燃えます。ドラマです。読みましょう。
この本は技術本や解説本ではありません。日本の大型ロケット開発の歴史を印象的な筆致で描くノンフィクションです。
日本の宇宙開発のカリスマ、五代富文氏を主軸として、この純国産大型ロケットの開発に携わった人達の姿を通し、H-II〜化け物じみた使い捨て機械〜を描いてゆきます。
ロケットの開放する、巨大な、制御された力。繊細でありながら暴力的なシステム。極限状態で稼動するメカニズム。それは一言で表現するなら、矛盾と言って良いだろう。
しかし、宇宙という極限を求めるなら、それは避けられない道なのだ。
そこまでの道は、技術者の創意と努力、議論と説得、焦りや戸惑い、そして悲劇によって歩むこととなる。夢と現実と合理性を天秤にかけ、手弁当でケチ臭く、人からは科学者の道楽だの大きな花火だのと罵られ、重圧に耐えて黙々と作業を進める、そんな人達に、感謝の念を捧げなければなりません。いや、近い将来、必ずやそうなるでしょう。
なぜなら、H-IIが載せているのは、たったの4.5トンばかりではないからです。星空を見上げたことの有る、全ての人の胸の奥にある夢を乗せているからです。
「グローバルヘッド」にシビれておいて言うのもナンですが、この本は強くオススメする本ではありません。
スターリングが、一時期フルタイムのハッカーコミュニティジャーナリストをやっていた頃の集大成です。その視線は平等で深く、人を唸らせるものがあります。
彼は官憲の視点にもきっちりと立ちます。スターリングは疑うべくもなくハッカー寄りの思想を持った人物ですが、いわゆるハッカー理念と、コンピュータに触れない人々を対比させ、問い掛けます。アメリカでの取り締まりと裁判の行方もきっちり追います。この本はアメリカのコンピュータ犯罪の広範な見通しを与えてくれます。
しかし、日本には、この本に取り上げられるような電話ハッカーの文化はありません。あってせいぜいテレカ偽造くらい。磁気カードリーダーを買えるジャンク屋を知っている、技術を知った人間なら、誰にでも出来るがだれもやらないといったレヴェルの話です。
日本では、アメリカと違うハッカー文化が生まれました。ゲームのプロテクト破りとコピーサークル、そしてマイナーマシン信奉とアニメの話題を中心としてそれは生まれましたが、戦うべき巨大組織も、潜り甲斐の有る閉鎖システムも日本にはありませんでした。あののほほんとした80年代の事です。実際のところ、それは単なるオタクと呼ばれるものでしかありません。
真の定義でのハッカーも、自分の会社を作るほどパワフルなものは数えるほどでしかなく、どれも”体制”を作る側に廻りました。
言うなれば、これは「WIRED」誌と「ゲームラボ」誌の差ですね。
「ハッカーを追え!」のラストは、混乱した印象を与えて幕を閉じます。少なくとも、きっちりしたイメージや指針を与えるものではありません。事態は未だ混沌とし、更に複雑の度を深めているのです。
近未来宇宙SFでミステリです。被害者は軌道上で墜死しています。しかもタレコミは被害者自身からです。現場は無重量実験室で、完全な密室です。
意表を突く謎ですが、意外に早く謎は解けます。しかしそれで終わりではなく、足で稼ぐ捜査と駆け引き、そしてアクションへと雪崩れ込みます。
ミステリのトリックとしては、成功していると思いますが、ミステリとして成功しているかは、別の話です。しかし、物語としては、結構面白いです。どうもヴァレリアと同じ作品世界のようですし。
無重量実験室の設定が、リアリティ有って良いです。電力はどうするのか、という疑問はありますが。
埋もれた秀作です。
街で新興宗教に勧誘してきた彼女は、一月前に精神を病んで学校を退学した、隣の席のなつみさんだった。
彼女は言う。つまんない奴を狂わせるの。そういう人が宇宙を悪しきものにするから、電波で術をかけるの。ねぇ、誰を狂わせたいの?
良いです。オモイデはオウムを強烈に連想させますが、オウム以前の作品です。処女作らしい完成度の低さも見受けられますが、短く、読みやすく、なにより独特の文体と世界が、得難い読感を与えてくれます。
どうも某はっぱ社のゲームの標準リファレンスとして、その筋では高い評価を受けているようですが、そんなの抜きで、お勧めです。
ヤングキングアワーズ誌で連載を再開するという「TRIGUN」。さてどんなものかと予習すんべと単行本を購入。
ハマりました。絵柄が世界観とキャラクターにハマりまくりです。アメコミと日本漫画の理想的な融合です。演出などに荒さが見えますが、ビジュアル的に魅力の有り、話も謎もわくわくさせるものがあります。
それにしてもいきなり主人公がスポーン(笑)。やー、好きなんだなぁうんうんわかるわかる。トッド・マクファーレンの絵ってカッコイイよなぁ。「SPAWN」の絵ってどこか浮世絵風だと思いませんか?それ以前にアメコミって漫画というより浮世草子として評価すべきじゃ無いでしょうか。で、「SPAWN」も300年もすれば……
暴走しました。すいません。で、あとは寺田克也の影響とかも見え隠れするし、今時のスジ(”売れ筋、ではない”)がばっちり。
面白いです。わくわくするSF系漫画が読みたい人に、どうぞ。
夏コミにて、奇特なサークルを発見。世にも珍しい有人宇宙飛行TRPG「ロケットガールRPG」のリプレイ本を二冊。カラー表紙にオフセットです。大丈夫なのだろおか(笑)
どちらもカバーイラストが結構奇麗で、気合入っています。内容は、うーん流石に一般の人の(……)本だけあって、違うぞとかそりゃ無いぞとかツッコみたい点も有りますが、宇宙にかける熱意だけでオッケィ。
それにしても、宇宙開発に関する広報活動は、未だ十分なものでないと感じました。ホームページに公開するだけでは十分ではありません。例えばこの二冊では国際宇宙ステーションの名称は未だアルファです。二冊目では月面開発が取り上げられますが、セレーネの記述は有りません。彼らのような熱心な宇宙開発ファンでも知らない、というのは間違っていると思います。
少し話し込んだのですが、「探鉱夫」の話題などで燃えてしまいました。
「野尻先生に送って見てもらおうと思ったんですけど、最近ドラマガに書いてないから……きっと魚釣りばっかりしてんだろうなぁ」
「いや、そんな事無いですよ。放射性物質集めたり、台風での気圧低下観測してたり……」
「……同じです!やっぱりそーだったんだぁーーー!!」