自重で潰れるなんてことは、もはやあったりしては困ります。
そして構体は、太陽電池を貼る場所、アンテナを付ける場所、ロケットとくっついている場所でもあります。だから、無くちゃ困ります。
さて、上記のような事に注意して作ると、まぁ最低限宇宙機と呼んでもらえるものが作れます。勿論、宇宙で、軌道に乗っていればの話ですが。
どう作るかは、発動編にて解説します。
宇宙機も人間同様、ただ怠惰に生きているだけ、というのでは宇宙機失格です。駄目宇宙機です。ダメのダメダメです。
まっこと正直な話、宇宙機が生まれてくるには、お金が一杯必要です。だから、まともな働きを少しはしてくれないと困ります。特に税金で作っている奴なんかそうですね。
でも、二番目の話でした”宇宙機の最低条件”では、働くには少々力不足です。
まず、何をするにも電力が欲しいものです。通信衛星やるにも、観測衛星やるにも、宇宙ステーションやるにも。電力があれば、コンピュータが動かせて、大出力の送信機が動かせて、高性能のセンサが動かせて、ヒーターが使えて(これで構体の熱設計がめっちゃラクに!)、明かりが使えて電気炉が使えて、おまけに電子レンジも使えます。イオンエンジンだって使えます。
でも、”最低条件”版では、電力があんまり稼げません。稼ぐには太陽電池をできるだけ多く、太陽の方に向ければオッケェ。でも最低条件版は、宇宙機がどっちの方を向くのか、わかったもんじゃありません。太陽はどっちだ?宇宙機の全部の面に太陽電池を貼っておけば、とりあえず、確実に手堅く電力が取れますが、それも宇宙機の表面積で発電量が決まってしまいますし、太陽を向いていない側の太陽電池は無駄な訳です。
さてどうしよう!しかたないなぁ(ゴソゴソ)パカパカーン!(ドラえもんがポケットから道具を取り出すときのSEで)”パドルぅー!”(大山のぶ代の声で)
えーと、よく衛星から生えている、太陽電池を貼り付けたウチワのような奴のことです。わしらはそう、パドルと呼んでいます。語源は、ボートのオールの別の呼び名の方から、形が似ているという事から、らしいっス。
アレを太陽の方に向けていれば、その面積分の電力がフル効率で稼げる訳です。勿論、裏に太陽電池を貼る必要はナシ。ずーっと太陽の方に向けとけば万事オッケーです。
それに畳めるので、ロケットに積まれている時には畳んで、宇宙で広げるって事ができます。ロケットは狭いからねぇ。最近はアンテナも畳むのがトレンドです。
でも、パドルの根元の回転軸では、三次元X,Y,Z軸のうちの1つの軸分しか太陽を追いかけることができません。あとは、宇宙機ごと向きを変えないと駄目です。
他にも、宇宙機の向きが自由にできれば、でっかいアンテナをぴたりと日本に向けて衛星放送したり、センサを向けて偵察したり、遥かな星雲を観察したり、とにかく仕事をする上でも便利です。ある種の仕事には必須の機能です。
というわけで、
4:姿勢系
これが必要になります。
さて、宇宙機の姿勢を変える方法だが…
「はいはーい!」おっ、元気がいいねぇ。それ、言いねぇ。
「アポジモーター!」…てめぇはOVAガンダムの見過ぎだ!アホー!アポジモータっていうのは、アポジ(遠地点)で吹くからアポジモータって言うんだ。罰として廊下に立ってろ!
モビルスーツなんぞが、姿勢を変えるために吹いているのを、スラスターと言います。スラスターには二種類あります。燃焼ガスを吹くものと、燃やさず直接ガスを吹くものです。
燃焼ガスを吹くタイプは、一液(触媒)燃焼と二液燃焼と2種類に分かれています。とにかく燃やす訳です。フツーのロケットエンジンでOK?と思われるかも知れませんがぎっちょん、宇宙ではちょいとひと工夫が必要です。
地上からの打ち上げでは、推進剤が重力で下に、つまりエンジン側に勝手に流れてくれましたが、無重量ではちょいとそういう訳にはいきません。その点にさえ気を付ければOK(この辺はまた発動編で)。真空中ではエンジンも最大効率で働きます。
でもキビシイ宇宙環境では、簡単なエンジンが欲しくなるのが親心。で、よく使われるのが、ヒドラジンと四酸化二窒素という組み合わせ。この組み合わせ、なんと、点火の必要ナシ!触れ合うだけで燃えあがるラヴファイヤー!さらに常温で保存可能と、ものすごくナイス、無敵のタッグに見えますが、ところがぎっちょん、ヒドラジンは有毒なんです。
えーとですね、この組み合わせ、ロケットでも使われています。でっかいロケットの中に猛毒がタップンタップン!ではこれが打ち上げに失敗すると?
時に1995年、中国、西昌射場では、長征CZ-3Bを使った、APSTAR-2通信衛星の打ち上げが行われようとしていた。全世界に向け中継される中、ロケットは…だんだんだんだん姿勢が傾いてきて…近所の村に、GOーッ!!わーっ見ちゃ駄目!中国当局の役人の手が中継カメラのレンズを覆うが、多国籍企業である衛星メーカーの技術者の口に戸は立てられねぇ。
…はい、恐いですねぇ、恐ろしいですねぇ…(淀長さん口調で)
でも、便利だから、使われます。特に衛星では。衛星なら、ホラ、事故ってもまわりに人いないし。
単にガスを吹くだけのスラスターは安全、単純そのもの。コールドガススラスターと呼ばれます。エアガンでサバゲなんてやっている人ならよくわかると思うけど、ガスボンベにプロパンとか炭酸ガスとか窒素ガスとか詰めて、圧力でガスをプシュッと吹く訳です。宇宙機でよく使うのは窒素ガス。電磁バルブをちょいとスイッチオン!で安全簡単に姿勢制御!ただ…噴射速度がタンクに詰めたガス圧頼り、というのがちょいと心細いけど。 二液燃焼なら、燃焼反応でたっぷりガス圧が稼げるけど、コールドガスはその点、大幅に性能が劣ってくる訳です。でも手軽だから、宇宙飛行士のMMU、命綱無し宇宙遊泳なんかによく使われます。
さて、ここまで説明しておいてナンですが、フツーの宇宙機では、別の方法を使います。スラスターは贅沢なんです。推進剤が無くなればオシマイだし、凍らせても駄目、暖かくなりすぎてもタンクが破裂してしまうし、結構デリケートなんです。バルブもよく故障するし。
さて、別の方法、宇宙機での姿勢制御の定番とは、
”リアクションホィール”てぇ言います。
これは、モーターで廻す円盤です。ぐーるぐる廻します。これを衛星の中に置いておきます。
この円盤を、加速!したら、この加速で発生したトルクはどーなるの?そっ、宇宙機を、逆の方向に廻します。
宇宙では何も支えるものが無いので、作用・反作用の法則って奴がキッチリハマる訳です。あと、運動量保存則も。
ここで問題になるのは、角運動量の保存則。つまり、回転数を変えて角運動量が増えると、よその角運動量が減る、つまりよそとはこの場合衛星で、ゆっくりと逆に回転をはじめたりする訳です。
ゆっくり、というのは、リアクションホィールと衛星の大きさ、特に慣性モーメントの差のせい。慣性モーメントというのは回転バージョンの質量みたいなもんで、運動量が質量と加速度の掛け算だったように、角運動量は慣性モーメントと角加速度、つまりトルクの掛け算になります。
で、ホィールの慣性モーメントは衛星のそれと比べると小さいので、衛星にトルクを与えようと思ったら、与えたい向きの逆に大きなトルクを作らないといけません。つまりモーターの電流を流すというコト。
この、リアクションホィールを、動かしたい軸まわりに、例えば、X,Y,Z三軸互いに直角な向きに三つ置けば、好きな動きが、そう、モーターに流す電力さえあればできるのです。電力だけ!ホラ、スラスターより、ずっと良いでしょ。
例えば、ロシアのミールは、最初のモジュールにはホィールは積んでなくて、姿勢制御は全てスラスターだったのです。でも、これだと燃料をがんがん使ってしまって、補給が大変!てな訳で、次にドッキングしたモジュール、クバントにはホィールがついていましたとさ。めでたしめでたし。
しっかし、どんなに良いものにも、大抵欠点があります。まず、モーターの回転速度には、これ以上回転数を上げられない、上限というものがあるコト。無限に加速するなんてできない相談です。でも、上限まで回転数が上がっているリアクションホィールでは、それ以上回転数を上げる方向に、宇宙機を向けられなくなります。支えるものが無い宇宙では、そのあたりは厳密です。だから、時々、宇宙機の向きをそのままに、上がりすぎた回転数を減速しないといけません。これをアンローディングと言います。例えばミールだと、メインモジュールのスラスターで姿勢を保っておいて、ホィールを減速、アンローディングするのです。
欠点をもーひとつ。回転するものには、その軸を支える、軸受けが要るってことデス。当然ではないかって?いや、地上では良いんですヨ。フツーのグリスなんかが使えますから。宇宙では、フツーのグリスは使えません。真空で成分が蒸発しちまうんです。グリスみたいな、回転を滑らかにするものが無いと、高機能な回転装置は、もうダメダメです。では、そうするかというと、
1、磁気軸受け。マグネパワー!で軸を、どこにも接触させずに廻します。要は、摩擦なんで、接触レスなら完璧です。でも、これって結構先端テクで、難しいんですぅ。
2、メタル軸受け。えーと、最近ミニ四駆なんかしたことありますか?タミヤのキットには、最初このメタル軸受けが入っています。グリス無しでオッケェ!なこの軸受け、フツー、ミニ四駆のセオリーとして、ボールベアリングに速攻で交換。つまり、そういうことです。
3、真空グリス。そういう便利そうなモノあるなら最初から使えって?いや、これが結構クセがあってねぇ。特に低温では全然ダメダメ。
4、特殊コーティング。最近の安物フライパンには、ふっ素コーティングってしてありますね?こげつきナシ!あれです。でも使い込んだ人ならわかると思いますが、そのうちやっぱしコーティングが剥げちまうんですよねぇ。えっ?使い方が悪い?
5、真空で使わない。要するに、リアクションホィールをがっちり気密にして、中に窒素ガス(こころなしかフツーの空気よりも摩擦が少なくなるらしい)でも入れておけば、フツーのグリスが使える訳です。でも、窒素ガスの摩擦でも、結構ばかになりません。
…とまぁ、色々むつかしいんス。モーターもまた結構面倒だったりします。
宇宙では、こういう所が重要になるんです。そう、軸受けは大事です。戦争でも、軸受け工場は一番に爆撃されますし。えっちょっと違う?
むっかーしむかし、宇宙世紀紀元前(当然だ)、まだ三軸姿勢制御衛星が贅沢品、高嶺の花だった頃は、衛星は大抵、”スピン”という方法を使っていました。
要するに、”ひまわり”なんかのあの、円筒状のカッコで、回転する訳です。回転していて向きの制御もあったもんじゃ無いって?いやいや、回転軸の方向だけはピタリと決まります。それに、回転速度が一定なら、周期的に前回と同じ向きを見るチャンスが廻ってくる訳です。地上をスキャンする用途なんかにはもってこいですな。
ちゃんとスピンする衛星にするためには、コマみたいに軸まわりのバランスが重要です。宇宙機の中にはいろんな機械が入りますから、できるだけ軸まわりにぐるっと対称に配置します。で、設計ではそのあと、ちゃんとバランスが取れているか厳密なチェックをしたり、バランス取りの重りを付けたりします。
ちょいと衛星にスピンかけておけば、姿勢にはけっこう不自由しない訳です。一定方向に何かじっくり、例えばパラボラを向けたい、という時には困りますが。一番困るのは電力。そう、パドルがつかないじゃん!!
という訳で、今でこの技法、廃れつつあります。でも、簡単な任務の宇宙機には、これで充分というのが結構ありますから、今でもちょくちょく使われています。
しかしスピンの魂は、実はこっそりモーメンタムホィールのふりをして受け継がれています。モーメンタムホィールには二種類あって、ゼロモーメンタムと、バイアスモーメンタム、このうち後者がスピンの原理を使っています。
バイアスモーメンタムでは、ホィールのうち一つを最初から回転を掛けておきます。つまり、内部にスピン衛星を持っているのです。で、どうなるかというと、見た目は箱った三軸姿勢制御衛星、しかし内部では、がっちりとスピンの一軸が衛星の姿勢を固定するのです。
ゼロモーメンタムではホィールは三軸自由に動くように、普段は回転させません。
スラスター、リアクションホィール、スピン。この三つが、姿勢制御の三大メジャーです。この三つが宇宙機の姿勢制御を影で牛耳っているのです。
残りはみんなマイナーです。でも面白いんで、いくつか紹介しましょう。
まず、”重力傾度法”これを使う宇宙機は、ちょっと独特の格好になります。本体から長い棒を伸ばして、全体を細長い棒のようにするのです。するとまぁ、潮汐力というのが働いて、棒を、地表に対して直角に立てちまうのです。
潮汐力というのは、宇宙機の中でも地上に近い部分にかかる地球の引力と、地表から遠い部分にかかる地球の引力の、ごくわずかな差です。ごくわずかでも宇宙では効いてきます。だから、姿勢は、重心を中心にして、地表に近い部分はより近く、遠い部分はより遠くに行こうとします。
決まるのは三軸のうちの一軸だけですが、その軸の端、棒の端がちゃんと地球を向いてくれるんで、地球観測とか通信とか、結構使えます。ただ、パドルをちゃんと太陽に向けるには、この方法だけじゃ駄目ですし、地球の重力場というのが結構ばらつきがあって、棒がちょっと傾いたりすることがあります。
そういう問題を心得てさえいれば、非常にナイスな方法です。なんてったって、電力すら使わない!!
実はシャトルも重力傾度で姿勢制御をしています。まぁ、細長いものはほっておくと、重力傾度で安定するように姿勢が変わってしまうのですが、シャトルはその辺りちゃんと意識して、メインエンジンを地表に、底を軌道進行方向に向けた姿勢を保ちます。
次に、”磁気トルカ”えーと、地球はでっかい磁石になっているという事は、小学校の頃に磁石のコンパスと一緒に習うことですが、さて、宇宙機が磁石になると、はてさて?宇宙機もコンパスと化して、N極を北極に向けてしまいます。
実際には、電磁石を積んでおいて、必要なときに電流を流す訳です。簡単、単純、安くできそうだし、これが壊れるなんて有りそうに無い話です。
欠点はというと、もうお解りかもしれませんが、南北を指すしか能が無い、という事です。これは複数、違う向きに電磁石を置いておくと、多少は使えるようになります。あと、磁場のある惑星でしか使えないというのもあるか。しかし、マイナーはマイナーなりにサポートに、例えば、リアクションホィールのアンローディングに使ったりする訳です。
さて今度は”ソーラセイル”光圧(太陽風に非ず。太陽風とはいろんな元素の原子核が猛スピードで飛んでくるというもので、百害あって一利無し)つまり光の圧力(そのまんま)を受けて、それで衛星の姿勢を変えるというもの。そんなもので変わるのか、と思いますか?でも、ほんの少しでもチカラはチカラ。止めようとする奴は宇宙にはいません。さて、こんなもん使う奴いるのか?います。例えば、死んじゃったETS-VIでは、パドルの端にソーラセイル(ちっちゃな板)を付けて、試験をしようとしてました。多目的運輸衛星(MTSAT)、ひまわりの後継では本採用です。
ラストは”リアクションブーム”長い腕を振り回すと、その反動で本体が動くという原理の方法です。モビルスーツがこれで姿勢制御してるなんて書いた本がありましたが、できるかいっ!まっ、こーいう方法があるという事です。逆に、ロボットアームを使うときは、この辺り気を付けないといけません。
えー、具体的に姿勢を変える、そりゃ結構な事で、で、どっちに動かせばいいのかご存知なんすか?
己の姿勢、向きを知らずんば、いかな高機動も無駄の無駄無駄。
姿勢を知るにはセンサーを使います。これも一長一短、いろんな種類が揃っています。
じゃあまず、太陽センサから。これはモチ、太陽の方向をチェックします。まぁ、太陽電池の発電量を見ているだけでも結構なことがわかるのですが、光量を感知するセンサを宇宙機のいろんな面に置いておいて、アウトプットのベクトルを合成してみると、ほら、結構な精度で太陽のある方向がわかります。
センサを並べて、その前にスリットを置いたりすると、更に精度よく太陽の位置がわかります。
次に、地球センサ。アンテナを地球に向けるには、なくてはならないセンサです。たとえ低軌道で、世界の半分を地球が占めていたとしても、センサがなくては地球は存在しないも同じです。
ただ、地球には問題がいくつか。地球は、海があったり雲があったり陸があったり、夜になったり昼になったり、見えかたが一定ではないのです。だから、地球センサは、一定に見えるものを使う方法と、コンピュータで画像認識して地球だと判断する方法、この二つがあるのです。
一定に見えるもの、それは大気。さらに絞り込んで二酸化炭素の波長の赤外線を見ます。すると地球は、まるく均一でエッジのはっきりした円盤に見えるのです。でも、センサの方がちょっと問題。そういう赤外線波長の見えるCCDカメラはまだ、宇宙に持っていけるほど小さくありません。代わりに使うのは焦電素子というもの。
ヤローなら、公衆便所の小の方、便器の上の方に付いている黒い窓は知っていると思います。用を足して離れると水を流してくれる奴。あれです。アレは、人間の赤外線に反応します。ただ、そのものを見ちゃいないんです。あれは、”人が来て赤外線が増えた”とか、”離れて赤外線が減った”というような、赤外線の量の変化しか見えないのです。だから、変化のしかたをずーっと少なく、そろーりそろりと便器に近づき、用を足したらまた、ゆーっくりゆっくり離れたならば、水は流れません。ちと公衆衛生上問題あるけど。
焦電素子というのは、地球のフチで反応するんです。だから、ばっちり地球を真芯に捕らえているときには反応しません。あらぬ方向を向いているときも反応しません。ヤバいのは、ゆーっくりゆっくり、宇宙機の姿勢が変わっていって、いつのまにかあらぬ方向を向いているとき。焦電素子は反応できません。
だから、使い方を工夫しないといけません。昔は、みんなスピン衛星でしたから、横に付けとけば一回転で地球の縁の出入りがチェックできたのですが、ホィールなんかで三軸安定していると、そういう訳にはいきません。だから、センサだけを動かします。でも、センサ全体を動かすと面倒なので、あいだに鏡を置いて、その鏡だけを動かします。
あ、フォトンドラッグ検出素子って使えるのかなぁ。
さて、もう一方の方は、フツーのCCDセンサが使えるのですが、その代わり、コンピュータをたっぷり使います。でもまあ最近は、コンピュータの性能なんて、売るほど余ってるんでオッケェかも。
さらに、磁気センサ。これはまぁ、コンパスですね。実際には、特別あつらえのコイルで互いに三軸直交な構成にして、コイルを貫通する磁束に比例する電圧なぞが出てくるのをチェックします。簡単なんで、売ってる奴で一番安い宇宙用が70万円、私が試作した奴で二万円程度でできちゃいます。
今度は決定版、スタートラッカ。目立つ星とか星座を見ます。以前はというか今でも目立つ星を追尾するのが主流ですが、最近はやっぱ星座チェックですね。星座のデータをコンピュータに持っておいて、CCDのデータと照らし合わせます。星ってのはどっちの方向にもあるし、惑星や、そう、太陽から離れても大丈夫です。星はどんなに性能の良いセンサでもドットにしか見えないので、センサの分解能まで精度をどこまでも上げられます。これが決定版と呼ばれるゆえんです。コンピュータの性能がたっぷり要りますが、そんなもの今時のヤツを使えば問題ナシ。
センサにはもう一つ、種類があります。えっ、何を見るかって?いや、外を見る訳じゃありません。皆さん忘れていませんか?ほら、”ジャイロ”って奴を…
ジャイロには大別して三種類あります。まず、メカニカルジャイロ。これは、昔なつかしの地球ゴマみたいな奴が中に入っているモノ。地球ゴマは軸受けで自由に動くようにしておいて、コマにはスピンを掛けておいて、スピン安定にします。このコマは姿勢を安定に保ちますが、外の方は勝手に動いている、そういう時に、コマと外の差を見ると、コマのスピン軸に対してどれだけズレて傾いているかがわかるというもの。
次に、レーザージャイロ。光をまわすリングを作って、正方向と逆方向、両方にレーザーが走るようにします。リングをそのまま発振器にするんでさぁ。一周して戻ってきたところで、二つの光を重ねます。すると、干渉縞という縞模様が見えるのです。なぜそんなものが見えるかというと、波長とかうなりとか、そのあたりの話になるのですが、まあそんなもんだと。さて、このリングを、例えば右に廻しマース。するとあら、縞に変化が!そう、動かした分、右回りのレーザーの通らなければいけない長さと、左回りのそれが、微妙にズレてしまうのが見えたという訳。この変化を見れば、どのくらい廻したのかバッチリです。
この方法の良いところは、軸受けとか、スピンするコマとか、機械的にヤバそうな部品が全く無い事です。悪いところは、この変化が微妙すぎるもんで、例えば温度のせいでジャイロが微妙にちぢんだりすると、それだけで光の通る距離が変化して、あれマズい、という事になってしまう点です。だから、温度でゆがまない材料を使ったり、温度を測定して、歪んだ分を差し引いたりします。
歪まない材料を使うのはリングレーザージャイロ。ゼロデュワーというガラスを使って、ガラスに三角の溝を掘り、カドに鏡を置いてリングを作ります。温度を測定するのはファイバージャイロ。光ファイバーでリングを作って、それを小さく巻いて折りたたみます。
さて次はけっこう最近のデバイス、圧電振動ジャイロ。これはハンディビデオカメラの手ブレ補正とか、カーナビなんかに使われているものです。これは、棒を用意しておいて、周りに圧電素子というものを貼っておきます。圧電素子は、棒が歪むと、その歪み相当の電圧を出します。さて、棒がその軸まわりに動くと、棒がねじれて、圧電素子に電圧が出る、とまぁそういう原理なのです。実際には棒は、数ミリサイズの小さなもので、軸受けもガラスも使わずにずっと小さいジャイロができる訳です。問題は温度。やっぱり歪みます。それもちょっと一筋縄でない歪みかたです。
そして最後はマイクロマシンジャイロ。半導体の製造プロセスでシリコンを削ったり盛ったりして、カンチレバーなどの機構部品を作り込みます。補正なんかも内部に半導体の集積回路を一緒に積んでそいつにやらせますので、超小型で高精度が期待できます。
構体、電源、通信系、姿勢系、この四つをまとめてバス系と呼びます。そして、宇宙機らしい仕事をする部分をミッション系と呼びます。バス系は使いまわしができるように設計しておいて、ミッションを乗せかえるだけで打ち上げオッケェ!となるようにするのが巧いやりかたです。
バスにも、軌道やミッションの得手不得手があり、いろんな種類があります。
有名なバスをいくつか挙げてみましょう。
Boeing-376バス:世界の静止衛星のシェアの半数以上を牛耳る、ボーイング社の昔のバスです。スピン衛星ですが、入れ子の筒になっていて、望遠鏡式に筒を伸ばして、太陽電池の面積を増やすようになっています。
Boeing-702バス:ボーイング社の主力バスです。三軸高性能、しかも量産で百億円。こりゃ勝てないよなぁ。
LS-1300バス:ロラール社の主力バスです。日本のひまわりの替わり、多目的運輸衛星(MTSAT-1R)はこいつの少し型の古い、パドルが片側無くなった物です。
A2100バス:最近勢力を伸ばしているロッキードマーチン社の主力バスです。スーパーバードDなどがこのバスを採用しています。
SSTL MicroSat-100英サリー大学の周辺企業、SSTLの現在の主力小型衛星バスです。モジュールは重箱を重ねたような構造のセンターピラーに収められています。そしてその外側にパネルと太陽電池を貼るという構成です。
最初の4つは静止衛星用です。高度36000キロの赤道上、バン・アレン帯の向こうの、地球を一日で一周する軌道傾斜角ゼロの軌道に乗り、みかけ上、赤道上の一点の真上から動かないようにします。ただ、みかけ上の静止なので、気を抜くと静止軌道上を漂ってしまいます。だから、スラスターで位置を保つ必要があります。静止衛星の寿命は、そのスラスターの推進剤が切れた時です。だから、静止衛星を長持ちさせようと思ったら、燃費の良いエンジン、例えばイオンエンジンなんかを使わないといけません。
静止衛星はBSやCSの放送衛星や通信衛星、気象衛星などに多く使われています。今のところ、宇宙産業で儲かるのは、静止衛星だけです。
便利な静止衛星ですが、ずっと北に住んでいる人たち、例えばロシヤな人たちには、静止軌道なんて水平線の方で、あんまり有難味がありません。だから、モルニヤ軌道という、軌道傾斜角の大きい、楕円軌道をよく使います。図で書くと、こんな塩梅です。
モルニヤ軌道と呼ぶのは、ロシアのモルニヤ衛星シリーズで初めて使われた所から来ています。モルニヤ衛星って格好がナイスですよねぇ。(……)
高度をずっと下げて800kmほどで、軌道傾斜角90度(直角!)北極と南極をまっすぐ通る軌道もよく使われます。衛星をほっといて地球は勝手に廻るけど、衛星と太陽の向き加減は変わらないので、うまい具合に軌道を調整すると、真下の地上は常に朝とか、常に夕方とかいう塩梅にできます。朝や夕方は、地上に影が長く伸びて、環境観測とか偵察なんかにちょうど良いのです。衛星にとってはいい知らせが一つ。太陽がいつも同じ向きにあるから、パドルを動かす必要が無いってこと(実際にはあるけど)。悪い知らせは、常に同じ面を太陽にあぶられるということ。構体の熱設計が面倒なことに。でも、日陰に入ることもないし、結構いい塩梅です。
もっと下の軌道では、世界中を数十の衛星で覆うべく、緻密な軌道が練られることもあります。最近のイリジウムやグローバルスター、オーブコムやテレデジックなどが群れをなして、そういう軌道を巡ります。
そして、とにかく宇宙(そら)に上がればいいという宇宙機たちもいます。そういうのは、打ち上げられた場所から、一番打ち上げやすい軌道に乗っかります。ケープなら軌道傾斜角28.5度、バイコヌールなら軌道傾斜角51.6度。
さーてさて、なんかつまらんなぁと思っていたアナタ、はいはい、ちゃんとヒト乗せますよ。そりゃやっぱ、オレも有人宇宙船、作りたいもん。
上で話した、バス・ミッションの区切りだと、人間様はミッションに分類されます。そして自動的に、宇宙機最大の弱点も、人間様にチェンジします。
人間みたいなぷにぷにした肉の固まりなんざ、振動試験も熱真空試験も通りません。放射線にも弱そうだし、電気だけじゃ動かないし、面倒この上ない部品です。だからいろいろ装備を付けて…やっぱ面倒だなぁ。
まず要るのは空間。そして壁。構体系の仕事です。熱や振動から守る、気密になった空間です。
人間も部品ですから、まず熱の心配からしましょう。使用温度範囲、やたらと狭いし。宇宙船というと、一定温度のヌルい空間を想像しがちですが。そんな冷暖房完備な環境にしたいのなら、それなりの手間が要ります。宇宙機の熱平衡温度をちょっと低めに設計しておいて、希望の温度へヒーターで暖めるのも手でしょう。また、人間は発熱します。これも処理する方法を持たないといけません。
振動はどうでしょうか。打ち上げ時にあんましシェイクするとまずいでしょう。危険なのは固体燃料ロケット。打ち上げ時の衝撃は、最大10Gにもなります。
最後は真空、それはマズイ。んで気密です。そこで、空気をどうするか決めましょう。純粋酸素1/3気圧か、フツーの窒素4:酸素1でブレンドされた混合空気1気圧か。オススメは混合空気1気圧。理由が知りたかったら、映画「アポロ13」の冒頭のシーン、観てね。
空気循環装置が故障したら、シロートがまず気にしがちなのが、まず酸素の量。しかしそれ以前に、二酸化炭素の方が問題になります。ヒトは、二酸化炭素の量が5%を超えるとヤバいです。でも、呼吸をやめて二酸化炭素を出さない、って訳にはいきません。
そういう装置には、二酸化炭素除去システムが付いていないといけないのです。だからってほらそこ、鉢植えなんか持ち込まない!
一番簡単なのが、水酸化リチウム。二酸化炭素と反応して吸着します。ミールには非常用に、これを詰めた缶詰”キャンドル”を装備しており、いつぞやは使う羽目になりました。
次に高級なのはゼオライトの分子ふるい、こちらは焼くと吸着していた二酸化炭素を放出して、また使用可能になります。もちろん、放出された二酸化炭素はうまく別に誘導します。あとはご自由に。
今のところ最高級品は、固体アミンを用いるもので、それをサバチエ第一反応に通し、水と酸素とメタンを取り出します。メタンはゴミの日に出します(嘘)。これはまだ採用したものはありません。国際宇宙ステーションに載るのかなぁ。
人は二酸化炭素の他にも、メタンなどの有毒物質を出します。これは水酸化リチウムでは無理。活性炭かサバチエ第一反応の出番です。
あとは酸素タンク。1日に一人あたり836グラムが必要です。ほら、あんまし心配せんで良かったでしょ?
水は1日に3kg、食料は618gが必要です。宇宙にちょっとしか居ないのなら、リサイクルは考えなくていいかな?でも、水をリサイクルできると結構夢が広がります。さて、このリサイクルする前の水とはホラ、アレです。アレを飲めるようにする訳でさぁ。ちょいと逆浸透膜とかイオン交換膜なぞ使って、無味無臭透明の飲料水にしてくれます。さぁ、飲むがよい!
さて、しばらく住めそうな雰囲気になりました。酸素と食料と、あとちょびちょびしたものがあれば、随分暮らせそうです。
最後に、地球に帰るための、帰還用装備が必要です。もちろん、星の海に骨を埋める(どこに?)つもりなら要りませんが。
帰還用装備には、使い捨て型と再使用型があります。違いは、外側を覆う材料です。帰ってくる途中で、宇宙に上げてもらう時にロケットに付けてもらった速度を、空気との摩擦で殺さないといけません。速度はちゃんとゼロにしないと、それは地面への激突、ヤバいでしょう。
この空気との摩擦、現実にはシャア少佐でも白いモビルスーツでも無理無理の、過酷なダイブです。最初は、周りに空気を感じることはありません。空気分子が一つ一つ、宇宙機にぶつかり、宇宙機の表面を削り取ろうとします。そしてどんどん分子の数は多くなり、宇宙機の表面温度は、ヤバいと3000度、ちっちゃなシャトルでも1400度になります。普通の金属では無理な温度です。だから、使い捨て型だと、表面に、蒸発すると宇宙機を冷やす、徐融材というのをべっとり塗っておきます。
再使用型は直球で、温度に耐える材料、セラミック系のあれこれなどを使います。これを宇宙機の底、大気へと突っ込む前方に貼っておきます。
これで速度がだいたいゼロになったかなーというところで、つくりつけの翼や、パラシュートや、逆噴射エンジンで着陸すれば、帰還完了です。
でも、チミはそれだけで満足か?暮らすだけで満足か?やっぱ男なら、星の海に、旗はためかせて(無理)旅立たねば。
ということで、
5:推進系
をやりたいところだけど、それは(青春編)にて。
では。