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観客の学校 甲府校(山梨県)

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観客の学校・甲府校リポート 
  1.5      

第1回 2002年7月4日(木) 

 第1回観客の学校に集まったのは21名。出席者は「つなぐnpo」のメンバーのほか、山梨在住のさまざまな職業の方たちだった。実はこの時点では、「つなぐnpo」がNPO法人格を取得するかどうかは未決定(だから遠慮っぽく、npoが小文字になっている)。法人格をもたずとも、非営利団体として活動することは可能だからだ。ともあれ話し合いの中から、今後の方針を決めていこうということで、まず1時限目の授業は、主宰の山本育夫さんから「つなぐnpo」の説明が行われた。

1時限目:「つなぐnpo」と「観客の学校」とは  
 山本育夫
(「つなぐnpo」主宰)

ミュージアムのジレンマ

 ミュージアム・マガジン『ドーム』の編集長である山本さんは、10年以上、主に美術館の教育活動を追いかけてきた。ミュージアム の現場では、確かにこの10年の間に「教育普及活動」という考え方が普及し、実践されるようになった。
 だがそういった活動を実際にできるのは、実は限られた館だけ。そして、できる館でも、20人から30人程度を対象に1年に何回かイベント的に行う程度ということが多い。予算や人材の不足と、「市民に還元する」という考え方が育たないことが、ネックになっているのだ。
 一方、美術館で働きたいにもかかわらず働くチャンスがない人や、仕事は別にしても生き甲斐を求めてミュージアムと関わりたいと思っている人はいっぱいいる。そういう人たちの声を聞こうと山本さんがつくったのが、ウェブマガジン『ミュージアム日和』だった。『日和』は、ミュージアムに対する情熱と「書きたいこと」をもっている人たちからの、投稿原稿でつくられる。国内外から新鮮な記事が届くのがインターネットの強みで、ほぼ1年の活動の間に書き手も育ってきた。だったらこの仲間でもっと何かできないか、もっとミュージアムと観客、そして自分たち働き手を結びつけるような活動にも取り組んだらどうか、と生まれたのが「つなぐnpo」だ。

「観客の学校」生まれる

 ミュージアムが何かしてくれるのを待つのではなく、観客の側が自力でミュージアムを楽しめるようにしたらどうか。いや、場所もミュージアムに限らず、とにかく観客自らが楽しみを見つける「セルフ・エデュケーション」という考え方が重要ではないか−−この考えを進めた結果、まずは観客自らが学び楽しむ「観客の学校」をつくろうということになった。
 とはいえ、「観客の学校」とはいったい何なのか。ともかくはじめてみなければわからないところもあって、まずは山本さんの地元・山梨で「甲府校」をスタートすることにした。その経験を各地に住む「つなぐnpo」の面々と共有、全国展開していこうというのが、目下のもくろみである。
 ところで錯綜した仕事をもつ山本さんは、山梨県内の町を「探索する」というテーマで『ランデブー』という雑誌もつくっているのだが、取材のためのまち巡りの楽しさにハマってしまっていた。いろいろな面白い人たちに話を聞き、見知らぬものに出会うツアーは楽しい。ツアーは観客にとって、自ら楽しみ学べる装置になるはずだ。そこで「観客の学校」は、美術館や文学館、史跡、里山、まち歩きツアーなどを行い、これにミニレクチャーやワークショップなどを組み合わせて、一般の人に観客として自由に参加してもらおうと考えている。そういったツアーや催しを実際に楽しんでもらえたならば、今度は慣れてきた観客の皆さん自らに、ツアーやワークショップを運営してもらい、「観客の学校」を増殖させていこう−−とまあ、これが「観客の学校」の基本プランだ。

いま、「つなぐ」ことの意味

 さて、最後に少しだけ堅い話を。
 10年前であれば、こういった話は絵空事だったかもしれない。だが、不況の中、ミュージアムをとりまく状況も変わり、公立館の独立行政法人化も進められている。美術館の中でも、これまでは「教育プログラムは美術を学ぶためのもの」と考えられてきたのだが、最近では、例えば観察力や洞察力、理解力や判断力を養うために「美術を使う」という新しい考え方も出はじめた。学校教育も同様で、これまで教科主義だったものが、もっと広く学び考える力を得るために「教科を使う」という考え方にシフトしている。一方ミュージアムと学校の連携や、学校と社会や地域の人々との連携もリアルになってきた。つまりは、これまでバラバラだったものを結びつけ、つなげていくということが鍵になりつつあるのだ。
 これからの時代は、従来の考え方を変えられるかどうかが大きなポイントになる。だが、組織の中にいる人は自由に動きにくい。だから今、柔らかい精神をもつ民間の組織が生まれ、学校やミュージアム、企業や公的機関、そして一般の人たちをつなぐ役割を果たすようになってきているのではないか。実際、現在あちこちで生まれているNPOは、非営利精神をもった民間組織でなければできないような活動をしながら、その経験やノウハウを公的機関や企業にもフィードバックしている。そういった意味では、観客の立場、市民の立場でものを見、考える「観客の学校」も、ミュージアムやまち、あるいは学校や社会にフィードバックできることがたくさんあるのではなかろうか−−というのが、山本さんが熱く語った「つなぐnpo」の設立趣旨である。

 

2時限目:NPOの事例「文化資源活用協会」について 
 山路恭之助
(「NPO文化資源活用協会」企画委員/山梨県須玉町役場教育委員会職員)

地域の文化財を地域で守る

 2時限目の先生は、山梨県ですでにNPOとして認証を受けている先輩団体「文化資源活用協会(文資協)」の山路さん。山路さんは山梨県須玉町役場教育委員会の職員でもあるが、早い時期から、文化財を守るためには行政だけの活動では限界があると考えていた。現場の行政職員は、文化財調査に追われ、その中で自分自身も消耗していく。行政スタッフだけでは守るものも守れない。だったら地域の文化財は、地域で守れないだろうかという思いが、NPO設立につながったという。
 実際の設立のきっかけは、政府の「緊急雇用対策事業」にNPO枠があったこと。不況の中、失業者の技術を高めようと策定された雇用対策事業にNPOも申請ができると知り、4年前に「文化資源活用協会(文資協)」を設立。主に文化財のデジタル化といったIT関係事業の委託を町から受けて雇用を創出し、町から雇用対策法の予算を受ける形にした。これにより、ネット上で須玉町の文化財が見られるヴァーチャル・ミュージアム「オープン・ミュージアム」の制作や文化財のデータベース化、DVD編集などを行っている。その他、文化財の発掘調査を教育委員会等から受託しており、設立から4年目にして人脈などもほぼ整って、助成金を受けずとも事業費だけで運営できるようになってきた。

NPOと町との二人三脚で

 興味深いのは、文資協の事務所が須玉町の民俗資料館内にあること。営利事業中のときだけ家賃を払って、非営利のときは居候という特典を得ているという。 そしてさらに興味深いのは、山路さんが役場職員という公的立場にあると同時に、NPOの理事でもあること。自分のNPOに自分で委託するという状況も生まれるわけだが、町から個人的なお金をもらっているわけではなく、役場の労働時間とNPOの活動はきちんと分けているから許されるとのこと。NPOの活動が役場の中でも認知されつつあるともいえるし、また、直接税金を使わずとも地域の文化保存活動ができることにメリットを見出す、いわば「立場」よりも「中身」を重視する視点が生まれているともいえるのだろう。

実際にNPOをつくるなら

 山路さんからは、実際のNPOづくりと運営に関する「How to」もうかがった。例えば、団体の名称の重要性とか、コアとなるメンバーの位置づけとか、定款で定める事業内容とか。また、税制の問題など、現行のNPO法の矛盾点や問題点の指摘もあった。
 お話をうかがうに、やはりNPOの実際の運営上、一番問題になるのはお金のようだ。いかに継続的で安定した事業収益をあげ、NPO活動を維持できるかが焦点。行政からの委託ばかりだと、出来高払いなので資金繰りが苦しくなるし、年間の事業費が増え過ぎると消費税を払う必要も出てくるし、その年に得たお金はその年のうちに使い切らないと課税されるので収益を次年度までプールしにくいなど、かなりリアルな話も出た。

ピュアな動機がNPOを守る

 2時限目の最後には、文資協でIT部門を担当する丸山さんからも、コメントがあった。いくつかのNPOに関わる丸山さんは、今の日本のNPOには強い動機や使命感が少なく、とにかく事業化をしようとしているところに危機感を感じるという。NPO先進国のアメリカなどは大規模なチャリティーパーティを行うなど外見は派手だけれど、活動趣旨や根底にある動機はピュアなもの。例えば『ナショナル・ジオグラフィック』は、世界各地の見聞を広げる活動を援助するためにできたNPOが、賛同者の会員への「報告書」としてつくっている雑誌だ。そのようなピュアな動機とスケールの大きさが日本のNPOにも必要で、その運営にあたっては、賛同者1人ひとりの根っこの部分にある動機をきちんとつかんで、それを目に見える形で出していくことが絶対に必要なのだと、丸山さんは力説した。そうでなければ、緩やかなつながりでつくられているNPOは、たちまち崩壊・解体してしまう恐れがあるのだという。
 さて、「つなぐnpo」には、とりあえずピュアな動機はあると思う。法人格を得るかどうかはさておき、先輩NPOのお話をうかがいながら、今後の展望が少し見えてきたところで、第1回観客の学校 は無事終了。次回は「観客の学校・校外学習編」で、甲府市内「芸術の森」をツアーする予定だ。

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