船はピニェルを訪れた。伝声管を飛びかう船乗りたちの号令。きしむ鋼索と配管。計算員たちが手早く誤差を見積もり…
だがそれは宇宙船だった。その中核にある驚異の物質”シャフト”は、未知の存在により移植された人類に、宇宙への路を拓いた。19世紀の技術力で。
ブリテンの博物学者たちが西インド諸島を訪れるのを想像してみたまへ。天界の果ての惑星で、エキゾチックで豊かな動植物相にまみえるのを想像したまへ。
それが、驚異に満ちていることを想像したまへ。
良い作品です。読んで満足感の得られる、充実した作品です。描写は平易で的確、しかしきっちり練られています。それに加え、どこかに奇妙な魅力があります。
通常のSFのフォーマットではツッコンでしまうような描写も、どこか18世紀の博物学者が編纂したマレー半島の博物誌を読むような、そんな奇妙な雰囲気を醸しています。現代の目からみるとまるで見当外れで間違った結論を出しているのですが、そこに至った興奮が伝わるときのような…
そうなると、挿絵が雰囲気を壊しているようで残念です。挿絵は細密銅板画を模して、図版番号と注釈が欲しい、というのは贅沢でしょうか?
抜群です。お薦めします。
少女達はやがてみな、訳も無く動く屍、ステーシーとなってゆく。
そうなったら最後、ぴくぴくと蠢く人肉を食らう心無き死体を、百六十五分割しなくてはならない。できるだけ手早く。それは”再殺”と呼ばれた…
チェーンソーと再殺のしおり。少女達を切り刻みつづける再殺部隊。冬の風鈴。
痛くて転げまわりそうな、しかし、魅力に満ちた内容です。巧みな描写と想像力は圧倒的です。一読をお薦めします。
しかし、そのような、キリキリと張り詰めて痛い描写は、書き手にも相応の作用を与えることは、容易に想像がつくでしょう。いや、こんなものが書ける精神のチカラというものが、まず信じがたいものです。
という訳で、最後が、破綻しながらどこか奇妙に静かな、冬の風鈴がどこかで鳴るような、むりやり補完されたような結末を見せていても、それが逆に書き手の心情を物語るように思えます。
大槻ケンヂには、やはり期待したい。再び書いて欲しい。
そしてまた、再読を。
表紙買いです。黒星紅白の表紙と挿絵、三度前を行き過ぎて、そして買いました。
物語もまた、すっきりとして、寂しさと悲しさと澄んだ印象を与えるものでした。内容は他愛の無いもので、特筆すべきものではないのですが、でもなんとなく、風景が印象に残る、そんな物語です。
中学生くらいに是非薦めたい1冊です。
わーい、スラデック特集だァ!
…追悼特集ですが。
九州の古本屋巡りに備えて、未読短編チェックしてます。そういや、何でスラデックなんて好きになったんだろ。
勿論、まずチェックは野尻抱介「喪われた思索 太陽の簒奪者III」
慣性核融合でおよそマイナス100分1Gの加速度を維持したまま、異星船は太陽系に進入した。まるで人類などいないかのように。
人類にとっては、それは生存への脅威だった。彼等のナノマシンにより太陽を奪われかけた現実から、人類は酷薄な対応、9隻の戦闘艦を選択した。
唯一のコンタクト、会話への試みは、成功しなければ唯一にして最後のものとなる。太陽のほど近くで、背中に銃を隠したコンタクトが始まる…
ぐはぁ、なんとまぁ。ここまでハードウェア描写、それも戦闘艦が、あるとは思っていませんでした。ただし、語り口が比較的平板な、クラーク的なものなので、その筋のカタルシスはありません。コンタクト描写はチカラがはいっていますが、やはり淡白です。
あえて言うなら、異星存在描写、ラストが多少弱いと思えます。SF的には、攻撃が失敗し、太陽系を改変された方が面白かったかも知れません。大規模な単一知性の性質についても、違和感があります
しかし、力作であり、読むべきであるのは間違い無いでしょう。
以前から欲しかった本なので、ボーナスをあてにして購入。
ひととおり読んでみましたが、肝心な部分”個人で打上げやりたい場合、どういう法律に引っかかるの”が無くて、残念でした。
これら条約、法は今後改正が必要だな、というのが感想です。
例えば、「月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約」によれば、打上げ、探査、その他活動は国家がやるものであり、管理も責任も国家単位です。基本的に条約はこの考え方に従っていて、例えば、米企業の日本法人が放送衛星をアリアンを使って打ち上げる、といった場合、宇宙機の登録はどうなるのか、強力で整備された米国国内法に従うのが一番ラクなのですが…
あと、ステーション内部での法執行に関する条項などが、特に興味深く思われました。ミールでのアメリカ・ロシア共同生活の例、ロシアでの長期閉鎖環境実験の例をみても判るとおり、異なる民族、言語の人間が閉鎖環境で暮らすとき、やがて、人間社会ではつきものの問題が持ちあがるものと見て間違いありません。
これもまた、執行はアメリカの法規が優先するようです。
さて、現行条約・法体系の中で、宇宙開発の自由度を追求しようとしたら、南洋の小国に宇宙開発機関、それも軍をでっちあげると良いでしょう。
トンガ王国辺りに、王立宇宙軍を設立です。で、観光をやります。観光客は書類上、徴兵に応じて集まった傭兵です。何故か雇われるために大枚はたかないといけませんが。
新兵は身体検査の後、訓練を行ない、宇宙へと哨戒任務に旅立ちます。任務終了後、彼らは除隊し、”宇宙軍退役少佐”などの証明書を貰って帰る、という筋書きです。
国家機関が行なっているのですから、何処も文句は言えません。
…とか考えてみたり。
1994年初版の本なのですが、Unixの根本的な動作について書かれたこの本は、古びるところがありません。
OSがブートしてから、各種サ−ビスを起動し、ファイルシステムをマウントする細目、ネットワークの基本的な振るまいなど、非常に精選された記述があり、これからこのOSを弄りまわそうと言う向きには最高の入門書でしょう。
「プロフェショナルUnix」も持っているのですが、全くの別物です。ちょっと厚め、と感じられるかも知れませんが、よくもまぁ詰めこんだものだなぁ、という濃さです。
今や当たりまえとなったデバイスや技術、例えばsambaやパッケージなどは当然ながら一切載っていませんが、それで価値が変わる本ではありません。
Unixと永く付き合うつもりなら、買っておいて間違い無い本です。
うわっ、
const char * hoe ="hoe";
は駄目で、
const char * const hoe = "hoe";
と書かなくてはいけないのか! 色々と目ウロコな本です。
C++でプログラムを書いていてて思った疑問の幾つかは、この本で確実に解消するでしょう。どうも定評のある本のようです。新約聖書より良いかも。
なんかいつもより倍くらい厚くなっています。特集は携帯用半導体の小型化。
携帯のRF(無線)全機能を、7mm×7mmに押しこめる目処がついたという話で、つまりBluetoothのメリットって?という話でもあります。
実際のところ、Bluetoothは、例えばIEEE802.11に対してメリットが感じられないし、駄目駄目って感じなのですが、どうなのでしょう。
これら無線技術の応用により、我々は”本物の常時接続”を手にする事になるでしょう。いつでも、どこでも、接続され、個人サーバによる行動支援を受けることができる時代が、もうすぐなのです。
なんか人気があるらしい「開発ストーリィ」今回はAIBO。ナムコに勤めている元部下をAIBO開発に誘う。惹かれるが…退社について、上司と相談する。
遂にはナムコ会長に、AIBO試作機を見てもらうことに。その動作を見て会長は呟く
「しょうがないな。くやしいけど、これは面白いよ。…君は出向だな」
ナンとも痺れる話です。はい。
でも、本当に痺れたのは「松下電器、低消費電力の量子メモリを試作」という小さな記事です。そう、量子素子ですよ! 消費電力1/100です! 5年後には実用化です!
巷では「サイアス」誌の危機が伝えられていますが、「日経サイエンス」も、順調に取り扱い書店を減らしている気が。筑波だと割と入手はやさしいのですが、東京だと大型書店以外ではかなり難しく感じました。
特集「ヒトゲノム解析」は解析レース終盤の様子と、これからの概観です。われわれは巨大なバイナリコードを得ましたが、これからそれを逆アセンブルしないといけないのです。
読むべきは特集2「様相変わる戦争」21世紀の戦争の定義は、ここにあります。
もし、コンテナ一個分の自動小銃を確保できれば、百人程度の小人数で、充分に政府を転覆できるでしょう。都市生活にまぎれ、市民を装い、日常の定義を暴力へと変えるのには、それで充分でしょう。
また、少年兵洗脳については、アニメですが「今そこにいる僕」を参考として観ることをお薦めします。この作品は、もっと多くの人に観てもらうべき作品です。
あ、やっぱ誰でも思いつきますね、整形トースタースタイル。上からのスロットイン形式は取り出しが面倒で、ドライブを選びますが、こだわったのでしょうね、PowerMac G4 Cube。まるでLinuxミニサーバのよう。
PCデザインの変化は、使い方の変化でもあります。
そんな事を思うこの頃、特集は公共空間。記事は、日本人の書いた奴は、はっきり言ってタワゴトに近く、逆に海外の公共空間デザイナーの意識の高さを際立たせています。
偽中世風といった過去の複製ではなく、街のファニチャーは正直にそれがどの時代につくられたのか認識できないといけないと思います。
そんな中でも、JR九州のデザインは際立って光っています。
去年、北九州で813系を見たときは、その細部まで行き届いたデザインに、正直感動しました。
…しかし、引用リンクさせてもらってこう言うのも失礼なのですが、鉄道の写真の撮り方って、何か決まりでもあるんでしょうか。鼻っ面見てデザインの良さ、真の設計の良さは判るはずも無いのに。この車輛の良さは、乗ってみる段になってわかります。運用や生産性まで考えられていて、唸るばかりでした。
きっちり考え、妄走しない、そんなデザインが欲しいのです。
荒野の惑星で干上がり、しかし懸命に生きる人々。彼等はかつて星々から墜とされたものたちの子孫だった。
無敵の魔人たちとて例外ではない。その壮絶な死闘は、この惑星に生きる者の生きざまと重なる。死んでゆく者、痛みを抱え、暗い情念を燃やすもの、そして、決意するもの…
いや、例外が二人。彼等は人に似ているが人では無く、その刃は星を貫く。
たとえその憎悪が貫くとしても、人は、人であろうとする者は闇をあがく。それがヒトというものだから。
闇の光が、たとえ銃火だとしても。
かっこよさに惚れ惚れしたり、身震いしたり、そういうもので一杯です。
線も漆黒もカッコイイです。連載時からの加筆修正もたっぷり、完成度高いです。物語も佳境です。これもまた良し。語られるもの、語られないもの、絵が、表情が語るもの、全て良し。
漫画の情報密度というものの凄さを、改めて実感します。見開きの迫力に震えながら、実感してください。
必読。
作者の名前、最初の漢字は正確には「白+十」という感じのものです。こんなペンネームするなぁ。
今時珍しい、シロマサちっくなメカテク系漫画です。エロですが。
物語はブツ切れで、作者だけは全て語った気になってるよくある奴です。エピソードの中ですら破綻しているような代物ですが、よくよく読めば、大体のところは判るようです。
絵柄は、センスを感じますが、ヤローキャラの顔の崩れが著しく、実は三次元把握出来ていないのでは、と思われます。構図も工夫がイマイチ。
しかし、SFで、先端に行こうとする意思を買います。センス悪くないし。
チェッカーを自認する向きにお薦めです。
最近妙に読み甲斐がアップした雑誌です。最近チェック体制に入ったもう一誌「電撃大王」が山下いくととCHOCOの隔月2枚看板に拠るところが大きいのに対して、こちらはなかなか粒よりな感じが。
特に「低俗霊DAYDREAM」奥瀬サキと目黒三吉、なかなか相性良いです。目黒三吉ファンとしては絶対の要チェック連載。しかし、巻末のコメント”出来ちゃった結婚”?
しかしまだ、どうも雰囲気が、サイバーパンク被洗礼者には馴染めない感じが、どこかあります。
新雑誌です。「OURS2000」系の後継誌ですが、なかなか贅沢な陣容です。ただし新味はありません。
やまむらはじめ「うたかたの彼女」短編の名手、なかなか良いです。これを読むと、心理描写をモノローグに頼る少女漫画が稚拙に思えてきます。
TAGRO「トラベリングムード」も良し。磯本つよし「おっとっとっ!」話は弱いけど、筆力は抜群です。そして毎度漢泣きな小野寺浩二「妄想戦士ヤマモト」アホー!