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April,16,2001

「ハイペリオンの没落 上下巻」
著者:
ダン・シモンズ
出版社:
早川書房
分類:
SF,文庫

一気に読みました。

面白かったですけど、読感としては前作と全く同じ、言い換えれば前作と同じテンションと仕掛けを維持している訳で、えー、偉いですねぇ。


なんというか、SFファン的気分がわりと盛り上がりません。

ヘナヘナとしています。

「ハイウェイ惑星」
著者:
石原藤夫
出版社:
徳間書店
分類:
SF,文庫

よく言及される事の多い作品なので、チェックです。

下記の「捜査」と比較するとはっきりとしますが、全てが理解可能で、陳腐なミステリ(そういえば、最後には、すっきりとふざけたように謎解かれる作品ばかりだというのに、なぜこのジャンルは、ミステリと呼ばれるのだろうか)の謎解きのように、ひと目見ただけで理屈が解明されてゆく作品が、時代を超えて語り継がれるには、とことん上質のハードさが必要でしょう。「ハイウェイ惑星」は、そういう作品です。

わりとどうでも良い世界観を差し引いても、スタンスの強固さが、この作品を、今でも読める作品にしています。おそらく、これからも読まれることでしょう。

「捜査」
出版社:
スタニスワフ・レム
分類:
SF,文庫

逆に、”どうしても理解不能なものは存在する”と主張する代表格がレム、主張はわかりますが、この作品には同意できませんでした。

プログラマーならわかるでしょう。自分のプログラムのありえない振る舞い、信じられない微妙なバグ。しかし、バグにはどこかに原因があるものです。”よくわからないタイミングで、プログラムが妙な振る舞いをするけど、そういう振る舞いは時として存在してしまうものだ”なんてしたり顔で主張するプログラマーには、ちょいとした物理的作用を加えても罪にはあたらないでしょう。股裂きの刑などが適当です。

そういう訳で、わりと不機嫌です


ただ、プログラマーは、バグの無いことを保証することは出来ないことを知っています。どんなにきちんと動いているように見えても、仕様書から自動生成した検証器を使っても、それは、想定の範囲でバグが無いことが解るだけであり、”これが最後のバグの一匹だ”などとは決して言えないのです。

問題には原因があり、バグはデバッグできます。ただ、潜在的な問題を全て検出することだけは、不可能なのです。

「惑星気象学」
著者:
松田佳久
出版社:
東京大学出版会
分類:
科学,ハードカバー

お勧めです。

地球以外の惑星について、ちょっと食傷気味の視点を離れ、惑星大気という共通の切り口で、惑星についての大きな理解を与えてくれる本です。特に、ガス惑星について、「水素とかヘリウムとか高圧とかえーとえーと」程度の知識しか無いのなら、是非読んでください。

惑星というものがいかに多彩で、いかに未知に溢れているものか。現在解っている部分、解らない部分、推測する説とその問題点について、きちんと書かれているのが好感できます。

たとえ新たな探査で、新たな知識によって書き直しを必要としたとしても、どのように惑星大気を考えるべきか、その考え方を示したこの本は、有益です。それは当然、この惑星、地球にも当てはまるのですから。大きな視野というものは、太陽系規模で持つべきです。

「新世紀未来科学」
著者:
金子隆一
出版社:
八幡書店
分類:
趣味,ハードカバー

世のSF界の中でも、割と見込みのあるアイディアたちの集大成です。

大抵の面白い、見込みがありそうなアイディアには、ある種のSF作家が群がって、山ほど応用例を考えるのですが、面白いのはひと握りですし、実現可能性があるのは更に少ないものです。

という訳で、中に出ているものの中、知らないものはほとんどありませんでしたから、読む価値というものは、私にとっては微妙なセンです。しかし力作ですから、本棚に置いておくのも良いでしょう。アホな作品をフィルタするためのリファレンスとしてお勧めします。

「衛星ビジネス・ウォーズ」
著者:
ゲーリー・ドルシー
出版社:
日経BP社
分類:
技術,ハードカバー

宇宙開発ベンチャとして名を轟かしたオービタルサイエンスが開発した、純粋民間市場向け小型衛星、オーブコムの開発の現場を描きだしたノンフィクションです。

何も述べられないのですが、これだけは言えます。必読です。

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「珠玉のプログラミング」
著者:
ジョン・ベントリー
出版社:
株式会社ピアソン・エデュケーション
分類:
コンピュータ,専門書

コンピュータと真に会話する、最も確実な方法、それがプログラミングです。

対話的インタフェイスは、コンピュータとの対話を可能にしている訳ではありません。プログラムと対話しているだけです。


この本は、問題を解決するにはどうすればいいか、考え方について示唆する本です。

問題を、よりシンプルで解決しやすいかたちに変えることが記事の主眼です。ものの見方を変えることによって、問題の多くは極めて単純になります。これは、プログラミングに限らず、どのような問題解決プロセスでも同じことなのですが、プログラミングでは、その結果が極めて厳密に現れます。

グログラミングは、見かけより遥かに文芸的な色彩を持ちます。というか、私はときには、プログラミングこそ理想の文芸の形態に近いのではないか、と思うのです。

それは、思考をあらわすという行為が、極めて厳密に行なわれると同時に、大規模な抽象概念も”実装”することが可能だからです。考え方を記述するのに最高の方法は、考えるものを作ることだと思いませんか?

だから、エレガントな考え方は、美しいプログラムで記述されます。

プログラミングテクニックとはつまり、考え方の整理です。スマートな考え方を直接記述する事が、優れたプログラムを生みます。


詩が概念のパズルであるように、プログラムは思弁のパズルです。

この美しさを、味わってみませんか?

「パロディ版 BSD Magazine 2001年号」
出版社:
アスキー
分類:
コンピュータ,雑誌

マジで本屋に並ぶとは、本当のところ信じていませんでした。せいぜい、限定千部実費配布とか。

往時のパロディアスキーに比べれば味は薄めですが、立派なパロディ版、素晴らしいです。特にウケたのはLinuxの新ディストリビューション「BSD/Linux」NetBSDのLinuxエミュレーションを使い、LinuxのAPI互換だからLinuxだと言うのですが、シャレになっていません。謎のパロディ漫画も、元ネタ双方への理解が必要ですが、なかなかです。

当然のように、来年も期待します。

「Bit 2001年4月号」
出版社:
共立出版
分類:
コンピュータ,雑誌

最終号です。その過去については詳しくはありませんが、歴史は感じる雑誌でした。値段と比較するとお買得感は薄いものの、他では読めない内容がありました。休刊はやはり残念です。

特集はデジタルシティ。コミュニティ構築とVR手法の混同がまだ見られるのが残念ですが、判っている人たちの、実践の記録は貴重で、示唆するものが多いです。地域情報の配信なんかはどうでも良いんです。コミュニティとは何なのか、掘り下げと実践は、やがて社会に大きなフィードバックとなって帰ってくることでしょう。


最近ちょっと興味があるのは、掲示板の力学です。通常の掲示板は、参加者の偏向とバランス感覚によって運用され、安全装置として管理者の裁量が働くという構造となっていますが、たとえば2ちゃんねるが存続し得るのは何故なのでしょうか。

2ちゃんねるはage/sageや削除人といった、掲示板としてはわりと面白い構造を持っています。また、通常は隠蔽しているものの、IPを抜けるようにするなどの、匿名書き込みをコミュニティとして存続可能とするシステム、治安機構を実装しているのです。

これまで、暗黙もしくは明文化された契約のみによって成り立っていたコミュニティというものが、実装によって成り立つ、これは特に2ちゃんねる一般参加者の質の低さを考えると、凄いことなのだと思います。

逆に、ハンドルが、書き込み者と一対一対応することを保証するシステムがあれば、どういう事が可能でしょうか。対応保証はするものの、書き込み者のプライバシーは隠蔽するのです。クッキーとパスワードで実装できそうです。

ハンドルに対するage/sage機能と、発言力を消費して行なう書き込みシステムなどがあると、書き込みの質をコントロールできます。

法も道徳も、プログラムで実装可能だとしたら、貴方はどのようなコミュニティをプログラミングしますか?


…しかし結局、雑誌は消滅しました。塵芥のようなハウツー本、新製品紹介本はともかく、ぐちぐちと細かいUnix宗教雑誌も要らないんです。まず、広く遠く見渡す視野が無いのなら、未来は無いのと同じなのですから。

コンピュータサイエンスはもはや存在しないのでしょうか。

違う、という声が聞けることを期待します。

「AXIS vol,90」
出版社:
株式会社アクシス
分類:
趣味,雑誌

特集には、公共学習施設のデザインが。

学校とか、生涯学習施設とか、なのなのですが、典型的な箱作り先行のデザインです。

使用者に珍妙で不安定なスタイルを強要するのは、ベッドの長さに合わせて訪れたものの足を伸ばしたりちょん切ったりするのに似ています。小学校のデザインなら、子供はすぐに順応するから良いのですが、違うのなら、イヤな代物しか出来ません。

存在しないニーズへの妄想が作る立体は惨めです。駄目な妄想のほうが遥かに生き生きしています。

「コミッカーズ 2001年春号」
出版社:
美術出版社
分類:
趣味,雑誌

表紙の雰囲気で、買うか買うまいか決めている雑誌です。

特集は「黒×白」インタビュー記事で、文章が艶消し黒地に光沢の黒で書いてあって、気付かないと読めない、わりと面白い仕掛けがありました。

全体にインタビュー記事はレベルが高く、読み甲斐があります。後はかなり要らない感じ、いつもの雰囲気です。これだけ雑誌のデザインに統一感が無い、あってもイヤミな感じのする雑誌も珍しいでしょう。ただ、扱っている作家のレベルによってカッコ良くみえているだけなんです。

「error vol.00」
出版社:
美術出版社
分類:
趣味,雑誌

表紙からして乾いた、色気のない新雑誌です。

アート指向系漫画誌、というくくりでいいのでしょうか?

中身は…「アフタヌーン」辺りで毎月お腹一杯読めそうな奴を、良い印刷とカラーで収めただけ、って感じですね。わりとイヤミな価値観で選別された、という雰囲気。

どこか、謎の時代、どっかの阿呆の過去の記憶のようなディティールです。

勿論、編集と作家の評価は全く別で、良い作品はやはり良いです。ただ、この値段なら他の買ったほうが良い、と忠告できます。本当に良い作家は、別の所で描いています。

ただ、自分の場合は…次号、沓澤龍一郎40Pかぁ。また買わないといけないのか。

「姫栗毛」
著者:
中村博文
出版社:
メディアワークス
分類:
趣味,画集

「でもやっぱ色気は、中村博文サンがよく描くエロ司書さん」

平野耕太「進め!以下略」より

白ブラウスに妙に皺が多い、めがねで妖しーい雰囲気の作風でつとに名高い、中村博文の作品集ですが、零式表紙とか、もっとなかったっけ?

「ちょびっツ #1」
著者:
CLAMP
出版社:
講談社
分類:
漫画,単行本

こともあろうにヤングマガジンでCLAMP連載で、”ちぃ”がかわいくて、単行本には初回限定版(マウスパッド付き)だそうで、そんな訳でチェック。

まず、最初のページで、人型(女の子型)のロボットを”パソコン”だと強弁します。インターネットも表計算もできるんだそうです。で、主人公は落ちてた”パソコン”を拾うわけですが…

えーと、「ぶっとびCPU」は禁句として、まぁ、かわいいですな。未亡人の大家さん、ツボですね、予備校の先生、イイッスね、で、とことんお約束ですね。

かなりアタマの方から、結構ステロな価値観”ヒトとのつき合いの方がイイッスヨー”ってのが提示されるんで、どういう話になるかは決定済みです。

掲載誌の選択も含め、かなり戦略的な作り込みをしている作品ですが、それが鼻につく向きも多いでしょう。

というわけで、チェック終了。

「魁!! クロマティ高校 #1」
著者:
野中英次
出版社:
講談社
分類:
漫画,単行本

しかし、上記作品の計算を超えて売れたのがこの単行本。

十分過ぎるほどアホです。この調子で、単行本が出るたびに「ちょびっツ」より売れて欲しいものです。

でも多分、これも次は買わないですね。

「低俗霊 DAYDREAM #1」
著者:
奥瀬サキ&目黒三吉
出版社:
角川書店
分類:
漫画,単行本

私の”もっと評価されて良いんじゃないか漫画家チャート”の中でも、常に上位に食い込んでいる作家、目黒三吉が、奥瀬サキ原作で描く作品の、単行本第1巻です。

相変わらず、へんなネーチャンが出てきます。が、オッケー。

奥瀬サキ、確かに原作担当というのは向いてますね。ずんずんずんずん絵柄が先鋭化していって、漫画家として半ばツブれていた訳ですから。しかしここはやはり評価すべきは目黒三吉でしょう。イイッス。

元々、絵は素晴らしいのです。いつもなら、短編ですらついつい緊張感に耐えられず、おちゃらけに走ってしまう(例えば「サイレントモーター」)のが、原作付きによってその辺りが抑制されています。

でも、バカも目黒三吉のうち。「巨乳の国π」の続きも読みたいっス。びわこさんモノも。あとエロ抜きも。

「SF/フェチ・スナッチャー #2」
著者:
西川魯介
出版社:
白泉社
分類:
漫画,単行本

地球は狙われている!

具体的には、三つ編み眼鏡っこ委員長(巨乳)に擬態する”宇宙からの萌え萌え物体X”とか、幼なじみ型宇宙人とか、巫女さん型宇宙人とか、血の繋がらない妹型エイリアンだとか…

…侵略してオッケー。

相変わらず、ドアホウと細かなくすぐりが美味しいです。見るだけでヘナヘナとチカラが抜けてく表紙、なんつーか脱力なエロス。眼鏡拭きにある店名”近視篇”とかフレイザーでGood。

福音は初期作「強襲ミドガルド蛇」の収録です。あぁ、始めからこうだったんだ。判りにくいネタが山盛りだし。端境期の作「蜻蛉日記」も好みです。

さて「痛快、百物語」なんというか無理のある作で、もしかして作者、本当に伊藤伸平氏を恐れていたのか、いや、同じ号にフガモガ…

「TRIGUN MAXIMUM #5」
著者:
内藤泰弘
出版社:
少年画報社
分類:
漫画,単行本

記憶の中の微笑み。罪びとの涙。狂気の哄笑。全てを瓦礫に埋めてやる。

死に急ぐ男達の、ラスト・コンサート。

この惑星では、鎮魂歌は銃が歌うのだ。

重苦しく加速していく物語のテンションが頂点に達した辺りの描写は見物です。魔人たちが勝負に出る一瞬は、圧巻のひと言に尽きます。

現在、ちょっと息切れ中かな、と思える展開ですが、まぁ、これだけのモノを描いた後では無理も無いかと感じます。前半はまさに圧巻、それ以外に語る言葉を持ちません。

「カムナガラ #2」
著者:
やまむらはじめ
出版社:
少年画報社
分類:
漫画,単行本

なんというか方向の読めないハイスクール伝記漫画、物語は進んでいるのでしょうが、読者のほうはさっぱり、わりと手探りで読む作品です。

特異な状況での現実的な心理描写が、この作品のキモだと思うのですが、肝心の状況がいまいちピンと来ません。

あとやっぱ、プールのシーン。ずっと三月頃の話だと思っていたのに。

「エクセル・サーガ #7」
著者:
六道神士
出版社:
少年画報社
分類:
漫画,単行本

続く日々の暮らし。移ろう四季。流転のバイト先。彼女たちの夢や希望はとりあえず置いておいて、それなりの山や谷を越えて続く生活。

ただ、ちょっと、夢や希望がアレなだけ、の筈なのですが、なしてこうもアホなのでせうか…

今回の白眉はやはり鳥人間コンテストの話、特に、”鳥人間”はショッキングというか。Q州体育芸術大学の皆さんもステキ。他の話では、履歴書の欄も見所。

…さぁて、どこまで続くやら。

「市立戦隊ダイテンジン」
著者:
六道神士
出版社:
大都社
分類:
漫画,単行本

「…で、ラストは戦隊メンバーが油山っぽいところに逃げて、そっから天神とか中州とか、ズンドコ火の海になるのが見えて、それでオシマイなんですよ」

「…」

「で、ブルーは1人だけ置き去りにされるんです」

「…信じられるか、ンナの」

そんな会話を昔、後輩としたのを思い出しました。

チェックしておくんだったと激しく後悔したモノです。「カイザーペンギン」

内容はまぁ、えらく馴染みのある某都市の治安を守る戦隊”ダイテンジン”の活躍というか悪逆非道を描くというか、そういう内容です。つまるところ「エクセル・サーガ」の原型なのですが、えーと、エクセルやハッちゃんのファンは見ない方がいいと思います。逆に、蒲腐ラヴな人は是非とも。

脳天気なテンジンコア(レッド)、貧乏クジ体質のテンジンイムズ(ブルー)、笑顔で悪逆非道のショタ、テンジンソラリア(グリーン)、クール過ぎるテンジンレディス(ピンク)そしてモノローグで会話するメガネファットマン、テンジンアイガン(イエロー)、彼らを率いるのは市街の平和を守るハカセ、蒲腐!

都市の発展と治安の敵は見逃さない!環境団体?敵だ!イブのデートスポット?敵だ!看護婦?看護婦なんて、看護婦なんて、うそっぱちだぁー!!

…とまぁ、こんな感じで、歪みまくった視点の毒で読ませます。いやぁ、いちいち非道いんです。

これでマイナー漫画三大伝説(ラジヲマン、テクノ番長、ダイテンジン)のひとつが単行本化された訳ですが、残りも是非。

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