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February,23,1998

「ホーリー・ファイアー」
著者:
ブルース・スターリング
出版社:
アスペクト
分類:
SF,ハードカバー

それは百年後の世界。


サイバーパンク以降、古臭い未来は魅力を失い、そして、新しい未来は気が遠くなるほど遥かにあった。二年でコンピュータが倍の性能となる時代において、五年後より向こうは永劫にも等しい。真にリアリティある未来を描写しようという努力は、技術革新がもたらす陳腐化との絶望的な闘いとなったのだ。

百年後!それは想像を絶する未来だ。普通の作家なら、古典の陳腐なパロディと、誰にでも予想の付く(既に古臭い)コンピュータディティールを下手糞に混ぜたものを描くのがせいぜいだろう。それは無謀な企てなのだ。

スターリングはやってのけた。見よ。そのどぶ底レベルのリアリティと、未来世界のディティールとの融合を。文化と政治という、従来のSFから見落とされてきた分野に対する、スターリングの野心的なコミットメントを。

この作品は、多重的な意味で、先進、未来なのだ。


主人公ミアは94歳。どのような抗老措置でもぬぐえない、死の前兆を意識した時、彼女は、自分の人生に何も無かった事に気づく。彼女はいちかばちかの賭けに出ても、失うものは結局、何も無いのだと悟ったのだ。

彼女の賭けは、20歳の肉体への全面的更新だった。だがそれは、彼女を心身ともに別の人間、いや、ポストヒューマンにする。人類がこれまで歩んだことの無い成長過程において、新しい人格が過去の硬直した人格を圧倒する。

”ホーリー・ファイヤー”とは創造力の源、魂と同じような、実体無き概念。生まれ変わった主人公は、何かを為すために、その焔を求める。

医療システムの支配する新世紀末、世間知らずの94歳はヨーロッパへと飛ぶ。百年後の政治と技術、そして生活と文化の中へ……


圧巻はやはり、生活と文化の描写。巧みにテクノロジーが織り込まれたそれは必読です。ぎゅうぎゅうに詰め込まれたアイディアそのものです。特に体温駆動のシェアウェア翻訳機が良い感じ。ドイツやチェコの描写は、スターリング自身の訪問時の印象が強く反映されています。政治的ヨタはいつもの事なので、これがスターリングの味なんだと、もう納得してしまいましょう。

自分はハードカヴァーは滅多に買いません。重くかさばり、なにより高い。が、今回は文庫化されるアテの無いアスペクトから、というのもあるのですが、別です。スターリングには投資の価値があります。

スタイリッシュさとSF性を両立できるのは、今やスターリングだけです。

「SFマガジン 1998年3月号」
出版社:
早川書房
分類:
SF,雑誌

目当てはもちろん「自転車修理人」ブルース・スターリング。


もし、世界というものがTV版エヴァ最終二話でいわれるような、個人で完結したものであり、見方や関わりかたでいくらでも変容するものであるとするならば、私は既に、世界を革命されている。そう、革命家によってだ。

スターリングはそういう種類の作家だ。彼ほどSFに忠実な者はいない。


舞台は2037年チャガヌータ。しょっぱなで告げられるこの時代設定は、「ホーリー・ファイアー」を読む前に読んだこともあり、結構ショックであった。設定の飛躍無しに、現在の延長線上に40年も張り出したのだ。これは無謀といっていい。他の作家ならば。

いつもの政治的ヨタは、我慢するのではなく、積極的に吟味してほしい。なぜなら、政治的話題に無関心な現在こそが、この時間線において異常だとスターリングが確信しているからだ。

そして物語は、積極的に未来だ。

未来を革命しよう。革命家がその助けをしてくれる。

「くるぐる使い」
著者:
大槻ケンヂ
出版社:
角川書店
分類:
SF,文庫

第25,26回星雲賞受賞作を含む傑作短編集、ようやく文庫落ちです。

SFマガジンで読んだという方も、そうじゃない方も、買うべし。結構加筆されてます。目立つのは、やっぱ、のの子を轢き殺すのが、ジャッキー・チェンの車じゃなくなった所でしょうか。そういう所も、マニアはチェックしましょう。必読です。

「ディルバートの未来予測」
著者:
スコット・アダムス
出版社:
アスキー
分類:
PC,単行本

全世界のエンジニアの友、エンジニアの為のアメコミ(?)「Dilbert」の作者、スコット・アダムスが未来を予測します。というか、ディルバート本人の未来予測(人類は五年後には悪者リスによって支配され、ナッツ採掘場送りとなる)と大差ないアホ話です。

とはいえ、皆さんも良く知っているとおり、世界を動かす基本原理は愚かさです。従って、誰もがアホに囲まれて生きている以上、アホな未来予測ほど信憑性を帯びるものはありません。

この本の前半は物凄く飛ばしていて、痛快です。ただ……後半で……なんというか、この本でマジやっちゃいけないと思います。

ということで、前半だけ立ち読み推奨。しょうもないSFが氾濫する今、スターリングの次くらいにナイスなSFかも知れません。

「C Magazine 1998年3月号」
出版社:
ソフトバンク
分類:
PC,雑誌

特集は「メガデモ」恐らく、Windows上で動くデモ「FinalReality」のリリースがきっかけとなった企画でしょう。

絶対お勧めの変なTV番組情報誌「TV Bros」の愛読者なら、毎号「デモ実行委員会」にチェックを入れていると思うが、そう、それは驚異の世界だ。ヨーロッパを中心に、PCの性能限界に挑戦し、ヴィジュアルエフェクトとサウンドのクールさを競う、真に現代的なアートだ。

だが、実際にメガデモを走らせようとすると、色々と難儀が待ち構えている。まず、ビデオカード。最近のカードでDOS用のVESAドライバなんて付けてくれるベンダが果たしているだろうか。次にサウンドカード。SoundBlasterでも大丈夫、というデモが大半なのだが、基本はやはりGUS。そしてなによりメモリマネージャ。これは説明をよく読んで設定をすればOKなのだが、中にはDOSエクステンダを要求してくるものもある。はっきり言ってキツイ。

てな訳で、Windows上で動くデモが待望されていた訳です。

収録されたデモをひとしきり眺めたら、今度は自分で製作と行きましょう。やるんならやっぱWindows上で動くものをやりましょう。とすると、お勧めはC++Builder3だ!

待望のC++Builderのバージョンアップ版、いきなり2を通り越してバージョン3です。何故これがお勧めか、説明しましょう(偉そう)。

ヴィジュアルエフェクトに欠かせないのが、画像メモリの直接ビット操作です。Windowsでは昔は不可能だった技ですが、WinGの登場によりこれが可能となりました。だがこれのプログラミングは果てしなく面倒くさいものでした。最近ではよりパワーアップしたDirectDrawが登場しましたが、面倒臭さはより増しています。

C++Builder3に新たに実装されたDIBMemoryプロパティは、WinGの95での実装であるDIB構造体への簡単なアクセスを提供します。これまで、Niftyにアップされた、人の作った関数なんかを見ながら、バグに脅えながら実装していたのが、そう、ドラッグ一発で、昔ながらのピクセル描画が高速に可能になったのです。これまでのふざけたように遅かったPixelプロパテイよさようなら!

また、リソースウィザードも追加された模様。アイコン固めDLLを作るのも、これからは簡単です。さぁ買え是非買え!そして貴方も某島信者!

……ところで、メガデモ情報を連載するTV情報隔週誌って、やっぱ変だよなぁ。

「パラレル・トラッパーズ」
著者:
いのうえ空
出版社:
新声社
分類:
漫画,単行本

「ジオブリーダーズ」FILE-40の最後、写真中の神楽創設時のメンバーのうち二人が……という噂を確かめるべく、単行本をゲット。

おお、まさにパラレル(笑)

「ヤングキングアワーズ No,36」
出版社:
少年画報社
分類:
漫画,雑誌

表紙が黒い。一瞬、「HELLSING」かと思った(嘘)。

「エクセル・サーガ」何時もながら、某県あたりの事情を見事に活写していて、ナイス。やっぱ寒いのは苦手だよな。

「スタンダード・ブルー」家出しておじいちゃんの住む島へと転がり込んだ主人公。仕事を手伝いながら見る風景。そして様々なことを思う、そんな一日。良いです。

「HELLSING」復活!多少間延びしているけど。神父の剣は銃剣であることが判明。執事はやはりウォルター!カンペキ大臣に任命だ!

「GEOBREEDERS」今月は短いけど、OAVやラジオドラマと絡む話、らしい。社歌は確かに、社員ならげんなりするに違いない。

化け猫に占拠された原発を奪回すべく突入する自衛隊。だがその結果は、違う立場の三者それぞれの予想通りのものとなる。肝心の主人公達を除く……

「TRIGUN」巻頭カラー要素は少なめ。ただ、40Pは内容十分。巧い。巧いよぉ。ヴァッシュをトンガリ呼ばわりするウルフウッドは、そのうちブタゴリラ呼ばわりされるぞ。

血で血を洗う抗争の続く街。この構図に甘ちゃんの入る余地は無いと言うウルフウッド。誰かを救うためには、誰かを傷付けねばならないと。その正論を、違う、と言い切れるのは、そう、ヒーローしかいない。

真紅のコートの優しき死神、ヴァッシュ・ザ・スタンピード!!

だがいきなし、暴走。来月はヴァッシュ的皆殺しターイムのココロだぁ!!(笑)

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