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March,21,1995

「時間的無限大」

著者:
スティーヴン・バクスター
出版社:
早川書房
分類:
文庫,SF

買うことはない。向こうで買えばいい。荷物になるだけだ。何なら、旅の最中に読めばいい。今買うことはない。買えば読んでしまう。買ってはいけない。

…………苦悶わずか3日、買っちまいました。あぁ。

イギリスの新進気鋭の”ハード”SF作家バクスターの実力は、去年翻訳された「天の筏」で証明ずみ。そのとんでもない設定(重力定数が我々の世界の10億倍の宇宙!)と、緻密で正確な描写には魅了されました。独特の、イギリスSFの香りが立ちこめ、ふと、ウェルズの雰囲気を連想したのは私だけなのでしょうか。

今回は、タイムマシン。ウェルズ以来の伝統だろうか。現代物理学の先端で今も大議論中の分野、ホーキングはできないと言けど分が悪い。大抵の場合、できないと言う奴は分が悪い。蒸気船による大西洋横断しかり、飛行機しかり。タイムマシンの出来る可能性はかなり高いのだ。

物理学者が扱い、またこの作品でも扱われているのは、送信機と受信機が要るタイプ。ワームホールだ。物理学者のもう一つの切り札、カー・ブラックホールは、最後のほうで、とんでもないスケールで描かれる。

作品中の狂信者達が信じているのは、「ウィグナーの友人」と呼ばれるパラドックス−「シュレーディンガーの猫」の拡大版−のもたらす恐るべき理論的帰結。

これには、ちょっと頭がくらくらする思いです。たしかに、その通りなのだ、

論理を外抽すれば、たしかにそうなるのだ……

あらゆる宗教的指導者に吹き込みたくなってくる。

結局、亜光速で読んでしまいました。久方振りに、満足。

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