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September,14,1997

「大潮の道」
著者:
マイクル・スワンウィック
出版社:
早川書房
分類:
SF,文庫

夏のマイ定番です。

街路樹の濃い影が道路にくっきりと落ち、我慢ならない湿度にクーラーの効いた部屋へと待避するような、そんな夏の午後向きの本です。冷たいフローリングの床に腹這いになり、ダイエーの五倍に薄めるビンボーカルピスを飲みながら、この夏も読みました。


再読何度目なのかはもう不明。今回は内容を掘り下げて読んでみよう、と意識する。

なぜ、この本に自分が何度も戻ってくるのか、判ったような気がする。

「大潮の道」のテーマは、テクノロジーの使い方だ。どのエピソードにも、様々なテクノロジーが現われ、登場人物によって論じられる。

テクノロジーは魔法ではない。真のテクノロジーは決して魔法にはならない。技術者や経営者、営業や広告業者は隠そうとするが、カップ一杯で驚きの白さを実現するには、何処かに何らかの代償が、しわ寄せが要求される。技術者なら誰でも知っているが、あらゆる問題を解決する銀の弾丸はありえない。

テクノロジーは奇跡や神秘ではない。それは単なる手順に過ぎない。テクノロジーは魔法ではない。それこそがSFとファンタジイの差だ。

技術者なら誰でも、魔法使いになりたいと思うものだ。アクセルを踏み込み、メーターが震えながら振れるのを見、力の感触に酔いしれたいと願うものだ。

だが、それがどういうことか、判っている者はすくない。

私は判りたいと思う。判るべきだと思う。

物語の終局で、魔法使いは敗れる。それはこの物語のメッセージ。

主人公は禁じられたテクノロジーを用い、大潮の海に身を投じる。それはもう一つのメッセージなのだが、これはどういう意味を持つのだろうか。

「火星夜想曲」
著者:
イアン・マクドナルド
出版社:
早川書房
分類:
SF,文庫

作者も宣言している通り、思いっきり「百年の孤独」を意識した作品である。

物語の冒頭は両者とも幻想的にはじまる。本当にそこが言っている通りの土地であるか、判然としない。「百年の孤独」の場合、やがて外世界が、現実の中央アメリカが侵入してきて、それらしい時間軸と土地に固定してしまう。そしてやがて幻の街は現実の中に、吹き飛ばされる砂のように消えてしまう。

「火星夜想曲」で、幻の街、デソレイション・ロードに侵入してくるのは、サイエンス・フィクションの香りだ。何処かで見たような、読んだようなイメージが街を通り過ぎ、書き換えてゆく。

そういう意味で、この作品は決してマジックリアリズムでも、サイエンスフィクションでもありません。言わば、マジック−フィクションというところか。

火星SFだと期待して読むと、肩透かしを食うでしょう。素晴らしい表紙カバーのイラストを鑑賞し(それにしても、あの丸っこい二つの月は……)秋の夜長に、ゆっくりと読みましょう。

「リリス」
著者:
G・マクドナルド
出版社:
筑摩書房
分類:
FT,文庫

帰省の電車の中、暇つぶしに読みました。古い本です。

感想を先に言ってしまえば、駄目、ですね。筋立てはきれいにまとまっており、イメージも豊富。しかし、作品中で賞揚される思想は受け入れがたいものでした。

主人公は、先祖の財産管理を仕事と称し、屋敷の図書室に入り浸って事足れりとした、当時の知識人の理想、労働者の寄生虫である。(うっひゃ言う言う!!)

どうにも妄想的で自閉している主人公は、鴉とも司書の亡霊とも知れぬ人物のいざないにより、この世ならぬ7次元の世界に迷い込む。

まぁ、いろいろあるんですが、この鴉氏、墓守も兼ね、そこまではいいのだが実は最初の人間アダムであることが判明。敵の女王たるリリスはつまりがエヴァなんかで言及されるリリスなのですが、最後は主人公の働きによって改心し、主人公はリリスの娘と結ばれ、その世界の子供たちに王様と呼ばれてなんだか大団円、というのが筋立てです。

で、もうお分かりかと思いますが、この本はどっちかというと幻想より妄想に分類したほうがしっくり来ます。

しかし、まあ、昔も昔、ファンタジーという文学分野の曙の作として、歴史的意味で評価。

「収容所惑星」
著者:
A&B・ストルガツキー
出版社:
早川書房
分類:
SF,文庫

この物語を単純に理解してもらうために、明らかに間違った比喩を使うことを許して欲しい。

主人公は典型的なヤンキー・ヒーロー。ファシズムと共産主義のあいのこのような、(多分、ソ連を暗に示しているのだろう)暗鬱とした社会を持つ惑星へと不時着した主人公は、やがて社会に溶け込み、社会を理解し始める。

そして、悪い奴等をぶちのめすために、徒手空拳で雄々しくヒーローらしく、不屈の闘志で立ち向かって行く。

だが、彼の敵、”遍歴者”の正体は……

陰鬱な物語は、陰鬱にしめくくられる。現実とはそんなものだ。

「サターン・デッドヒート」
著者:
グラント・キャリン
出版社:
早川書房
分類:
SF,文庫

何故今まで、この作品を忘れていたのだろう。

面白いっ!特に、主人公がヒーローではない前半部の感触が最高!!

これは、魔法のようなス−パーテクや、馬鹿げたミステリの謎解きのようなアイディアを排し、コロニー集合体や木星の輪のみるみる変わってゆく眺望、タイタンの峰や土星大気の奥深くの景観といった、ハード的に正確でありながら想像力をかきたて、わくわくさせる舞台設定に理由が有るのだと思います。

エンケラドスから”メイデン”へと向かう描写は見物です。

「Spirit of Wonder」
著者:
鶴田謙二
出版社:
講談社
分類:
漫画,単行本

お盆の帰省での話。知人との会話で、非整数次元とは何か?と問われた。

「線ってのは一次元の属性、つまり長さしか持っていない訳だけど、二次元の平面に線をぐじゃぐじゃと書いていくと、すると、面を埋め尽くして、だんだんと面に、二次元に近くなってゆくよね。

つまり、そういう複雑度を表すのに、一次元と二次元の中間段階、1.5とか1.7とかいう表し方が出来るのではないか?という塩梅」

「成程」


さて、「Spirit of Wonder」ですが、非整数次元の概念を当てはめれば、ページをめくるにつれ、絵柄がどんどん二次元に近づくのが判ると思います。

当初の絵柄は古臭く、物語内容は辟易するほどほのぼのとしています。個人的にはチャイナさんシリーズしか評価していません。

チャイナさんはイイ。これだけでも買う価値アリ。ただ……ついでに警告します。同時に発売された鶴田謙二初期短編集「SF名物」、買ってはいけません。買った人はご愁傷様。

「ジオブリーダーズ #3」
著者:
伊藤明弘
出版社:
少年画報社
分類:
漫画,単行本

これを買わないでどうします!!

待望のノンストップB級アクションコミックも遂に三巻目。物語はジェットコースター展開も一息つく休暇編。もちろん、普通の休暇でないことは皆さんご承知の通り。

今回の主役は、高見ちゃんファンの私にとって悔しいが、梅崎さんであることは一見すれば判ります。「流れ星故郷に帰る」前後編、カッコ良すぎます!!

どのくらいナイスかというと、この話が雑誌掲載された直後から(株)マルイのジョイント広告”綾スポ”が始まった事実を指摘するだけで足りるでしょう。駄目押しに、単行本目次を見てみましょう。そこには、マルイの広告担当者が思いっきり狂ってしまった証拠があります。

他にも勿論、高見ちゃんの不幸な末路、蘭東さんのこだわり、社長の伝説の昼食、姫萩さんの姉妹の名前当て、そしてまやに萌えてみるなど、見所はどっさり!!

最後に苦言をひとつ。表紙になぜ高見ちゃんがいないッ!たっ高見ちゃんは何処だぁあああああああ(泣)

「ヤングキングアワーズ No,31」
出版社:
少年画報社
分類:
漫画,雑誌

巻頭「ジオブリーダーズ」綾金市街を爆走する旅客機が無茶苦茶でGO!

B級ノンストップアクションは今回も止まりません。PC110使いの「あのお方」も、今回はIrDAでおフダ起動!という粋なテクを見せてくれます。ああぁ、こんなことならLibretto20(中古)買わずにPC110(中古)買うんだったかなぁ。

「エクセル・サーガ」並に現地密着度100%な今回(というか、毎度)名古屋市民の方は燃えたんじゃあないでしょうか。更に今回は、どこかで見掛けたメガネキャラ(笑)も出演してるし。それにしても、どの辺りがエアポートなんだか。

さて、来年春リリースというOVA、如何な出来と相成りますことやら。個人的には、テレ東の深夜枠(という噂もあった)でなくてよかったぁ……・の一言に尽きます。

来号では、内藤泰弘「TRIGUN」復活!!(ホントは今号だと思っていた。不覚)来号表紙でTRIGUN!あの絵が表紙でっせ!ウヒョ!!

「S.M.H Vol,8」
出版社:
ホビージャパン
分類:
趣味,ムック

特集はバットマン。興味無し。竹谷隆之の連作造形「漁師の角度」は今回も凄い。

沓沢龍一郎は今回はナシ。と、口百目百がとうとうキれたぁ。昔の絵と比べると、どんどんどんどん絵が雑になってゆくような……悪い影響でも受けているのだろうか。例えば最近スカルピー触ってないような人の、とか。

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