過去の闇は今も主人公の側にあった。狂気のカリスマと共に精神の暗黒を覗き込んだ過去は、己の神経を焼いて今も夜毎暗闇へと手招きするのだ。
神経に半永久的な影響を与える精神共有ドラッグ。万能感と冷酷さ、そして殺人を共有したかつての仲間が帰ってくる。死んだ筈の我が子を連れて。
最近の読み返しで個人的に評価が高くなったジータですが、こいつにはキレがない。何故青背なのかも不明。
ジータの作品を強力なものにしている、純粋なイコン、絶対のシンボルが存在せず、かったるい感じを受けました。ただし、それはジータ作品としては、であり、サイコサスペンンスとして一流のものであるのは間違いの無いところです。
カバーのイメージではもろブレラン、酸性雨の降る夜の町のセンチでバイオレンスな話って風だが、さにあらず。ラストはさわやか。ページ数も手頃、描写も良く、近年物としては出色の出来です。お勧めします。
ただ、自分はカバーの雰囲気で読んでいたので、肩すかしにあった気分。描写がかなり良いので、中盤までは強烈なラストを期待していたのですが……
”クレギオン”シリーズ最新作です。
冒頭の噴煙突入描写、そしてラスト、良いです。
中高生を中心とするヤングアダルトの対象読者層を相手に、ハードの香り漂うサイエンス・フィクションを提示するその試みは成功したと言えます。手近なヤングアダルト読みの高校生らに読むことを薦めたいシリーズです。後輩あたりに隙を見て勧めまくる事を奨励します。
が、ここを読むほどすれたSF読みだと、評価は多少厳しくなるかも知れません。対象読者層が違うのですから当然ですが、それ以外にも、清廉過ぎる、とでも形容したくなる反御都合主義とそれゆえの矛盾、物語展開の欲の無さ等が目につくと思います。
スペオペTRPG用のありもの世界をベースにした話なのですが、ゲームとして必要だったと思われるテクノロジー設定等を引きずりながら、その反御都合主義がもはやスペオペとは呼べないものにしています。そう、この物語はトラブルの多い零細運送会社における、17歳の少女の成長物語なのです。
そう思って読むと、自分自身の経験などともダブる所が多く、ちょっと趣深いものがあります。はい。自分は20歳の頃にガッコを退学し、一年ほどプーをしたのですが、自動車工場の夜勤の帰りに聞こえた異国の働き手の歌、ゴールデンウィークが過ぎても帰ってこなかった季節工寮の同室の男、田んぼの中の鉄工所に自分と一緒に入った子持ちの男性の、機械に指先を落とされた軍手の中のその指先、そんな事を思い出しました。
ヤングアダルト読者へのメッセージとして、17歳の少女の、社会で経験してゆくその物語に期待したいものです。
あと、キャラクター、特に良いオッサンキャラであるロイドの使い方が勿体無いように思います。そう、せっかく萌えるオッサンキャラなのですから(…………)。
高軌道以遠の深宇宙へと乗り出してゆく民間企業の一大ミッションを描く、「彗星狩り」三分冊の最終巻です。
雰囲気、良いです。全体として高く評価できる、宇宙開発SFの秀作だと思います。有人宇宙機、作りたいっ!
プラズマ機関の加速グリッド摩耗、パドル面積等の書き込みが加えられたのも評価高いです。依然としてやっぱふた桁推力が違うという気もしますが、太陽電池の変換効率が17%の3倍くらいあれば……3倍でしか無いか。
大体、フライバイ加速の無いまともなフライトプランなら、アタマで稼げるだけ加速、行程終端ぎりぎりで減速とランデブ軌道投入、というのがふつうだと思うのですが。
それに、本当に彗星のような巨大質量を船二隻で軌道変更できると?推進剤無限大と仮定して、推力と二ヶ月という時間から考えると、一瞬、1500時間連続駆動する液酸液水エンジンなんて構図が……
20世紀を代表する哲学者の、「存在と時間」と並ぶ代表的著作、なのだそうですが……
ちょーな本を読んだことのある人なら、冒頭から漂う臭気にピンと来るかもしれません。そう、あの感じです。真空中から取り出すかのような無根拠な断言、次々と繰り出しながら説明抜きで投入される造語、不明瞭かつ混乱した説明たち。また、論理圧縮をかけたら何Kまで圧縮できるだろうか、と、つらつらと考えてしまう、情報を含まず冗長な文章は、最後まで読み通そうとする意欲を著しく阻害します。とりあえず読みましたが、二度と読む気はありません。
勢い込んで凄い事言っている筈なのですが、ちょー、しゅーきょーなので、聖典であるところのギリシャ哲学者の著作の語句解釈のレベルまで、どこまでも落ちて逝きます。哀れです。
こんな本読む暇あったら、情報理論を、オブジェクト指向を勉強しましょう。現実に適用して効果があることが産業的規模で確認されている哲学です。
夏期コミュニスト全国大会(通称夏コミ)に行ってきました。
勿論仕事もありますし、行けたのは三日間の日程のうちの最終日のみ。さて、会場に着いてみると、見えるのは大地を埋め尽くす民衆、同志たちの熱き姿ばかり。そして想像を絶する行列、ハラショー!やっぱ共産主義といえば行列っすね。
しかし……何故同志よ、納豆の臭いがしますか?何故に欲望に眼をギラギラさせていますか?嗚呼、何故市場経済に移行しますか?
絶望しました。ついては冬のコミンテルン(通称冬コミ)に期待しようと思います。マル。
……えー、年に二回行われる狂乱の超大規模オタク祭り、その売り手側サークルのサークルカットを全収録した、ただそれだけのカタログなのですが……
分厚い。分厚すぎる。CD-ROM化超希望。
まぎれもなくこれは日本のオタク文化の一つの投影です。この分厚さが、オタク文化なのです。
というわけで、戦利品の中から厳選した、イカレ本を一冊。
重量物運搬用の重機、トランスポータ車両の動力可動模型の製作解説本です。えー、表紙にはオレンジ色の多節22輪のリモコン車両の写真があります。配線が這い回っています。背景から察して、全長は3m近くあります。
内容はトランスポーターの駆動輪とステアリング機構の説明、製作機の構造、駆動系、電気回路の説明、そして十年来の開発史(!)といったもの。うーん、俺だったらモータの正逆切り替え部で直接PWM電圧制御するのに。勿論パワーMOSFETのガチンコ設計で。
何故こんな本買ってしまったのか、今ならはっきりと判ります。馬鹿です。馬鹿すぎます。良すぎです。
「米女性飛行士 宇宙基地「ミール」での6ヶ月」訳は宇宙研の的川先生。題の通り、ミール滞在の赤裸々な体験記です。読み甲斐有ります。ミールでの生活の記述は必読です。有人宇宙構造物の運用体験、ISSでのJEM運用においても貴重なものであるのは言うまでもないでしょう。
「すそ野広がる宇宙ビジネス」ゼニットをSS18,19の改造というのは何とも。
次号で休刊。つまり、通例来月はラスト特別構成となるだろうから、今月が実質のラストって事である。記念にと購入。
読んでいると、目の付け所はいつもながら結構良くて、うんうんと読んでいくのだが、やっぱり判っていない事が判明したり。内容に力があって読ませるのに、結論がヘナヘナだったり。やっぱり判ってなかったり。
PCコジャレ層受けを狙うあまり、きちんとした読者層を作れなかった雑誌でした。良い記事も多かったのですが、受けを狙うあまりのカス記事、ネットからスカンを食らっているような有名人に書かせるコラム等、問題も多かったと思います。
存在するだけで価値のある雑誌でした。残念です。
ハーイル、イルパラッツォ!ハーイル、イルパラッツォ!!
某都市にこだますこの歓声を!!!……という日は果たして来るのか。選挙応援、PHS街頭販売、と何時ものごとくブラックなバイトに精を出す妙齢の女子二人。そしてその背後で次第に濃さを増す対決の影。総帥イルパラッツォと蒲腐博士、彼等は果たして何者なのだ?エクセル、ハイアットって本当に人類の一員か?GUN-HO-GUNSの一味じゃ無いのか?
というようなシブい話で或る訳が無く、中身はとにかくナイス馬鹿、馬鹿、馬鹿のギャグ。登場人物たちの見る初夢を描写する「うたかたの万華鏡」が白眉的にバカ。渡辺は他人とは思えん……。某都市被支配民予定者には次の大雪ネタがツボを突いてくれるでしょう。
あと、”エクセル=アキ電”説ってのも思い付いちまいました。いや、ただ、似たようなポジションに偉そなヒゲがいるってだけですが。
何だかトライガン尽くしってな感の今回更新の第一弾。特集はもちろんトライガン!
表紙、特集収録のイラストの大半が吉松氏の筆によるもの。しかし、動かないんじゃあ内藤センセのヴァッシュに敵う訳も無し。LDジャケット全巻書き下ろしの二巻目のデリンジャー二挺拳銃のメリルに心が揺らぎまくる。追い討ちは寺田克也書き下ろしLDボックスイラスト。揺らぐよぉ、揺らぎまくるよぉ。
CGのアニメ版ヴァッシュ銃にため息を漏らす。実物、作りてぇ。ただし加工の楽なコミック版で。もち鉄鋼、S45C辺りからのの削り出し。マシニングセンタ、どっか使わせて欲しい。
後は特に……WOWOWかぁ……10月かぁ……
神なき星の下で相対する二人の堕天使。人とともに歩むヴァッシュ、人を嫌悪するナイヴス。ナイヴスの狂える手、レガートとそのGUN-HO-GUNSはヴァッシュを迎え撃つ。
モネヴ・ザ・ゲイル、E・G・マイン、ドミニク・ザ・サイクロプス。闘いの中でヴァッシュはその肉体に深い傷を増し、心に悲しみを蘇らせる。悲しみの追憶が彼を突き動かす。
やがて一同はそこに集う。そこで何かが終わり、何かが始まる。
ジェネオラ・ロック、そこでは神の羊たちは皆息をひそめ、再臨と破壊の予感に震えていた。
そして、神の指が月にその名を描く。ヴァッシュ・ザ・スタンピード。
気になって気になって気になって仕方がなかった単行本未収録分、そして現行連載へのブリッジ部が雑誌スタイルで一冊にまとめられました。ついでに色々のおまけつき。ゴーカです。買え。買いたまえ。
関係無い話ですが、「SFは絵」という話があります。今時のSFの”絵”って、構図やスケール感は大好きなのですが、絵柄やディティールがあまりにもお粗末、時々松本零士フィンが付いているよう錯覚するもの、のっぺりしたエンプラDを眺めている気分になるものが多すぎます。
はっきり言ってしまって、今時のSFのイメージ喚起力には期待していません。
しかし、ここには、抜群にホットなイメージがあります。
内藤泰弘の”絵”、抜群に良いです。
やっぱ連載がリアルタイムで読めるというのは良いものです。「TRIGUN MAXIMUM」丸ごとバトル!ニュー隠し銃、デザインはイカスけど、マガジンがどうなっているかは謎。
「ジオブリーダーズ」メーカーを訪れる入江と四人の背広男。揃いの三つ揃いに揃いの鞄。一瞬のうちに鞄から現れる揃いの拳銃。四本の光束が標的を捉える。凄い。
うって変わって神楽本社ではどこかで見た観の在る料理サイト(……)閲覧してたり、現場では田波ピーンチ!だったり。多分次回で停電。がんばれよぉ。
「エクセル・サーガ」今回は季節モノ。エクセルって何者?格好も……。「だいらんど」凶悪。何処へ行くのだ?「スタンダードブルー」は緊迫感としんみりした話、そして泣きが入った良い話。そろそろ表紙張って良いのではなかろうか。「HELLSING」も。
さて、読みきりでは久しぶりで絵柄、作風の変わった感のする幸田朋弘「出世払いの袋」昔の方が良かったかも。犬上すくね「好きすきまほ先生」甘い。甘っちょろい。くぅう。逆に大石まさる「Manta」甘ったるい。陶酔しちゃ駄目。SFだろうと駄目です。今月の白眉はやまむらはじめ「最後の夏」巧い。
さて、世間的にはアワーズはマニア指向で人気がある、と思われていますが、私は違うと思いますし、この雑誌を支持する理由も違います。
この雑誌の雰囲気として、コミックの面白さの基盤がよりプリミティブだというのが私の感想です。ジャンプ方程式とも、女の子n人増やせば的角川風土とも違うその回答の一つが”アクション”です。
例えばジオブリで、OAVとコミックを比べた場合、動くという点でアクション物としてOAVの方が原理的に有利であるにも関わらず、コミックの方が”動き”に迫力があり、面白い、というのは、ジオブリのその到達点の高さを示していると思うのです。よくあるアクション漫画のように周囲の人物がその凄さを説明しなくても、インフレを起こさなくても、アクションから”わくわく”を受け取ることが出来るのです。お子様向けの分かり易い友情だとか、都合の良い美少女が無くとも、面白いのです。
あんな重箱の隅ほじくるようなHP作っておいて言うのもナンですが、私がジオブリを愛する理由はそこにあります。