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観客の学校・甲府校リポート
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■■校外学習篇/甲府市内「芸術の森」ツアー 2002年7月14日(日)
「山梨県立文学館」 学芸部長の保阪さんと学芸員の高室さんにインタビュー
「山梨県立美術館」 学芸員の神野さんと賀川さん、教育主事の小田切さんにインタビュー
「芸術の森を楽しむ30の方法」
ツアーにこだわる観客の学校・甲府校メンバー15名が第1回郊外学習に訪れたのは、市内の「芸術の森」だ。広い公園の敷地内に、ミレーの作品で有名な山梨県立美術館と山梨県立文学館、
さらにお茶室や日本庭園などがある。せっかくこれだけの施設があるのだから、いろいろな楽しみ方を見つけよう、というのが今回のツアーの目標だ。
「山梨県立文学館」を訪ねる
最初のツアー先は「山梨県立文学館」。事前に問い合わせをしてあったので、学芸部長の保阪さんと学芸員の高室さんにお話を聞くことができた。
観客の学校からの質問は、文学館に既にツアー的なプログラムがあるかどうか、また「観客の学校」が勝手にツアーを組んで文学館を訪ねた場合に受け入れてもらえるか、さらには今後の協力関係の可能性についても。
文学館では、 最近、休日不定期に学芸員さんが展示解説をしているそうだ。展示をただ見るのと、ある程度のポイントやエピソードを聞きながら見るのとでは面白さがちがうのは確かだ。だが、限られた館スタッフで常時ガイドツアーをするのは大変なこと。「そんなとき、ぼくらのツアーグループがちゃんと入場料を払って入館し、ガイドをし合ったりしてもいいですか?
」とすかさず聞くと、「問題なし」とのこと。大騒ぎをして他の観客に迷惑をかけなければ展示室内でも構わないし、自習室があいていればトークに使うこともできるし、マイクロフィルム用リーダーなどの設備をみんなで使うこともOKだ。
ということは、このような公共施設では、ルールを守れば原則として自由にツアーができるといえそうだ。
「文学散歩」を考える
自由にツアーを考えられるなら、例えば館内の展示室だけに限らず、ゆかりの地を訪ねるまち歩きツアーを組み合わせる手もある。文学館自体が館外のツアーに直接タッチすると、下見などの準備や、スケジュールや予算調整、安全性の確保など、いろいろクリアしなくてはいけないハードルが出てくる。だが、外部の独立した団体が主催する催しであれば、ハードル事情も異なってくる。
例えば山本さんが編集長を務める雑誌『ランデブー』の記事を参照するだけでも、「太宰治が新婚時代を過ごした甲府」「与謝野晶子の昇仙峡」など、ネタはいろいろある。途中で文学館の見学や、学芸員さんのトークなども加われば、ツアーの内容も膨らむにちがいない。あるいは文学館側から、こんなツアーもできるかもとアドバイスをもらえれば、フットワークの軽い「観客の学校」メンバーがツアーを具体化することも可能。感じとしては、あまり無理のない形で、お互いに協力できそうな雰囲気だ。
「山梨県立美術館」を訪ねる
次の「山梨県立美術館」も同じような感触。やはり他の観客に迷惑でなければ「勝手にツアー」も問題なしだし、むしろ「美術館は敷居の高いところではない」ということを他の観客にわかってもらうためにも、展示室内で子どもたちがツアーをしていたり、作品についておしゃべりをしている人たちがいたりすることは歓迎しているそうだ。
美術館でも既にいくつかツアー的プログラムを組んでいる。例えば企画展に合わせた「親と子のアートレクチャー」(低学年+保護者向け)や「集まれ! 美術館」(高学年向け)、
夏休みの休館日をまる1日使った、美術館の舞台裏紹介プログラム。また企画展担当学芸員による休日ガイドツアーや、常設展示室での希望者を対象としたボランティア・トーク。ただ、それらはやはり回数に限りがあるから、またもややはり「観客の学校」の出番かも。
特にものづくりが好きな「観客の学校」メンバーの食指が動いているのは、山梨県美の場合は、やはりミレーの作品をめぐるあれこれ。実はこれについては遠大な計画があるのだが、それは準備中の「ミレーの学校」の項で紹介しよう。
隙間を埋める
今回は両方の館で案内をしてもらいながら展示室を見学することができた。また美術館では、学校への貸し出し用の教材キット「移動アートボックス」といったものも見せてもらった。贅沢なことであるが、これはもちろん今後のツアーに活かされるはずだ。
ところでこのリポートを読んだ人は、これだけでは「楽しみ方がまだ30もない」と心配されているかもしれない。ご安心あれ。もちろん学芸員さんのお話も楽しかったが、「30の楽しみ」についていろいろな人に話していると、そこからさまざまな話題が集まってくるもの。例えば、芸術の森では、夜間に「星を見る会」というものが行われているという。夜みんなで集まって、あたりの電気を消してもらって、いっせいに空を眺める。そんな星見会の話をすると、「芸術の森はできて10年もたつから、もう生態系が生まれている。芸術の森から近くの小川まで散策すれば、自然観察もできるよ」と教えてくれる人もいる。楽しむための切り口はいろいろあるのだ。
一つ不思議だったのは、例えば「星見会」のことなどは意外に館スタッフに知られていないこと。確かに縦割り行政で管轄がちがえば、知らなくて当然なのかもしれないが、観客の立場から見れば、同じ「芸術の森」の中の出来事だ。そういった隙間にも、NPOの入る余地がありそうではある。