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November,7,1994

「天界の殺戮 上下巻」
著者:
グレッグ・ベア
出版社:
早川書房
分類:
SF,文庫

とんでもないスケール、そしてそのスケールを身近に感じさせる描写。

主流文学には、逆立ちしてもできないこの感覚こそ、SFの醍醐味。

前作「天空の劫火」より、異星の自己増殖機械に地球を破壊されてから、主観時間で8年。光速にほど近い速度で、報復のために飛ぶ<法律の船>と<地球の子供たち>。崩壊する地球から人類の生き残りを救出した存在は、報復への参加を人類に求めたのだ。

敵は、狡猾きわまりない、強力無比の罠を張っていた。数千年に渡って機能し、立ち回る、人類のテクノロジーを遥かに越えた罠。

報復のために与えられた<船>のテクノロジーは、公開されていない。

最後の敵の罠は、カモフラージュされた幻の惑星と、その上で本物の文明を築いている、罪なき存在たちだった……

しかし、<法>は行われなければならない。

確実に”重さ”を持った、待ちわびた本格SFです。さすがベア。ぶ厚さを納得させるだけのスケール感。異様な、未知のものを描き出す筆力。

ただ、なんとなく、”カード化”の兆候を感じてしまいました。

「エンダーのゲーム」に極めて似た設定と雰囲気。以前の長編には感じられなかった、わずかな散漫さ。ラストの煮えきらない感じ。

”ヒューマニズム”なんてすぱっと捨てて、人間外の存在の、冷たく客観的な視点を持てるのがSFの利点なのに。

ま、点は辛くなりますが、最近のSFでは良い線を行っている方でしょう。

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