前作「極微機械ボーア・メイカー」は駄目駄目だったんで期待してませんでしたが、こいつはなかなかツカミ良かったデス。
冒頭から異質感全開の幻視描写、なにか違うものを描く、そういうSFのコアのようなものを感じました。SFには小難しい理論とは別に、いわば見世物的、万博的引力が働いていないと駄目だと思うのです。見た事も無い世界へ読者を叩き込むことに、この作品は冒頭で成功しています。
ただ、その後の展開がもっさりしていて、その割に書き込みゃ面白くなる辺りをはしょって、妙な終末を見せています。はっきり言ってしまえば、下手です。リンダ・ナガタって、解決の無くて主人公があさっての方へ行くラストが好みなのかなぁ。絹市の人たち、あのあとどーなんだよぉ。あと邦題。この脱力なセンス、どうにかならないものか。
特集「宇宙ハードSF」えー、真空で無重量で遥かな深淵への熱輻射で冷えていく…って雰囲気ではあまり無いのですが、”ハード”さは本物。
宇宙開発関係者筋で話題騒然、34Pの「政治・経済を越える大気圏外への夢」、えー、表題は編集部が付けたそうです。野田さん、遂にSFマガジンデビューです。何でも、思ってもみなかった所から反応があるそうで、NASDAの懐の深さというか、「やっぱり、そうだったんだな…」という安心感があったりもします。それにひきかえウチの会社は…ぶつぶつ。
内容については、自分らにとってはごく初歩の話でしたが、ページ後半になるにつれて説明がだんだん端折られていて、かなり端々で飛ばされています。
「天獄と地国」は、小林泰三作品の常ながら、頭を使わせる異質感が流石。この、頭の中でトンカチを使う感覚こそハード。
林譲二「エウロパの龍」メインアイディア、秀逸です。
そして今月は豪勢にもバクスター短編二本立て!今一番パワフルでコアな(そう、ハードな)作家バクスター、二本とも”ジーリー”シリーズですが、やっぱイイッス。
でも、勿論(…)駄目なのもありまス。川又千秋とか。他にも。うーん。
さて、来月はスターリング「タクラマカン」!!チャガヌータ・シリーズの代表三中編の最後の邦訳が遂に!ニール・スティーヴンスンも載るし。来月は買え!!
今月号は必読必買です。特集「21世紀宇宙への旅」ROTONが、フォワードが、キスラーK1が、レーザー推進が、米空軍の太陽温水素OTVが、反物質エンジンが勢揃いです。
最近の輸送系のトレンドは再使用打ち上げ機。ROTONは径7mの円盤の円周上に並んだ燃焼室というのがエンジンで、720rpmで回して遠心力利用で圧をかけるというもの。確かに面白いのですが、軸受けも心配だし、反力も心配。やっぱキワモノだなぁ。
キスラーK1の二段目、使い捨てにしてバリエーション増やした方が、商業的にウケると思うのですが、どうなのでしょう。
そして勿論、使い捨て機も新顔が出揃いはじめました。ロシア製ゼニットで海上リグ改造の射場から打ち上げるSEA Launchの初回打ち上げは、ついこないだ成功しました。
で、日本はと、はい、宇宙研の再使用観測ロケットとか、ATREXとか、ちゃんとやっています。お金あんましつかないのが悲しいところ。事業団の方では、ローコスト使い捨て機でJ-1改、これは一段目がK1と同じロシア製NK-33、そう幻の月ロケットN-1用に作られたまま埋もれていた生き残りの発掘品です。二段目が新規開発の日産製メタンエンジン、色々と色々が心配です。”制約が少ない射場”とは、南太平洋上、クリスマス島を考えたもの。再使用型だとロケットプレーンという構想が。こいつはどのくらい進んでいるんだろうか。
さて、見所一杯の今号の記事で見落としてはいけない部分、それは、NASAが反物質使用に予算を付けたという事。ひーっ。
あと、「建設進む国際宇宙ステーション」の記事内63Pで、写真に混じってCGが特に断りも無く使われている所とか、64Pの写真の一枚に指紋が付いてる事とかも。なんだかなぁ。
AXIS誌の増刊の3DCGデザイン誌です。特集はゲームムービー。
アタマに、シグノシス社への取材記事があり、もうこれだけで購入決意。私はAMIGA版の「Shadow of the Beast」以来のファンです。当時からデザインセンスは一頭地とびぬけてました。キャラデザやメカデザは日本純正品にかなわないのですが、綜合するとどうしてもアッチのセンスの良さばかりが目に付いてしまいます。
さてそんな日本ゲームのデザインはと…絵は良くてもゲームシステムや世界観といったパッケージングの問題が足を引っ張っています。システムは静的で内部の変数が透けてみえるし、デザインをくくっていく箱はオリジナリティの感じられない旧態依然の代物で、効果的にデザインを殺しています。まぁ、教科書の有る分野は強いんですけどね…
結局、ムービーはゲームじゃ無いんです。コンピュータゲームのミソは、コンピュータの内部状態、隠されたルール、内部変数の推測だと思うのです。推測の過程が面白いのです。シミュレーションでは、例えば車や飛行機の物理ルールをきちんと作り込むことによって、プレイヤーに現実からの類推を可能とさせています。もし、慣性を無視して直角に曲がる車がプログラミングされていれば、プレイヤーは盛大な目眩と共に興ざめしてしまうでしょう。
さて結論。ゲームが映画を越えたとしても、それはゲームが越えたのでなく、あくまでオマケが越えたに過ぎないのです。ゲームの目指すものは別の地平です。
それはそうと、この雑誌、私は非常に気に入りました。「緊急座談会:CG雑誌はなぜつまらないのか?」こういう記事の載る雑誌って良いと思いませんか?
ファインマンで計算機科学。もう買うしかない、と買ったのですが、前半は、ついふらふらとこういうのを買ってしまう向きには薄いと思います。学生への講義ノートの編集本ですから。後半になるとさすが物理屋、計算に必要なエネルギーの話になり、ここらへんは非常に面白いです。”マクスウェルの悪魔”がよくわからない、という人は読む価値大でしょう。
表紙の印象からおこさま向けかという印象をも受ける本ですが、中身は物凄く濃いです。図表も最新のレアなものが惜しげも無く使われていて、まぁ惜しむ理由なんて無いのですが、例えば中国のフィルム回収型偵察衛星やら、H-IIの一段目落下予想海域やら、歴代の衛星の詳細外観図や構体のイラスト、図入りで簡潔にまとめられた計算式とグラフやら、良いです。買って損はしません。
新宿にほど近い私鉄沿線の、小さな街のコンビニ。バイトで週四日、貧乏暮らしだが、やりたいことの見つからないまま就職する気になれなかった主人公は、その冬の朝も、街のカラスに賞味期限切れの弁当を振る舞う。
大学時代の友達が同窓会に来いと言って名刺をくれた。あのひとが戻ってきていると聞く。自分だけが同じ場所で足踏みしている。かといって、何処へ行くというのか。
そんな朝にその少女と出会う。足の悪いカラスを連れた少女に。
BJに載った第一話で私はすっかり魅了されてしまいましたが、どうにも不定期な掲載で、単行本にまとまってから改めてチェック。
キャラクターの魅力もさることながら、ディティールの木目細かさが素晴らしいです。コンビニのレジの奥でのだらけ具合。コタツの天板にアゴ載せてしみじみしちまうヤロー二人。会話の端々にもしっかり神経通っています。
それに、よくわかるんです。皆さん、自分の周りの友人たちのプー率の高さに狼狽した事はありませんか?就職している筈の友人が専門学校に行っていると聞いて、どういう専門学校か聞いて更に驚いたというような覚えは?将来の夢を語らって、その夢がはっきりしない夢想に過ぎない、彼をどこへも連れて行かない種類のものだと悟るが、それをはっきり指摘するのは酷だと思案してしまった経験は?
でもそれは現実で、肯定しなければなりません。肯定したところから、この作品を眺めてみてください。これがリアリティなのです。
脱走兵扱いされた男が送られたのは懲罰大隊では無かった。戦史から消された捨て駒戦車大隊、Kamp.Gr.Zbvから生きて離れた者はいない。中隊長はそう語った。
東部戦線の全面的崩壊の中、スターリンのオルガンとT-34の砲火の中、血と苦痛と恐怖と怒り、そして死が冷たい泥濘と共に戦場に満ちる。だが次々と脱走兵は補充され、不条理な命令に駆り出されてゆく。中隊長の詰問に指揮官は答える。
「しょせん血塗られた道だ。そうだろう」
源文劇画の代表作です。
戦場の凄絶な空気、そして帰還と再び戦場へと赴く隊列。敗色濃い雰囲気を背景に、人間と兵器が見事に書き込まれています。ホビージャパンの連載で読んでいたのですが、私がロシア兵器好きになったのは、この作品でのスターリン戦車の強さのせいです。
吹き荒れるクソゲーの嵐!暴力的なまでのドブスとリーゼント!悪魔の如き兄弟と破戒神父!秘密結社の世界征服の時は近し!あッ綾瀬ちゃーんッ!どうした主人公とヒロイン(眼鏡っ娘)のラヴでコメの行方は!そしてすごろくの結末は如何に!!
待ち続けた単行本がようやく出ました。ファミ通PS誌に連載されていたのに、単行本は新声社から。大人げ無い大人のじじょおの絡んだ、因縁のアレ、平野耕太初の、非エロブチ切れ系単行本です。
つーことで、パンツァーイ!パンツァーイ!パンツァーイ!
やっぱ平野耕太はこのノリです。「拝テンション」今更手に入らないでしょうし、このノリの入門書として最適でしょう。