最近の出来事(7月12日更新)


バックナンバー [ 96年 | 97年前半 | 97年後半 | 98年 ]


広島市は、何故ライトアップなのか?
光害から夜を取り戻す為に力を貸して下さい
関西デザインライン講演会− 「星空の楽しみ方と手作り望遠鏡」
FAQ:光害とエネルギーの無駄について
照明調査−横浜(その3):変わりつつある 横浜市の照明
米国ツーソン市の天文活動を救う
天文雑誌に光害特集
高齢化と眩しさ
光害の原因と光の角度について
しし座流星と照明改善
第一回 SAFE Nights 10月21日(米国の活動)
塩尻市の子供達が星空眺め光害調査
日本道路公団との話し合い

[ Home | スマートライト | 最近の出来事 | 光害対策 | IDAインフォメーション ]
[
リンク | わか天 ]



広島市は、何故ライ トアップなのか?

広島市のホームページに2000-2001年記念事業として夜間のライトアップが計 画されています。なぜ今ライトアップなのでしょうか?
アメリカやイタリアをはじめとする諸外国では、ライトアップを含めた夜間照 明が作り出す環境の破壊や、生態系への影響、エネルギーの無駄等の反省から、 多くの市町村や州で照明条例や光害防止条例の制定が進んでいます。その様子 は国際ダークスカイ協会のホームページから知ることが出来ます。 IDAホームページ:http://www.darksky.org/ida/index.html

これらの条例では、夜間の快適で安全な生活を保証しながら、必要な時、必要 な場所だけを照明することを前提に照明の改善を推し進めているものです。膨 大なエネルギーの浪費の一部でもある過剰な夜間照明の反省もあり、むしろ行 政が主導のライトアップを中止したり、特定の日(祝日や記念日)に時間を決 めて行うなど、照明の改善や使い方の見直しが始まっているのです。

省エネの立場からも、アイドリングストップや待機電力の削減など小さな、努 力も始まっています。ライトアップの実施は、企業や商業施設等、民間への影 響も大きく、省エネという観点から行政が主体となる事は、大きな矛盾を生む ものです。

広島市に求められているのは、見せ掛けだけのライトアップなのでしょうか? 広島市が世界の平和の象徴であるように、求められているのは、外見ではない 心のライトアップだと思います。市民一人一人の、そして地球市民の心を明る くライトアップする事ではないでしょうか。このような心のライトアップは、 教育の改革や、失われた豊かな自然を取り戻すこと、文化の交流などを通して 世界の一員として地球環境の保護を推し進めることにあると思います。
全ての地球市民に求められているのは、1992年にブラジルの地球環境サミ ットで提唱された「持続可能な発展」を課題とすることです。広島市に残る美 しい自然、大切な資源を次の世代に引き継ぐための明確な努力であるとも思い ます。

正しい照明文化のあり方、屋外照明の持つエネルギーの問題、眩しさに代表さ れる障害光や漏れ光の問題、夜間照明が起こす生態系への影響、環境の問題等 を再検討し、ライトアップ事業の見直しが必要だと思います。

広島市や広島市長へ意見を送ることが出来ます。あなたの声を広島市へ是非送 って下さい。

2000年7月12日


光害から夜を取り戻す為に力 を貸して下さい

ホームページにIDA会長のDavid Crawford氏が執筆した、「光害から夜を取り 戻す為に力を貸してください」を追加しました。次のURLをご覧ください。

http://www2a.biglobe.ne.jp/~wakaba/lp.htm 3月20日


関西デザインライン講演会− 「星空の楽しみ方と手作り望遠鏡」

3月14日に大阪INAXホールで開催された関西デザインライン講演会で、奈 良県の天文家高垣禎夫さんが「星空の楽しみ方と手作り望遠鏡」と題した講演 を行いました。毎月行われているこのイベントは、関西の建築関係やデザイナ ー関係、そして業界の勉強のために来日している外国の方々約80名がメンバ ーです。今回参加された方は10名と少なかった様ですが、下記の幅広い内容 で講演され、天文普及と同時に照明改善についての成果をあげられました。

1.自己紹介(ビデオ上映3分を含む)
2.なぜ街では、星が見えないの?(OHPによる星空と障害光の紹介)
  .人工衛星から見た夜間の日本の姿
  .過剰な照明、無駄な照明がある!(屋外照明は年間2000億円の無駄
   がある)
  .良好な夜間照明と星空は両立する。(子供たちのために星空を残そう!)
3.夜空を飾る天体たち(プレゼンボードによる天体紹介)
4.獅子座流星群(LEONIS)ビデオ上映(半分程度に短縮上映)
5.メシエ天体ビデオ上映(1時間ビデオでを20分程度上映)
6.月、土星、木星の画像ビデオ上映(カラー画像約10分くらい)
7.星空を楽しむ方法
8.望遠鏡を作ってみよう!(Telescope making)
9.天体観望会(star party)に出かけよう!

講演の内容の2番目は、高垣さんの発案で追加され、建築関係者の前で、光害 と照明の問題について話されています。資料は、星空を守る会とIDAの資料を 使いました。光害の原因は、漏れ光や障害光のある屋外照明にあるとし、良好 照明(フルカットオフ型)を使うことで、これが改善出来ることを建築関係者 に対して説明されたことは、非常に有意義であったと思います。参加者も熱心 に聴講していました。
天文家が中心になって、照明の設置・設計に直接関わる建築関係者に対して光 害の問題を訴える非常に効果的な活動です。
高垣さんに感謝します。どうもご苦労さまでした。

3月16日


FAQ:光害とエネルギーの無駄について

光害、漏れ光、障害光(ギラギラや眩しさ)等の原因になっている屋外照明は、 同時に大きなエネルギーの無駄も発生させていることが指摘され始めました。 光害などの環境問題に関心ある人達が、屋外照明改善を提案するとき、費用の 無駄について質問を受ける事があります。
日本での統計には、整理されたものがありませんから、米国の資料を元に回答 を作ってみました。参考にして下さい。

質問−1
>無駄な光を電力単価(?)に換算した額とその根拠。どこの試
>算によるものかも教えてください。

控え目な数字として、照明に使われている費用の30%が無駄になっていると 考えられています。
まず米国で試算されている無駄な費用を、国際ダークスカイ協会(IDA)では、 約20億ドル($2billion)としています。この根拠については、次のホームペー ジで紹介されています。

http://www.ebuild.com/Archives/Features/NightLight/NightLight.html

この記事は、Environmental Building Newsと言う業界誌のものです。記事の中 に次の様に書いてあります;
「1990年の街路照明の消費電力は、年間15テラワットh(TWh)、また、商業 用の屋外照明62TWh、合計77TWhで米国の総電力使用量515TWhの15%に相 当する。もし、屋外照明の30%が無駄になっていると仮定すれば、(この仮定 は非常にひかえめなものです)23TWhの電力が無駄になっている。1kWh当 たり8セントのコストを考えれば、無駄な費用額は、$1.8billionとなる。」

更に同誌では、これはひかえめな数字であり、かなりの屋内照明も光害に貢献 していること、また30%の無駄というのも実際はひかえめなものであり、$2billion がより現実的数値と結論しています。

次にこれを我が国に当てはめてみると、人口が米国の約半分、電力コストが約 3倍ですから、同様に見て「年間約2000億円以上」の無駄と考えて良いと 思います。星空を守る会−横浜、IDA日本セクションでもこの数字を使い、色 々なインタビューの場で答えています。

質問−2
>ほかにも試算があれば教えてください。

人工衛星から測定した、宇宙に放出されている光の費用が約200億円になる という調査結果があります。この宇宙に消えて行く光と、上記の2000億円 を比較すると約10倍の光が大気の中で光害の原因になったり、住宅の壁や樹 木を照明するために使われていることが分かります。
人工衛星で撮影した光以外に、衛星では、検出されない、膨大なエネルギーが あることが分かります。

質問−3
>市町村では、どの位の費用の無駄になっているのでしょう。

例えば、人口が330万人の横浜市では、年間約50億円の費用の無駄がある と考えられます。市町村自体が管理している屋外照明についても、その約30 %が無駄になっていると考えられます。

質問−4
>屋内照明の無駄を試算した例はありますか?

やはりアメリカの統計(EPA:米国環境保全省)によれば、約186億ドルの無 駄があると推定されています。我が国でも同様の金額が無駄になっていると考 えて良いと思います。つまりおおよそ2兆円の無駄があると推定できます。

1月21日


照明の調査−横浜市(その3) :変わりつつある横浜市の照明文化

横浜市の照明調査(その3)を実施し、その結果を次のホームページに掲載し ました。ご覧ください。

http://www2a.biglobe.ne.jp/~wakaba/local32.htm

今回は、横浜市でも増え続けている良質な照明器具、フルカットオフ照明に焦 点をあてています。実際にこれらの良質な照明の近くを歩いたり、車で通る事 でその特徴を知ることが出来ますした。
特に車を運転中の「安心感」は、レンズを使った道路灯や、光源が直接見える デザイン灯の場合とは、比較にならないほど大きく、運転中に前方の路上に集 中できます。
歩道上でも、光源が見えない照明の快適さ、良好な環境、視認性の向上は、強 調して置きたいと思います。眩しさが無く、照明器具が設置してあることに気 付かないにもかかわらず、光が必要な路上は、十分な照明がなされています。

フルカットオフ照明器具の特徴は、レンズの変わりに平面ガラスを使っている 事です。レンズが無いため、広い範囲への配光が難しいといわれていますが、 ランプをガラスに出来るだけ近づけ、適切な反射板を使い、レンズを使うと同 等の配光特性を得ることが出来ています。

デザイン灯と呼ばれる照明器具のフルカットオフ化を横浜市や、横須賀市の様 な環境に関心のある市町村が率先して行うことが望まれます。

高速道路や、幹線の道路灯として、日本ではフルカットオフ器具の使用例はま だ無いと思いますが、米国では、標準道路灯の一つになりつつあります。特に GE社が力を入れて製品化しているのと同時に、米国照明学会が新しいフルカ ットオフの基準作成も始めています。 スマートライト事務局では、GE社のカタログを手に入れ、詳細を報告したい と計画しています。

2月13日


米国ツーソン市の天文活動を救う

天文家及び星空を愛する全ての方へ

米国ツーソンの天文活動を救うために、ご協力お願いします。
インターネット上で下記のホームページを開き、請願書式に名前と組織名を記 入するだけの簡単な事ですので多くの方の参加をお願いします。

http://www.treefort.org/~sykes/

本ページを開いて、右下の書式がツーソン市以外の方の為の請願書式です。

ツーソン市には、複数ミラー望遠鏡が予定され、Fred Lawrence Whipple天文台 など沢山の天文施設があります。同市Pima郡にあるCanoa放牧地を$6.4Mで 買ったFairfield Homes社は、これらの施設に関連する天文家達(Harvard, SAO, USNO)がPima郡の土地利用規制に対して、不当な意見を提出し、Fairfield Homes 社に損害をあたえているとし、裁判に掛けると訴えています。

これに対抗して、アリゾナ大学が主体で、上に述べたツーソンの天文活動を救 う請願書への参加を募っています。ツーソン市以外からも参加可能です。

ご存じの如く、ツーソン市は、IDAの活動の出発点でもあり、世界の天文家に 取って大変重要な場所でもあります。積極的な参加をお願いします。

請願の趣旨を要約しておきます。

「私たちは、ツーソンの天文家の権利を支持し、彼らの所属する研究施設が政 府代表に科学的な情報を提供し、ツーソン地域の天文の将来を守る努力をする 事を支持する。私たちは、脅迫によって、彼らの発言を阻止しようとする誰を も非難する。」

1月8日


天文雑誌に光害特集

星空を守る会−横浜(代表:内田)のメールアドレスが新しくなりました。 新しいアドレスは;suchida@mvc.biglobe.ne.jp
です。メールの送信には、アドレスの確認を今一度お願いします。

天文雑誌に光害特集

月刊天文雑誌スカイウオッチャー二月号に光害特集が組まれています。特集の 執筆を「星空を守る会−横浜」が担当し、光害を星空を守ることだけではなく、 エネルギーと障害光の問題とし、地球市民共通の課題として分かり易く説明し ています。
光害活動を国際的に進めるIDA国際ダークスカイ協会David Crawford博士も本 特集へ寄稿しており、国際的にも「光の害」を防止する運動が,現在世界各地 で爆発的に広がっていることを紹介し、私たち自身が活動を支援し、行動しな ければいけないことを述べています。是非お読みいただき、光害に関する正し い知識と具体的な活動に役立てて下さい。
本特集は、三月号でも続き、国立天文台の磯部博士が執筆を担当します。

天文誌スカイウオッチャー誌は、ほとんどの書店で購入が可能です。
発行は、株式会社立風書房、編集室は、株式会社アストロアーツが担当してい ます。株式会社アストロアーツのホームページは;http://www.astroarts.co.jp
電子メールは;skywatcher@astroarts.co.jp

1月7日


高齢化と眩しさ

光害を防止することは、ギラギラや眩しさのないやさしい照明を実現すること につながります。つまり光害対策をする事と「快適な照明環境を作る」事は、 同じ事です。
年齢を重ねるにつれて、人間の目は、眩しさに極端に弱くなると言われていま す。専門的にも、「グレア源となる光原によって、著しく視機能が低下する」、 「視野内に輝度の高い光源や照明器具があると、高齢者は、若年層に比べて減 能グレアや不快グレアを強く感じる」と言う報告が上がっています。(電気設 備学会誌1997年No.3)これは、加齢につれて、目の組織の色々な欠陥が増え てくるが一つの原因です。
アメリカの例では、65から70歳を越えると、特に眩しさに弱くなり、夜間 の外出や運転に支障を来す報告があがっています。これは、決してアメリカだ けの問題ではありません。白内障を病んだある人の例で、目を手術し、人工の レンズに取り換えたあと視力が回復しても、決して夜は運転しないそうです。 夜間の眩しい照明(勿論適切に傘がついていない照明が原因です)がどんどん 増え、眩しくて、夜間の運転を諦めたという話を聞きました。
私たちも、眩しさや、ギラギラについて、もっと調査してみる必要があると思 います。身近な方で、もし、私たちの先輩であるシニアがおられれば、是非話 を聞いてみて下さい。情報をお待ちします。
屋内照明でも、屋外照明でも高輝度の光源や照明器具を視野内から除去するこ とによって不快グレアを防止することが重要です。眩しさを抑えたフルカット オフ(水平以上に光を出さない)照明器具を使う事が如何に大切かという事が 分かってきました。光害通信No.48で、水平以上に光を出さない照明器具は、 光害を防止するためにも必要な事を紹介しました。照明の改善は、高齢者の為 にも求められることです。

12月19日


光害の原因と光の角度について

Copy Right (c) 1998, Shigemi Uchida

人工照明から水平以上に出る光が、大気による散乱や吸収を受け、光害が起こ る事は、良く知られています。ただ、照明から全方向に出る光が同じように影 響しているわけではありません。その影響の程度には、光の出る角度が大きく 関係しています。
直感的には、照明から真っ直ぐ上(鉛直角180度−注参照)に向かう光が最も 影響すると理解され、その近辺の光を防ぐ事によって、光害の原因を無くせる と考えられるかもしれません。しかし、この考え方には、(1)光が通過する大 気の量に応じて光の減光(散乱と吸収)が起こる事及び、(2)光源から出る光 の量と角度の関係、さらには(3)実際に使われているランプから全方向に均一 な光束が出る訳では無いことが考慮されていません。
注:おもりをつけた糸が垂れ下がる方向を鉛直角ゼロ度とします。

まず、大気による光の減光は、恒星の光度がその星の位置(高度)によって影 響を受ける事で良く知られています。星が天頂にある時、最も明るく見え、高 度が下がるにつれて、減光し、地平付近では明るい星を除いてほとんど見えな くなります。大気による減光については、理科年表や天文年鑑に出ている、減 光量の表で求められます。実際には、天頂方向で起こる0.2等級に相当する減 光を考慮し、次の様になります。


高度    鉛直角  減光量(等級)  減光量(%)
90度 180度 0.0 + 0.2 17
45 135 0.09 + 0.2 24
30 120 0.23 + 0.2 33 |
20 110 0.45 + 0.2 45 |この30度の間
10 100 0.98 + 0.2 66 |に上方向光束の
5 95 1.67 + 0.2 82 |50%がでます。
2 92 3.1 + 0.2 95 |

上の表を地上に設置された照明器具から出る光にも適用することで、照明器具 から、真っ直ぐ上に出る光よりも低い角度で出る光の方が、より大きく大気の 散乱や吸収を受ける事が分かります。水平より20度で約50%、10度では 70%、5度では、約80%の光が大気による散乱と吸収を受けています。 30度以上の角度で出る光の2〜5倍も大きく光害に貢献している訳です。

次に、光源自体から出る光の量は、光源を点光源とすれば、鉛直角90〜120度 (高度では0〜30度)の30度の間に上方光束の50%、鉛直角120〜180度(同 30度〜90度)の60度の間に残りの50%の光束が出ます。このことからも、低 い角度で出る光が、さらに大きく光害の原因として影響することが理解できま す。

次に実際に照明に使われているHID光源は、理想的な点光源では無く、紡錘状 の細長い形しています。この紡錘状の光源が垂直に設置される照明器具では、 漏れ領域と呼ばれる鉛直角60〜120度の間に多くの光束が出ることを更に考慮 しなければなりません。

以上3点の事から、照明器具から水平より上に0〜20度(鉛直角90〜110度) 或いは、水平から上に30度(鉛直角120度)の近辺までに出る光束がそれよ り大きな角度で出る光束よりも、光害に大きな影響を出すことが理解できます。 勿論この角度で出る光束は、建物や樹木で遮蔽される事も考慮する必要があり ますが、それだけでは決して無視できない、理由がここにあるわけです。

そして、照明器具から低い角度で出る光は、遠くまで影響を及ぼします。角度 20度で出た光は、10km先で高度3.6kmに達し、10度の角度では20km 先で高度3.5kmと、ほぼ富士山の高さになります。都市にある膨大な数の屋 外照明から、低い角度で出る光の影響が遠くまで届く事が分かります。事実、 東京から遠く離れた富士山では、都心やその近郊の街の光芒が、地平から目で 確認出来るだけでも、30度以上まで観測できます。我が国で初めて照明条例 が施行された岡山県美星町でさえ、南東の空は、約20km離れている臨海工 業地帯の光害の影響を受けている事は否めません。つまり、「都市部の屋外照 明改善」、しかも低い角度で出る光の改善が必要であることも大変重要な点で す。
今、私たちの周りでは、頻繁に開発が行われ、屋外照明はまだまだ増えて行く 傾向にあると思います。これら新設の設備で適切に上方向を制御しない限り、 増えつづける屋外照明の中で、光害は、減少するどころか確実に増えて行きま す。
道路照明、街灯、安全灯、防犯灯、夜間灯などは、上方向に光を向ける必要は、 全くないこと、同時に上方向の光束を制限することによる、漏れ光や障害光の 低減に寄与するメリットが生まる事、適切に設計した効率の良い反射板の取り 付けにより、ランプ出力を小さくできるメリットも生まれてきます。この様に、 光害をその根本原因から良く理解し、対策を実施することは、同時に二重、三 重のメリットを生む事が分かるのでは無いでしょうか。まさに国際ダークスカ イ協会のDavid Crawford会長が述べるとおり、誰もが利を得るWin-Winを実 現するのです。そして誰もが実施しなければいけない事では無いでしょうか。

参考文献:
光害対策ガイドライン(環境庁)
電気設備学会誌1997年1月号
天文年鑑(誠文堂新光社)
Light and Color in the Outdoors (M.G.J. Minnaert, Springer)
Sky & Telescope 1996 November
ライティングハンドブック、オーム社

12月18日


しし座流星と照明改善

11月17日の深夜から18日朝にかけ、沢山の方が富士山2合目付 近にある水ヶ塚公園を訪れ、しし座流星を楽しんでいました。
富士山の空も光害の影響でかなり明るくなったとは言え、水ヶ塚で見 える天頂付近から西にかけては、天の川も見え、6等級に近い星が確 認出来ていました。そして特筆すべきは、公園の夜間照明がほとんど 消灯されていた事です。公園の入り口とトイレ付近の3本くらいのナ トリウム灯が点灯されているだけで、残りの照明が全て、駐車場だけ では無く、周囲の公園でも消灯されていました。
駐車場の周りにある広場では、沢山の人が寝転がって空を見上げてい るのが印象的でした。もしも照明が点灯されたままだったら、見上げ た視界に眩しい照明がありますから、とても流星を楽しむことは出来 なかったはずです。
また、富士山の近くで一番明るく光害の原因になっていた東名高速足 柄パーキングの照明が少し改善されている様でした。以前は、足柄か ら強く眩しい光が直接二合目付近まで届き、邪魔になっていたもので す。
さて、これらの照明の消灯や、眩しい光の改善に1人の天文家の力が あった事を知って下さい。粘り強く、公園を管理する静岡県と交渉し、 少なくとも登山シーズンが終わる11月からシーズンが再会する3月 まで、公園の照明を消灯することを訴えたからです。東名の照明につ いても、日本道路公団との数回にわたる交渉の結果、改善があったも のです。
この成果の鍵は、照明の改善を「エネルギーの無駄=税金の無駄使い」 と「眩しさの改善」、「ギラギラの無い快適な環境」と言う、誰もが 理解し、そして誰にも共通の問題として訴えた事にあります。登山の シーズンオフに誰も訪れない公園の夜間照明を消すことを提案したも のです。
星空の問題だけでは無く、照明の持つ多くの課題を正確に伝える事で 最後には、積極的な理解を得ることが出来たものです。
本人も、自分の力で改善した空の下で眺める星空、そして、しし座流 星を眺める事が出来たのは、本当に満足の行くものだったはずです。 同時に何千人もの人が同じように楽しんでもらえたことは、よりうれ しいことだったはずです。
誰もが理解し、誰もが得をする、的確な照明改善を通して光害を少な くする活動が沢山の場所で実る事に早くなるよう、彼は、流れ星にも 祈っていたようです。

11月18日


第一回SAFE Nights 10月21日(米国の活動)

アメリカで計画されているSAFE Nightsを紹介します。
我が国でも、光害と照明の改善に関心のある人が実行出来る内容です。 コミュニティの中で出来る小さな改善目標を定め、実践してみましょう。

第一回SAFE Nights 10月21日(米国の活動)

「責任ある照明をコミュニティにもたらす」
第一回の「星は誰の為にも:Stars Are For Everyone (SAFE)」の挑戦を10月 21日水曜日、ちょうどトーマス・エディソンが電球を発明した日に、祝う事 になります。
SAFE Nights の焦点は、私たち一人一人ががコミュニティの中で屋外照明を改 善するために、一つ簡単な目標を決め、それを年末までに達成することです。 SAFE Nightsは、Stephen James O'Mearaにより、発案され、Sky & Telescope誌 とIDAがスポンサーです。
例えば目標としては;

あなたの住まいの屋外照明を改善し、近所での良い実例を作る
会社の屋外照明がどの様に改善できるか、あなたの雇用主に提案する あなたの子供の学校で光害のプレゼンテーションを行う

ポイントは、あなたが立ち上がって一つの小さな目標を達成する事を通じ、意 識を広げると同時に変化を作り出せる事を示すことです。さあ、やってみまし ょう!成功の知らせをどうぞ連絡して下さい。

10月16日


塩尻市の子供達が星空眺め光害調査

塩尻の子供達の活動を紹介します。8月29日のNHK BSには、星空を守る会 会員が二人(塩尻市−百瀬氏、横浜市−内田)指導員として参加します。是非 ご覧下さい。

星空眺め光害調査(塩尻市民タイムス誌,8月13日)

街灯で星が見えなくなる「光害」について実態調査をした、塩尻市の塩尻児童 館の児童は、十一日夜、市内でライトダウン活動をし、市役所屋上で消灯前後 の星空の違いを観測した。世界の子どもたちが地球環境問題に取り組む姿を紹 介するテレビ番組「エコキッズ・第一回ぼくらにまかせて」(仮題)の撮影の 一環。この日で撮影を終えた。児童は、事前に、光害が星や動植物に与える影 響を勉強し、市街地の現状を調査。市内の事業所に観察日のライトダウンを呼 びかけてきた。
この日、市役所周辺の街灯のスイッチを自分たちで消し、屋上では児童代表が 大型店に「これから星を見るので、電気を消してください」と携帯電話で要請。 ライトが消えると「さっきより、星が増えた」と違いを確認する一方で「まだ 明るくて、少し物足りない」といった声も。
子どもたちは天の川や織り姫、ひこ星を観察した後、願い事の短冊をササに飾 った。「塩尻の町が今よりたくさん星が見えるようになりますように」「必要の ない光をなくし、光害のない塩尻市にしたい」など環境問題への思いを書いて いた。
同番組は二十九日午後九時−十時半、再放送は三十日午前九時−十時半、NH K衛星第一放送で放映される。

8月26日


日本道路公団との話し合い

東名高速道路の施設を管理する日本道路公団第一管理局を訪問し、足柄パーキ ング、横浜料金所などの照明について相談しました。照明施設を実際に設置し たり、保守する直接の部門であり、ここで貴重な意見交換が出来ました。

注:尚、今回の話し合いは東名高速道について、星空を守る会−横浜が参加し ました。中央道については、JHの第三管理局(八王子)が担当されています。 中央道の問題について話し合いを希望される場合、協力が出来ますのでご連絡 下さい。

簡単に報告します。

星空を守る会から意見提出;
(1)照明環境問題のプレゼンテーション実施:会員の作成したスライド、IDAの スライドを使い環境問題としての照明を説明
(2)照明調査報告:スライドにより会員が調査した東名高速道の照明の実態、改 良案を報告

意見交換;
良質な照明は次の三点を実現するものとして話し合いました;
「視認性の向上」−明るさは一つの選択肢でしかないこと、眩しさの低減、明 暗順応を考慮する必要があること、
「障害光の低減」−照明環境設計の必要性、域外への漏れ光の削減、光源が直 接見えない工夫
「省エネルギー」−効率化、交通量に応じた消灯・調光

特に、照明環境設計の必要性については、両者とも充分理解し合う事が出来ま した。明暗順応については、明るく照明されたPAや料金所を出る時点でドラ イバーが一時的に視力の低下が起こる(暗順応の遅れ)ことを主張し、JH側に 資料を渡しています。

日本道路公団の回答
東名「足柄パーキング」及び「横浜料金所」の照明については、漏れ光を少な くする検討を実施する。具体的には;
(1)投光器の方向を下げる
(2)ルーバーの取り付け
(3)器具の交換
などに付いて調査していただく事になりました。

その他
JHでも省エネ、障害光については、解決を模索しており、外部からの意見も貴 重であること。(色々な意見があるとの事です)器具、ランプ等の経済性、外 国メーカ(仕様、寿命、価格)との比較などについては、IDA日本セクションと して情報の提供が出来ること。
低圧ナトリウムに代わって、高圧ナトリウムの使用が検討されていること。こ れは、低照度の環境下では演色性の良い光源の方が視認性が向上することが分 かって来ているからです。これについては、IECの研究でもある照度以下では、 メタルハライドの方が演色性が良く、高圧ナトリウム等に比べ視認性が向上す る報告もあります。ただ天文家にとっては、高圧ナトリウムの使用は、写真撮 影に影響があり、問題は残ります。

8月16日


[ Home | スマートライト | 最近の出来事 | 光害対策 | IDAインフォメーション ]
[
リンク | わか天 ]


Last update: July 12, 2000