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February,6,2003

「SFマガジン 2003年3月号」
出版社:
早川書房
分類:
SF,雑誌

信念に殉じる者たちへ、祈りを。

神を信じていなくても構いません。彼等に言葉を届けるには、もう、祈るしかありません。


これを書いているPCのディレクトリの奥底に安置された、一つのイコン。

小犬と技術者。ペーパーバック版「The Rocket Men」の24ページ目の小さな画像を最高の解像度でスキャンしたもの。まだ1950年代半ば、V-2とまだほとんど変わらないR-1やR-2といったロケットで、高空に小犬を送り込んでは回収していた頃の彼の写真です。

セルゲイ・パヴォロビッチ・コロリョフ。

初めて星を作った男。最初に人間を宇宙に送り出した男。


自分の作った星が軌道を巡り、手の届かない所に行ってしまうと、星の安全を何かに祈りたい気分になりました。しかし私はありきたりの神仏の類を一切信じません。

Knuthはどうだろう? 確かにバグ退散には効き目がありそうですが、違います。

電気と知識の神(彼を神と呼ぶと、2chに溢れる即席の神々をどうしても連想してしまう)菅原道真は? 電気技術者の守護聖者、聖リーボウィッツは? やはり違います。

私はそうして結局、彼のイコンを求めたのです。


今月号のSFマガジンに掲載された短編、アンディ・ダンカン「主任設計者」The Chief Designer には、隠れキリシタンじみた己の信仰を暴かれたような気分になりました。

初期ソ連の宇宙開発をテーマに、事実をベースに出来事や人名をアレンジして書かれたフィクションです。アクショーノフは明らかにミーシン、旧ソ連の宇宙開発史を語る上で彼ほど狂言廻しとして相応しい人物はいません。シャンダリンに当たるのは中盤からは明らかにチェロメイです。彼は、この短編に出てこないもう一人の重要人物グルシコと共に、宇宙開発史において書かれざる物語の違う主人公でもあります。

ドルゴフの死は史実ですが時期は1962年12月1日、つまり時期を弄っています。1961年に死んだのはボンダレンコで、ガガーリンの打ち上げ直前の3月に、純粋酸素雰囲気中で焼死しています。射出システムの機能実証は作品中の描写とほぼ同様に、但し無人で行なわれました。

ノヴィコフはコマロフです。詳しくは「宇宙の傑作機 ソユーズ宇宙船」を。ここで書き始めると本が1冊分です。この作品の描写では、史実と俗説と嘘が見事に入り混じっています。Voshod-1のムリヤリ宇宙飛行士と医師と技術者の三人乗り、というのは史実ですが、勿論ミーシンが乗ったりはしていません。合っているのは医師の名前だけです。Voshodは射出座席無しで帰還可能な二人乗り宇宙船として設計されました。

そういえばVoshod-2にはもう一つのエピソードがあります。

"当時は宇宙飛行士のガガーリンや、総技師長のコロリョフが健在でした"

コロリョフの死については、とんでもなく大幅なアレンジが加えられています。

月計画用ロケットは実際にはN-1と呼ばれていました。チェロメイはフルシチョフの失脚と共に主導権を奪われますが、ミーシンは当時の技術的知見を超えた挑戦であったこのロケットの打ち上げに全て失敗し、グルシコにその座を追われ、歴史から抹殺されます。

コロリョフの生涯に関して、日本語で読める最良の文献は「月をめざした2人の科学者」です。フォン・ブラウンも同時に取り上げられ、その生涯を対比しています。伝記の翻訳が進行しているという話は時々聞きますが、まだ実現していません。

彼は聖人ではありません。破綻した家庭生活、理不尽な扱いと要求、泥沼のような権力闘争。しかし、彼は、彼らはやり遂げました。

何かに取り憑かれたような人々の織りなす、濃密な物語。

星々を目指した彼等の輝きは強く、恐怖も苦痛も悲しみも忍耐も超えて強く、今も宇宙を、冬の軌道を巡っていると信じることができて……

だから、祈りを捧げます。今日も小さな祭壇に。

「プランク・ゼロ」
著者:
スティーヴン・バクスター
出版社:
早川書房
分類:
SF,文庫

ジーリー・シリーズの短編を集めたモノで、年代記風の編纂がされた上に、すぐに残り後半も出るという話。つまりもう1冊買うと言う事に。

シリーズものは嫌いです。この短編集も、せっかくのネタが共通世界設定の枷に窮屈そうにしているように思えました。

しかし、各作品とも面白く読めました。奇妙な生命体との遭遇のエピソードが多いのですが、どこか昔の、エリック・F・ラッセルの短編を思わせる雰囲気があります。佳作多し。

「真空ダイヤグラム」
著者:
スティーヴン・バクスター
出版社:
早川書房
分類:
SF,文庫

なんとか言っている間に、出てしまいました。「プランク・ゼロ」の残り半分。

既刊長編の断片が多く、雰囲気も上記と同じで、同様の感想を抱きました。但し後半は、ジーリー・シリーズの私の知らない部分、物語で、ファンとして純粋に楽しめました。

両巻まとめてお薦めします。

「エンディミオンの覚醒 上下巻」
著者:
ダン・シモンズ
出版社:
早川書房
分類:
SF,文庫

”らんらんらんらん川下りぃー、ほら歌え、歌えって言ってるだろ!”

物語中の対象について、それを憎む理由のコジツケを延々と説明されるってのはキツイです。破綻しているように思える記述も多く、楽しめませんでした。

お薦めしません。

「ダーウィンの使者 上下巻」
著者:
グレッグ・ベア
出版社:
ソニー・マガジンズ
分類:
SF,文庫

アルプスの洞窟のアイスマンは過去の、グルジアの墓場に眠る妊婦の虐殺の記録は人類の次の跳躍を暗示していた。

胎児異常とヘロデ流感、人体の中に眠り続けていたメカニズムが、人類を変えていく。種の断絶と跳躍が始まろうとしていた……

SFファンって、進化論に弱い人が大半なのでしょうか。

漸進とか断絶平衡とか、そういうキーワードは鼻くそほじりながら聞き流す私は15年前から分子進化論者です。

詰め襟着て高専の図書館で読んだ岩波の「科学」では、反対論者がシャミセンガイの形態変化などをネタに最後の抵抗をしていました。論理は明快。分子進化論は、私にとってのサイバーパンクでした。

進化とは要するにビットと確率の問題なんです。遺伝子の中、淘汰圧がかかる領域と、かからない領域、それぞれにビットエラーと誤り訂正が発生し、変化が、あるところでは却下され、あるところでは蓄積していく。歴史の中で淘汰圧のかかる領域が変化し、蓄積してきた遺伝子変異が審判を受ける。有効なビルドのみが次のブランチを作ることができる。生きた化石など存在しない。変化は表現型では計れない。


「種の起源」と「分子進化の中立説」は、進化論を語る上で絶対必要な教養です。私は木村資生こそ、過去日本の科学界で最大の業績を挙げた人物だと思っています。優生学への傾行は頂けませんが、ポーリング(ノーベル賞を2つも取ったが、ビタミンCを通常の一千倍摂取して健康に!と主張)だって似たようなモノだし。

この作品はあからさまなツッコミどころは無いものの、そもそもあんなメカニズムがあったら、人類は頭脳なんて要らなかったと思います。神経系は生命にとって環境適応戦術を柔軟にするために存在します。ヒトの神経系とアクチュエータは環境を操作することによって、淘汰圧の多くをキャンセルしました。

ウィルス進化論等と些事に拘る向きは、一般的な遺伝的アルゴリズムでは、4種類の操作しかサポートしていないことをよく考えるべきでしょう。大事なことはオペレーションとその規則、どっからカットアンドペーストしたかを論じるのは重要性が一段下がります。

かつて「ブラッド・ミュージック」で驚くほど早い時期に、現実的な振る舞いをするマイクロマシンを描いて見せたグレッグ・ベアですが、もうなんというか……

アイディアも物語も評価できませんでした。

今日的な進化論をサポートしたSFが読みたいものです。

「逆転世界」
著者:
クリストファー・プリースト
出版社:
東京創元社
分類:
SF,文庫

久しぶりに古本屋を訪れての収穫のひとつです。

破綻した部分が気持ち良いくらい。極めて良質。

「ラヴクラフト全集 #1」
著者:
H.P.ラヴクラフト
出版社:
東京創元社
分類:
SF,文庫

実は、はじめてのラヴクラフト。

まずは”インスマウスの影”を。基本的に巧い作家ではない、と思いました。奇妙な嫌悪とか反感とか気味が悪いとか、そういう形容を乱発してむりやり調子を作っています。良い描写もあるのですが、力不足です。

他の作品も同様でした。考証をもちょっと、ディティールをもちっと弄ればもっと良くなっただろうに、というのは先駆者の作品に対する余計な後知恵でしょうか。全般に、怪奇って程のものは感じませんでした。人間に勝るホラー無し。

「未来の2つの顔」
著者:
J.P.ホーガン
出版社:
東京創元社
分類:
SF,文庫

「星を継ぐもの」とか「ガニメデの優しい巨人」とか「巨人たちの星」とかハードSFと呼ぶにはナンじゃろか、という記憶と、(金子隆一 == ハードSF) というログイン-メカニックマガジン的刷込みにより毛嫌いしていたホーガンでしたが、古本屋で見かけたので、まぁ読んでみようかと。

人工知性の自律性が人類のコントロール能力を超えることへの危惧から、検証実験を地球近傍の宇宙植民地で行なう、という話です。描写の中心は人工知性、あと宇宙植民地でしょう。

人工知性のディティールですが、第5世代コンピュータ的な、”類推と学習によって”論、特に類推というものをあまりにも甘く見ていた時代、フレーム問題という言葉すら知らない時代のものであり、古いのですが、まぁ最近のSFでもあんま変わらない気が。


今や世界は数十億のコンピュータを接続した、地球全域を覆う分散型ネットワークを実用化し、運用しています。毎秒当たり数億インストラクションを処理するコンピュータが遍在する、それが遂に到来した21世紀の姿。しかし、人工知能の姿は何処にあるのでしょうか。

我々は、人工知能の実現について想像していた幾つかの前提を架空のものとして撤回し、新たな方針を定める時期に来ているのではないでしょうか。

現実の人工知能に関して素人がもっともらしく半可通ぶりを開陳するのはナンですが、対象を、"SFの中の人工知能"って事にすれば良し、って事で、望ましいディティールを述べていこうと思います。

まず、ニューロは避けるべきだと考えます。理由は、今更感のある語感だから、それだけ。複雑になればオッケーというような奴も避けるべきでしょう。あと学習、それも常識の学習なんて記述にビット数を費やすのも。

”ネットワークが複雑になれば発生するYO!”なんていうのは論外でしょう。

逆に導入したいのは著作権とかライセンスの話題です。萌えAIの人権っぽいものを守るライセンスなんかがあるとグー。自然言語とプログラミング言語は全然違うということを念頭に置いた上で、プロトコルの話に凝るのも良いでしょう。


宇宙植民地のディティールについても同様です。チューブ状のトーラス形状は、与圧による内圧を前提にしているのだと思いますが、構造、建造法、熱平衡などを勘案するとお奨めできません。燒結コンクリートを構造材とした密閉円筒形状を推薦します。

とにかく「未来の2つの顔」の宇宙植民地ヤヌスは、太陽光を導入する設計とハブの形式が駄目でしょう。回転フランジがある辺り最悪です。電力や信号の伝送にスリップリングでも使うのでしょうか。工場設備を無重量空間に置く必要は無いし、そもそも切削工作を無重量空間で行なう場合の問題点への対処とか、考えていないんだろうなぁ。

現代のSFは、人工知性と宇宙植民地の描写に関して、1970年代から大して進歩していないと感じます。新しさを、強く望みます。

「ComputerToday 2002.11 No.112」
出版社:
サイエンス社
分類:
科学,雑誌

特集は「脳と心とコンピュータ」コンピュータサイエンス誌である筈なので、人工知性に関する話題の特集である筈なのですが、このような曖昧な、よくわからない題になっている辺りに、現在の人工知性研究の現状がよく現れています。

「感情に左右される思考」「類似性と知識の情報処理」などといった記事も興味深かったのですが、「心の工学的定義の試み」という記事は、”どういう機能を実装すれば、それは心なのか”という、工学的に意味のある内容で非常に面白かったです。著者はもう1歩踏み込んで良いと思いました。

逆に「クオリアと形式主義の起源」というような、意味の汲み取れない内容の記事もありました。この著者は、自分が書いていることをちゃんと飲みこんでいるのでしょうか。こういうヨタがまかり通る辺りに、人工知性研究の停滞の原因があるのだと思います。

連載「局所的意味論と現象としての計算」第5回ということですが、ここで紹介された哲学者ミシェル・アンリの主張って結局、”内部に参照可能なバッファを持っていて、そこの過去の履歴を使って現在の行動を決定できるのが生命だ”という事だと思うのですが、そういう適当な思いつきの域を出ない話を批判も無しに有り難がるのはどうかと思います。

連載「遺伝的アルゴリズムから人工生命へ」となると更にアイタタタな内容で、人工生命とは何か、小1時間問い詰めたい内容です。そもそも、遺伝的アルゴリズムという最適近似を求める手法と、生命現象を短絡する辺りで愚かさ全開です。

そういやちょっと考えてみたのですが、次の世代に更に有利になる自分自身の設計を渡す戦略として、遺伝的アルゴリズムではなく、知性による再設計というアプローチが取られた場合、それは生命と呼べるのでしょうか。そもそも、どんな戦略を取っていてもそれは生命なのでは無いでしょうか。

「宇宙ステーション入門」
著者:
狼嘉彰,冨田信之,中須賀真一,松永三郎
出版社:
東京大学出版会
分類:
技術,ハードカバー

この本は実質、国際宇宙ステーションの入門書です。十分に詳しい内容を持ちながら、更なる知識へのポインタを示す内容となっています。但し、内容にはどうしてもいびつさを感じてしまいます。

著者をはじめ日本の宇宙開発関係者はまだ誰も、実際の宇宙ステーション運営に関わっていないのです。この本の大半の内容は、こう運用されるであろう、というものでしかありません。第II部のように、この本に収録する必要性を特に強く感じない内容が最も充実しているというのは、実際に実証した技術と又聞きでしかない知識との差でしょう。

旧ソ連/ロシアの宇宙ステーションや、スカイラブへの言及も少なく、一般化した記述が少ないのも問題だと思います。

どうせなら、独自に作るならどういう物になるか、その場合解決すべき問題点は何か、きちんと論じた内容が欲しかったです。どうでもいい記述が多いのは、志の低さを示していると思います。

人類の地球外居住という目標を、もっときちんと提示すべきです。

「動かないコンピュータ 情報システムに見る失敗の研究」
出版社:
日経BP社
分類:
技術,単行本

日経コンピュータ誌の名物記事として名高い「動かないコンピュータ」を、単行本としてまとめたものです。但し内容は事例と原因を軸として纏めたものとなっており、初出時には実名で掲載された企業名が伏せられています。でも、まぁ、いくつかの企業は私にもその名前がわかります。

在庫管理、受注管理、経理といった業務にコンピュータを導入したい、そういう要求が現場からではなく経営トップから出てきた場合、既に失敗の種は蒔かれています。買ってきた市販パッケージと自企業独自の商慣習がマッチしない、酷いバグがある、コンサルタントに大金払って無駄なバインダーひと揃いを作る、そんな羽目に陥るのは、基本的に仕様に問題があったと言えます。仕様が存在しない、仕様に合致しない、仕様を満足しない、仕様を把握していない、そういう状況で何か満足のいくものを作ろうという方が間違っています。

仕様とはつまり、何をしたいのか他人に文章で説明できる、ということです。しかし本書では、何がしたいのか、何をしているのかすら把握していない例が目立ちます。

何をするのか、ある状態のときにはどうするのか、しっかり把握出来ているならその作業にはコンピュータを導入できます。しかし、何がしたいのかすら判っていないのでは、まさに問題外なのです。

「プログラミング言語の概念と構造[新装版]」
著者:
ラビ・セシイ
出版社:
ピアソン・エディケーション
分類:
技術,単行本

ドラゴン本をまた読み返しているのですが、前の持ち主の引いた赤線の意味が色々とわかってきて面白いです。狭い目標を狙いながら挫折した、その試行錯誤の様子が手に取るように判ります。まるで誰かさんのよう……

それではマズイので、新たな資料を投入します。この本はドラゴン本の著者の一人が書いた、コンパイラ/インタプリタの内部表現に的を絞った本です。

自作していて、再帰やオブジェクト指向をどうやって実装するのか等と興味も湧いたので、実に面白く読めました。具体的な記述は少ないのですが、問題を認識しているなら、いくらでも興味ある記述を読みとることができるでしょう。じっくり読める一冊です。


実際にスクリプト言語を作って思ったのは、言語の文法的な側面だけを重視してはならない、という事です。言語でかかれたコードの示す論理、データを内部表現で保持可能でなくてはならない。当たり前の事ですが、実際に構造化、オブジェクト指向を目指したとき、ことは問題になります。

スタックと構文木、実行時評価でいいじゃん、というのが安直な方法なのでしょうが、自分が求める振る舞いを実現するには、それでは駄目なんです。

だから、考えています。

「DesignWaveMagazine 2003年1月号」
出版社:
CQ出版
分類:
技術,雑誌

CPLD、書き換え可能なマイクロチップが付録に付いてきます。

AlteraのEPM7256A、256マクロセル100Pinデバイス。FPGAに換算すると5000ゲート位のつもりで使えるでしょうか。変換基板に付いてきます。

/.jへ初タレコミしました。とりあえず3冊買いました。ダウンロードケーブル自作しました。でもまだCADインストールしていません。XilinxのCADとカチ合ったらイヤだなぁ。仕事でActelのCADも評価しないといけないんで、あう。

でも色々と使えそうです。3.3VデバイスなのでFoxに繋げると良さそうです。ビデオプロセッサ、インターフェイス、無線処理、割り込み。I/O以外でも使ってみたいです。

「入門UML」
著者:
ケンドール・スコット
出版社:
ピアソン・エデュケーション
分類:
技術,単行本

そろそろUMLやらんとヤバいと思うのです。

という訳で、入門書を物色。定番が無い、若しくはわからない場合は、翻訳書(邦書の入門書は、分かり易くしようと著者が無駄に比喩を工夫したりするのがマズい)で出版元が固く、それなりに薄いものを選んでいます。

この本は、入門書としてアタリだったと思います。秋葉原からの帰りの常磐線でサクッと読み終えました。


今のところの自分のUMLについての認識は、こんなものです。

  • UMLは図記号による言語である。その最大の目的はコミュニケーションである。
  • UMLには複数のタイプがあり、表現したいことに合わせて使い分ける。
  • UMLは、設計のアタマから使うべきである。
  • UMLは、OOPにフローチャートを要求するようなアホをからかうのにも適している。

さて、どんなものでしょうか。

「リアルタイムUML 第二版」
著者:
ブルース・ダグラス
出版社:
翔泳社
分類:
技術,単行本

問題は、リアルタイムシステムの開発に使えるか、です。

仕事が一段落して、浮かれて(更新遅れました)いるのも束の間、次が待っています。次は使ってみたいUML。わかる人に説明するのに便利だろうし、わからない人を煙に巻くにも便利だろうという目論見です。

DynamicDraw入れて、ちょっと描いてみます。一号機を開発していた頃に書いた、独自のチャートやら図表やらを変換できるかと思いましたが、できませんでした。結局、何を表したいか、なのですね。

UMLを使うというのは、ある程度までは思想を受け入れることではないか、と思います。恐れずに。

「リアルタイム/マルチタスクシステムの徹底研究」
著者:
藤倉俊幸
出版社:
CQ出版
分類:
技術,ムック

リアルタイムOSに関した本としては、良書の少ない邦書では最もお薦めできる本だと思います。

但し内容はかなりまとまりの無い、悪く言えば散漫なものなので、リアルタイムOSに関する最低限の知識は前もって必要です。しかし個々の内容は熟読する価値のあるものだと思います。

「コンピュータ 写真で見る歴史」
著者:
クリスチャン・ワースター
出版社:
タッシェン・ジャパン
分類:
技術,ハードカバー

美しい写真で過去の名機を紹介し、コンピュータの過去と未来を俯瞰する本です。

しかし、特定の機種に対象が偏っています。PDP-10はあってもVAXは無いし、PETやシンクレアやATARIやC64はあってもNintendoが無いというのはどうしたことか。Appleへの偏重はものの程度を越えていると思います。そのくせNeXTは1Pだけです。

携帯を取り上げているのは良いのですが、出来れば"たまごっち"や"ゲーム&ウォッチ"も取り上げて欲しいし、産業用コンピュータにページを振り割って欲しかったです。


取り上げて欲しいコンピュータを並べると、ちょっとしたリストになります。

まず、旧ソ連のコンピュータ。BESM-6Argon-16は独特で運用範囲も期間も長く、言及が必要です。

ノートパソコンではオリベッティのQuaderno 33は外せません。

国産マイコンからは代表してX68000。シャープのマイコンたちには絶対に言及しなければいけません。

ゲーム機からはファミリーコンピュータとPS2。AKI-80も載っけたいですね。

MSXからは日立H1三洋Wavy23を。デザイン優先の選考です。


コンピュータには美学が必要です。

「MSX Magazine 永久保存版」
出版社:
アスキー
分類:
技術,雑誌

私の愛したMSXマガジンが、何を血迷ったのか墓場から蘇ってきました。

出会ったのは平綴じの頃。お別れしたのも遠い昔。今回の復活は”公式”エミュレータ、MSXPLAYerの御披露目の為なのですが、私ゃ”MSX版「終末の過ごし方」”が動かないようなエミュレータは当面不用です。眼鏡ゲーは最優先じゃよ。

まぁ、読み所はそれなりにあります。桜沢エリカのウーくん、すがやみつるのMSXPLAYerあらし、恐らく史上最も詳細なボコスカウォーズ解説、あ、西やんは要らん。


もうMSXには、過去のソフトウェア資産にしか興味がありません。intent(というかBREW?)にはそれなりに興味あるけど。

コンピュータアーキテクチャを自作できるようになると、もっとすっきりパワフル、そして自分の思想を反映したホビーマイコンを追求したくなります。

……Fox弄り再開、か。手元に動くFox、2台あるんだから。

「Interface 2003年2月号」
出版社:
CQ出版
分類:
技術,雑誌

コンピュータの自作、デザインを試みるなら、この号は必読です。

そうとは書かかれていませんが、特集はまるまる”零式”X68000の残党による新アーキテクチャ”マイコン”のデザインについてです。

世の中には、他にもMSX残党や、HP200LX残党などがいて、暗躍したり破綻したりしていますが、目標設定と技術力では零式が頭一つ抜きん出ています。

68000やZ80といったMPUに拘ったり、DOSに拘ったり、”過去の技術だからラクだろう”という安易な思い込みが、これらプロジェクトの失敗を開始時点から運命付けているのです。今あるものでラクをすればいいのです。

ラクをした上でも革命は起こせます。Palmはモトローラの68000互換の多機能集積CPU、DragonBallが無くてはできませんでした。Palmのハードウェア構成は恐ろしく簡素です。その代わり、開発者はユーザインタフェイスにその労力を集中しました。

コンピュータデザインとは、そもそもそうあるべきだと思うのです。

CPUを何にするか議論する暇があるなら、ユーザインタフェイスと外観デザインを論じるべきです。美学を持たない奴はカエレ!


と、思うのですが、ま、今号に載っている内容くらいは理解しておきましょう。

あと、ヘネパタは必読。

「AXIS Vol,100」
出版社:
アクシスパブリッシング
分類:
趣味,雑誌

オーディオテクニカの耳掛け式ヘッドフォン、ATH-EM7を買いました。

これまで使っていたソニーのものが何時の間にかスポンジがボロボロ、ってそんなに寿命短いのかよ、と驚いた次第で、最初はバング&オルフセンのA8を考えていたのですが、でも本誌に載っていた写真を見て、剛性と繊細さを同時に感じさせるATH-EM7だな、そう思ったのです。あと音質もありますが。

A8もそうなのですが、プラステックでは実現できない特性と質感が、身に付けつづけるインタフェイスとしてより相応しいと思いました。

満足感のある機能、音質、デザインです。


デザイン誌AXIS、第100号です。特集は再びモックアップ。韓国、特にSamsungのデザインの質の向上が目立ちました。

今日のコンシューマデザインは、余りにもプラスティックの自由度に頼りすぎだと思います。まるで他の加工手法を忘れてしまったかのようです。デザインが加工手法と遊離しています。

鉄の扱い方を知っているデザイナーって、どのくらいいるのでしょうか。

私にとって、デザインとは機能、そして加工手法と限りなく近似のものです。

鉄骨の補強構造に、プレス成形された底板に、多層基板の引き廻しに、ソースコードに私はデザインの美を見ています。目に見えるものだけがデザインではありません。

しかし現在、あらゆる物がプラスティックで覆われ、ブラックボックスとなっています。だから、美が失われるのだと、私は主張します。

「コモンズ」
著者:
ローレンス・レッシグ
出版社:
翔泳社
分類:
技術,単行本

本書における議論の焦点は、明らかに著作権です。

レッシグは極めて強い危機感を持って、要点を絞って議論を展開しています。本書を読むことによって、読者は彼の危機感を共有出来るようになる筈です。事態は切迫しているのです。

「”動物的”というコトバが使われるたび5セント貰ってたら今ごろ大金モチだぜ」

こういうのがビジネスモデル特許と著作権で二重に保護されるのが今時の”産業”です。

ビジネスチャンス万歳、市場での自由競争は万能だと信じるものと、公共ルールによるコントロール、法と計画が重要だと信じるものとの戦い。20世紀において我々の世界に属する全てのリソースは、この2つの勢力によって分割され、運用されてきました。

しかし世界がこのようになったのはごく最近のこと、テクノロジーのせいだということを忘れて、新しいテクノロジーが生んだものに、この古いルールを当てはめようとしています。全てが誰かに所有され、コントロールされているという幻想は、例えば匿名掲示板の管理人にコントロールを強制し、レコード会社にネットワークを越えて他人の所有物をコントロールする権限を与えました。

我々は、他人の作ったものの中で暮らしています。我々の知識の殆どが、他人の生んだものです。現行の、そして予想される将来の規制と制限は、人類の知識における新しい試みの殆どを縛り、”権利”の枠で縛ります。

権利の意味と範囲を熟考することなく、自己の利益を最大にするのは自由市場社会の当然の掟だとみなす人間を放置していれば、やがて、特定第三者が権利を持つ知識が使われると自動的に口座から使用料が天引きされる、そんな未来が訪れる事でしょう。

知っていることをコントロールされる世界。口ずさむだけで課金され、批評するだけで訴えられ、短い文章を書くにも、それが盗作にあたらないか世界中の文学作品をチェックしなければならない世界。我々はこういう可能性について、まじめに考えるべきです。

本書を読み、この危機感を共有できない人は、少なくともクリエイターでは無いと思います。

我々には、考えることができる、知識が影響を与えることのできる、自由な知識の広がりが必要です。分割も管理もされない場所が必要なのです。

「PCコマンド ボブ&キース #3」
著者:
高橋敏也&城久人
出版社:
ソフトバンク
分類:
漫画,単行本

「遂にこの連載も最後だと、本当か?」

「ああ、これも時代の流れ、新世界秩序の為とあっては仕方あるまい」

「そうか、では早速単行本でじっくり楽しもうとするか」

「おいおい待てよ、どうせ毎回爆発オチだぜ」

「そうそう、5万でメーカー製買える時代に自作っていうのもなぁ」

ブチブチブチ……

(どこからともなく取り出したSS-1Bをバックに)

「ファッキン軟弱野郎どもっ

これでも食らえっ!」

「おい!RPGからいきなりスカッドかよっ」

「どっから入手したんだよ!うわぁ!」

アメコミ風効果付きで見開き大爆発。


遂に最後です!

パーツ供養、サーバ自作、そして自爆。”戦場の自作PC”はひたすら笑いました。

「2師の田舎者は旭川から出るなっていうかっ!?

90式は7師にまわして2師は74式で十分ってかぁ!!」

うわ、いいのか。


この年末年始に1台作っちゃいました。

Athlon1800+とメモリ1G、ハードディスク120GとDVD-RAM/Rドライブ、そして定番キャプチャボードMTV-2000を黒のミニ筐体にぎちぎちに詰め込み、黒の16インチ液晶ディスプレイと組み合わせました。

代わりに10年来の付き合いのオーディオコンポ、ビデオデッキ1台、おととし買ったTVに暇を出しました。以前買ったRD-VH7PCと組み合わせて、AV系をPCに全集約したのです。見てくれもシステムも、悪くは無い、まずまず、というものでしかありませんが、明らかに改善されました。

現在非常に快適な録画生活を過ごしています。ハードディスク容量が恐ろしい勢いで消費されていきます。DVD-Rメディアを恐ろしい勢いで消費しています。まぁこれも良哉。

目的があるなら、手段も楽しめます。まぁ、なんのかんの言っても、PC自作っていうのは楽しいものです。

「最近のヒロシ」
著者:
田丸ヒロシ
出版社:
角川書店
分類:
漫画,単行本

眼鏡っ娘漫画家として一部の好事家に高く評価されている漫画家、田丸浩史。

彼の描くメガネはフレームまで描写が行き届いていて、とにかく絶賛を惜しまないのです。でも、こんな事を言うのは一部の変態さんだけで、一般にはアホ漫画家として認知されています。まぁ、否定はしません。というかもっとやれー。


角川では最近、極めて寡作な作家の、日記ともナンとも知れないような数ページを雑誌に掲載するようになりました。例えば桃組の平野耕太。そして、……えーと、再び漂流する田丸浩史。

それがコレです。色々と水増しされた上に、元々が極めてヌルく、決して人にお薦めできる内容ではありません。そもそもこんな駄目人間図鑑のような中身を読んだら、駄目がうつります。

オールキャスト駄目人間なんです。まぁ、私達の世代ではよくある話で、自分の周りでは最近は流石にプー率下がってきましたが、それでも、何故コイツ生存可能なんだ?というような奴はいました。

現在の日本では生存可能なんです。幾分か疑問符つきながらも、社会生活可能なんです。

貴方も、駄目人間との付き合い方を覚えておくと、いつか役に立つかも。

もしくは、明日は我が身。

「ピルグリム・イェーガー #2」
著者:
沖方丁&伊藤真美
出版社:
少年画報社
分類:
漫画,単行本

16世紀イタリア、異端、呪い、予言が、選ばれた者達を焔へと誘う。魂の自由の時代を前に、煉獄の時代を焼き尽くすために……

イイ感じです。絵柄、雰囲気、登場人物が、歴史モノにありがちな堅苦しさの無い濃密なテンションを感じさせてくれます。問題があるとすれば、主人公2人がどうも物語のピントから外れがちな点でしょうか。

期待して良い作品だと思います。

「ワイルダネス #2」
著者:
伊藤明弘
出版社:
小学館
分類:
漫画,単行本

じゃじゃ馬と、負け犬二匹がメキシコの荒野を彷徨う。

しまい込んだ鉛の牙が過去を物語る。雨と硝煙と、裏切りの記憶を。

鉄砲伝来の地にてGet。

今回はガンアクション少な目ですが、その代わりハードボイルドです。

「よくある話だ」

「そう。ドラマならな」

俊夫の過去、都市の描写はハヤカワの海外ミステリを強く連想させます。雨の風景が印象的でした。

深夜の天文台、相棒だった男と2人取り残されてからの描写は、圧巻の一言です。ひとコマひとコマの語る情報量、怒涛のような緩急。読み返しては震えるべし。

「プラネテス #3」
著者:
幸村誠
出版社:
講談社
分類:
漫画,単行本

宇宙飛行士は帰還した。愛する人のいる宇宙へ。

えーと、極めてよく判らない内容でした。宇宙とはナンだ? 自分とはナンだ? 愛とはナンだ? そんなご大層な問い、シラフで答えられるかよ。愛なんて知った事かよ! うがーっ!!


取り残された気分です。

私はまだ地上にいます。塵のごとく軽い駄目オタの命でも、文字通り賭けていい、そんな事を思っていても、空しくなるくらい宇宙は遠い。すぐ目の前に広がっているのに。

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