これを読む前に、
「逆説論理学」 野崎昭弘著 中公新書 もしくは、「THE PARADOX BOX」 マーティン・ガードナー著 日経サイエンス別冊
を必ず読んでおきましょう。バナッハ=タルスキ分割について予備知識があるとなお良いです。
4冊で一組です。この作者は、文字どおり異星人に木星をかっぱらわれるというハードSF「木星強奪」やら、人類からのDNAデータ通信にもとづいて異星人が人間を造るというこれまたハード系の「創世伝説」やら、でたらめにスケールの大きい作品を書くので結構好きです。
で、こいつは、超光速なしで星々に広がったイスラム世界という結構魅力的な世界なのですが、薄味だなーなんて思っていたらどっこい、終盤はぶっとびでした。終盤だけ立ち読みしましょう。
宇宙戦争マニアが最後に到達する場所、極北です。このシリーズの一言で言い表すならばそれは、”某銀〇〇雄伝説の正反対”でしょう。
簡潔な文体、本格SFとしての骨太な世界と、歴史のみをシリーズの主人公とする冷酷なまでの物語、そして、小説を書く前に軌道計算をするという極めつけのハードな描写、そしてハードなメカニック描写がイイのです。
宇宙でのまともな戦闘描写ができるのは谷甲州ただ一人、と断言しましょう。