特集はSFアニメ。とはいえ活字誌なので活字ばかり。アニメ誌がアニメを語るのに、どうしてあれほど絵を必要とするのか、結局違うメディアじゃないか、等と思っている私ですが、まぁこれも善哉。下手をすればオタクが居酒屋で管巻くような代物になっていたであろう所を、よく纏めたと思います。
読み所は、アニメの作り手の描く、文章で描写するSFでしょう。どこか刺激があって良い感じです。あさりよしとお「おいら宇宙の探鉱夫外伝」は、本編の続きを期待しながらチェック必須。
ただ、SF誌としてはどうだろうかという思いも。少なくとも1つは、アニメというメディアを直接対象にした作品が欲しかったところです。
でも、SFが、物語で語っていく必要は必ずしも無かったのかも知れません。SFは、文学である必然性を持たないのかも知れません。
自分が「ほしのこえ」で一番衝撃的だったのは、一人で製作する長編アニメーションが具体的にどういうものであるのか、それを知ったことでした。集団製作のプロセスで消えてしまう何かを見た気がしました。
将来において小人数製作される長編アニメーションたちには、旧来のアニメーションの評価基準、例えば作画枚数といったものを適用できないでしょう。基礎となるテクノロジーが違うのです。素材ストックやエフェクト、レイヤー数で評価される作品群がアニメーションの主流になる日も近いでしょう。そして、新しいメディアの受け皿も現れるでしょう。……例えばエロゲOPとか。
こういう未来の予感が、私にとってのSFのエッジです。考えてみれば、私にとってクラークの「楽園の泉」と、工学書「宇宙開発と設計技術」は同じ価値を持っていました。
かつて、情報を連結する脈絡として、物語は機能していたのだと思います。しかし今では、密度の高い情報は自然にリンクを張り、ネットワーク化して、自分で脈絡を作っていきます。
物語に在らざるSFの可能性。もしかすると「Project X」と実際の現場との関係の如く、物語化すると陳腐になるような、物語化を拒否するようなコアを持つ、そんなSFがあるのかも知れません。事象をわかりやすくするには、物語は有効です。しかし、それで失われてしまうモノに誰も気が付いていない気がします。
物語無きSFの愉悦を、いつか誰かと分かち合いたいものです。
考えてみれば、シミュレーションって、サイエンス・フィクションだよなぁ。軌道計算ラヴ。
突如として現れた、洋上交通を、船乗りを脅かす海の怪異。人類と海との戦い。
戦いしか無いのか。その答えは遙か波の下、深淵に横たわっていた……
小川一水作品は「アース・ガード」から大体読んでいるのですが、これはちょっとブレイクしました。
語りとかスケールとか、どこか地味と感じがちですが、地味に巧いし、色々とツボだし、でも、ヒトに語るときに、どこか困難を感じてしまうのです。
しかし、やっぱ海です。海中です。私はクラークの「海底牧場」でSFに入った人間なので、自動的に感じてしまったのかも知れませんが、わくわくする感じ、しました。
話の進め方が唐突に感じられる場所がありましたし、途中で色々と大体予想できてしまうのも問題かもしれませんが……
お薦めできると思います。
相変わらず、巧っ。
前2巻のような、身をよじって嫉妬する程の技巧はありません。技巧的には、繰り返しをあまりに有効に使い過ぎているのが気になりました。
しかし、終盤の、物語の持っていき方の断固とした辺りは素晴らしいです。ラストに向けて、さっくりといろんなモノ除去しています。次では、もっとざくざく除去するものと予想。
こういうワクワク感は、どうしたものでしょう。いや、好きなのですが。
人々に「あのエヴァ要らない」と言わしめた、らーぜPON。「絵は良かったね」としか言われない悲しい作品のメディアミックス周辺群の中で、とびぬけてスキルの高い語り手が一人。神林長平。
最初、マジかと思いました。という訳で、わくわくと期待していたのですが……
ひどく粗悪なもの読んだ気がします。\
とうとう買いました。ヘネシー&パターソン。
RISCの生みの親2人による、コンピュータハードウェア設計における最大の名著です。定価いちまんにせんえん。
分厚いものの、合理的で読みやすい内容です。読み終わるまで数日かかりました。
内容は、まずコンピュータの性能とは何か、その定義から始めます。そして、性能がどういう要素で決定されるか、実際のハードウェアによる測定値を用いた定量的な議論を行ないます。全く、これを読むとRISCでパイプラインで階層キャッシュ、つまりMIPSになってしまうのが難点といえば難点でしょう。
というか、彼らの研究から出てきたのがMIPSアーキテクチャなんです。この世のRISCチップは皆MIPSの変種と言っても過言ではありません。
ただ、やっぱり古さは感じます。PCIバスもPentiumProも無かった時代の話です。高速シリアル伝送もありません。読んでいると、VLIWよりベクトルプロセスの方が、マルチメディア関連処理には適してる気がしました。うまくやれば1次キャッシュ強化してレジスタ廃止できる気も。あと、割り込みを邪魔者としか思っていないのが判ってなんとも。
今時の非同期な、イベントドリブンなコンピュータ使用環境に対して、コンピュータアーキテクチャは適合していないと思います。また、ロボットのような、低速だがタイミングに対してシビアな大量多種のデバイスをぶら下げた時の性能向上に関して、何の対策も持っていないと思います。
私はとにかく、安全で高いパフォーマンスを持った、大量の割り込みが欲しいです。最低でも100、大体1000個ぐらい。関数1つにつき割り込み一つみたいな、ふざけたアーキテクチャでも可。割り込みの飛び先を、別の実行ユニットで並列処理してくれたりすると最高だなぁ。
こういうCPU、待ってます。
実はこっちも買ってしまいました。パターソン&ヘネシー
いや、有名な”ヘネシー&パターソン”ってこっちかな、等と思っていたもんで。内容は上とほとんど同じです。しかし、出たのが最近なんで、こちらを読むのをお薦めします。こっちの方が内容も新しく、判りやすいです。
まぁ、結論がMIPSなのは変わらないのですが、コンピュータがどのように計算するのか、その要素はどのように決定されたのか、何故コンピュータはコードを解釈して出力を返すのか、知りたいならば読みましょう。また、MIPSの勉強にも。
お薦めです。高いけど。
実はこっちも買っていました。
計算機科学界の神、Knuthによる仮想汎用コンピュータアーキテクチャ、の解説です。
……なんというか、でかいMIPSにしか見えません。
特集は「真空:その真実と物理像に迫る」ガキの頃にディラック的な真空像、負のエネルギーがこれでもかっと言うほど一杯一杯詰まっている、そんなイメージを植えつけられてたもんで、こういう題は燃えます。
しかし、量子色力学やゲージ理論、超ひも理論といった取っ掛かりが無いと、手におえない分野でした。双対変換や超対称などといった知識も必要です。あと、後ろから読んだほうが判りやすいかも知れません。しかし、”確率的に何も無い”と”エネルギー基底状態”がごっちゃになると、理論の要請がモノポール凝縮と超伝導と質量ゼロの粒子を、そして真空に構造を与えます。
ちょっと手に負えませんが、超伝導理論の中の真空の解釈は魅力的です。超伝導真空とは固体が同時に真空である、しかも幾何的な構造を持った真空である、なんて、うひゃあ!
ミリタリー誌というのは、考えてみると奇妙なものです。
運用側とも製作側とも無関係な、ほぼ純粋な第3者のための雑誌です。更に、得た知識の使い様も無いときています。
その癖、知識、スペックばかりを重視するのですから妙なものです。しかし、「PANTZER」誌で連載されていた、本書の元となる記事は、製作側の真摯な態度溢れる、極めて密度の高い内容で異彩を放っていました。
本書は題の通り、戦後の陸上自衛隊、そしてその前身の装備した特殊車輛と、その開発についての本です。更に、米軍供与車輛についても多くの記述があります。終わりは著者が退職する1980年代前期、第3世代の設計審査という辺りなので、90式などの記述はあまりありません。
読んで印象的なのは、著者の率直な態度です。人物評価に関しては誉めすぎではないかとも思えるのですが、ハードウェアに関しては具体的な記述と相俟って印象的です。具体的にけなす文言はないものの、批判は極めて多いです。
特に、機密保持のシステムが技術の硬直、腐敗化を招いているという記述は印象的です。自衛隊の情報の扱いって、本当にここまでヘッポコなのでしょうか。”秘密だから秘密”というセキュリティコンセプトは、最低に近いかと思います。
セキュリティで最初に必要なのは保護対象の厳密な局限化です。保護対象をコンパクトにまとめ、アクセス手法を制限し、予期されるアタック手法を減らしていきます。むやみにアクセス制限を掛けても、可用性を阻害するだけです。
無邪気なアクセス制限が、本当なら判断など必要の無い条件で判断を必要とする状況を生みます。しかし、情報の無い状態での判断など、間違い無く過ちです。分割された断片が、無秩序へと崩壊していきます。
極めてセキュアなOS、OpenBSDがオープンソースであることの意味を、良く考えるべきでしょう。
そもそも、何の為に何から何を守るのか、それがわかっていないのだと思います。これは自衛隊、そしてその装備の殆どにも言える事です。90式戦車なんて、とても日本で運用する車輛には見えません。東ヨーロッパで限定核戦争を戦うための車輛にしかみえません。間違い無く、国土の70%が山で、残りが耕作地と宅地の混在環境なんて国で運用する車輛じゃありません。
……レオIIやM1と並べて見栄えがすることを目的としたトロフィーに過ぎない、というのは薄々感じていましたが、はっきりと書かれるとやはりショックです。
理想なきところに、目標達成はありえません。無目的な迷走は、今も続いているのです。
ミリオタだけに読ませるには勿体無い内容です。技術屋なら読むことをお薦めします。
ぴっかぴかの高専一年生の春先ふた月、理科年表を読み漁ってハァハァしていた時期がありました。通学の電車の中で、背表紙が擦り切れるまで読んでいました。
今考えてみると、なんであんな代物を必死になって読んでいたのだろうか、と、我ながら不思議に思っていたのですが、この本を手にとって、判りました。
あの頃の気持ちが蘇ります。うわ、これ良いよ!
理科年表好きには、絶対の自信をもってお薦めします。機械系技術者は必携です。
運動力学、水力学、気体力学、熱力学、波動及び音響学、光学、核工学、電磁気学、電気電子工学、材料力学、そして機械工学。技術屋が”ちょっとここの値を出そうか”という時に、手元にあると便利な1冊でしょう。
更に、この密度と実態の想像し易さが、理科年表と数学公式集の中間、実態と理論のリンクとして、実においしく読みふける事のできる1冊としています。
お薦めです。
……アホです。
今年の夏のコミケは、技術系に大きな収穫があってホクホクでした。
オライリー本の表紙のパロディで、MSXを題材にコンピュータの動作を解説する「リッチなコンピュータ入門」、Interface誌別冊の表紙パロディ、というかほとんどそのまんま、H8マイコンにIDEハードディスクを接続する「ATA(IDE)ATAPIの小研究」は裏表紙が「日本科学技術大学 上田○郎の どんと来い、H8マイコン」だったり、毎度お馴染みでぶあん本はBフレッツ接続がターンAだったり、他にもコピー本ながらデザインと内容は毎度素晴らしいM-Tech designの本など、素晴らしい充実ぶりだったのです。
そんな中から是非とも紹介したいのがこの一冊。ぺらぺらのモノクロコピー誌ながら、アホ度は最高です。内容はその、アレです。"プログラミング入門"+"はじめてのおるすばん"
"はじめてのおるすばん"とは何かわからない、汚れていない方には、"おるすばん"とは実に危険な言葉だと忠告申し上げます。私は職場に、上記のナイス同人誌と一緒にこの本も持っていってしまった所為で、宇宙開発の現場に危険な因子を持ちこんでしまいました。あ、あと"おいしゃさん"も危険です。
「…うん、わかった…。おにいちゃんになら、わたし、見られても…いいよ…」
決死の覚悟を決めて、しをりちゃんは一呼吸し、その小さくて華奢な指をそっと動かした。
そしてマウスを握りしめると、自分の作ったソースファイルまでマウスポインタを動かし、ダブルクリックした。
いや、実に良いまっとうな内容なのですよ?構造体とポインタです。源文ネタもあるし。挿入歌もあるし。ファーザーもいるし。めがねだし。
いろんな意味で、すばらしいのですよ?
夏コミで頒布されてた同人誌に紹介されていたもので、チェック。
内容は、ほぼ丸々MSX、と、バカ。バカ成分はがっぷ獅子丸というかゲーム帝国ノリ。
情報は非常に豊富で、要らん知識満載です。なんというか、例えばMSXマガジンは平綴じの頃から最後まで買っていた、MSX1(CF-2000)とけっきょく南極大冒険とデータレコーダ、MSX2(FS-4600F)と感熱紙とWizerdry、MSX-Turbo-R(FS-A1GT)とメガデモと駄目ゲーというMSXひと筋野郎だった奴にはカチンとくる部分があります。
いや、今更西やんの戯言信じている訳じゃ無いのですが、えーと、M通(Login誌内にあった記事"MSX通信"のこと。かつては"ファミコン通信"もLogin内の記事だった)的ノリが欲しいなぁ等と、思ってしまうのです。
「MSXにはこんな変なゲームが!ガハハ!」という方針で作られている本だから仕方は無いし、思い出して結構笑えるのですが、ああ、そうです、かつてコナミは偉大なゲームメーカーでした。バッテリバックアップSRAMでのデータセーブを初めて実現したのはT&Eソフトで、Mマガには桜沢エリカが4コマ描いていて、MSX-DOSはMSX-BASICと親和性抜群だったのです。
そもそもこの本、カセットゲーばっかじゃないか、テープは、FDDは、フリーソフトは、TAKERUは、どこなのか。そう、MSXは偉大なのじゃよー。Might & Magic Book Twoは解くのに一年かかったのじゃよー(残響音含む)
……駄目だ。
寺田克也猿神様の、Painter使いの御技を逐一じっくりと拝見、という趣旨の本なのですが、あそこまで巧いと、「お願い神様、どんな供物を捧げればボク巧くなれるかにゃー」等という腑抜けな感想しか出てきません。
しかし、この本、伊藤ガビン編集、というか、好き勝手やっているという話。そういう話なら興味が湧いてきます。M通成分が欲しかったところですし。
表紙からしてガビンです。素晴らしい仕事しています。寺田克也と伊藤ガビン、素晴らしい、素晴らしいです。内容もイイです。自分、絵に色をつけるという作業がとことん駄目で、なんというか、CGになってから更に酷くなったような、そういうへっぽこぶりだったのですが、どこがまずかったのか、判った気がしました。ヒント、ふた桁くらい貰いました。絵を描きたくなる内容です。
絵描きには是非ともお薦め。ガビンスキーにもお薦め。タブレットも一緒に買え。
電動ファイト”マシネット”に吹き荒れるショタとレズとメガネの嵐!でもまぁアレだ、アホだから、破壊力があるかと言えばちーと違います。
「初恋☆電動ファイト」の続編です。SF3Dとアホネタの、いつもの作風ですが、そういう点では、いつもより魅力低めでしょう。エロ描写が手馴れてきた(巧くなったと言う意味ではない)気がしますが、まぁちょっと考えモノかもしれません。
Q:エロマンガに求めているのは?
A:1、バカ 2、ネタ 3、メガネ 4、才能 5、エロ
大体このような優先順位のもとに、日々あぶくの如く現れては消えるエロマムガ誌をチェックしているのですが、祭丘ヒデユキは最近のヒットでした。しかし最近見かけなくてどうしたのか、心配だ……等と思っていたら、単行本です。
チェック開始が「江戸前!にぎるちゃん」と「ソ連〜ソープランド連邦共和国」、特に後者、だったのですが、いやもうアホとしか。粗筋も何も書けない、もうアホとしか。
私ゃこういうの、大好きです。
当代きっての拳銃使い、紅の流れ星が、綾金の南に惚れた男の影を追う。
その首には賞金、裏では闇ダイヤと大金が転がり、危険な男たち、そして女たちが集う。
霧の中では銃声と裏切り、夜の闇には硝煙と駆け引き。
流れ星が導火線を弾いた、ダイナマイトが150屯。
恋なんて、どかん、吹き飛ばせ。
三重県は今、ドキドキするほど大ピンチです!
旧車に乗った珍銃、いや、拳銃使いたちが、もう、わらわらと出るわ出るわ。マックの玖やら実写版ドーベルマン刑事やら付け髭のチョウ・ユンファやらジェームズ・ボンドやら腕に弾帯巻いたスタローンやら、終いにはブルース・ウィリス同士がベレッタの二つ名を賭けて撃ち合う始末。
珍銃の方はジャイロジェットピストル、アストラ、ラドム、ガリル、エルマ、サベジ、ベルグマンベアード、メジャーどころも殆ど出ます。次巻分でもいろいろ出ますし。
三重県のほうは牛丼屋でドンパチ、JR津駅前で銃撃戦、温泉宿で大激闘、ロープウェイでひと波乱、そして四日市埠頭で大爆発!あ、あとラヴホで大穴。おなかいっぱい。
で、物語はというと、第9巻に続く!
「朝霧の巫女」休載です。
「TRIGUN MAXIMUM」休載です。
「コミックマスターJ」えー、つまり、ようこそ、休載倶楽部へ。
そして「GEOBREEEDERS」三重県編完結!いや全部通して読むと、ちょっと切なくていい感じです。