連邦崩壊後のロシア、シベリアに不穏な空気を見たホワイトハウスは、日系人による部隊を送り込む。そこで彼らが見たものは、究極のマインドコントロール・ドラッグ、そして史上最大の人工衛星「ルサルカ」の影だった……
うーん、構想壮大、派手な話だが、匂ってくる作者の主張が気に入らない。
それを除けば、ロシアンが一杯なこの作品、かなりいけます。
でもやっぱ、気になる。
意志の主体性だけを選択的に損なうというドラッグだが、そういう効果を得ようとすれば、どれかお好みの神経伝達物質をブロックする等といった安易な方法では不可能である。見込みがあるとすれば、前頭葉、それも局所を選択的に麻痺させるような薬品である。このような効果を単なる皮下注射で得るためには、それこそナノマシンでも仕込まなければ不可能だ。
”ルサルカ”はもっと気になる。
まず、打ち上げ能力。最大積載量200tというのは、エネルギヤ・ブースターのクラスタ数を増やした、”発展型”と称される、想像上の代物である。エネルギヤの普通の低軌道投入能力は100tである。実際、エネルギヤの最初の打ち上げ時に、100tの大型軌道構築物の投入に失敗している。それにバイコヌールのエネルギヤ用ランチャは一基しかない。年間7基の打ち上げなど問題外である。ちなみに、エネルギヤの製造工場もバイコヌールにある。
次いで”ルサルカ”の有効性。普通の太陽発電衛星は太陽電池の使用を前提としているが、ルサルカは熱電効果素子、つまりペルチェの逆の効果を用いている。一概に比較は出来ないのだが、社長の資料によれば、ロシアンな製品の信頼性では、実にいやーんな故障率が求まってしまう。
熱電効果素子の熱変換効率はかなり低い。旧ソ連は初期の原子炉衛星で用いていたが、あまりの効率の悪さに、新しいトパーズ炉では熱電子イオン転換法を採ったほどだ。性能が素子の融点に制約されるためだが、傾斜機能新素材を用いれば、今の変換効率の一桁上が期待できるかもしれない。だがそれもまだ将来の話である。
それと、肝心な話だが、ロシアは宇宙用多関節ロボットの技術を持たないのだ。
しかし、ルサルカの軌道はどういうものだろうか。ルサルカ衛星本体の慣性軸に対して一定の角度で太陽光が入射するように、太陽同期軌道に乗っていることは間違いない。軌道周期132分……軌道高度が計算できるではないか。およそ2230km、ちょうど、バン・アレン帯の中でも放射線強度も比較的弱めなスポットに当たるが、極軌道を通る問題上、電子線をびしばし横切ってしまう可能性あり。
しかしま、これから楽しみな作品です。
久しぶりの神保町古本街にてGET。CCDの本って、新刊では本屋には無いんです。
この本は昔の本らしく、動作原理はあっても、回路例などは無し。まあ、どれだけキツイ素子かということだけはハッキリと分かりました。
神保町では冬コミカタログを買わずに済むことに成功。誘惑は強かったのですが、理性が勝ったというより、ただ単に風邪で疲れていて、あの分厚い代物を持ち帰る気力に欠けていただけ。
でも、こいつは買ってしまった。少しは勉強になるし。うーん皆さん、絵は巧いのだが、たうぜんながらメカは無し。
私の魂を癒してくれるような、スピリチュアルでヒーリングな、ロシアンなメカイラストやアレ系イラストはないものだろおか。(……をひ)
一日中寝ていて暇だったので、こんなの読んで暇を潰しました。
やっぱり変だ。何度読み返しても、変だ。マッドさとパズル性とダジャレ性とおバカ性をこれほどの密度でバランスさせた力量は、驚嘆と白眼視に値します。
特に「古くなったカスタードの秘密」なんて、何度読み返しても「馬鹿だなぁ」という念は薄れることがありません。
さて、大森望のあとがき(訳者あとがきはまた別にある)を読んでいくと、スラデックが創造した十三番目の星座の名前が蜘蛛座であることが判明。
あちゃ。いろんな所で、「最近噂の十三番目の星座(へびつかい座)って奴は、イギリスの変人が世間をからかうために創造した」と吹いていたんです。すいません御免なさい。
毎年買っているんですが、早速、へびつかい座チェック。確かに黄道にかかっている。それもバッチリ。ずっとジョン・ヴァーリィが「へびつかい座ホットライン」のはじめに「へびつかい座は黄道から5度離れている」と書いていたのを鵜呑みにしていたのだ。
……しかし、くじら座なんかも、もしかしたら一時間分くらいは黄道に掛かっているのではないでしょうか。くじら座はうお座の真ん中辺りにくるでしょう。オリオン座なんかも根性無しですね。あともう何度か頑張れば……