14P「・・・やがては星間宇宙をかけるラムシップに・・・」
艦がバザードラムジェット推進を採用していることを示す。バザードラムジェットとは、恒星間に希薄に分布する水素分子を、巨大な磁界で捕捉し、集めた水素を核融合推進の燃料及び推進剤とするものである。
つまり、ラムジェット推進を始めてしまえば、加速するのに後はもう燃料や推進剤は要らないのである。ただし、ある程度初速が無ければ、磁界で回収する分では臨界に不足する。
16P「船を前方の緩衝ハーネスのなかへ運んだ。」
加速中の艦に接舷できる唯一の位置は、艦前方である。緩衝ハーネスは航宙艦とタグとの最終相対速度差を打ち消してくれる。
17P「虹彩型のドア・ハッチが・・・」
虹彩型とは、いわゆるカメラの絞りのような機構である。とても気密を保てる機構とは思えないのだが・・・・
43P「伸縮自在の廊下が、各種のコンパートメントをつないで環状の生活区域を形づくり、それらはゼロgのときには、完全に伸びた形で船体の軸と九十度の角度をなして回転していた」
このゼロgとは、艦の加速度である。遠心力と艦加速度との合計ベクトルが、常に床面と垂直となるよう、角度を変化できるらしい。
43P「冷凍加圧タンクにたくわえられた水素・・」
推進剤は液体水素のかたちで貯蔵される。
49P「現在核付近で、一次ソレノイドの点検・・・」
ソレノイドとは、普通リレー、って電気のリレーの事を指す言葉だが、ここでの意味は不明。コアの磁界強化機能に関連した、電磁的動作の制御を担当する部分だと思われる。
57P「レーザーもすべて融合コントロールから防御機能に切り替えられ、深空間探索機能が活性化される」
一つの発振器、という訳では無いだろうが、例えば攻撃専用のレーザ発振器というのもが存在しないことを示す。
62P「そのトロイド形の図・・・」
トロイドとは、円錐曲面回転形、つまり漏斗形である。漏斗の開口面がラムスクープ、喉が融合エンジンである65P「三百メートル離れて・・・」
艦内の居住スペースは、信じられないほど広大である。これは主に長期の航宙に配慮したものと思われるが、遠心居住区の、コリオリ酔いの不快でない最低規模であるのかもしれない。
94P「・・・希薄な星間水素が・・・」
磁界によって捕捉できるのは、イオン化した物質だけである。だが、星間分子のほとんどが中性であると思われる。従って、航路前方の水素分子を強制的にイオン化しようという訳である。
磁場にパルスがあるというのは、ありそうな話である。
102P「・・・スーパーコアを即時閉鎖し・・・」
スーパーコアこそ、磁界支持の要であることが読み取れる。絶対零度近い冷却によるマイスナー効果によって、磁場絶縁を図ったものと思われる。
鏡コイルとは、推進機のノズルが主に磁場によって形成されていることを示す。詳しくはダイダロス計画のノズル設計を参照のこと。
111P「深空間探索、中断中」
これも前述のとおり、レーザ発振器の共有のためである。
114P「ただ一発のミサイルが・・・」
ここで憂国は、推進剤タンクを3つ失っている。このタンクは、ジューコフの破壊されたBクライオタンクと同一のものである。従って、外形は球であると推論できる。
117P「ディスクの格子は・・・」
スーパーコアの構造が意外と貧弱であることがわかる。磁場ストレスに対しても、この程度の耐性しかないとすれば、スーパーコアの目的は何なのだろうか。
120P「それは居住エリアの・・」
居住区はマイスナー効果による磁界シールドによって守られている。
138P「・・・全クライアタンクの修理と・・・」
この部分から、憂国の推進剤タンクは合計3つであると結論できる。
143P「サーヴィス・リンクとは・・・」
どうも居住ブロックは、外部から完全に絶縁されている訳では無いらしい。
164P「船は百八十度・・・」
エンジンは”引き寄せる”ことが可能なのか?
221P「田村はどうやら、船を”感じて”いた・・」
放熱パネルやグリッドの成長構造は、憂国の特徴の一つである。
227P「<憂国>には、ごく狭い空間だが・・・」
マイスナー効果に依存しない、原理的に中性な空間が、しかも3個所存在するらしい。
247P「すでに燃料は、もっとも低い引力にセット・・・」
ガス惑星の上層大気から水素を汲み取っている。
261P「二つの遮蔽体が吊りあげられ・・・」
よくわからん複雑怪奇な構造である。
以上の事が判明する。これらから推測されるのは、以下図のような構造である。
更に、融合エンジンが艦本体から隔離されている可能性も指摘できる。
肝心の諸元はほとんど不明。・・・・全く、謎に満ちた艦である。