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観客の学校・甲府校リポート
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■■第7回 2003年1月23日(木)
第7回目の観客の学校は、大雪の夜の開催。中止にしようかと迷いながらも、「来てくださる方もいらっしゃるでしょうから、小人数でもやりましょう」との講師の秋山さんのお言葉で決行することに。開校してみれば、20人の参加者が集まってくださり、雪の中、みんなで雅楽の幽玄な調べに耳を傾けるという風流な体験となった。
■1時限 秋山忠也さんの雅楽入門
秋山忠也(山梨県神社庁雅楽講師・稲積神社禰宜)
近年、小中学校の音楽の授業に邦楽が含まれるようになったとはいえ、雅楽はまだ一般にはあまり耳にする機会のない音楽だ。神主さんでもある秋山さんは、山梨で雅楽研究のグループを結成して演奏活動を行うほか、神社で一般向けの雅楽講座を開いたり、特別講師として小中学校で和楽器の使い方を教えたりと、普及活動にも積極的に取り組まれている。
雅楽は、遣唐使の時代にシルクロード経由で入ってきた外来音楽と、もともと日本にあった音楽が融合して生まれた。
そのオーケストラ形式が成立したのが、ほぼ1400年前、西洋音楽の世界ではまだ二重奏が生まれたころだという。
しかもそれほど古い歴史をもつ雅楽は、その後ほとんど変わることなく、そのままの形で維持されてきた。
変化もなく保たれたのは、いくつかの楽家が世襲で楽曲を守ってきたからだという。だが、楽家の長男だけに伝えられるという厳しい世襲制ゆえに、明治になるまで譜面がつくられることもなかった結果、雅楽は一般に普及することがなかった。今でも天皇家と貴族のための音楽、というイメージが強いのはそのためでもある。
だが、 雅楽の歴史を学んでいくと、面白いことがたくさんあると秋山さんはいう。例えば、「千秋楽」といった言葉は、
雅楽のタイトルから生まれた言葉であるとか、「申し合わせ」も雅楽からきた用語であるとか。秋山さんのそういった雑学的で楽しい語り口に引き込まれているうちに、
ふと気が付くと参加者は、それぞれの雅楽器の性質やら役割やら詳しい編成やらの、奥深い雅楽の世界に足を踏み入れているのである。
■ 2時限 雅楽演奏 「越天楽」「王常」 演奏/秋山さん+田中さん+丸山さん
ひとしきり説明をうかがった後、
本日は、 秋山さんら研究会メンバーの方たち3名に実際の雅楽演奏をしていただいた。雅楽といえば管弦楽だけだと思っている人が多いが、
歌や舞の入る楽曲もあるそうで、今回も演奏くださったのはタイプのちがう「越天楽」と「王常」の2曲だ。
ところで、あまり知らない楽曲を聞くときは、どこで拍手をしたものだか悩むもの。気配りある秋山さんは、観客たちのそんな不安も取り除いてくださった。雅楽の場合は、最後は琴で終わることに決まっているそうで、琴の演奏者が手を下ろしたときに拍手をすれば間違いがないとのこと。もっともこの日の演奏には琴は入っていなかったけれど、こんなふうに近くで聞いていると、息遣いで終わる雰囲気も伝わってくるものだ。雪の中、笙や篳篥の音色に耳を傾けるのは、実に特別な体験だった。
***
さて、今回の7回目で、
ひとまず朝日小学校での「観客の学校」は終了することになった。
半年にわたって「観客の学校」をもり立ててくださった方たちのおかげで、今年のつなぐNPOの活動の方向がほぼ見えてきた。いわば、
この7回の「観客の学校」は、「観客の学校をつくるための学校」だった感じ。今後はこれをベースに、いろいろな場所でそのときどきに「観客の学校」を開催することになる。
ちなみに今年、 つなぐNPOは、山梨県にある国重要文化財の住宅「安藤家」を保存しながら使うという、「安藤家活性化計画」に参画することが決まっている。
安藤家で夜会を開き、今日のような雅楽演奏会ができないだろうかというプランも浮上中。そのほか、内田宏さんの昭和の写真展など、
いくつか進行中の計画も。
というわけで、ご興味ある方、今後の活動については、
それぞれのプロジェクトをチェックください。
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