パーティの狂騒は、階間の反感を少しづつ育んでいた。高層マンションの新しい住人たちは、その場所に満足げに振る舞いながら、更に正しい振る舞いへと適応しようとしていた。
環境が社会構造に及ぼす影響について指摘を行った、先鋭的なSFです。それと同時に、全く異質な、ダークファンタジーでもあります。
影響がどのようなものになるか、その点ちゃんとした考察は皆無です。しかし、代わりに驚異的な幻視の力で、高層マンションが混沌の王国と化す、その過程を、説き伏せる筆力で描ききっています。原始的と言うのも、悪夢的と言うのも当たらない、異質な社会の様相。高度なファンタジーです。
圧倒的な生命力を持つ植物が、地上のありとあらゆるものを滅ぼした年、人類はもはやごく少数にまで減少していた。根を抜き、薬を撒き、切り倒しても、すぐに再び生えてきて数ヶ月で通常の樹木のサイズを超えるそれは、地上を覆い尽くしていた。
生き残った人類は、最後の畑地を放棄し、植物たちのなかで暮らすことを選択する。ネズミたちとニッチを奪い合う人類。それは”播種者”の眼には、いや、我々から見ても、害獣と呼ばれるものだった。
救いゼロ。静かに圧迫され、善い事も愚かな行為も全て空しく、誇りもまた空しく。
SFの持つ真の力の一端を垣間見せる名作です。この感情を知るためにだけでも、読む価値はあります。
えらく楽観的で無根拠なイロイロが詰まった、スペースコロニーについての子供向けの本です。書かれたのは1978年。福岡の巨大古書店で、きまぐれにGET。
いやー、めっちゃ無根拠で、笑っちまいそうになる本です。
宇宙植民地-スペースコロニーは、恐らくスピン衛星と橋梁建築の合いの子になるでしょう。スピン軸は潮汐力で月を向くか、それとも南北方向で固定するか、どちらにせよ太陽のほうに向きつづける、なんてことはありえません。スピンで側面をまんべんなく陽光であぶって、熱的に安定をとります。
コロニーの外見は、寸の詰まった茶筒です。スピン安定の問題から、細長いソーセージのような島三号はありえません。外壁は炭素繊維強化の燒結コンクリート製で、ブロック式のその内部に、断熱材とステンレスの気密壁があります。
鏡面で陽光を導入するのは、ミラーのアルミ蒸着面が高エネルギー原子核で叩かれて曇るのと、ガラスもまた黒く曇るので、大却下です。環境光は蛍光灯でしょう。緑いっぱいの屋外など問題外です。それは都心に平屋建てを建てるようなものです。居住空間の雰囲気は、床の湾曲した大型建築物のそれでしょう。
多層になった床面のかなりの面積を、生命維持システムが占め、食料生産を兼ねた生物系と、再生型化学処理系が平行に稼動し、短期的な人口変化等に対して柔軟性を持つようにします。径500m×奥行き860m、最大収容人口60000人の規模で、作付け面積は1600ヘクタール程度、毎日およそ65トンの二酸化炭素を固定します。
多種のガス、液体のバッファとして、巨大な水タンクが海洋を模倣します。動物性たんぱく質を供給する食用水中生物飼育用の池が、水タンクに慎重に接続されることでしょう。
基本的に脆弱な環境を支えるため、住人は広範囲に及ぶ管理システムの元に置かれます。軽はずみな行動一つが、全てを破滅させかねないからです。そして恐らく、最初のコロニーの寿命は、50年以内でしょう。
というのが、1999年現在の私の予想です。夢が壊れましたか?でも、私は時々、夢に見るのです。月の出からきっちり4時間遅れで昇ってくる明るい星、L5コロニーの姿を。
ロケット、それもH-Iの写真集です。
いいです。大判の、見開きの、写真がバーン、と。クリーンブース内の架台に固定されたMB-3エンジン、角田のLE-5、朝の射場、そして、昏い蒼空を背景に補助ブースターを切り離すロケットと、その後ろに環をつくるブースター。
写真集の枠から逸脱し、宇宙開発解説本になっている部分は、監修の宇宙開発事業団の意向か、それとも愛のなせる業か。かなり貴重な一冊です。
白いペンのような細身のロケットはその後、遥かに大きく、強力な、だが冴えないオレンジと白のロケットにとって代わられ、そして更に、大きくシンプルな新型機への世代交代が秒読みに入っています。
しかし、そのハードウェアとプロセスの魅力は、実のところ全く減じていません。六月にあったH-IIAのGTV試験のデジカメ写真、見る機会があったのですが、カッコイイです。ロケットというハードウェアは化け物です。
新たな写真集を期待したいものです。
海中ハビタット実験の、1984年までの総括と言っても良い、非常にこなれた書かれ方をした好著です。但し訳文はかなり凄いことになっています。自動翻訳ソフトも捨てたもんじゃありません。
海中ハビタット実験が下火となった現在、宇宙開発の今日と重ね合わせると、非常に示唆に富んだ内容であると言えます。また、有人宇宙機に対しても、考察を与えるものが多い内容です。
結局人類は、その早期の試みにおいて、海中に橋頭保を築くことができませんでした。
よく似ていながら違う道を進む宇宙開発との、その違いはどこから来たのでしょうか。理由は色々と挙げられるでしょう。巨大国家プロジェクトにならなかった、商業的に魅力が無かった、補給が頻繁に必要だった、運用にお金が必要だった…
海中居住。それは有人宇宙ステーションよりも技術的には容易だった筈です。また、資源もすぐそこにあります。海の底に小屋があるというだけで、随分と行動範囲が広がるのではないでしょうか。
個人的な感想としては、再生式の安定した脱二酸化炭素装置と、自給用の電源さえ確保できれば、長期的な支援の元に、完成度の高いハビタットをつくり上げる事ができると思います。そして人間の海中作業時間を飛躍的に向上させることができるだろうと。
再び海底に挑む日を、待ち望みます。
創刊10周年記念号です。もう随分と買っている雑誌ですが、肝心のプログラミングのほうは、私はまだまだ修行が必要。
そういえば、確か、雑誌付録にCD-ROMを付けたのも、FDDをつけたのも、この雑誌が最初でなかったかと思います。TeXのインストールに難渋したっけ。私がLinuxを知ったのは、創刊五周年記念号のCD-ROMの内容からでした。当時は98ユーザだったのでFreeBSDにしか目が行かなかったのですが、この雑誌はそういう点、目先がきいています。…DVD-ROM、期待してたのに。
Cマガの良いところは、例えばウェーブレットのような難しい話題でも、ソースをみながら試してみることができる、敷居の低い自作派のためのライブラリとして機能する点でしょう。圧縮やファイルフォーマットの記事など、非常に役に立ちました。
過去の特集、たとえばyaccの記事がpdfで収録されていて、これがかなり面白いです。これがあれば構文解析もラクラク?生成文法?チョムスキー?
そして、今号のひそかなオススメは、IBMの音声認識コンポーネント、ViaVoiceのSDKが収録されている点です。早速入れてみました。うわー色々あるけど、どうしたらいいんだろ。
いつもは、特集の題名が大仰で、中身が薄くて高踏している感じのこの雑誌、買う気がしないのですが、新連載「目指せ!電波系ニンゲン」でなんとなく購入。何故かリモセンの話でした。
でもやっぱプログラマーとして、実装べったりではなく、たまには高踏的な気分にも浸らないと。時々目を通すといい感じの雑誌です。ただしやっぱり中身薄し。
ちなみに、特集には取り上げられていませんでしたが、PC-9801互換機エミュレータ「anex86」シェアウェア(\1000)ですが、非常に完成度高いです。オススメします。
「ウィンガルが二つあったら」
「ツインガルにします」
つまりはそういうことだ!冒険せよ男のコ!コジャレよ絵柄!有って無きが如くのストーリィも遂に第二巻、でも良いんです、絵柄好きですから。
しかし…ウィンガルって…再放送しないかなぁガリアン。
大石まさるの二冊目の単行本です。一冊目は別ペンネームで最近出たばかり。
いわゆる”はぁとうおーみんぐ”な短編集です。甘ったるい癒し系が揃いもそろって、全部が全部。
私、駄目なんです。ヒーリング系は。こういうの見る度に、キチガイ戦車で蹂躙してやりたくなります。黒コートの下に銃身切ったショットガン隠して、監視カメラを撃ち抜きたくなります。両手にトカレフ構えて、調子の狂った歌をうたいたくなります。
まぁ普段は、世間は充分に渋いし、読むものも渋いものばかりなので、平和の歌をうたい、軍縮と連帯を論じ、眼鏡っコに萌えているのですが、ヒーリング系には精神が即座に防衛線を張ります。そこへ逃げ込まないように。どうせアタマしか入らない隠れ家なのです。
レトロフューチャーなんて嫌いなんです。甘いファンタジーだということを受け入れていないから。ビニールの切れ端も護岸工事のされた枯れた小川も見当たらない、豊かな自然も嘘でしかないし、感傷など何の足しにもなりはしない。心の拠り所は、代償を払って築くものです。
でも…雰囲気、絵柄は好きなんです。上記のような奴は思想ですから、これを読んでおられる方は、気にしないで読んでいただきたい。雰囲気は良いです。多分、気に入る人も多いでしょう。
ナベシン監督を震え上がらせた福岡ローカル暗黒ギャグ漫画、遂に第五巻!
怖くて怖くてたまらないアニメ放送ももうすぐ、ええいダイエー優勝したんだからTVQで放送しろ!と愛郷心むき出して叫ばせていただきます。
手に取ると、ちょっと薄め。そのうえ、随分と加筆アリ。アニメ放映前に狙いすました目論見がひしひしと伝わる一冊です。お話の方は、ずいぶんと展開があり、新キャラも登場&爆発で退場&ロリ化して再登場。だがしかし、肝心の主人公エクセルたちの周囲は、まったくいつもの通り、いつもの空回りっぷり。
えんえんと、バイト暮らしや公務員勤めのヤングライフを描いていたこの作品も、どうやら何かの山場を迎えたようです。
ちなみに、番外編の冒頭のセリフは、ダンバインの冒頭ナレーションが元ネタです。ヨカトピアとは、以前そんな名前の地方博があったんです。百道の海浜の方は、そのときに造成された訳で、変な塔もそのまんま立っています。ヒゲの方は…
表紙はアニメ化直前って事で調子に乗ってピンクる「エクセル・サーガ」、TV第4話「ラブへな」…黒田洋介&倉田英之氏、流石です。ハッちゃんはちゃんと血を流すらしいし。
お話は久しぶりにヤバげなバイト話。最近パワーが落ちたとの評価もありますが、ロボットの涙と太郎さんで、充分そこらへんの漫画より水準の高いところを見せていると思います。
今月はイイ感じでした「TRIGUN MAXIMUM」"村"は"ホーム"-地球-へと通信を試みていた。もう百年近くも。酷薄な惑星に生きる人々の、明日へのか細い希望。
根がSFモノなのと、久しぶりにおちゃめシーンを拝めたのと、ナイヴスのどアップにしびれたのと。幸せ。ナイヴス仮面は取ったのか。
ただ、通信受信のタイミングが都合良すぎて、とってつけたようで、その点が残念です。
今月も多彩ぶりを見せつける宇河弘樹「猫に憑く血」良い絵、良い構成ッす。先月には及ばないにしても、ハイレベルであることには変わりありません。
花見沢Q太郎「二年C組一徹先生」ガンバリ学園…イスラエル商会…まつりナリ。イイッス。大石まさる「海の民クレハ」連載なるかならないか不明なれど、あの舟、エンジン付きに見えるけど、発動機はどこ?犬上すくね「イヌと上手につき合う方法」え、ページこれだけ?眼鏡これだけ?
そして「GEOBREEDERS」実は冒頭ひとコマめ、一瞬、ほんの一瞬だけジオブリに見えませんでした。あと、まやの頭身があがった気が。
夕の一発芸は予想通りの結果に。梅崎の一発芸はそりゃ違うという気が。問題は蘭東と田波の一発芸。多分、このエピソードで新境地を拓いてくれることでしょう。
という訳で神楽が巻き込まれたのは市街戦。爆発、銃撃、暴走するトラックと雲霞のように群がるパトカー。移動する戦場が差し掛かるのは、堀日駅周辺。実は去年の綾金旅行で、その辺りを歩き回ったので、なんだか背景に見覚えがあるような。