とんでもないスケール、そしてそのスケールを身近に感じさせる描写。
主流文学には、逆立ちしてもできないこの感覚こそ、SFの醍醐味。
前作「天空の劫火」より、異星の自己増殖機械に地球を破壊されてから、主観時間で8年。光速にほど近い速度で、報復のために飛ぶ<法律の船>と<地球の子供たち>。崩壊する地球から人類の生き残りを救出した存在は、報復への参加を人類に求めたのだ。
敵は、狡猾きわまりない、強力無比の罠を張っていた。数千年に渡って機能し、立ち回る、人類のテクノロジーを遥かに越えた罠。
報復のために与えられた<船>のテクノロジーは、公開されていない。
最後の敵の罠は、カモフラージュされた幻の惑星と、その上で本物の文明を築いている、罪なき存在たちだった……
しかし、<法>は行われなければならない。
確実に”重さ”を持った、待ちわびた本格SFです。さすがベア。ぶ厚さを納得させるだけのスケール感。異様な、未知のものを描き出す筆力。
ただ、なんとなく、”カード化”の兆候を感じてしまいました。
「エンダーのゲーム」に極めて似た設定と雰囲気。以前の長編には感じられなかった、わずかな散漫さ。ラストの煮えきらない感じ。
”ヒューマニズム”なんてすぱっと捨てて、人間外の存在の、冷たく客観的な視点を持てるのがSFの利点なのに。
ま、点は辛くなりますが、最近のSFでは良い線を行っている方でしょう。