日本のSFは復活しようとしている!あれもこれもSFじゃないか!実は盛り上がっているんだ!!
…ふぅーん。
西暦2000年の春に、こんなものに出くわすとは。悪い冗談か亡霊のような本です。このまま古本屋の奥で発掘しても違和感のない一冊です。
古参のSFファンの持つ、SF世界観で精一杯背伸びした様子がうかがえます。頑張っています。しかし、ヤングアダルト抜き、ネット抜き、ゲーム抜き、新しいテクノロジー抜き。
かつて我々を駆り立てたエッジの、なれの果てです。新人賞作家ですら、骨董ガジットで一杯の、生まれながらにして時代に取り残された代物しか提示できないのです。
ネットワーク標準時(UTC使おうね)、アプリカント(エージェントを現実そっくりの仮想空間に飼う意味は?)宇宙ホテルに無重量実験室(そんな駄目μG環境使う研究?)エアバスのスペースプレーン(悪い冗談?)宇宙に行くと地球はその分軽くなる(…理科の勉強からやりなおそうね)、気分悪いけどツッコミ続けます。
宇宙機関係の描写はダーメダメ(一杯ありすぎていちいちツッコミたくない。もちょっと理屈で考えてくれれば)、超伝導材を使った防磁服(生体に悪影響出るような磁界をそんな広範囲に、おまけのパドルの電力で得られるって?電磁石、作ったことある?)象牙の塔で殺人事件で最後は金田一少年でシメ。うげぇ。
でも、イラストレータはなにげに豪華。実はこれ、”濃くない沓澤龍一郎”大本海図の挿絵目当てで買いました。
いわゆるSF版「このミス」ですが、なんというか、中身は当然のチョイスなので、読んで美味しい部分はあまりありません。ま、これで意外だったりしたら、色々と大変になるのでしょうが…
ハンチントン舞踏病。見知らぬ父親と生まれて初めて会ったとき、ピエールは、自分のその運命を知った。自分に残された時を生き急ぐように、遺伝子研究に打ち込む彼はやがて、遺伝子変異の一部の振る舞い、フレームシフトに惹かれていく。
焦点の無く、ハリウッド流儀のアクションでケリをつけるという塩梅の、読んで損したと感じる類の作品でした。ムカついたので、以後多少ネタバレを含みます。
アイディアの一つ、変異発現を誘発する変異蓄積がタイマーとして働くという奴は、それで発現が全世界的に斉一的に起こるという、便利な代物なのですが、そんなもの逆に発現時期をバラけさせるだけでしょう。
逆に、タイマーが働くならば、変異は異常な振る舞いを見せるでしょう。生存に向かない変異が刈り取られず、しかも保存されたまま発現の日を待つのです。”変異の追い越し”なんてものも可能になります。変です。トラッドな中立説信者として、プログラマーとして、そんな不自然な説は許容できません。
そう、中立説ってヤツは、しっくり来るんです。コピー、エラー、誤り訂正といった、馴染みの世界の話であり、淘汰による誤りのふるい落としの効かないイントロンで変異速度は最大となる理屈も判りやすいし、そのシャッフルが表現形の飛躍を可能とするというのも理解できるのです。
全く、書くのなら、ミームの分子進化とか、もっと興奮できるネタを使うべきです。そう、チェーンメールの文面の変化率が一定だったりしたら面白いなぁ。チェーンメールの系統樹を辿って、始祖を探したり。
アイディアのもう一つ、生命保険が淘汰要因として振舞うという話は、徹底的に膨らませていけば、”経済的に合理的な種への進化”なんてうっひゃーな話になって面白かったのでは、と思うのですが、話はナチとかネオナチとか、世間公認の悪党成敗の話になり、是非も可能性も、論ずる以前に消滅します。
ひどい話です。
万能著述支援マシン”ワーカム”それは、使う人物についての知識を吸収し、書きたいものを自然に引き出す。思いつきを具体化し、スタイルを整形し、ネットワークで小説を送り、受け取る。
それは、小説家にとって夢の機械だった。…いや、本当にそうなのか?
物語ることとテクノロジーについての、9つの短編集です。
興味深い題材を扱っており、一読をお薦めします。
ただ、ワーカムは、著述支援の枠を著しく逸脱しており、テクノロジーとしては、自動生成に近いことを指摘したいと思います。
情報量を増やしてしまうのは、これは明らかに自動生成です。コンピュータによる著述支援は、最近の私の関心の一つですが、ワーカムと違うのは、入力よりも出力の情報量が増えるような事が無い、という事です。
自動生成も、興味深いテーマなのですが、著述支援とは全く別個のものです。
狭義の著述支援を簡潔に定義するなら、それはクヌースのいう”文芸的プログラミング”の、まさに逆です。ソフトウェア開発分野でのテクノロジーを、文章と言うコードを書くのに用います。
文章をデバッグし、コンパイルし、バイナリを配布可能とします。可用性を高め、構造化し、大規模著述を助けるのです。
ソフトウェアのアナロジーでいうなら、そう、私は”本物のプログラマ”の時代を脱した、文章創作の世界を垣間見たいと思っているのです。
…ほんの好奇心から…
野田さん、これは読みましょう。
神林長平文庫落ち第2弾、いやぁ嬉しいったら。
80年代後半から90年代前半にSFファンとなった人間なら、一度は神林作品をクールだと思ったことがあるに違いないでしょう。何故そう思ったのか、思い出せた気がします。
老人向けアパートで日々を送る主人公は、錆で朽ち果てた自動車の残骸を見る。
ホンダ・プレリュード。初代の奴だ。
自動走行技術と電気自動車が、クルマを走らせる楽しみを奪って久しかった。自動車は文字通り自動であり、道路の一部だった。
自分のクルマを創りたい。そう思った。友人と二人で設計に没頭してゆく。
限りなく、どこまでも、走っていけるクルマ。それが私自身の望みが形になったものならば、そのクルマを駆る私も一体であり、そのときクルマはもはや単なる移動手段ではなく、自由な精神を開放する、魂の駆動体になるのだ…
私は自動車には思い入れの無い奴です。自動化と非内燃機関化を信奉しています。一番クールな移動手段はチャリだと思っています。
でも、モノつくりってのは、最高です。あの喜びに匹敵するものはありません。
クルマもいいかも知れません。
知性を持つ猫達の中でも飛びきり、黒猫の幽は異端者であり、独りだった。
そして、初めて逢えた対等の相手、孤独な最強の猫、焔もまた少なかれ異端者で、結局は戦うことになるのだ。死ぬまで。
だが、ちっぽけな黒猫の異端の罪状は、禁じられた知識を持ち、地球へと行こうとしていたからだった。
高度6000キロ、いまや猫の土地である気密円筒構造物”トルク”許されないことをするために、カプセルを作った。死んだ魂の赴くところと信じられている地へ、生きて辿りつくか、それとも死んで…
異端に生まれついたもの、異端となったもの、そして知らずに異端になっていたもの。出口は死しか無いのか。
今回は泣きがたっぷり。挿絵で騙されると泣きます。というか、無関係に泣くでしょう。凝った文体と語りの濃さは相変わらず。
そしてまた、この作品も文句無しのお薦めです。
しかし…なんかどっかで喋ったような、描いたような絵が出てきて、ぐはぁ、秋山さん、済みません。
最終号です。
一年きっかりくらいは持つかと、ちょっと期待していたのですが、やっぱり持たなかったか。
「マルチプラットフォーム時代のソフトウェア基礎技術情報誌」マルチプラットフォーム時代はまだ到来していないし、基礎情報にしてはトリビアルに過ぎるきらいの有った内容。ただ、しばらく前から、ちょっとづつ面白い記事が増えていたので、消えるには惜しいなと思っていたのですが、残念です。
特集はSolaris。そのくせ付録CD-ROMにはDebianとHurdを収録しています。変です。やっぱり消えるには惜しい雑誌です。
基礎技術情報誌、という目のつけどころは良かったと思います。買い手が絞れる(つまり、向上心に溢れがちな若手オタクコーダー)のですから、もっと無節操に面白い記事を増やすべきだったのです。
最近だと「日経ソフトウェア」の記事などに面白いものが目立ちますし、「Oh!X」のとんでもないハイローミックス、無節操さにも惹かれるものがあります。
最近最も面白いと感じているのは、*BSD系のweb日記です。あの雰囲気を持った雑誌があっても良いと、思います。
ぼくらの無敵マイコン雑誌、秋に出るはずだった号を抜かして春号、ようやく出ました。
しょっぱなはPS2のアレ、EmotionEngineの解剖です。
なんともコンパイラ書きに苦労しそうな代物です。整数演算には目もくれていないし。
整数演算部に関しては、巻末のほうの連載「初めて読むMIPS」が参考になるでしょう。しかし、初めて読む、ってレベルの内容じゃ無いよな。CPUのキャッシュメカニズムの解説記事も、雑誌の中程にあります。
その一方で、ネットゲーム「EverQuesut」プレイ記事、VBで作るゲーム記事、ケース自作コンピュータ(ケースの展開図面が載っている自作記事など、前代未聞だ)の記事があります。
そして、第三の極と呼ぶべき、X68000関連記事が。タイミングコントローラ付きのメモリボードの自作記事なんて、アマチュア自作の領域から確実に逸脱しています。
今号はちょっと硬めかもしれません。もちょっと柔らかい、オタ寄りの記事があるのが、いつものOh!Xだと思うのですが。
この号は、技術史の片隅に名前を残すでしょう。
「重点企画 メカニカル・オン・チップ〜シリコン・マイクロマシンを設計する〜」
科学誌でも、教養記事でもありません。付録のCD-ROMには、マイクロマシン設計ツールのお試し版が収録されています。
シリコン基板上にカンチレバーや歯車を作りこむマイクロマシンは、ナノマシンとよく混同されますが、既に応用製品が多数出回り、秋葉原で数百円で買えるような、現実の産業技術です。
記事では、製法の詳細はもちろん、設計について踏み込んでいます。マイクロマシンの回路図ときたら!!電気回路の記号群の中に、ばね要素やアクチュエータが、一見謎の接続をしています。
もう、ここまで来たのか。マイクロマシン設計を勉強しないといけない日は、遠くなさそうです。
「…完全、じゃない…」
こう呟いた人間が、少なくとも二人いたそうな。
宇宙(そら)を目指すのが、ロケットの宿命です。空力などには目もくれず、推力と比推力、そして構造比を追及するのがロケットの生き様なのです!
濃密な大気の層を垂直に飛び出し、やがて向きを水平に寝かせてゆき、轟然と速度を稼いでゆくものなのです。
それが何ですこのザマは!空力とバランスの記述が一杯です。そして肝心の推進力は、市販の固体推薬(便利なカートリッジ式)を使うという塩梅。
そりゃあ、真摯、丁寧でわかりやすい内容です。でも、この道を進んでも、宇宙には届きません。
二液燃焼エンジンを使うべきです。慣性誘導を行うべきです。
実際のところ、これらは、もうすぐアマチュアの手にも届くトコロに来ていると考えます。慣性誘導なんて、数万円で作れるでしょうし、エンジンも、ジャムの瓶ほどのサイズの安定した性能の作りやすいエンジンが出来れば、その後は簡単です。
大体、北の貧乏国ができたんなら、それはハイテクノロジーとは、間違っても言えませんよね。
第三次大戦の始まったあの日、アメリカは、突然消えた。
参戦国も同盟国も置き去りに、幻のように消えうせた人たち。彼等は何処へ行ったのか。戦後の世界を歩む人々に、謎がささやく。闇のささやき。
幻の単行本、オタクどもが欲しがり、高値の古本に群がる、あの単行本が版元を変え、新装で再刊です。
言うまでもありませんが、ディティールは少しも古びておらず(あっちょっと古いディティールみっけ!)、未だに”カッコイイ”です。十年以上前の作品のくせに…
ああちくしょう、早く2巻目を、連載再開を、あと大体”風の住処”はどうなったんだ!!
いい漫画です。細部まで空気が、リアリティと言うと語弊がありそうだけど、多分リアリティと言うのが正しいものを持っていて、じっくりと読ませます。
仕事場で、学校で付き合いはあっても、独り暮しはやはり独り。もはや何にも属さなくなった者には、それはなおさらだ。
”自分のやりたいこと”を失ったひとたちが、優しさと、他人への距離を、天秤にかけながら、人々の中で自分を確認していく。
「ビョーキっていいね…人が優しくしてくれるもん」
少女は呟く。
いろんな意味で興味深い漫画です。特に、離職者、中退者、アルバイターの増加、自己表現への指向など、多分それら事象の原因に近いものに触れている点に惹かれます。
自己否定と肯定のあいだで揺れ、でも肯定はリタイヤで、やりたい事は実現できない。
そういう種類の罠を、私は技術者となることで避けることが出来ました。やりたいことを社会と折合わせ、自分らしさに悩む事もありません。
でも、違う選択をした人たちは、どうなのだろうか。時々考えるのです。
「困ったときの色」使うのは、アワーズでは伊藤センセかJしかいません。
ということで、表紙に、わーい、高見ちゃんだー!!(単純)今月もトライガン、シーン構成とセリフ、絶妙の一言です。黒ベタの闇が映えます。しかし…ガントレットもミッドバレイも、アクション描きづらそうですね。
今月のウガウさん漫画こと「朝霧の巫女」一般の萌えシチュエーションと逆視点ってのは、狙っているのでしょうか。
カムナガラ、というかやまむら氏の作品って、人間関係が見え始めると、とたんに面白くなってきますね。
そして、がーん。ヴルヴァールが来月で終わります。眼鏡っ娘漫画がひとつ消える…
そしてGEOBREEDERS。
なんか今月はアクション堪能です。ハリウッドでもようやらんような凄まじいシーン、頑張る田波クン、デリート後の凄まじい壊れ方をしたトラック、滅茶苦茶な化け猫のロケットランチャー抱え攻撃(うっひゃあ)ヘリのブレードが舗装をなめて飛ばす破片、これらがフツーの光景の中で行われるというのが、…やっぱいいなぁ。
まるで2丁拳銃のようにAKを構える化け猫、くううっっっつ。
表紙は黒。ってことは…
紫の表紙はジオブリ
赤い表紙はトライガン
黒い表紙はヘルシング
という塩梅っぽいですね。今月の「HELLSING」 黒い。黒まみれ。黒サイコー!
しても、ヘルシングで見開きを使う、というのは珍しいものを見た気が。
「エクセル・サーガ」 屋台かぁ…豚骨かぁ…白いスープ…金龍亭のラーメン…
「カムナガラ」 この作品は、設定を疑う話、なんですね。嘘臭さと事実と、そして現実の中で。
疑う話は、信じる話にも通じます。何かいいかも。
「TRIGUN MAXIMUM」 過去の優しい記憶と、自分の罪に苦しんでも、ヒーローには、贖罪すら許されない。為すべきことがあるうちは。
しかし、GUNG-HO-GUNSと呼ばれる人間たちには、関係の無いことだった。彼等の思惑、そして鬼気迫る魔技が、闇夜の魔窟に血の雨を降らす。
死闘の行方を決めるのは、強さか正義か信念か、それとも審判か。
カッコイイです。惚れぼれします。例えば154P左上コマのセリフ、165P中段のなんでもないコマの、妙に迫ってくる描写。スタイル、SF味。
そして今月の「GEOBREEDERS」
爆発、衝撃、爆風、しかし「あれは核じゃ無い!」
戦いは、そして、お仕事はまだ続く!
毎度ながら、毎月の事ながら、伊藤明弘のシチュエーション視覚化の凄まじさは圧倒的です。どうやったらあんな風に、違和感の無い描写ができるんだろう。
入江が焦り入って大忙し、まやも大慌て(「洋一さんを助けてっ!!!」…ぐはっ)、そして高見ちゃんは新刊に、知らずに化け猫にまっしぐら。そう、久しぶりに高見ちゃん登場。
慌てているのはハウンド第2班も。斎藤隊員はアレゲなカタログ読んでたようだし、大塚隊員と水城(みずき、って読んで欲しい…)隊員はコンビニ弁当の買出し。そこへ急行の司令。わーい高見ちゃんのトコロだーっ。