昔読んだ時は、時にぱっとした印象を受けるものではありませんでした。新機軸、派手な設定、ガジェットは一切抜き。物語の中心人物である”奇跡の人”と主人公の、神学がかった会話が特に印象に残りましたが、全体として評価はかなり低いものでした。
今回読み返してみて、特にドライコ社員の人間関係描写に、以前見えなかったものが見えた気がしました。人はこういうことができるのだと。路上で人を殺し、聖者を拷問し、利益のために、狂ったように日本の沈没を本気で考え、謀略を巡らし、隣人を罠にかけ、態度を一変させ、嘘をつき、鼻でせせら笑い、子供を殴り、……そして人を救い……。
SFとして見るなら、その未来観はあまりに寒々しく、生気に乏しい。この小説は救世主の物語だ。救世主は主人公の前に現れ、奇跡を示し、殺される。そして救世主は蘇る。主人公の心そのものとして。
明治大学で開発中の惑星ローバーの記事を読んで、買っちゃいました。やっぱLinuxにリアルタイム制御は馴染まないのでしょうか。HurdではリアルタイムOSとしての使用も考慮に入っているとかいないとか。
シャトルミッションSTS-83(例の、途中で帰ってきたヤツ)での実験で、機器制御にLinuxが使われたとの話。コンピュータは10cm四方の486オンボードコンピュータ、キャッシュ内蔵CPUって、耐放射線対策採りづらいから敬遠されているんだけど……。
衛星軌道計算プログラムSattrack 3.1の紹介記事も良し。LinuxをROM化する記事も面白い。但し私、当分Linux入れる予定無し。FreeBSDでの古傷がまだ痛むのです。
今月はお買い得感高めな内容です。特集は、最新のシリアルデータ転送技術。USBハードの作り方がわかります。といっても、要するに、専用チップを使って、ということなのですが……。しかし、ちょっとハードウェアを叩けば、Win95からでも使えるのではなかろうか。その辺のデータが欲しかったです。
「D級アンプの動作原理と専用ICの評価」仕事で制作しているモータドライバをアンプに流用したら、凄いのが出来るかも。「DOS/V用SIMMをEP-SIMMに改造する」エプソンPC-486SRユーザーとしては、心を動かされる記事です。FPGA/PLD関連の記事も勉強になりました。あとは、エレポートの保存版価格表がポイント高し。
創刊20周年記念号との事で、CD-ROM2枚組。1枚目の方に、あのAh!Ski全冊をディジタル化収録!!。私は不幸にして87,88年号しか持っていません。おおぉ、素晴らしい。しかし、考えてみれば、自分はAh!Skiを中学の時に買っていたのか。
しかし最近のアスキーは、毎月楽しみに読む記事というものが無い。コアウォーズや人工生命、そう昔にはSFショートも載っていたはず。全体として、お馬鹿系が迫害を受けている気がする。悲しい。
かつてデュードニーが日経サイエンスのコラム「コンピュータレクリエーション」で取り上げていた、数字の誤用に関する部分をまとめたものです。というか、そのものでした。連載時に読んだ、もしくは別冊はきっちりコンプリートしているという人は、買う必要はありません。
しかし、そんなコラム読んだこと無いという人、そう、一般人、科学マニアじゃないフツーの人、おやじやおばさん、ヤンキーやコギャルに、とにかく読ませなければいけない本です。
数の取り扱いに関する感覚の欠如が、数の誤用、ごまかしを生む原因だと一般に信じられています。数の感覚は、演算を現実の対象へ適用することの経験から得られます。
自分は昔から、理数系が駄目という人が、よく中学・高校の義務教育をくぐりぬけてこれたのだろうかと思っていましたが、これは、数に関する感覚の欠如が、義務教育の成果を捨てさせ、身体感覚に合致した”常識”に頼るようになるためではないでしょうか。
物理化学も同じように、実験や証明の裏付けの無い、詰め込みの知識は捨てられる傾向があるようです。そして”ちょー”が幅を利かすようになる訳です。
この、教育の改革は急務です。しかし、理数のこの”感覚”の欠如した政治屋に、改革を期待するのは無駄なのでしょうね、きっと。