まず、人間がやってきた。
人間は生命と暴力をもたらした。暴力は激烈に、生命には緩慢だが着実に、星を変えていった。
地質学的暴力。エコロジー的暴力。人の知覚には遅いかもしれない。しかしそれは……
火星に人間が定住してわずか100年。火と空気そして、火星に海がやってきた。
シリーズ前作「レッド・マーズ」は、その内容が傑作であったか否かに関わらず、私を揺さぶり、今もアタマにくすぶるあるアイディアを形作りました。
多分、作品の直接の影響ではなく、単なるきっかけだったのだと思います。わずか百人の社会がねじれ、葛藤し、未来をまるまる形作る。それは愚かであり、不幸であり、それが歴史というものになる。
で、考えたのは、こういう事。”政治”の最小規模は?
答えは2人。政治とは、問題解決の為のコミュニケーションだから。
政治とは、決して、権力を持つ誰かが権力を持つ誰かをアレすること、等では無い。権力とはコミュニケーション構造が個人に与える変数。では、争いとは、不信とは。
コミュニケーションとは通信。情報理論の言葉で政治を書きなおす。テクノロジーは政治に適用可能で、理論化可能。信頼とは、ビットの中にエラーがどの程度含まれるか。争いはゲーム理論に、アルゴリズムに。
そういう観点を持ってしまうと、世の、政治的要素(と称するもの)を持った物語、特にSFはまるで評価できなくなります。
で、「グリーン・マーズ」はどうかと言うと、枠組よりも、政治で扱おうという対象が惑星丸ごと、というのを極めて自然にやっているのに驚きます。政治的シーンそのものは牧歌的、理想主義的な部分と、愚かさが個人的視野のうちに納まるように構成されていて、読ませます。が、そのものの評価は低いです。
しかし、惑星丸ごとデザインする、そこに多くの意思と意図と欲望と盲信が交差するさまは圧巻です。大河小説的ですが、遥かに大きいこれは、惑星小説、そう呼んで良いのかも知れません。
テクノロジー描写は、前作より改善されたかと思いますが、主題はそこではありません。惑星改造を、圧倒的なスケールを、矮小な人間の視点から観ていく。きっちりと、生活の中に見せてゆく。惑星地形の描写はしつこい程ですが、その視界が必要なのです。
火星の、物語なのです。
物語は前作ほどのまとまりに欠け、次作に思いっきり引いていますが、質量感に富んだエピソードがこれでもかこれでもかと続くので、満足感は充分です。
お薦めします。
火力と電子戦のどつきあいで綴る、ファーストコンタクトテーマの佳作です。
とはいえ、今回は火力小さめ。連載時最終話予告サブタイトル「バトル・オブ・フェアリィ」に燃えたような人に警告しますが、そんな展開はありません。
前作が、人対機械という、割とわかりやすいテーマで展開していたのに対し、今回は、自己と、未知としての他人という構造が読み取れると思います。読みにくいですが。
自分は自分、他人は他人。他人は決して自分じゃない。ジャムは決して人間じゃない。つまり、”個人主義でありながらまとまっている”というのは、そういう認識をベースとした上で、相手を理解しようとする、そういうスタンスを指しているのだと、私は解釈しました。
もしそれがテーマなら、中途半端だな、とも思いましたが。また、文体に以前のタイトさが無いのも、続編と呼ぶのには悲しい気がします。
ちなみにOVA「雪風」には、今から絶望していたり。多分「Hellsing」みたいになるんだろうなぁ。
春から夏にかけて作っていた物理シミュレータは、慣性のある物体の回転の扱いが変で、時間が経つとだんだんスピン速度があがるというバグがとれないまま、ほったらかしになっています。
ここに現在のプログラム(ソース付き)を置いておきますが、肝心のバグ部分は現在使用していません。あとデータファイルのXML化も、日本語をUTF-8が書かないといけないという制約を前にして、ちょっと挫けています。あと、ツリー構造化データをサポートしたのはいいものの、視点をどう記述しようかという問題も。
という訳で、ちょいと仕切なおしの勉強です。
内容。非常にお薦めできるものです。物理シミュレーションの入門書として、平易な内容とサンプルソースがあり、OpenGLを用いた3Dヴィジュアルで視覚できる、というのは非常に高く評価できます。
コンパイラとしてVC++もしくはVBを想定していますが、Win32APIを叩けるコンパイラなら、サンプルソースを少々弄るだけで実行が可能でしょう。
…さて、買ったのはいいけど、これもまだしばらくほったらかし、かなぁ。
ゲーム理論には大別して2種類、協力ゲームと非協力ゲームとに分類されます。
協力ゲームと非協力ゲームの差は簡単に言えば”裏切りのアリナシ”です。”囚人のジレンマ”に代表されるように、ゲーム理論といえば非協力ゲームが注目されがちですが、公平なリソース分配といった問題を考える場合、協力ゲームの理論は学ぶ価値があると思います。
リソース分配というのは、生活や仕事の場で案外良く出くわす問題であり、学ぶ価値は非常に高いと言えるでしょう。
本書は適度な厚みと価格、もったいぶらない平易な文章と判り易い内容で、協力ゲーム理論の教科書、入門書としてお薦めできます。
特集は”革新的原子炉の国際動向”です。
革新的、というのは怪しいですが、安全性、経済性を増す様々なスタイルの提案があります。ガソリンエンジンで言えば、空冷を水冷にしてみたり、カムの位置を変えてみたり、バルブの制御を変えてみたり、ピストンの断面形状を変えてみたり、そんな感じです。
原子炉もふつうの機械なのですから、どんどん改良すべきなのです。
例えば、自然循環冷却や上部挿入制御棒、原子炉・タービン一体化構造、そして重力落下式非常時冷却構造。
そして生み出されるのは、燃料交換の頻度が少なくて済む、長寿命炉。超臨界水を使いシステムを簡素化した炉、そして様々な小型炉。
例えば電力中央研究所のRAPIDは、月面設置を想定した超小型安全炉です。直径2m、重さ7.8トン。リチウムによる1/6重力での自然循環冷却、全自動で制御棒がありません。10年間の連続運転が可能で、モジュラー式の燃料交換が可能。燃料はリチウムごと廃棄します。1年放置して冷まし、固まったリチウムごと埋めて処分になります。
反応速度は起動に5時間、停止は瞬時で重力方向に依存しない特性を持ちます。当然ながら地上でもこの炉は設置可能です。というか、大抵の極限環境で稼動すると見られています。
このケースは特殊ですが、このような小型炉はモジュールとして複数設置することを前提としており、安全性とセキュリティを重視しています。一般には遠隔地の電源として考えられており、これまで大型商業炉に取り入られられる事の無かった安全炉技術のありったけが投入されているのが特徴です。問題はコスト。だから遠隔地需要を当てこんでいるわけです。安全よりもコスト。はう。
将来的に、エコロジスト的に見た原発の立場は、"廃絶"対"京都議定書"という二律背反に陥ることが目に見えているため、その時が非常に楽しみです。ま、オイラは原発存続派だし環境保護論者の80%はアホだと思っているので、ウォッチングに徹しようと思っています。
同様に、玉虫色の言葉でしか巨大プロジェクトを肯定できない奴もアホだと思っています。この雑誌冒頭の中部電力取締役がまさにそれ。
逆に現場サイドの書いた文章は、現実をきちんと直視しています。
原子炉のコスト低減には大型化が最も有効とされ、現在1.5GW級の第4世代と呼ばれる超大型炉の開発が行われています。しかし、第4世代炉には、高い安全性も要求される筈であり、開発者、開発機関共に痩せ細り、硬直化した現状では、それに応えることができません。
私は、安全炉技術の向上と実践をすべきだと強く主張します。そのために、小型炉は演習として、技術向上の足場として最適だと考えます。
安全にコストをかけるなら、こういうところに。
”マガジソ”です。”ン”ではありません。
私は/.に居着いてしまったので、2ちゃんねらにはなり損ねました。ま、発言はメールアドレスと実名晒しで、と己に掟を課しているので、書き込む気はハナから無かったのですが。
でも、2chが巨大化し、無視できない極の一つとなった現在、イヤでも2chは無視できません。スレの杜なんか見ながらスレチェックしたり、鳥はむ作ったり、1chウォッチ情報を得たり、田代祭りを眺めたりする訳です。
そいう意味では、運営筋に近いところから出た、紙媒体による2ch案内、というのは気になるところです。
で、内容なのですが、ああ、これはヤバイ表現なんだなと思ったんだろうなァ、微妙だけど、という部分が非常にわかって、それだけでも収穫かも知れません。
内容はちとマターリし過ぎて、内情の反映というには「まぁ、そうとも言えるね。間違ってないけど」という程度です。あの殺伐とした、嫌な空気はあんまし感じられません。
逆に言えば、ここが美味しい、と考えている部分が取り出されている訳で、それに関しては割と客観的だなと思えました。
紙で残るネットウォッチ資料として貴重です。それ以外にはあまり価値は無いかと思います。これ読んで2chデビューなどしないように。
しかし、掲示板設計ってのは面白そうです。自分で実運用してデータ収集する勇気はまだありませんが、いつかは。それまでは、掲示板形式が内容に与える影響について、ごにょごにょと考えていこうと思っています。
噂では、この巻の発行部数、8000部だとか。酷過ぎます。
序盤の展開を我慢してついてきた漫画読みの為の、ご褒美のような内容です。やまむらはじめの短編の、あの空気の存在があるのです。
いや、それは正しくない。はじめから空気は、計算された歩みは存在してきたのであり、気がつかなかっただけで、いまここに至って、巻を遡って物語が組み立てられているのです。
それも、少しづつ。
親と子供、家族とも他人とも違う人、そして喪失。指し示す腕、巡礼の旅。
…こう書くと、多くの、微妙なニュアンスを取りこぼしている気がします。
しかし、好きでやっているのでしょうが、損な物語展開だと、つくづく思います。序盤は駄作としか思えなかったのが、中盤から、序盤の意味を改めて与えてゆくことによって、物語が別物になってゆくような、こんな展開、やまむらはじめの圧倒的な物語構成力のチカラあってのことなのでしょうが、やっぱ損してるよなぁ。
「カムナガラ」も、OURS2002年1月号まで、駄作だと思っていたし。
この旅についていくのは大変だと思いますが、読み続けてみましょう。多分、旅の最後には、何かが待っています。
オール2カラー、ほんわかとした料理漫画です。でも、料理パートと物語はきれいに分かれていて、お話だけで、良い気分になれます。料理は…そう、そんなお話に添えられたお茶とクッキー。
大石まさるらしい、良い感じの漫画です。ただ、体裁がちょっと変わっているけど、それもまた良い感じ。料理は小学生が作れるもの、ということで、火を使わないものばかり。そしてお菓子がいっぱい。お薦めです。
あとえーと、とりあえず郁子さん萌え。これだけは言っとかんと。
昔々「課長王子」というアニメがありました。え、まぁ最近の話なのですが、割とどうでもいい過去の話なので、それはそこに置いておきましょう。割とどうでもいい内容だったし。
問題は、メディアミックスでタイアップな感じの漫画を、「AICコミックLOVE」なんて、誕生してから潰れるまでだれも気がつかないようなマイナー誌で、しかも田丸浩史に描かせた、という点。
ここまで読んで、問題のありかがまだわからないような人は、アル伝読め、すぐ読めと助言をば。「スペースアルプス伝説」という名前で、妙に分厚い単行本が出ています。
問題が解っているなら、この漫画はとことん楽しめるでしょう。アホです。頭のネジのあるべき位置にご飯粒詰めたような漫画です。
アニメ見ておかないと、背後関係ちょっと解りづらいのですが、見てもつまんないので、漫画冒頭のノリのアニメを脳内制作することをお勧めします。マッドハウスで全13話萌えと超兄貴が一緒な謎アニメ、という感じで。
アニメ見た人は、漫画のあまりの脱線ぶりに、清々しい癒しを感じることでせう。どーでもいいエピソード、強盗で刑務所送りのヒロイン、ページをめくると終わっているクライマックス、そしてアホなラスト……
あと、眼鏡っこ奥さん! 田丸浩史の描く眼鏡っこは、フレームがきちんと描かれていて好印象なのです。
変な漫画好きにお勧めです。
「わけがわからなくたっていいじゃないか にんげんじゃないんだもの」
…名言です。
「課長王子外伝」薦めておいて言うのもナンですが、変な漫画にも程があるのではないでしょうか。こう、単行本になると、凄いのなんの。
えーと、内容はその…三葉虫です。あとは、変にも程がある、それはもう一回言っておかないと。しかし何故三葉虫、何故三葉虫。
もしかすると、傑作かも。いや、現在オイラの頭上、三葉虫が輪になって踊っているんでアレなのですが。
買うべし。読むべし。そして唱えよ。三葉虫。三葉虫。三葉虫。……三葉CHU!!
…………(激しく後悔)