圧倒的なスケール感を誇る作品を書きつづけてきたベアの、待望の最新刊です。
前にリリースされた「女王天使」が、スケール感で食い足りないものがあったので、その分期待していたのですが、少々がっかりくる内容でした。
物語は、地球の干渉から火星の主権を守ろうとする政治劇に、破壊的な可能性を持つ超理論が絡み……という話なのですが、下手なロマンス物の匂いがするのに加え、物語の背景が見え出すのが、物語の4分の1を過ぎた辺りなので、読者は少々だれ気味になります。
キャシーアはシムかLitvidで自伝を"書"いてみても良かったのでは。肝心の転移描写に凄いと思わせる点が無いのも減点でしょうか。
毎度毎度の作品で、べらぼうな超理論を繰り出してきたベアですが、今回のそれは、「天界の殺戮」のノアク系の理論そのまま(一部変化あり)で、少々かみ砕いた説明はあったものの、その分べらぼう感が減って、醍醐味が失われました。
ただし、地球へ向かう宇宙船の描写、地球文化の描写はさすがです。この部分は読む価値大です。
ただのディザスター物だと思って読んでいなかったのは不覚でした。
掛け値無しのSFです。海底のクラスレート化合物を取り上げた先進性は評価できます。軟泥のようなクラスレートの上に核兵器を配備する奴がいるだろうか、という点はさておいて、ですが。
あと、気になる点を幾つか。年代設定に比べると、自己増殖機械の完成度が高すぎる。よく読むと自己増殖機械には実際的な描写が全く無く、その”進化”も、極めて楽観的というか、リアリティに欠けるものがあります。最適化プロセスも、効率を100%以上に出来るものでないことを忘れてはならない。何よりまず、ネットのソフトウェアが、何の問題も無くヒトの頭脳で動作するというのがうそくさい。
社会描写も、没入感覚を用いた、趣味の悪い超マスコミ”VX”に世界は夢中で、非常に時代逆行的に思えましたし、コンピュータテクが異様に低レベルに止まっているし、リアリティに欠けるものがあります。物語はガーンズバック的だし、何よりその”日本海に流出した重油を軌道上からレーザで燃やす”ような、空想的かつ傲慢な解決法が鼻につきました。
最近とある方よりお借りした、光瀬作品の中より一つ。
実は光瀬龍作品、読んだのはこれが初めて。一気に長編2つに短編集2つ読んだのですが、揃いも揃って、ド暗い無常感の漂う作品ばかりです。
いや、暗いのが嫌い、という訳では無く、例えば「へびつかい座ホットライン」のラストや、「星ぼしの海をこえて」のラストなんか、好きでたまらないのですが、ハナっからラストはこーなるよ、と宣言している作品を読むのとでは少し事情が異なります。
細部描写、筆力は凄いです。原子力ジャンボーや放射線症(感染するらしい)やら、時代を感じるガジェットも気にさせません。ただ、物語構成が散漫なきらいがあり、繰り返しの効果を狙ったような構成が、逆に優れた描写を、繰り返される無常感の表明の中に埋もれさせています。
私は技術者の常として、マーフィーの法則を信じています。だがそれは、(どうせ初めから過ち、失敗、破滅の種子が紛れ込んでいるなら、全ては無駄だ)と宣言するためでは、ない。
私は、終焉を信じない。なぜなら、終わりを宣言したがるのはこの広い世界の中でただ人間だけであり、実際には世紀末など人間の頭の中にしか存在しないし、文明も、計画も、人間のものでしかないからだ。
世界は流転する。それを終わりと呼ぶなら、同時に始まりとも呼べるはずだ。全ては呼び方次第だ。
光瀬作品、読むなら短編ですね。短編には非常にクールなものが揃っています。あと、まとめ読みは後遺症引きますので注意。
甲州ファンゆえに自動購入した一冊でしたが、一気に読んでしまいました。逆に、甲州ファン以外の方にオススメしたい作品です。
文革後のチベットからインド、そしてネパールへ。主人公の旅はクライマーノベルの側面とチベット密教の再解釈、宇宙の再解釈という側面を共に含み、リアリティ溢れる現実の旅路と、飛躍に富んだ心の旅路が交差する点は流石と言うしかありません。ま……ちょっと違和感ありますが。
自分は宗教とか精神世界とか、あんまし興味のある方では無いのですが、関心のある方なら、更に興味深く読めると思います。
もう死んでしまいたい、どこか知らないところに帰りたい、そう思う少女の前に、夢のように、デンパのように語りかける”オデッセイ”。
君は旅行者なのだ、そうオデッセイは少女に告げる……
読んでて、目頭が熱くなってしまいました。
”ナガノなんて、アレなメガネ君がおかっぱの少女をアレしてナニするだけのワンパターン”だと思った貴方、是非読むべし。認識を改めるべし。そりゃメガネ君は出てきますが、無害なタイプAです。
(ナガノのメガネキャラは、大別して3つに分類される。真面目で引っ込み思案なハカセ君ことタイプA、アレだがリハビリ可の北森陽一郎ことタイプB、救いがたいアレである01くんことタイプC。すげこま君がBとC、いずれに分類されるかは各者意見の分かれるところである)
幽霊のような希薄な存在オデッセイと会話をする少女、原さんの圧倒的な存在感、魅力に溢れる作品です。疎外感、自己嫌悪、絶望、人を傷付ける言葉たち……深刻なテーマを、一歩間違えればエヴァになってしまうトコロをハイテンションなユーモアと、泣きたくなるような優しさで描きます。
とにかく原さんがイイ。いうなれば”かなりくだけた性格のアスカ”ですが、そのツリ目の笑顔は幸せな感覚を呼び覚まします。
”デイジー”以来の、自信を持ってオススメする傑作です。
まーいわゆる、前述のワンパターンです。
但し、真剣な作品です。そして、この単行本には、ナガノ最大の異色作(って異色でない作品なんてあるだろうか……)「さかなちゃん」が収録されています。
あえてお勧めはしません。が、泣ける作品です。
買わなくなってから、もう随分経つ気がしていたのですが、実際には半年にも満たないものでした。久しぶりに読みました。
見るからに馬鹿丸出しな記事が無かったのが、非常に嬉しかったです。
特集はアップル物。時期的にありきたりと言われても仕方の無い題材ですが、読ませる内容でした。但し、実質、内容ゼロ。「ポケモン」に関する記事は注目に値します。街頭監視カメラについての記事は、ブリンのSF第一線復帰はもう無いな、そう思わせるものがありました。
意外に読めたのが、ニール・スティーブンスンの書いた記事。以前ワイアード誌に掲載された短編には、駄作との烙印を押してしまいましたが、読み返してみようかと思っています。
仕事柄、トラ技とインターフェイス誌は毎月買って読んでいます。
勉強のために買っていた両誌も、最近は楽しんで読めるようになりました。
新しい技術や、新しいデバイスは、未知の利用法、可能性を秘めていて、数年後の世界を、未来の風を予感させてくれます。
例えばトラ技3月号に紹介された、基盤実装可能なチップアンテナ。PHS機能を標準で内蔵し、繋ぎっぱなし環境でネットワークするPCや、無線LANで結合した家電群が秋葉原の店頭に並ぶ日を予感しませんか?自分の部屋にあるのを予感しませんか?
今月はやはり、日立のSH-DSPチップでしょうか。セガサターンに採用されたSH-2にDSP機能を内蔵させ、音楽、通信等のディジタル処理をワンチップで可能としています。
特集はメモリ。PBDRAMやEDODRAMの使い方が掲載されていますが、いやあ、あんなものをコントロールするチップセット制作の苦労は想像するに余りあります。
他にもスペクトラム変調、PIC16C84で作ったワンチップPONG(これは凄い)、手作りゲルマラジオと、今月はお買い得感があります。手作りゲルマラジオの記事は必読です。これで無人島に流れ着いてもラジオが聞ける訳ですが、問題は唯一、クリスタルイヤホンだけは買ってこなければいけない点です。皆さん、非常袋には必ず、クリスタルイヤホンを忘れずに入れておきましょう(笑)。
このような可能性の爆発から、予測しうる未来から背を向け、ひたすら不毛の広野をさすらうような最近のSFの代わりとして、最近はこれら技術誌を読んでいる気がします。
読みこなすには多大な専門知識を必要としますが、面白いですよ。皆さんも、読んでみませんか?(笑)確実にWIREDの2年先、翻訳SFの5年先、日本SFの10年先をイケますよ。
「エクセル・サーガ」、単行本買ってしまいましたが、本誌での宣伝での(コミック専門店中心に展開中)とのセリフが、アワーズ系単行本の流通状況を端的に表していて、ワビサビ感じてしまいます。ところで超特殊技術職採用の三人組の乗る電車、宮地岳線かなぁ。
「ジオブリーダーズ」高見ちゃんが一人で頑張っています。しかしどっからあんなにグレネードを取り出すのやら。
そして今月は平野耕太が!!キレた主人公の黒バックバイオレンスが良い。しかし、某エロ漫画誌では死ぬほどバグったようなお馬鹿な作品、ガム誌上では原稿おっことしたようなアレを書いていましたが、大丈夫かなぁ。自分としてはエロ抜きの「テクノ番長」が読みたいのだが。