ボード空戦ゲームは今も生きているか?(98/01/28)
ボードシミュレーションウォーゲームの中で、空戦ゲームはやはり特殊な位置にあったと思います。飛行機というメカニカルな物をシミュレーションするという点、3次元空間での戦闘である点等です。
ボードゲームという制約の中で空戦の魅力を再現するのは非常に難しいと思いますが、それだけに過去に登場した空戦ゲームはどれも不思議な説得力に溢れていました。「リヒトホーフェン」や「エア・フォース」に夢中になり、「エア・ウォー」の詳細なルールに酔いしれた私でしたが、それもパソコン/ビデオゲーム機の登場により終わりを告げます。
空戦ゲームに最も求める物、それは「実際に飛んでいる様な気分になれる」事です。いくらボード空戦ゲームがリアル/詳細になったとしても、ビデオゲームの持つリアルさには到底追いつけません。未だにボードシミュレーションにこだわる私でも、今ボードで空戦ゲームを行う意味は殆ど無いと思います。
しかし、その考えを一気に変えるゲームに出会いました。
「DOWN IN FLAMESシリーズ」
1993年初版なので、決して新しいゲームでは無いのですが、十分すぎるほど楽しめる空戦”カード”ゲームです。GMT GAMES社より、シリーズ1作目の「THE RISE OF THE LUFTWAFFE」と続編の「EIGHTH AIR FOECE」が発売されています。第二次大戦のヨーロッパ戦線が舞台で、EIGHTH〜にはMe262やKometといったジェット戦闘機も含まれています。
トランプの様な一組の”行動カード”と1機単位の”飛行機カード”。その他キャンペーンゲームで用いるミッションカード等が含まれます。
自分の飛ばしたい機種の飛行機カードを選び、自分の前に並べます。各飛行機はその性能(飛行機カードに記述されている)に応じた枚数の手札を、行動カードの山札から引きます。
1機ずつ順番にその手札からカードをプレイし、敵機に攻撃を仕掛けます。行動カードには機動(旋回、上昇下降等)と射撃(機銃発射)、攻撃への反応(ロール、ターン等)などがあります。機動カードで相手より有利な位置へ遷移し(このゲームはゲーム盤が無いので、相手との相対位置が中立/有利/追尾と変わるだけです)、機銃で攻撃(機銃のカードには相手に与えるダメージが書かれています)する訳です。この時攻撃を受けている側も反応カード(回避行動に相当)を出せば、相手の出したカードを無効化できます(MTGのインタラプトみたいな物)。反応カードには反応カードで応戦できるので、いかにも追いつ追われつの空戦が行われている様な気分になります。
例えば、
A「Maneuveringでケツに回り込むぞ!」
B「やらせるか!、Tight Turnで振り切ってやる!」
A「なにを!こちれもScissorsで喰らい付いて行くぞ」
B「くそう、振りきれん!」
A「よし、ここで3ダメージの機銃をお見舞いするぜ」
B「エースパイロット!!!(神業的操縦を表すカード、全ての攻撃カードに有効)」
A「嘘ぉ〜!!」
機種毎に手札枚数の上限が違います。これは主に手札の枚数が飛行機の速度を反映している為です。速度的に優れた機種はそれだけ機動できる余地が有るのです。自分の手番の終わりに新たに手札を引けますが、1回に引ける手札の枚数も機種毎に違います。これはその機種のエンジンパワーを表しています。たったこれだけの事で、飛行機の特性を何と的確に表している事でしょうか。現在の手札枚数はすなわち、現在速度を表していると言えます。激しく機動を行えば(手札を消費すれば)それだけ速度を失う事になります。ここでエンジンパワーがある機種なら失った速度(手札)を速やかに取り戻せるでしょう。しかし、いくら性能が優れた機種でも手札を使い切ってしまったら(失速状態だ!)容易に敵につけ込まれてしまいます。もちろん相手側も、絶好のチャンスに機銃カードが回ってこないという場合もあります。また、反応カードの存在は、空戦の”同時性”も良く再現しています。
旧来の空戦ゲームが六角形のマス目上で飛行機の位置を表していたのに比べ、このゲームでは飛行機相互の位置関係が極めて抽象化されてます(高度に至っては”高い””低い””中くらい”しか無い!)。しかしこれは「何もない空の上」という戦場の特性を良く表している様な気がします。何メートル進んだか、どれくらいの角度旋回したかなどと言う情報はドッグファイトの真っ最中にはどうでも良い事で、「今俺はピンチなのかチャンスなのか、勲章が目の前なのか棺桶に片足突っ込んでいるのか」と言う雰囲気をクローズアップしたこのシステムは傑作だと思います!。
カードゲームのテンポの良さもあって、本当にリアルタイムで戦闘をしている気分になれます。ビデオゲームとは全く異なるアプローチながら、いや全く異なるアプローチだからこそ成功しているゲームだと感じました。
優れたゲームですが、欠点もあります。まず、海外ゲームの例に漏れずコンポーネントがお粗末です。行動カードは裁断がズレてたり、印刷色が微妙に違ったり(カード覚えられるじゃねえか!(^^;)してます。2セット手にする機会があったのですが、1セットは行動/飛行機カード共に欠落がありました(その上重複カードが入っていて、なおかつ全体の枚数はやはり狂っていた(笑))。輸入品ですので購入時は注意が必要です・・・といっても注意のしようが無いですね(^^;。
また、カード枚数が飛行機性能に連動している為、各機種の性能差はかなり大ざっぱです。個々の飛行機特徴の詳細なシミュレーションを求める向きには適しません(それでもゲームにはかなりの機種が含まれてますが)。
ルールブックは比較的平易に書かれているので、英文が苦手な方でも何とかなると思います。国内ではTHE RISE OF THE LUFTWAFFEについては和訳ルール付きの物が手に入る様です。飛行機テーマのゲームに興味のある方は是非お試しあれ(^^)/。
空戦ボードゲームあれこれ
多分この辺がボード空戦ゲームの最初なんだろうと思います。第一次大戦の複葉機の戦いを扱ったゲームです。コマ1つが1機の飛行機を表していて、それをゲーム盤上で敵味方交互に動かしながら(すなわち”飛び”ながら)相手の撃墜を狙います。このゲームでは飛行機自体のコマ以外に、飛行機の計器板に対応するメーターコマが用意されていて、記録紙上で高度コマや速度コマを動かしながら機体を操作するのが何ともリアルに感じられたものです。
しかしこのゲームは基本的に敵味方が”交互に”移動するため、色々不可解な事も起こります。敵の背後を取った次の瞬間には敵は真後ろにいる(^^;。敵側が動いている間、自分の飛行機はじっと止まったまま何をしてるんだろう?という疑問ですね。この辺がリヒトホーフェンのシミュレーションの限界だった訳です。本文に戻る
第二次大戦中の航空戦を扱ったゲーム。エキスパンションのセットも含めると二次大戦の全期間/戦域での空戦が行えるデータの豊富さが魅力でした。交互移動での不合理を排除する為に、プロット用紙にあらかじめ記入した行動を敵味方同時に実行するシステムなので、お互いの動きを読み合う側面もあります。しかし逆に、相手の動きにが直接分からない為に、突拍子もない行動も結構発生します。本文に戻る
第一次大戦の空戦ゲーム。プロット移動ながら、優秀なパイロットは相手の動きに対応した機動ができる”エース移動”システムが特徴。私はこのシステムは何か作為的な感じがして、それほど好きでは無いです。登場機種が豊富なのは◎です。本文に戻る
ジェット機時代の空戦を再現するトンデモないゲーム。飛ぶだけでも30ページ以上のルールを読破せねばならず、ミサイル等のルールを含めると50ページ分のルールが必要となる(これで終わりではなく、80ページ読めば射出脱出も出来るようになるぞ(^^;)。もう極限まで詳細なシミュレーションが実現されており、確かにプレイヤーを唸らさずにはおかないゲームです。しかし、そのプレイアビリティー(遊び易さ)はそれだけ低く、ゲーム盤を1周(1回の旋回)しただけで日が暮れてしまうというシロモノ。ボードシミュレーションの一つの頂点でしょう。本文に戻る
飛行機個々の性能を掘り下げるのではなく、その戦闘戦術のシミュレーションを重視したゲーム。飛行機は基本的に交互移動です。結構良いゲームなんですが・・・地味。本文に戻る
超変わり種空戦ゲーム。ゲーム盤もコマもサイコロも無く、あるのは2冊の本だけ。本を開くと自機と敵機の様々な位置関係が絵で示されており、お互いの機動(旋回とか直進とか)の結果、新たに指示されたページに進むという物。上手く機動を行い「敵の背後に付いて機銃をバリバリ発射しているページ」が出てくれば、相手にダメージを与えたことになります。非常に優れたアイデアのゲームですが、1対1のドッグファイトしか行えない事、時々「ゲーム上何が起こっているのか分からなくなる」事があるのが難点。本文に戻る
ミサイルが無限に発射出来たり・・・。ビデオゲームのリアルさとボードゲームの求めたリアルさとは、微妙にベクトルがズレているんですよね(^^;。本文に戻る
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