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July,26,2001

「ノービットの冒険 -ゆきて帰りし物語-」
著者:
パット・マーフィー
出版社:
早川書房
分類:
SF,文庫

表紙と帯を見て、買うまいと思ったが、訳者をみて購入。

山岸真、小川隆、浅倉久志の3氏の訳には、自動的に1+のバイアスがかかるのです。逆は内田昌之氏の訳す作品。訳には文句は無いのですが、対象作品に(オイラ的に)ハズレが多いのが難です。各訳者別の得点表、作ろうか。

内容は、トールキンの「ホビットの冒険」を下敷きにした、いわゆる正統派スペオペです。パロディではありません。

私は、いわゆる正統派スペオペって奴が、大っ嫌いなのですが、パット・マーフィーなので、ここは目をつぶります。しかし、巧いです。今スペオペを書くなら、この水準は確実に越えて欲しいものです。

「ホビットの冒険」は、MSX用ゲーム「The HOBBIT」に一緒に付いていたペーパーバックで、確か四分の一、BilboがGulumから指輪を騙し取って逃げたあたりまでしか読んでいません。ゲームはイギリス産のテープで、RAMを64k以上積んだMSXでしか動きませんでした。しかも、MSX2以降の機種では動かないのです。当時64kものRAMを積んだ機種は、確か東芝とフィリップスのものの2機種しか無かった筈。テープの中身、まだ生きていたら、読み出してみようか。そうだ、同じワゴンで買った「団地妻の誘惑」も。「団地妻の誘惑」は、迷宮と呼ぶにはあまりにも単純な4階建ての団地を舞台にした、ウィザードリィスタイルの真っ当なRPGでした。流石はシブサワ・コウ。

……脱線しました。

お薦めできます。充分に楽しめるでしょう。でも、ゴリゴリとした問題作が読みたいよぉ。

「20世紀SF #5 1980年代」
出版社:
河出書房新社
分類:
SF,文庫

80年代。

ギブスン、ベンフォード、スターリング、フォワード、ベア、カード、ラッカー、ブリン。私がSFファンである事に自覚した頃、書店に並んだ作品たち。文庫ばかり立ち読みしていたから、ゼラズニィもホールドマンも、ストルガツキィ兄弟も、私にとっては80年代だ。

あの頃、私は永久に書換えられてしまった。

情報理論、分子進化論、天体物理、共生、フラクタル幾何学。目新しいテクノロジーが世界を席巻するのを目撃し、粒子加速器や軌道エレベータ、テラフォーミングが議論されるのを見た。宇宙はシャトル一色で、NASAは神秘的な科学ガジェットの源だった。

ロボットはサンライズメカだったし、宇宙船は加藤直之の描くシリンダーだった。マイコンはホビーだったし、一番好きな雑誌はLoginだった。

ベンフォードは間違い無くハードだった。マイコンファンらしく、一度はギブスンを拒否したが、2度目にはハマった。日本人作家は神林長平と火浦功、そして谷甲州だった。そしてスターリングは私のSFの基準になっていた。

そう、それが私の”黄金時代”


収録作はどれもお薦めの内容です。私は「冬のマーケット」と「宇宙の恍惚」は読む必要を感じませんでした。既に何度再読したことか。しかし何故「冬のマーケット」?

「美と崇高」はまさにこの時期のスターリング。攻撃的だけど、改宗者には効果はうすいっス。収穫はコニー・ウィリスの「リアルト・ホテルにて」とジェフ・ライマンの「征たれざる国」この二作はレベルが高く、再読に耐えます。熟読すべきです。

しかし、ベンフォードの作品が収録されていないのは納得できません。そしてそれより、ルーシャス・シェパードの作品が収録されていないのは許せません。カードとイアン・ワトスン引っ込めて、代わりに「サルバドル」か「スペインの教訓」を。

佳作揃いですが、もう一段上のまとまりが欲しかったです。なにしろ”私の黄金時代”だもんで、思い入れがあるのです。物足りない貴方は「80年代SF傑作選 上下巻」と「ミラーシェード」は当然必読です。


次の90年代、空白の年代、”クズSF”の年代は、どのようになるのでしょう。マイクル・スワンウィックの初出短編なんかがあるといいなぁ。

「ロケット開発 失敗の条件」
著者:
五代富文 中野不二男
出版社:
KKベストセラーズ
分類:
技術,新書

日本の宇宙開発のトップにいた人物が語る、貴重な本です。

対談形式であるために内容は多少薄く、散漫になってはいますが、主張は判りやすくなっていると思います。

本書では、”失敗”について、多く語られています。勿論、原因もです。

恨み節や言い訳に聞こえる所もありますが、事実関係は押さえてあると思います。

ロケットの打ち上げに限らず、宇宙開発は今だハイリスクな分野です。アメリカからの技術導入によって、大型ロケット技術の基礎をうまく修得した日本は、そのお陰で初期において試行錯誤をほとんどせずに済みました。

しかし日本の宇宙開発も、先生のいない分野へと足を踏み出しました。そして、失敗によって、日本もその技術のリスクを、きちんと評価すべき時にさしかかった事を知ったのです。

日本では”失敗”は叩かれます。で、どうやったら収まるかと言うと”責任を取る”とそれで済んでしまいます。マスコミは再発防止の対策よりもハラキリの方が大好きです。

ハラキリで事が済むのなら、世界平和とか福祉とかの為に、あらゆる分野のトップを山ほどハラキリさせて一気に問題解決したいものです。しかし、ハラキリで問題が解決する筈がありません。

宇宙開発の”失敗”とは、対象を正確に表していません。ですが、”不具合”というのも、何か座りの悪い言葉です。多分、一番近い言葉は”バグ”なのでしょうが、テストランがやたらとハイコストな宇宙開発においては、違う言葉、ぴったりくる言葉を作るべきなのでしょう。

失敗、不具合、バグの研究に興味がある方には、クヌースの「文芸的プログラミング」を読まれることをお薦めします。この分野においては、ソフトウェア業界が現在最も研究が進んでいます。オープンソースのコミュニティリソースサーバやバグトラッキングシステムのような品質管理ツールは、あらゆる産業分野にローコストに応用が可能です。ISO9001なんて、CVSサーバをちゃんと運用していれば、ウザいだけです。

この本が、宇宙開発に関して、失敗というものに対して、考えるきっかけになると嬉しいです。


ただ、私は本書の内容の一部には違和感を覚えます。

宇宙開発の技術は、特別なものではありません。それはやはり技術なのです。特別視すべきでは無いのです。セキュリティや国家保安の立場も理解しますが、そんなものを優先させていては、技術は腐ります。

企業では、内部からの新技術導入は無くなり、企業内で奇妙な時代遅れの基準がまかり通り、やがて仕様書通りの骨董品を納入するようになります。発注側ではこの不思議な設計こそが機密技術のミソだと思って、骨董品を珍重するようになります。

技術は公開し、特許で保護すべきです。他国に誇れる技術かどうか、白日の元で判断してもらうのです。こそこそ隠れていては、どんな技術も腐敗します。

宇宙開発というのは、恥ずべき技術では決して無いはずです。外部の評価に晒して、技術の裾野を広げることが必要なのです。

”ならず者国家”がミサイル作るのに利用する? はぁ? そんな事は外交が解決すべき問題です。他国を攻撃できるような代物をガレージで作ることは出来ないのですから、ちゃんと情報集めていれば、作っているかは判ることです。大体、ハイコストな日本技術を選り好んで使うアホはいないでしょう。ミサイルの技術というのは、宇宙開発技術の先端とは違って、どこからでも手に入る技術です。所詮半世紀前の技術なのですから。

ソースを見せないからといって、マイクロソフトの製品がセキュリティに優れているかと言うと、それは違いますよね。

失敗に対して、バグに対して、品質を向上する。これは大規模技術であればあるほど、オープンにしなければ難しくなります。

技術を腐らせたくないなら、オープンにすべきです。

「ロケット工学」
著者:
柴藤羊ニ 渡辺篤太郎
出版社:
コロナ社
分類:
技術,ハードカバー

宇宙工学シリーズの2冊目です。全7冊が予定されています。

内容は非常に判りやすいです。少なくとも「ロケット燃焼工学」久保田浪之介著 日刊工業新聞社刊 よりも内容が具体的です。「ロケット燃焼工学」は固体の話ばっかりだったし、インジェクターやターボポンプの話は無かったし。

ロケットって、もっと作られて良いのでは無いでしょうか。今ならもう、そう難しい技術ではありません。姿勢安定と管制誘導なら、秋葉原の部品で数万円で作れます。エンジンもまあ、ちょっとキツい灯油バーナだと思えば。基本は半世紀前の技術なのです。

技術は隠蔽すると腐ります。それを防ぐためにも、このような工学書の刊行は非常に有意義であると言えます。しかし、本当に腐らないようにする為には、多くの人がその技術を試すことが必要です。

誰か、エンジン、作りませんか?

「固体地球科学入門 -地球とその物理- 第二版」
著者:
力武常次
出版社:
共立出版
分類:
科学,ハードカバー

地球磁場のシミュレーションを作るために、勉強です。

地球磁場は普通、「南北極を極としたダイポール磁場で近似」とかサラリと記述されていますが、まず、ダイポール磁場について電磁気の本で勉強です。

よく、地磁気を地球に埋まった棒磁石に例えますが、この棒磁石は一体どんな風に埋まっているのでしょうか。極にどのくらい埋まっているのか、それとも飛び出しているのか。

実際には磁気モーメントという値とそのベクトルさえ判っていれば、任意の空間での磁場は判ります。もっと精密な磁場シミュレーションが欲しければ、IGRFモデルというものがあります。もっとも、私がしばらく探して見つけたコードは80キロバイトのFortranのもので、私はさっくりとIGRFモデルの採用を諦めたのでした。


地球磁場の部分は精読しましたが、他はまだ読んでいません。見たところ、地球内部の物性なんかは理解できそうです。暇が出来たら読まなきゃ。

「Game programming genes」
出版社:
株式会社ボーンデジタル
分類:
技術,ハードカバー

いちまんにせんえん。高価かったです。分厚いです。言うなれば夏冬の凶器並み。

ゲームプログラミングの世界は、豊富なリソースを駆使した大規模プログラミングであると同時に、リソースをギリギリまで酷使するハードウェアプログラミングの側面を持ちます。コンシューマゲームは基本的に組み込みソフトウェアで、しかもバグは許されません。

ハードウェアを直接叩くものから、抽象度の高い構成まで、ゲームプログラミングは様々なレベルの技術を必要とし、リソース制約は絶対です。その上でバグフリーな内容を求められるゲームプログラミングは、ソフトウェアの世界のひとつのエッジでしょう。

内容は驚くほど網羅的で、非常に充実した内容です。ゲームプログラマに限らず、他業種のプログラマも、読んで得る内容があるでしょう。特に、物理シミュレーションを作る羽目になった組み込み屋とかには。

入門書ではないので、そのへんの本で得られる程度の知識は前もって必要です。が、実際に現場で使われているのに、文献に乏しかった知識、例えばクォータニオンの記述のある本書は、書かれるべきものが書かれた本として、評価に値します。内容はまだ突っ込みが足りないとは思いますが、得るものは充分過ぎるほど有る筈です。


日本のゲームプログラミングが凄いとは言っても、社内で閉じた技術であることが多く、ネットワークに流れる技術も、MLやBBSのログを漁らねばならず、明文化されていないものが殆どです。Gamasutraのようなゲーム技術ポータルも、日本語のゲーム技術誌も無いようでは、早晩海外に追い抜かれることは必至でしょう。

PS2LinuxでXが動くだけで喜んでいる厨房がウザいですか?しかしそれは、日頃の教育不足のせいでもあるのです。UV0叩けやゴルァと言う前に、技術を公開し、広め、底辺の底上げを図るべきなのです。モノ与えただけでは駄目です。

という訳で、まず、自分自身の底上げを図りましょう。この本は、知識の共通基盤として、これから有効に働くでしょう。

つまり、このくらいは読んでおきましょう。


しかしデバッグ、バグ管理、テストケースとかの話題が無いな。

「パソコン物理実施指導」
著者:
牧野淳一郎
出版社:
共立出版
分類:
技術,新書

私も思いました。

「赤木助教授の、下の名前は……リツコさん?」


リツコさんっぽい赤木助教授と、学生A君との対話形式で綴られる、コンピュータによる物理シミュレーションの勘所などを押さえた本です。

皮肉な物言いが素敵な赤木センセにズダボロに突っ込まれる学生A君、実によく頑張っています。非常に判りやすく、物理シミュレーションに首を突っ込んだ人は必読でしょう。お薦めです。

但し、ある程度以上の知識があることを前提としていますので、オイラー法もルンゲ・クッタもハミルトニアンも知っていなければなりませんし、当然Cの知識も、初心者以上のものが必要です。しかし、物理シミュレーションに首を突っ込んだら、そのあたりの勉強は必須なので、問題は無いといえば無い訳で。

海外の本で良くある、章アタマに引用文を載せるやつが、この本にもあります。しかも、非常にくだけた、ナイスローカライズがなされています。

-人間なみにできてますからね、指を折って数を数えられるんですよ-

ゆうきまさみ

こんなステキ引用文があります。これもまた、ひとつの、日本の教養でしょう。

「WebSiteDesign Vol.1」
出版社:
技術評論社
分類:
コンピュータ,ムック

Webデザイン雑誌です。普通Webデザイン誌といえば、標準化もユーザビリティもへったくれも無い、オシャレ海外サイトを称揚するものばかりですが、この雑誌は、表紙を見れば気付くかもしれませんが、「SoftwareDesign」誌の姉妹誌です。そんな雑誌が軟弱やる筈がありません。

特集は「そのWebを見るのは誰だ?」非常に良くこなれた、お薦めできる内容です。


…うちのWebは、3年前に「SF系で一番のオシャレさん」を目指すべく、現在の構成に変更しました。ウチはコンテンツが無節操にあるので、分類すると階層が深くなり、何らかのナビゲーションが必要だと言う事は判っていました。そのために、問題点は判っていましたが、フレームを導入しました。ノンフレーム対応もしましたが、操作性で劣ることは否めません。

640×480の画面で、ナビゲーションフレームが問題無く操作できること、メインフレームの閲覧に横スクロールが必要にならないこと、この2点がデザインの中心でした。

WindowsでもMacでも、色温度の妙なディスプレイでも液晶でも、最も視認性が良いのは白と黒。つまり、全て明度で区別できるべきだと私は結論しました。そしてカラーデザインを一応考慮して、テキストの色、リンクの色、暗色背景の色を決定しました。

コードは一応、htmllintでは満点では無いものの、悪い点ではありません。


問題点を挙げるならば、まずはフレーム、次に「どこがオシャレさんかい!」というトコロでしょう。でもフレームは、CSS2の実装ブラウザがもっとまともに、具体的に言えばMozillaがもっと完成度が高くならないと、廃止する気にはなれません。640×480の画面内で、常にナビゲーション部にアクセスが可能である現状よりも、劣ったナビゲーションを提供する気にはなれません。

第二の問題はといえば、オシャレさんを目指すのは諦めました。が、現状のデザインで割と満足しているので、そろそろ新規画像でリフレッシュすべきでしょう。ジオブリとか。あと、コンテンツの再分類が必要な部分がちらほらと。


HTML4.01準拠であること、スタイルシートが問題無く使えること、ユーザビリティに配慮していること、そしてその上で、デザインを理解し、感性に訴えるサイトを作ること。webサイトを持っている方は、是非一読し、改善を考えていただきたい。

だって、カッコイイサイト、見たいじゃないですか。

「攻殻機動隊 #2」
著者:
士郎正宗
出版社:
講談社
分類:
漫画,単行本

様々なアイディアや技法が惜しげもなく投入されてはいますが、殆どがインパクトに欠けるか、時代遅れか、もしくは誤りを含んでいます。

精読してみると、更にがっかりします。この作品は、典型的な”間違ったネットワーク認識”の例と言えるでしょう。主人公は、自己かその分身としか対話せず、他人とは一般的なコミュニケーションとはいささか趣の違うコミュニケーションをします。つまり闘い、格闘、罠、欺瞞、謎かけ、嘘です。

コミュニケーション抜きのネットワーク描写なんて! 悪意溢れるパケットの送出者、融通無碍の力を持った厨房です。

はっきり言って主人公、コミュニケーション不全っス。全編が独り言のような作りは、気がつかなかった方が良かった類の構造です。支援AIは主人公の系の一部と見なせますし、同位体は、主人公の別の相でしかありません。環は一貫して観察者ですし。概念の対立は、最後の主人公の自問自答までほとんどありません。

ラストの主人公の変移のネタが、発案者とのコミュニケート抜きに、いつのまにか海賊から掠め取っていたという流れは、主人公に最初からネタを内包させるための擬似的な方便でしょう。

”テロリストは死ね!”思想は表面上は後退していますが、理由無き暴力への敵意の裏返しとして、多くの脇役が、主人公にしか判らない理由で被害を受けます。真の意味での理由の無い暴力なんてものは、現実には存在しませんから、これは作品世界の合理化の為だと推測します。

面白いのは、脇役の受難に関して、主人公、そして作品内論理が、特にやましさを感じていない事でしょう。これは犯罪抑止力として倫理ではなく罰をメインに据えているからであり、半神や公安のような超法規的存在は罰を免除されるからでしょう。

そういえば、シロマサ作品の特徴とも言える半神の存在が、今作品では遂に主人公自身になっているのは興味深いです。


フルカラーの紙面は豪華絢爛。アイディアも結構投入されている(有効かどうかは別の話)ので、読み応えはあります。

しかし、ネタのアイディアはありがちかつロマンスさんな代物。生命と知性の区別が付いていない点は、相変わらず致命的です。

こちらは致命的では無いのですが、銃火器描写、表情の描写はレベルが落ちた気がします。宇宙機の運動についても理解していないのが判って悲しいです。

3DCGの利用は、成功したと言えるレベルに達しているかは疑問です。少なくとも、2001年現在においては。メカにシロマサメカの艶が無いのは、作品の魅力を格段に落とす要因だと思います。

読んで損はありませんが、私は誉めません。


……深読みし過ぎたかな。

「PCコマンド ボブ&キース」
著者:
高橋敏也&城久人
出版社:
ソフトバンク
分類:
漫画,単行本

「あのBOB&KEITHが単行本に? 本当か!」

「ああ、しかもフルカラーだぞ。攻殻2に勝っているぞ」

「そうか、ならば早速、手に入れよう!」

「おいおい待てよ、ネットで全部読めるんだから、別に買わなくてもいいじゃないか」

「そうそう、それにどうせ刷数少ないぜ」

ブチブチブチ……

(どこからともなく取り出したRPG-7を構え)

「ファッキン軟弱野郎どもっ

これでも食らえっ!」

アメコミ風効果付きで大爆発。


という訳で、探しましたが、本屋の漫画コーナには無し。あったのは、PC自作本のあたり。なるほど。

全話収録していないので、元サイトで全部読んでおきましょう。初期のわりと好きな話が収録されていなかったので、ちょっと悲しいです。

で、全部読んでおいて、その上で買うのです。この単行本はネタとして最適です。

「妄想戦士ヤマモト #1」
著者:
小野寺浩二
出版社:
少年画報社
分類:
漫画,単行本

言動が濃すぎるオタク高校生ヤマモトが妄想のままに大暴れ! ツッコミは付き合いが良すぎるマジメメガネ君松下と、お下げでメガネっ娘の高橋さん。二人とも不幸で迷惑なのだが、ヤマモトは幻のアレゲネタを求めて今日も幸せそうに戦う。そして、松下は、彼の言動、行動、思想に、何故か惹かれている自分を見つけるのだった……


ただ、いささか言動が濃すぎる点が、逆に薄さを感じさせます。これは例えば「かってに改蔵」のすみっこでよくこっそりやっている濃いネタと比べると判りやすいでしょう。オレは濃いんだ、アレなんだと力説されてもなぁ。

例えばフィギュア好きの描写。これは甘いのでは。その浅さを補うために毎回血涙流していれば、早晩血涙のインフレが起こるでしょう。大体今ならフィギュアよりドールの方が濃いだろうし、濃い妄想オタシーンの中心はPCエロゲー、そして恐らく妹萌えでしょう。

それが使えないのは、既に消費してしまったから。大ネタをロリータ番長やらで無駄に消費しているから、使えない訳です。作者には是非とも、もっと細やかなオタ描写を望みたいものです。

唯一オタ描写で合格点に達しているのは、メガネスキー系ですが、これもステロな古い価値観なので、現在の先鋭的なメガネスキーの心を捉え得るかは疑問です。

ただ、時々良い味出しているんで、頑張って欲しいですね。

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