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May,9,1999

「SFマガジン 1999年6月号」
出版社:
早川書房
分類:
SF,雑誌

以前、とある掲示板に、こう書いたことがあります。

最近、サイバーパンク専門掲示板でも造ろうか、などと考えて遊んでいます。

最低「ニューロマンサー」は読んでいないと書込み禁止。無駄にエッジな衆がゴロゴロすることを期待して立ち上げるものの、月に一回ほど管理人が書き込む寂しい日記みたいなものしか無かったり。暫くすると書込みがぽつりぽつりと出てくるものの、皆んな、十年前を懐古してばかり。しまいには「サイバーパンクの復権」オフをやったり。

…さむ。

サイバーパンクとは、ここで言うまでも無いことですが、”運動”でした。

そして、それは日本を素通りしてゆきました。日本では、ジャンルを改革しようという、歯ごたえのあるアジテータなんて一人も出てこなかったし、大体、ジャンルの問題点すら見えていませんでした。そのツケを、日本SF界は、今もずっと払い続けています。

ジャンルをどう改革すべきか。先駆者の苦闘の記録は、安価な文庫本の体裁で入手可能です。「クローム襲撃」「ミラーシェード」「80年代SF傑作選 上下巻」…もう絶版だって?でも、たぶん貴方は読んだ筈だ。手に取る事ができた筈だ。


そして、もちろん、今月号のSFマガジンは、手に取ることができる筈だ。

今月号収録作で読む価値があるのは、スターリングの「タクラマカン」と、ニール・ステゥーヴンスンの「サモリオンとジェリービーンズ」の2つ。でも、「タクラマカン」だけでいい。読みなさい。

スポーツクライマーの二人は、プロらしい興奮のために、タクラマカンの奥地を目指す。アジアの秘密活動の中心部へ。依頼者の軍人は、星間船の基地がある筈と説明していた。だがそこにあったのは、条約違反の先端産業テクと、偽物の星間船。NAFTA支給の装具と共に二人はそこに潜り込むが…

嘘くさくない未来。嘘くさくない描写。これを読んだ後で、手近な、未来描写のある作品のページを繰ってみて欲しい。これまでよりずっと、”エアカー”くささに鼻が利くようになっている筈だ。

我々はもう、多くの未来が”ありえざるもの”であることを知っている。では、知っているならなぜ、目を背けるのだ。夢見ていたものを捨てるのがつらいのか?でもそれは、もう嘘の匂いしかしないのだ。

SFの革新とは、未来像の革新。再び、テクノロジーの先行者という地位を取り戻すのです。スターリングの軽業を注意深く解析してみましょう。背景には明確にイメージされたテクノロジーとカルチャーがあり、それがスタイルを支えています。登場人物を、我々の価値観でなく、未来の価値観で動かすのです。支えるものがあれば、スターリングがやってみせたように、出来るはずです。


私はもう、嘘未来には我慢できません。だから私はこう言います。

遅くてもいい、サイバーパンクからやり直せ、と。

「DISCO 2000」
出版社:
アーティストハウス
分類:
SF,新書

”世紀末の最後の日”をテーマにした、オムニバス短編集です。厳密にはSFではなく、いわゆるスリップストリームに属します。

書いているのは、(わしぃら、サイバーパンク世代にとって)懐かしの、パット・キャディガン、ポール・ディ・フェリポ、いかしたグラント・モリスン、ダグ・ホーズ、スティーヴ・エイレット、スティーヴ・ピアード、クールなジョナサン・ブルック、ポピー・Z・ブライト、チャーリー・ホール、ビール・ドラモンド、マーティン・ミラー、そしてなんてこった!ニール・スティーヴンスン!ダグラス、クープランド!ロバート・アントン・ウィイルスン!

ゴージャスな作家陣です。この作家陣をみて、読みたくなったあなたは同志だ。


いいよーん。よめー。

「ハイ・フロンティア」
著者:
笹本祐一
出版社:
朝日ソノラマ
分類:
SF,文庫

前話でせしめたのはそう、XB-70バルキリー!だが、そんなこんなのうちに、何やらヤバい奴を敵に廻したことが判ってくる。そして、宇宙屋の反撃は開始された…


バルキリー好きにはたまらない一品でしょう。はい。


それはそうと、私はどうも、敵の設定が腑に落ちません。まず、理由づけがありません。理由も思い付けません。クラッキング対策描写はこれまでに無いレベルで、賞賛すべきですが、そのせいか、逆に話のコアが希薄に感じました。


宇宙開発は民間の時代を迎えようとしています。ようやくマーケットに認知されたのです。私たちは、その参入障壁を、物理的、金銭的な方面で低くしようとしています。安くなれば、誰かが効果的な使い道を見つけてくれると信じています。楽観的に過ぎるのかもしれませんが、パソコンだって、はじめはそうだった筈です。

「星のパイロット」シリーズは、センス良い未来描写、民間による宇宙開発という内容に評価の高いのですが…

市場から流れ込む資本が、宇宙開発の為には必要なのです。もっと遠くへ行く為に。

「interface 1999年6月号」
出版社:
CQ出版
分類:
技術,雑誌

「アマチュアでも自作できる32ビットRISCボード 小型SH-3ボードFoxの設計と製作」はい、野田さんの例のアレです。SH-3って、何でも内蔵していて、何か作ると楽しそうな石ですが、実際に作ろうという段にまでは、なかなかいかないものです。ハードウェア的には(リセットタイミング生成部を除けば)ただ繋いだだけなのですが、ソフトウェアが、何といってもRISCですから…

プロジェクトは現在、大容量メディア(コンパクトフラッシュ)をIDE接続するところまで来ており、次は本格OSの導入です。


他の記事も、Windowsの内部構成とプログラムの実行形態、WindowsNTのデバイスドライバ制作など、非常に興味深く(…)読めました。なんか今月、濃いなぁ。

ところで目次の隣のライフボードの広告、目次のパロだったのですね。

「エアロスペースクーリエ日本版」
出版社:
メディアパル
分類:
趣味,雑誌

何というかその、スゴイです。フルカラー隔月刊のムック体裁の本なのですが、中身はすべてロシア!ロシア宇宙開発満載です。

「ライトサット用発射ロケット・開発の主な傾向」だとか「ファゾトロンNIIRの誇り・ニナ・シェルスチュクの軌跡」だとか、レアで変な記事が満載です。

さらにそのうえ、定期購読が可能です!…本当に次出るのかなぁ。

「AXIS vol.79」
出版社:
アクシス
分類:
趣味,雑誌

電車に持ち込める6.5kgの折畳み式自転車「トレンクル6500」…ようやく6.5kgかぁ。

私が7年前に買った折畳み式自転車は14kg。むりやり電車に持ち込んでいました。西鉄の話では、袋に入れれば持ち込みOKとの事だったので、キャンバス布をミシンがけして、袋を作りました。でも、袋に入れるのが面倒なのと、高架の駅の階段がつらくて、そのうちやらなくなりましたが…

それが、重さ半分。心が動きます。将来型交通の切り札は、公共交通機関に持ち込みできる自転車だと思っています。(もうひとつの切り札は、もっと木目の細かいサービスをする配送運輸です。)

都市での機動性もさることながら、郊外での行動範囲が大幅に広がることの意味は大きいでしょう。駅から離れた友人の家でも、自転車で行けるようになれば、自動車を使うシーンは大幅に減るでしょう。NOx削減の、交通問題解消の単純な解決法は、自動車を使わないことです。都市中央への、商用車と公共交通機関以外の自動車の乗り入れを禁止し、バス運用を合理化するのです。

というマイ未来予想図では、折畳み式自転車は、3〜4kg台まで軽くなると予想しています。炭素繊維強化プラスティックなら、フレーム重量を1kg以下にまでできます。サドルとタイヤの材質と構造を思い切って変革することも肝心です。値段は張るでしょうが、コンパクトな高級感は所有する喜びを高めてくれます。そして利便性も、ノートパソコンの利便性よりインパクトボリュームの大きいそれを、確実に感じられるはずです。


他の記事も、あぁ、産業デザインって良いです。デザインとは、見栄えだけではないのです。テクノロジーを、使えるようにする、その変換システムがデザインなのです。

「スペースアルプス伝説」
著者:
田丸浩史
出版社:
徳間書店
分類:
漫画,単行本

「メガネ入る余地ナシ!」あうっ、ばっ馬剃ぃいいいいいいいいい!!(泣)


取り乱してしまいました。済みません。眼鏡のフレームの描き込みに確実なラヴを感じる、ナイス眼鏡っコ漫画(…違うってのは解っているけどさぁ…)「アルプス伝説」が、スペースなラストを加えて、遂に完結!!

ああっ空とぶ敏いとうッ!ヒメマルカツオブシ虫ッ!ゴッドペンション!ウォシュレット!アルキメンデス!!!素晴らしいアホさ加減がイカします。そして訳解らんラヴコメ!!馬剃(眼鏡っコ)がやたらとかわいいので、ヒロインはどっちだ?と錯覚すること請け合い!

そしてラストは、…スペース…(…頭抱えている)


寺田克也猿神様画の表紙に、一見アル伝と気づきませんでした。何というか、確かに、「女犯坊」サイズ。カバー下がカラーなのにも注目。馬剃ぃー。

さて、次は眼鏡っ娘フェチの理論指導書「屈折リーベ」単行本化だ!

「ヤングキングアワーズ 1999年6月号」
出版社:
少年画報社
分類:
漫画,雑誌

−まず、手元にOAV「GEOBREEDERS FILE-X」全三巻、もしくはレンタル版(DVDになるといいなぁ)を用意する。ビデオデッキ(もしくはLDデッキ)起動、「紅の流れ星」予告編に本編を期待しながら、全巻をまとめて観る。全てはそこから−

連載が遂にOVAにシンクロしました!既に、OVAは連載同等扱いだというアナウンスはありましたが、実際に展開しはじめるとは。しかし、OVAは1エピソードまるまるの話だったので、エピソードごとにかなり独立した体裁を採っているジオブリでは、観てなくても充分に楽しめます。

とはいえ、神楽の本社と全装備を失った(燃えるお約束)経緯や、ビルにアタマ突っ込んだSS-25、鬼怒川温泉のサービスシーン、気になりますよねぇ。ほら観た観た、ちょいとテイストが黒田洋介風で違うジオブリをチェックしておきましょう。


しかし、アニメより漫画の方が動きを、迫力を感じるというのはどういう事でしょう。空気の張り詰めかた、シーンの構成の静と動、そして動き出す、陸自の誇るむやみな高速武装車90式戦車!舗装をかみ砕く履帯の描写が流石。メカがきちんと描けているのに、メカフェチ的な雰囲気を感じない所に、シーン描写の練り込まれた凄さを感じました。

そしてきちっとツボを押さえた演出が。シブい描写にいきなり割り込む、いつもの神楽のノリ。妙な具合に吹っ飛ぶ姫萩。そつなく挿入された”日本海の不審船”ネタ。ファミレスのバイトの子(…万猫…)を騙す蘭東、先輩に駆り出されながら男屋の新刊きっちりGETしている高見ちゃん、そしてエラソで、そして蛇のような目。入江の眼鏡の奥。

綾金に550キロトン核!「GEOBREEDERS」やっぱこれがなくちゃ。


「TRIGUN MUXIMUM」迫力の見開き!ちょっと凄いです。そーして(やっと)出る出るあのボケボケ二人組。最近ハードな話が続き、描いていて辛くはないのでしょうか等といらん世話なのですが、少し安心。


「コミックマスターJ」無様ポイントがツボ。「妖の寄る家」宇河弘樹の絵柄は毎度ながら良いっス。雰囲気も良。「Silent kitchien」犬上すくねも良。「ブルヴァール」今月はなんだか良い感じ。何故だろ。「だいらんど」は凄いクライマックスになりそう。「夜の燈火と日向のにおい」も今月なんか良い感じ。サービス扉はそのなんというか…

大石まさる二本立て、これはゴージャスです。今月はボリューム感じました。

「S.M.H Vol,14」
出版社:
ホビージャパン
分類:
趣味,雑誌

「漁師の角度」も「旅行惑星」も、来号あたりでラストらしく、何やら風雲急を告げています。雑誌の雰囲気、どうなってしまうんだろ。

しかし、ま、今号は「こうきしん」沓澤龍一郎が載っていたんで、幸せ。

サイバーパンクの気骨を感じるストレートな短編です。お話は、(サイバーパンク的には)古典的なものなのですが、あらゆるティティール、スタンス、そして最後のセリフの重さが素晴らしいです。

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