クールなピザ配達人、ヒロはネットでは別の顔を持っていた。全感覚共有空間インターフェイス”メタヴァース”の誕生に関わった古参ハッカーの一人なのだ。だが、商業化の波の前にフェイドアウトすることに決めた彼は、刹那的にカッコ良い職業としてピザ配達を好いていた。
だが彼は定時までの配達に失敗しそうになり、職を失う。ネットでは人間をぶっ壊すウイルスが出回り、ストリートではスリットゴーグルの大男レイヴンが、邪悪なハーレーを駆って殺戮を繰り広げていた。かつての恋人が呉れたカード”バベル”に手がかりを追うヒロはやがて、古代バビロンとネットとのハイパーリンクを見出す。前バベル化の企てを…
90年代SFシーンの代表的ヒーロー、ニール・スティーヴンスンの代表作がようやく邦訳刊行。全くアスキーはぶうぶう。
サイバーを!俺にサイバーを!という全面的飢えの中で読み始めたのですが、しばらくして気づきました。こいつはサイバーパンクではありません。未来でもありません。SFの改革とかどーでも良いのです。SFじゃあないかも知れません。
しかし、かなり気に入りました。プログラマーに推薦。ハッカー向け文章版パワフル・コミックです。設定全体がシステムを対象としたメタ的なジョークで構成されていて、フランチャイズ国家とか、メインネタ等が、何というか、笑いでなく、イケてる疾走感を醸し出してくれるのです。
パソコンに熱を上げた事の有る人間ならきっと気に入る、そういう読者層相手の、昔のアスキーノリのわかる人向けの本です。全面的に推薦します。よか塩梅です。
そして、これこそがサイバーパンク。剥き出しの生ラッカー。
ラッカーにかかれば、陳腐なディストピア未来すら超ナイスになる。もちろんその世界が、じゃない。描写の仕方、物語の転がり方、それらが強引でモノスゲェ(平野耕太風)調子になるのだ。読者は定位を見失う。ラッカー好きは何時もの奴だと歓ぶが、それは即ち彼も定位を見失っているということ。ラッカーが連れていってくれるのはズバリ、アッチの方向だ。
初期の生ラッカーがここまでイってたなんて、素晴らしすぎます。薄いしテンポもナイスだし、読め!これを読まない奴は、センスオブワンダーを口にしながら、その定義に夢中になる田吾作と同じだ。
読め。そしてこのグルーヴで波乗り出来るようになるまで帰ってくるな。
邦題に、カバーイラストに幻滅。ジーターがこれかい!!
「グラス・ハンマー」再読以来、評価高かったので、えらく暗い気分になりました。内容を評すれば、サイバーパンクがイケたクチ向けの、軽く読めるまぁ面白い作品、というトコロでしょうか。サイバーパンクが駄目な向きはこれは駄目でしょうし、魂がサイバーな人は多分、私と同じ幻滅を味わうでしょう。
とはいえ、面白く読めた事は事実。暇があれば、読んでもいいかも。
昔、北九州で少々訳有りの学生生活を送っていた頃、私はパソ通を始めました。PC史的には、NECの市場支配に陰りが見え始めた頃になります。
草の根BBSでした。濃い人たちがいました。私は再び、足抜けできていた筈のオタク沼に、肩までどっぷりと漬かることになったのです。
中でも、抜群に濃かったのは国産ホビー機ユーザ、中でもX68000ユーザは群を抜いていました。一番素晴らしいパソコンは何か、議論したことがあります。シャープがPowerPC搭載の新X68000シリーズを企画しているという噂を信じていて、オフ会ではその”やがて救世主が訪れ、邪悪な勢力は一掃される”という主張に、大議論になりました。既にX68000という機種シリーズは命運が尽きており、誰の目から見ても、彼等の信仰は盲目的なものに映りました。
そして数年後、「Oh!X」は消えます。「Oh!FM」や「MSXマガジン」らと同様の運命を辿るのです。
しょれが復活。度肝を抜かれました。
今回、「X」は未知数のXの意とのこと。勿論、X68000関連の記事は特別扱いだが、時流を反映してページ数は少なめ。。巻頭特集はドリームキャスト。セガ好きの伝統は今も生きています。いきなりSH-4のレジスタ構成から入るところが流石。
そして内容は混沌。今時アセンブラプログラミング講座もあれば、「ToHeart」解析記事、シャネル入門も有り。休刊後、多方面に散っていったライター達の、その後の視野の広がりが生きています。
新しい視野の広がりと、「ホビーのためのパソコン」という思想を明確にして生まれ変わった「Oh!X」は、日本的”パソコン”(PC、という呼び方と区別して)ユーザーのオタクディープな感覚をしっかりと掴んでいて、好感が持てました。
パソコンには、事務機としての面と、”夢の機械”という面をそれぞれ持っていると思います。事務機としての面ばかりが表に出るようになり、ホビーパソコンが滅び去った現在、再び”夢の機械”としてのパソコンを、ホビーとしてのパソコンライフを取り戻そうという試みを、私は全面的に支持します。
だから、この雑誌を買いましょう。趣味のプログラミングをしましょう。CGを書きましょう。ポリゴンアニメーションをしましょう。そして、面白いものをパソコンと共に探していきましょう。
「Hallo!PC」誌に連載中の「パソコン快人伝」のこれまでの分の単行本化です。
連載、結構気に入っているので、読めなかった昔の分が読めるだけでもオッケェ。そしてとにかく、お勧めします。
コンピュータ界の有名人と言われてゲイツとジョブズ位しか思い浮かばないようでは悲しすぎます。ロバート・パーマー、アラン・シュガート、ミッチ・ケイパー、フィリップ・カーン、リーナス・トーバルト、ビントン・サーフ、いやぁオモシロイ。食い足りない、もっと欲しい、と思ったりもしますが、これだけ集まった事の方が評価高し。
この本には日本人は出てきません。そちらもそのうち書いてもらいたいものです。ただし成毛ちゃんはパス。
特集は「ヨーロッパデザインの日常系」インダストリアルデザインって大好きなんです。確かに良い感じ、特に色使いが抜群です。ロンドンは調子良いですね。
でも、カタチそのものにはあんまし感じませんでした。まぁ、そんな良いデザインが街じゅう溢れている訳でも無いだろうし。でも、良いものは確実に有ります。良いデザインに対する感性を大事にしたい、そう思うならチェックの価値があります。
特集はスポーツデザイン。内蔵回転子の慣性質量に抗して、スピン軸を倒すようにして手首などを鍛えるアイテムはナイス。
今年のアルス・エレクトロニカに関する記事は読み応えあり。今年のテーマは情報戦争。社会に積極的に関わっていくような先鋭的で高感覚な表現は、日本ではまず見られないだけに、羨望感あります。日本のアート界の意識の低さはイコール感覚の無さ。情けないやら何やら。
建築デザインもタイポグラフィックも結構好きだけど、SF界って、やっぱこーいうものへの意識、低いですね。まぁ、スターリングで目覚めたような奴が言うのもナンですが。
副題は「宇宙ステーションと惑星間飛行のための誘導・制御」はい、これだけで、ある種の人は即買いですね。
私はその種の人なので即買いました。「I」が衛星の地球周回軌道投入を中心としていたのに対し、ランデブ・ドッキング、柔構造・大型構造物の姿勢安定、惑星間軌道投入、フライバイ、カルマンフィルタと、わくわくする題材が揃っています。
でも…まだオイラ「I」勉強中なんです…
結城真丈は、金も仕事も実力も無いけど探偵で、少女と二人、どちらが保護者ともつかないその日暮らしの毎日。すぐ調子に乗り、一人前に出来るつもりになるが、シビアな現実と向かい合うとき、俺はこの仕事に向いているのだろうか、俺は一体何やっているんだろうか、そう思うのだ。これでいいのか、と。
しかし、少女は真丈の良いところを知っていて、だからこそ、彼との生活を望むのだった。私が助けるから、だから二人で暮らしてゆけばいい。少女は囁く。
「あたしがしんじょうの天使サマだから」
アワーズ誌に掲載された連作短編「ドライエック」シリーズ、及び同誌で発表された短編三編をまとめた短編集です。
繊細かつ硬質な心理描写の素晴らしさは群を抜いています。青年誌漫画でこのレベルの心理描写が出来るのは、他にはまずいないでしょう。またそれは、独力で青年誌漫画というジャンルに切り開かれた、新しいものです。
読んで損はありません。良いものを読みたいと思うなら、一読を。
脱走兵どもが乗り逃げした新兵器”浮上戦車”はやたらと強かった!
眼鏡っ娘な司令官率いる敵部隊の執拗な(?)追撃をかわしながら、一向は前線へ、本国へと向かう。待ち構えるのはやたらと頑丈な謎の女兵士、燃料不足に装甲列車、博士の新兵器に巡洋戦艦、そして浮上戦車一号機。しかし、源文タッチな絵柄(時々)でも、この漫画はギャグ。しょーもないパロディ満載。アホです。ナイスです。
しかし作者、いー趣味しとるなぁ。やっぱ戦車はロシヤーっ!ツッコミはビシー!(Byフランス)カメラはオリンパス!がんばれ犬福!
今月もいい感じ。巻頭は山田秋太郎「LOAN WOLF」平野耕太ファン筋には有名な人ですが、そーいやぁ商業誌で長いのってこれまで見た事無かったっけ。巧いのに。
「TRIGUN MAXIMUM」ロストテクノロジィを未だ維持した難破移民船”村”へと向かうヴァッシュ。GANG-HO-GUNSの一人の言い残した言葉に焦りながら。その一方でウルフウッドは己の生き方を自問していた…タイトルページの見開きヴィジュアルが良。とりあえずカレンダー注文。
「エクセル・サーガ」今回は渡辺の岩田への復讐話。渡辺、レンズマンにされた上に小象を描かれてしまったんです。岩田は白いギターを持って海辺へ逃走。アホ過ぎ。良。
「スタンダードブルー」短期集中(という話だった)近未来海洋SF堂々完結!気持ち良いえー話でした。一月には単行本化!
「だいらんど」メルヘンな絵柄とメルヘンな話。今月も凶悪。
やまむらはじめ「肩幅の未来」凄い。「ドライエック」の項でも書きましたが、繊細で硬質な心理描写が素晴らしいです。空気とか雰囲気とかに恐ろしい情報量が詰まっています。こういう離れ業を読める幸せをかみしめましょう。
犬上すくね「WORKING ZOMBIE」うー甘っちょろい。
さて、今月の「ジオブリーダーズ」
”事故発生”18分前から3分前までの15分間。新日本アビオニクス社構内では、装置DAX-1の被験体を用いた動作試験が行なわれていた。それは死闘を繰り広げる化け猫と厚生省との力関係を決定的に変えるものだった。が、入江は言う。このゲームにルールが多少追加されるだけだと。奴は知っているのだ。恐らく、”黒猫”も。その頃、神楽も、ハウンドも、そして化け猫たちも闘っていた。何も知らないまま…
ぞくぞくします。今月は入江に尽きます。冷酷な目付きが凄い。
幾つもの別の場所での出来事が並列進行しているのですが、テンション上がりっぱなしです。
読者ページ、今月はトライガン特集だったのですが、綾金からの投稿者が一人。趣変わってカッコイイニコ兄ぃですが、この兄ちゃんがピコピコするトコロは想像できません。