「無限アセンブラ」のコンビの新刊です。
タンカーの海難事故で原油漏れが発生し、その処理に原油分解性の細菌が投入される。が、開発者が故意に凶悪な変種にすりかえたため、世界中のありとあらゆる、プラスチックをはじめとする石油製品が分解されて……という話なのですが、話のメインアイディアは、100kg級小型衛星による、低軌道太陽発電衛星群です。
ここで小型衛星の定義についてですが、詳しくはここのホームページを参照してください。ここの定義では、ミニサテライトの範疇に入ります。(100kg以下はマイクロサット)この範疇に入るのは、ちょっと大きいのですがイリジウムやグローバルスターあたり、こいつらをおよそ1/5ほども小さくしたものをご想像ください。群れている感じも一緒に。そう、この複数運用こそが、トラディッショナルな小型衛星と現代的な小型衛星との特徴的な差異でしょう。なお、現代型小型衛星にはもう一つ、”アカデミック型”とでも呼ぶべきグループが存在するのですが、それはまた別の機会に。
さて、低軌道太陽発電衛星群、というのは良いアイディアなのですが、文明の運命を一手に背負わせたり、1万Gに耐えさせたりした為、ちょっとありえないものになっています。また、軌道上の衛星が半永久的な寿命を持つという古典的な誤解をしており、SPS大型太陽発電衛星計画よりややマシだが同様の欠点を持っているのです。
終盤は結構ありきたりな、終末後の世界で文明復興を……という話なのですが、かなり面白く読めました。ただ、読後感は、やっぱり、ありきたりです。
コランとクロエ、シックとアリーズ。友情と恋愛。二組の幸せなカップル。
だが、クロエは肺病を病み、シックは哲学者パルトルの著作収集に有り金を注ぎ込む。コランはクロエの為に花を買うため、陰うつな労働に出かけるようになる。アリーズは遂にパルトルを殺してしまう。クロエは肺に咲いた睡蓮に殺され、ハツカネズミが陽の光のしずくと戯れたコランのアパートメントも陰うつにしぼみ、やがてシックとアリーズも……
20世紀幻想文学の粋が、遂に文庫になりました。
美しいイメージが悲しい物語を彩ります。言葉の繊細さに酔いましょう。
コンラッドは人生の、生きることの意味を思いわずらっていたが、同時に、酒をくすねて酔っ払うのが常だった。そんな彼も大学へ進学し、更に自堕落さに磨きを掛け、とっても60年代っぽい生活を送るのだが、彼はずっと疑念を抱き続けていた。もしかして自分は、未知の目的で地球人のありふれた中流家庭に送り込まれた宇宙人なのでは?もしかして自分は飛べるのでは?
ずーっと探していた一冊でしたが、これも福岡の巨大古書店でGET。
ラッカーの自伝的作品、というと他に「セックス・スフィア」がありますが、あれと同様、きちんとラッカーです。物語中盤を過ぎるまで、こりゃフツーの(?)青春小説ではないか、と疑うことになりますが、安心しましょう。
それよりこいつは、マジに青春小説として読むことをお勧めします。そうすれば、後半で頭クラクラのナイス読書体験が出来る筈です。
かつて、破天荒な設定の作品を発表しまくっていた、ドナルド・モフィットの一番脂の乗っていた頃の作品です。
しばらく前に書棚を整理して、持っていない作品をチェックしたのですが、こいつを持っていなかったのには我ながら驚きました。
前作「創世伝説」(プロローグはSETI関係者必読)で、異星人ナーの世界を旅立った人類。彼等はかつて人類が送り出したコンタクトメッセージの中の遺伝情報から再生された、復元種だったのだ。そして目指すは人類の故郷、銀河系、そして地球。
だが、故郷には、人類の後継者たちが待っていたのだった。
ガェット一杯、アイディア一杯、こう書くと何だかバクスターみたいですが、多少間延びして異様さに欠けるバクスター、という感じですね、今読むと。
モフィット、結構好きだったのですが、今何やってんでしょうか。
超大企業支配による強制消費社会下のソヴィエトから、謎のテクノロジーと科学者を拉致しようとするアメリカ退役将軍の一行。手にしたのはビデオテープそっくりの装置。窮地に立った一行は、その装置に身を任せた。
そして足を踏み入れたのは、もうひとつのアメリカの過去、リンカーンもルーズヴェルトも大統領になれなかった、平行宇宙だった。
SF設定などは有って無きがごとし。前作「ヒーザーン」と同じく、焦点は繊細な意味でのヒューマニズムだ。善意の人である町医者。職業的な人殺しである主人公とその連れ。主人公はかつての悪夢を引きずり、医者は無意味な犠牲となり、連れはようやく掴んだ人間的な絆を失うこととなる。
ただ一人帰還した主人公に重ねる思い。遍歴した狂った世界を通して、貴方はこの世界を見ることとなる。どこか狂った世界を。
贅沢に美味しい短編を厳選した短編集です。見掛けたなら買って損無し。
実のところ、一番のお気に入りは「2080年世界SF大会レポート」だったりします。テクノロジーを失った未来にもワールドコンは続き、毛皮との物々交換の原稿、木彫りのヒューゴー、そしてスピーチ、テクノロジーを失ったがゆえに夢のような星ぼしを夢想できるのだと。墜落する人工衛星を眺めながら、我々は星を手にしたのだと。
さて、「天使墜落」に出てくる技術フェチのファンと、どちらが真実に近いのか?こういう手法で思考を迫る、SFというジャンルを私は愛します。
果てしない地平の砂漠を走る車たち。上空には粒子ビームと軌道上カメラ。徹底的につくられたTVドラマ。真にランダムな、予測できない誤り、別の現実の真の値を吐き出すRH素子。発掘されたステンドグラスのかけらを、真の姿を求めて並べ替え続ける男。TVカメラが追い続ける、伝記になってゆく男。編集されてゆく過去と真実。
これも福岡購入の再読です。
……こんなにクールな物語だったんだ……
クールなSF読みに推奨。読む価値高し。
今回は買いました。
民間企業の有人船が複数、先を争って深宇宙へと赴く。レースのトロフィーは彗星の富!
個性的な有人船揃い踏みです。有り得なさそうなチキチキマシン展開を現実感をもって描写する笹本祐一の筆力を高く評価します。このシリーズ、素晴らしい掘り出し物です。お勧めできます。
しっかぁーし、デタラメはやっぱしデタラメ。1000kN推力のプラズマエンジンに続き、レーザーで動力伝送する、計2100kN推力のイオンエンジンが登場します。どういう風にデタラメかというと、まぁココやココやココを参照して下さい。自分で計算しても良いでしょう。そんだけの推力をうるためにどの程度のエネルギー、どの程度のワット数が必要か。
でも楽し。
電子技術者の愛読誌トラ技こと「トランジスタ技術」誌に連載中の人気コラム「重箱の隅」の、これまでの連載分が単行本化されました。
著者の多彩な知識とセンスと論理的思考が、くだけた話題から論理回路のテクニカルな問題へと繋ぐ、エンジニアリングの妙味を存分に味わせてくれる一冊です。技術者であれば誰が読んでも素晴らしいと思えることでしょう。ジョンソンカウンタをしつこく薦められるのを除けば。いや、ジョンソンカウンタがイイってのはわかるんですが……
自分に論理回路の知識があって良かった、と、そう思える一冊です。最低限でも理解できる知識を持って読むと、それはもう、噛んでも噛んでも味が染み出してくるんです。
大体半年に一回は、ホームページのデザインを一新しようと思い立つのですが、大抵幾つか改修サンプルを作ったところで、出来栄えに満足できずにお蔵にするか、興味を失ってやめやめになるかのどちらかでした。
しかし、今回こそは本気。という訳で、九州に帰省した際に、Webマスターな友人に相談した際に薦められた本をその場でGET。
小ぶりの薄い本ですが、自分の色彩感覚チェック、どんな心理状態を示す色を好んでいるか、そういう診断がふんだんに含まれていて、自分を知るという点でもお勧めです。
私の場合、クラッシック&ダンディを中心として、モダン・クールカジュアル方面に広く伸びる指向と、カジュアルな方向へと鋭く伸びるピークという色嗜好をしており、そのすぐ近くに嫌いな色彩心理があるという塩梅。難しいものです。
私は色彩感覚がダメダメなので、こうやって自分が与えたいイメージの配色を把握出来たのは収穫でした。
上の本と一緒に薦められた本です。ただ、大きく、高価(\5000)だったので、その場では買いませんでしたが、帰ってから速攻でGET
この本のほとんどのページを、実際のWebページ配色見本が占めています。これを見て、「おお、こりゃいい、そのままパクりゃオッケーじゃん」と思ったのです。また、CD-ROMも一緒で、それには配色見本の実際のhtmlファイルが収録されています。
……が、
「違う、違うぞ、全然違うぞ!!」
本の色の感じと全く違うのです。そうか、これがMacの見えかたなのか……Windowsだともっと、遥かに濃く見えます。
いろいろ勉強になりました。……こういう訳で、上記の本で立てた配色計画はおじゃんになったのでした。
来月でいきなし休刊。
会社が危ういから、こういうハイエンド系(こーいう文脈で使っていいのだろうか。うーん)雑誌が潰されることになります。好きだったのに。悲し。
平野耕太初の非エロ単行本、パンツァーイ!!
内容は作品名からの想像ズバリでオッケェ。コミケという謎舞台で繰り広げられる、オタクたちの激しく熱い戦い。「オタクたちを兵士に喩えるならば彼等は精鋭中の最精鋭!」「どんな差別、どんな蔑視も屈しない!鋼鉄の意志の古参兵達!」「あいつはオタクだ。目的のために手段は選ばない。他人のことなど屁とも思っていない!!」等のセリフに、同人界、オタクの恐ろしさにビビるべし。
彼は砂塵の中から再び立ち上がる。赤いコートの拳銃使い、月に刻まれた彼の名はそう、ヴァッシュ・ザ・スタンピード!!
今一番カッチョエエ、ヒーローアクションコミック、中断を経て復活後最初の単行本です。
ある一人の男の所為で全滅した恒星間植民船団。その生き残りたちが厳しい環境の中で生き抜く惑星で150年。歴史の表舞台にヴァッシュ・ザ・スタンピードは現れる。大都市一つ葬り去った死神として。彼はある一人の男を追っていた。その名はナイヴス!
彼の前に立ちふさがる個性的な悪党また悪党!怪人また怪人!どこまでもお人好しの主人公!ナイスボケとギャグ!書店で手に取れたなら、隠れてこそっとカバーを剥ぎましょう。ほら。
主人公ヴァッシュは、紛れもない本物のヒーローです。
ヒーローの条件、それは”ヒューマニズム”です。倫理観と言い換えても良いでしょう。”強さ”でも”正義”でも無く。現実に妥協せず、己の倫理観を貫ける者がヒーローなのです。
ただ強いだけでは悪党と同じ、ただ正義を振りかざすだけでは偏執狂と同じです。
ヒーローとは、現実には諦めねばならなかった我々のヒューマニズムを、代弁して行なう者なのです。
今度は空戦!!
圧倒的なアクション密度を誇る(私の場合ここに超超超超……以下249個が付く)人気カルトコミック、待望の第4巻です。勿論、超買い推薦です。
化け猫にハイジャックされた旅客機を巡り、自衛隊、化け猫、そして神楽の思惑が交差する。錯綜する利害と敵対関係。容赦無い自衛隊の攻撃、眠り姫、そして化け猫の連行する謎の女。忘れかけていた疑問が再び投げかけられる。神楽とは一体、化け猫とは一体何なのだ?
今回表紙は、第三巻表紙に出演できなかった高見、姫萩両名が大きく載っています。
今回のキャラのイチオシは”タキ”化け猫のハイジャック指揮官なのですが、第二巻”綾金港大海戦”冒頭で姿を見せて以来の登場です。この巻において感情移入すべき、真の主人公を挙げるとすれば、それは彼でしょう。雨の中、血溜りの中に姿を消してゆく彼の姿は素晴らしく印象的です。
解き明かされては深くなる謎また謎。おちゃめなギャグ。シーン構成の巧みさには毎度のことながらほれぼれします。どのコマもパース入っているか、集中線入っているか、もしくはその両方。激しいシーンはとにかくド派手、静かなシーンはとにかくシブく!!
単行本書き下ろしのラスト2Pは、ドラマCDを聞けという黒猫からの直接司令です。実行しましょう。但し、キャラクターのイメージ、ボロボロになっても当方関知しません。
祝!今号から正式に月刊誌へ。
巻頭はジオブリ。雪山のハードアクションに遂に終止符。爆走する雪上仕様バモス、木製ストック付きモーゼルで撃ちまくる梅崎、雪原を滑走するロープウェイのゴンドラ、そして狂乱の中走る敵味方。高密度のシーンの中で、伏線が、お約束シチュエーションが、意外な展開がキマってゆきます。気持ち良いです。アメリカのページャーデータ交換を一手に引き受けていた衛星Garaxy4の機能停止が、実は化け猫の乗っ取りのせいという辺り、ナイス。
しかし……多分、単行本収録時には鬼のように手が入ると予想します。
「エクセル・サーガ」は今回も福岡ローカルネタ。しかし、関係なく笑えるでしょう。「野間のオバちゃん」、野間とは某都市近郊の地名です。
「スタンダード・ブルー」復活。いいディティール積み上げています。メタンハイドロレートへの言及なんてニクいトコもあります。ヤバいピーポくんやヤバい黒エルフ親子が顔見せているコマもあるし。
「トライガンマキシマム」カッチョエエ!猛烈な存在感を放つ、敵の怪人達。それでも彼等は「人間」なのだ。人類皆殺しの尖兵、それは悪夢的状況。だが、彼等は人の性ゆえに闘い続ける。
GUN-HO-GUNS対ヴァッシュ、並外れた死闘が再開する。
さて、来月巻頭はエクセル。今度はどんなローカルネタが飛び出すか(笑)楽しみ。
今回の特集は関節人形。えー、アクションフィギュアの親戚みたいなもんですが、判を押したように白ツルツルの球体関節の、遠縁の金持ちのおじさんです。
竹谷氏の新作はナシ。しかし、しかし!沓沢龍一郎の新作短編だァ!!
巻末に収録されたコミック、「親切」トビラ絵は伊藤ガビンの過去恥部、アートやっていた時代の作品「マイー・ファースト・チェーンソー」を思わせます。イイッス。
海面を人為的に上昇させ、人類の大部分が海棲者となった未来。わずかに残った海上生活者の彼女の元を、県生活課の役人が訪れる。ディティールは最高。雰囲気も最高。
沓沢龍一郎は現在最もクールなSFコミック作家です。そのSF性は、はっきりとエッジの輝きを放っています。SF者に超絶オススメです。